2024年5月18日土曜日

まずは政策活動費の全面廃止(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 いわゆる裏金問題については昨年秋に問題が表面化してから半年以上の時間が経過していますが、いまだに政治資金規正法改正の行き着くところが海のものとも山のものとも知れないという状況下にあります。
 この件については、植草氏は早くから改正の要点と共に、その実現のために野党はどんな国会戦術をとるべきなのかについて明確にしてきました。まさに国民監視下で行われている審議がなぜこの明快な改正案に向かわないのか不思議なことです。
 実は野党の中にもいわゆる政治資金規制法の抜け穴を封じられることに抵抗があるからなのではないか、という疑いがあるということです。もしも野党の一部にも裏金の余得に預かりたい人たちがいるのであれば(どうも居そうですが)何とも救いがたい話です。
 植草氏の主張は常に一貫していますが、今回は業を業を煮やしてか、「政治資金犯罪を刑事司法当局が厳正に取り締まることを明文化することが必要」と述べています「政治は国民のレベルに応じて行われる(要旨)」のであれば、議員のレベルを鑑みて必要なことに思われます。
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まずは政策活動費の全面廃止
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年5月17日
今国会の最重要議題は政治資金規正法改正。昨年秋に問題が表面化して半年以上の時間が経過した。
国会では裏金議員を政倫審に呼ぶことが繰り返されたが、政倫審に裏金議員を呼んでもほとんど意味がない。政倫審ではウソを証言しても罪に問われず、都合の悪いことは知らぬ存ぜぬ、記憶にないと言い逃れできてしまう。問題が拡大するなかで予算審議が行われた。
野党に本気で問題を解決する気があるなら、予算審議で核心を衝く必要があった。

最終的に焦点になるのは政治資金規正法改正。
政治資金規正法改正の具体案について、与党の確約を取り付けるべきだった。
与党が真摯な対応を示さぬなら予算審議に応じないとの強い姿勢を示すべきだった。
野党の主張に理があるわけだから、与党が誠実な姿勢を示さずに予算審議が進まず、予算成立が遅れれば、批判は与党に向かう。
この時点で「政治とカネ」問題の核心に踏み込むべきだった。
本ブログ・メルマガでこのことを繰り返し主張した。

しかし、野党第一党の立憲民主党は何もしなかった。本会議で長い時間をかけて演説をしたところで成果を得ることなどできないことは自明だった。
立憲民主党は予算の年度内成立に全面協力した。
このことから、実は、野党の側も抜本法改正を望んでいないとの疑いが生じる。

最大の問題は政策活動費
二階俊博元自民党幹事長は幹事長時代の5年間に47億円もの政策活動費を受け取っていた。
政治資金規正法第21条の2の2項は、政党が政治家個人に対する寄附を容認している。
この条文によって50億円近い政治資金が自民党幹事長に寄附され、その政治資金が何にどのように使われたのかが一切分からない。これが最大の「裏金」問題。

2022年の政治資金収支報告書によると自民党は幹部15人に計14億1630万円の政策活動費を支出している。最多は茂木敏充幹事長に対する9億7150万円。
22年の参院選公示前後に同氏には1億3000万円が渡されている。

政治資金の流れを透明にする。政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支を公開し、政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的に政治資金規正法が制定されている
年間10億円もの資金の収支が闇に葬られていること自体が政治資金規正法の形骸化そのもの。21条の2の2項削除、すなわち、政策活動費の廃止が法改正の出発点に位置付けられるべきだ

加えて重要になるのが連座制の適用。とはいえ、政治資金犯罪を警察・検察が取り締まらないのではお話にならない。
自民党裏金犯罪事件では警察と検察が巨大犯罪のほんの一部しか摘発しなかった。この状態を放置したままでは連座制を導入しても意味がない。
法規制が有効に機能するためには警察・検察当局の厳正な対応が必要不可欠になる。
政治資金犯罪を刑事司法当局が厳正に取り締まることを明文化することが必要。
さらに、議員に総括収支報告の義務を課すことも必要。

企業団体献金を全面禁止し、併せて政治資金パーティーを全面禁止することも必要不可欠だ。
ところが、野党が結束して法改正に取り組む姿勢を示さない。
自民党はほとんど内容のない法改正案を提出。会期末までに実効性のある法改正が実現する見通しは存在しない。
政策活動費の一部は野党のために使われているとの見方がある。
このために、野党も同じ穴のムジナで、抜本法改正を真剣に実現しようと考えていないことが強く疑われている。
今次通常国会で政治資金規正法抜本改正が実現しない場合、批判の矛先は与党だけでなく野党にも向けられることになる。

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