大学に対して「イスラエル支援やめよ」と訴える米国大学生の抗議行動は50以上の大学に拡大しました。
それは勿論米国だけに留まるものではなく、アイルランドの名門大学トリニティ・カレッジ・ダプリンでは8日、大学当局が学生の抗議キャンプの動機を「全面的に理解」し、「ガザで起きている事態への恐怖において学生と連帯する」と態度を変えました。そして国際司法裁判所がイスラエルに対してジェノサイド(集団殺害)の挑発を予防、処罰するあらゆる措置を取るよう命じたことを「支持する」と明言。イスラエル占領地に投資しているイスラエル企業への投資の完全引き揚げを約束するとともに、他のイスラエル企業からも投資引き揚げに向け努力すると述べるなど、大変な成果を挙げました。
しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。
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イスラエルの侵攻に加担するな
米50大学超 ガザ連帯キャンプ 反戦運動の歴史引き継ぐ
しんぶん赤旗 2024年5月10日
パレスチナ自治区ガザを侵攻するイスラエルに対する抗議運動が、全来各地の大学に広かつています。大学当局は、多数の学生に逮捕・停学処分などで圧力をかけ、批判が高まっています。学生たちはこれまでの反戦運動に学ぴ、平和的な抗議行動を続けています。 (ワシントン=石黒みずほ)
米メディアによると、抗議運動は8日の時点で全米の25を超える州の50キャンパス以上で取り組まれています。首都ワシントンにあるジョージ・ワシントン大学(GWU)でも4月25日から学生が行動を始めました。記者が3日に抗議キャンプを訪れた際、学期末であるにもかかわらず、アラブの伝統的頭巾クーフィーヤを身につけた多くの学生の姿がありました。課題に取り組む人、地域住民から寄せられた食料に列をなす人、輪になって議論をするグループが目につきます。
「パレスチナを支持するGWU学生連盟」のヤヤ・アナンタナンさん(23)によると、キャンプでは毎日、講義や映画鑑賞などのプログラムが組まれ、パレスチナだけでなく、フェミニストの闘いや公民権運動などの歴史を学ぶ場を提供していると言います。「世界で起こるすべての問題はつながっている。運動を通じて勝ち取りたいのは、パレスチナの自由にとどまらず、抑圧のない世界です」
GWUの学生らは大学に対し ▽イスラエルに技術や武器を提供する企業との関係を断つ ▽大学が資金提供を行う企業などを公開する ▽学生に科した停学処分を撤回するーことなどを要求。同大学のエレン・グランバーグ学長は学生らの要請に背を向け、交渉を拒否しています。
■学生の力で
全米各地の大学に先駆けて抗議キャンプを始めた、ニューヨーク市にあるコロンビア大学はこれまでも反戦運動の先頭に立ってきました。
1968年、米国がべトナム戦争をエスカレートさせる中、同大学の学生らはキャンパス内でテントを張り、抗議を始めました。米政府を非難するとともに、大学に対し、国防総省の武器開発に携わっていたシンクタンク「国防分析研究所」との関係を断つことを要求。開設予定だった体育館をめぐり、隣接するハーレム地区のアフリカ系住民の利用を制限する計画についての撤回を迫りました。
当時、学長の要請により、約1000人の市警がキャンパスに突入し、学生らを暴力で抑圧。100人以上が負傷、約700人が逮捕されました。しかし、学生らの抗議により、大学側は研究所との関係を断ち、体育館の計画も廃止させました。
1985年には、人種隔離政策(アパルトヘイト)が続く南アフリカで利益を得ていた企業への資金提供の停止を大学に求める運動が起こりました。約200人の学生が3週間にわたって学内の建物ハミルトン・ホールを封鎖。同ホールを、反アパルトヘイト闘争によって投獄されていたネルソン・マンデラ氏(後の南ア大統領)にちなみ、「マンデラ・ホール」と「改名」。大学側はのちに、南アフリカと関係のある企業への投資を停止させ、同様の措置は155の大学に広がりました。
■教訓生かす
今回のパレスチナ連帯運勣においても同様に、学生たちはハミルトン・ホールを占拠。イスラエルの侵攻によりガザで殺害されたパレスチナ人の6歳の女児の名前をとり、「ヒンドのホール」と書かれた横断幕をたれ下げました。
同大学では、1968年のベトナム反戦運動についての授業が設けられており、授業を行うグリディー教授は、今回の抗議キャンプでも同様の授業を行いました。抗議に参加するある学生は「過去の運動の教訓を生かしたい」とメディアに話しました。
ベトナム反戦運動では、学生らはハミルトン・ホールはじめとする複数の建物を占拠して、学部長代理を人質にとるといった戦略をとりました。一方で、パレスチナ連帯の学生らは、授業は行われていないハミルトン・ホールを占拠しただけでした。大学当局も許可を必要とするものの、同建物を抗議運動で使用することを認めています。
平和的な運動にもかかわらず、これまでに2000人以上が逮捕されましだ。警察を投入した大学当局の決定には、学内からも批判の声が上がっています。
コロンビア大の傘下にあるバーナード・カレッジ(ニューヨーク市)の教授会は4月30日、ローゼンベリー学長に対し不信任決議を出しました。同校での学長に対する不信任決議は、1889年の創立以来初めて。コロンビア大がパレスチナ連帯行動参加者を停学処分としたことは、学問の自由や表現の自由の侵害にあたるなどとして、教授会が投票の実施を決めていました。
■変化起こす
学生の抗議が変化を生む大学も生まれています。北東部口ードアイランド州にあるブラウン大学は、イスラエルを支援する企業との関係断絶の是非を問う投票の実施を決めました。しかし、学生たちは大学が要求に応えるまで闘いをやめないと強調しています。
ワシントンのGWUで抗議を続けるアナンタナンさんは、「米国の学生として、私の税金や学費がジェノサイド(集団殺曹)に流れていることに落胆する」と話します。「私にとって抗議することは選択でなく義務です。パレスチナの自由のために闘い、歴史的な変化を起こせるチャンスだと信じています」と意気込みました。
イスラエル支援やめよ 学生の闘い続く
しんぶん赤旗 2024年5月11日
米ジョージワシントン大
警察がキャンプ撤去 民主党進歩派議員が批判
【ワシントン=石黒みずほ】米首都ワシントンにあるジョージ・ワシントン大学(GWU)で8日、パレスチナ自治区ガザを侵攻するイスラエルに抗議する学生が設置したキャンプを警官隊が強制的に撤去しました。米各地の大学で広がる抗議キャンプで逮捕された人は2100人を超えており、民主党進歩派議員が批判の声を上げています。
米メディアによると、警察は同日午前3時ごろにGWUのキャンパスに侵入。キャンプ撤去の要請に従わなかったとして、抵抗する学生らに対し催涙スプレーを使用し、学生ら33人を逮捕しました。
GWUの学生は4月25日に抗議キャンプを開始。大学に対し、イスラエルに武器などを提供する企業との関係を断つことや、資金を提供する企業の公開などを求めていました。
GWUの学生らは8日、議会議事堂前で記者会見しました。民主党進歩派のコリ・ブッシュ、ラシダ・夕リーブ両下院議員も参加し、学生らに連帯しました。
ブッシュ氏は、抗議キャンプが全米に拡大しているのは「(議会や大学が)ガザで起こっているジェノサイド(集団殺害)を止めようとしないからだ。彼らは脅しによって、平和と正義を求める大多数の声を消そうとしている」と非難。学生たちは「歴史の正しい側にいる」と呼びかけました。
GWUの大学院生でパレスチナ人のモアタズ・サリムさんは、警察の投入が唯一の選択肢だったと主張した大学当局を批判。「大学や警察による抑圧は、真の正義と自由の未来に対する私たちの希望をより燃え上がらせるだけだ」と強調し、大学が要求に応えるまで闘い続ける姿勢を示しました。
GWUの学生たちは9日にも集会を開催。大学事務局が入る建物の前で、「(大学が投資しているイスラエル関係)企業の公開と投資の撤退を。私たちは止まらない」と声を上げました。
アイルランドの大学
投資引き揚げで合意
学生によるガザ連帯キャンプが続いていたアイルランドの名門大学トリニティ・カレッジ・ダプリンで8日、大学当局が学生の要求を受け入れて、占領地で活動するイスラエル企業への投資を引き揚げることで同意しました。学生も 「部分的勝利」として抗議キャンプを終結させました。
同大学生自治会のラズロ・モルナルフィ委員長は、「学生と職員の草の根の力の証明」だと語りました。
同大学のキャンパスでは3日、主要な広場の一つに学生らがテントを張り、大学図書館の入り口を積み上げたベンチで封鎖しました。同図書館には、8世紀の聖書の装飾写本「ケルズの書」が所蔵されており、ダプリンを訪れる観光客の多くの見学先となっています。
大学当局と学生とは繰り返し話し合いを継続してきました。当初大学当局は、平和的な抗議の権利を認めつつ、大学のルールを守るべきだ、と主張。しかし話し合いを通じて、学生の抗議キャンプの動機を「全面的に理解」し、「ガザで起きている事態への恐怖において学生と連帯する」と態度を変えました。
また国際司法裁判所がイスラエルに対してジェノサイド(集団殺害)の挑発を予防、処罰するあらゆる措置を取るよう命じたことを「支持する」と明言。イスラエル占領地に投資しているイスラエル企業への投資の完全引き揚げを約束するとともに、他のイスラエル企業からも投資引き揚げに向け努力すると述べました。
またイスラエルとの学術交流のあり方を検討する夕スクフォースを立ち上げ、学生や職員の代表も参加して、大学の正規の機関に勧告を行うことになりました。
学生自治会の発表では、大学は抗議キャンプを内部問題と位置づけ、警官隊の導入や法的措置に訴えないとの姿勢をとりました。このため欧州の各地の大学で起きたような警官隊によるキャンプの強制撤去や学生の逮捕などは行われませんでした。
ガザ休戦合意ならず
しんぶん赤旗 2024年5月11日
【カイロ=時事」パレスチナ自治区ガザで交戦するイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止と人質解放を巡る交渉は、双方の代表団が9日、間接的に交渉していたエジプトの首都カイロを離れ、合意に至ることなく終了しました。エジプトのメディアが報じました。
米国はイスラエルに自制を求めていますが、同国のネタニヤフ首相は「単独でも戦う」と述べ、ガザ最南部ラファヘの地上作戦を強行する構えを示しています。
間接交渉では、戦闘終結を求めるハマスと、一時的な戦闘休止を主張するイスラエルの溝が埋まらなかったとみられます。イスラエルはハマスが「受け入れた」と表明した休職業に対する反双意見を仲介国のエジプトなどに提出。カイロでの交渉終了後も、仲介国は妥結に向けて調整を続けています。
武器供与の姿勢 米政権変更なし
バイデン来大統領はイスラエルがパレスチナのガザ地区南部ラファに本格的な軍事侵攻を実施するなら武器供与を停止すると8日に発言しましたが、米政権としては数十億ドル相当の武器をイスラエルに供与し続ける姿勢を変えていません。ロイター通信が9日に伝えています。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、記者団に「バイデン氏はイスラエルが必要とするものすべてを提供し続ける」と強調しました。
共和党のジム・リッシュ上院議員は9日、記者団に対し、無誘導爆弾を誘導爆弾に変える装置、戦車用の砲弾、迫撃砲、武装車両などを合む広範な軍装備品が引き続き米国からイズラエルに提供される見込みだと明らかにしました。
オースティン米国防長官は8日、バイデン氏の発言の直前に議会で、一部の武器の提供については見直しするものの「イスラエルが確実に自衛手段を持てるよう必要なことに取り組み続ける」と述べていました。
ラファ爆撃 避難11万人
しんぶん赤旗 2024年5月11日
イラエル軍は9日、パレスチナナ占領地のガザ南部ラファに対して激しい攻撃を行い、国連当局者は、ラファの住民11万人がラファを離れて避難したと述べました。病院への爆撃を恐れ、患者や医療従事者も避難を始めており、医療崩壊がさらに広がる深刻な事態となっています。
ロイター通信によると、イスラエル軍はラファ東部に戦車を集結させており、それに対しイスラム組織ハマスなどが対戦車砲や迫撃弾を発射。カタールのテレビ局アルジャジーラによると、イスラエル車は戦闘機や攻撃ヘリで40の標的を「破壊」したと発表しました。
ラファの住民や医療従事者がロイター通信に語ったところでは、ラファ東部へのイスラエル軍の攻撃でモスクの尖塔(せんとう)が破壊され、3人が死亡しました。別の地区への空爆では少なくとも12人が死亡しました。
ガザとエジプトとをつなぐ唯ーのルートであるラファ検問所をイスラエル軍が占領して以来、燃料や食料、医薬品などの搬入が完全に停止しています。避難民の集中する中部デイルバラでは水などの不足が深刻化しています。
国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は9日、X(旧ツイッター)に「3日続けて、何も誰もガザを出入りできない。検問所の閉鎖は燃料がないことを意味する。トラックも、発電所も動かず、水も、電気も、人や物の移動手段もないということだ」と悲痛な告発を投稿。「ガザの民間人は飢えさせられ、殺されているが、私たちは彼らを助けることを妨害されている。それが今日のガザだ」と述べました。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。