スイス・ダボスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加した安倍晋三首相が、外国のメディアと懇談した際に、現在の日中関係は第1次世界大戦前の英独関係に似ていると発言したことが、大きな驚きを持って受け止められてBBCなどを中心に世界中で報じられました。
日中関係の悪化は東アジアにおける最も懸念されている問題の一つとして各国から注目されています。
菅官房長官は「日中戦争の可能性を指摘したものではなく、アジア地域の平和と繁栄の重要性を説明したもの」と釈明しましたが、現実にFinancial Timesは日中の戦争について考えを聞かれた安倍首相が、「興味深いことに、彼はそのような比較が問題外だとは言わなかった」と驚きをもって伝え、別の外国人記者も「安倍首相の発言が最も印象に残っており、それは若干の恐怖でもあった」と述べているということです。
第1次世界大戦は、1914年6月、オーストリアの皇太子夫妻が銃撃(死亡)されたサラエボ事件を契機にオーストリアがセルビアに宣戦布告をすると、独・伊・オーストリア三国同盟を結んでいたドイツもロシアとフランスに宣戦布告したのに対して、英露協商、英仏協商を結んでいたイギリスがドイツに宣戦布告したためにヨーロッパ中を戦場として始まりましたが、その背景にはイギリスと海上覇権を巡って建艦競争を繰り広げたドイツとの20年来の対立があり、その対立がドイツには独・伊・オーストリア三国同盟を、イギリスには英露協商、英仏協商を結ばせていました。
首相の回答は当然事前に準備された筈ですが、結果的に外国の記者を納得させるどころか却って疑惑を招くことになりました。この結果が首相の意図したものでなかったとすれば、それはそのまま「空気の読めない人」ということを示すものです。
安倍首相が日中の尖閣諸島問題を利用して改憲と軍事国家への傾斜を志向していることはこれまで内外から指摘されています。首相の本心は日中紛争を勃発させたいのではないかと推測する向きもあります。
なぜ外国記者団との懇親のときに、「日中が武力衝突に発展する可能性などない」と、明確に否定しなかったのでしょうか。
外人記者の受け止めは、「隠すほどに本心が顕れる」ということかも知れません。
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首相発言に海外から批判、日中を“英独関係に例示”
TBSニュース 2014年1月23日
「現在の日中関係は第1次世界大戦前のイギリスとドイツの関係に似ている」。スイスを訪問中の安倍総理がこんな発言をしたと各国のメディアが批判的に報じています。イギリスとドイツは激しく敵対し世界を巻き込む大戦に発展したことから不穏当な発言と受け取られたようです。
イギリスのBBCなどのメディアは、安倍総理が22日、ダボス会議に参加している海外のメディア関係者との懇談で尖閣諸島をめぐる日本と中国の軍事的衝突の危険性について聞かれ、“現在の日中関係は第1次世界大戦前のイギリスとドイツの関係に似ている”という趣旨の発言をしたと報道しました。そのうえで安倍総理は、日中の偶発的な衝突を回避するために防衛当局間の連絡体制が必要と強調したということです。
「第1次大戦のようなことにしちゃならないという意味で今、こう言っているわけですよね。ですから、なぜそんなことにとられたのか全く分からない」(菅義偉 官房長官)
菅官房長官は会見で、安倍総理の発言について「イギリスとドイツは大きな経済関係があったにもかかわらず第1次世界大戦が起きた。そういうことは起こしてはならない」ということであり、「日中に問題があるときは相互のコミュニケーションを緊密にすることが重要だ」と述べたと説明しました。