2014年1月7日火曜日

首相,憲法解釈変更へ論議を加速 「靖国参拝」は理解されると強調

 安倍首相は伊勢市での記者会見で、またもや集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更や憲法改正の議論を加速させるべきだとの認識を表明しました。
 
 これは言うまでもなく憲法が首相に課している憲法擁護義務の認識を完全に欠いたものであって、問題は彼が多分 終世、少なくとも在任中はその思いに到達することがないということです。
 
 そして靖国神社参拝に中韓両国が反発していることには、真意を説明すれば理解得られるとの考えを強調したということです。
 驚くべき認識であり、認識レベルの低さです。
 同志社大教授の浜矩子氏はそれを「幼児的感覚」と評して、そんな感覚で政治が執り行われていいのか、政策が形成されていいのか、と述べています。(12月29日「時代を読む」)
 
 インド外相も安倍首相の靖国参拝を見かねて、公明党の山口代表に「日本は歴史の学習を」と述べました。
 インドは太平洋戦争中に日本がインドに侵攻したことで、100年近くにわたった過酷なイギリス植民地時代に終止符を打てたことを深く多として、戦後の東京裁判でも、パール判事が日本擁護の主張をしたほどに親日的な国でした。
 
 また米国防省は、4日夜小野寺防衛相ヘーゲル国防長官と電話協議で、ヘーゲル長官が近隣諸国との関係改善を求めたことを明らかにしました。
 
 これは、5日朝のNHKニュースで靖国参拝の説明にヘーゲル長官感謝した伝えたり、同じくTBSニュースが「靖国参拝の問題について安倍首相の真意を説明したのに対しヘーゲル長官はコメントしなかったと報じたことに驚いた米国防省が、日本の報道の不正をたしなめたものといわれています。
 それにしてもNHKがそんな風に安倍首相を擁護するとは、一体何処まで腐っているのでしょうか。
 
 以下に、安倍首相の記者会見、インド外相の発言、浜矩子の論文、米国防省の発表に関する記事を紹介します。
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首相、憲法解釈変更へ論議加速 「靖国参拝理解される」
東京新聞 2014年1月6日
 安倍晋三首相は6日、三重県伊勢市で年頭記者会見に臨み、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更や憲法改正の議論を加速させるべきだとの認識を表明した。昨年末の靖国神社参拝に中韓両国が反発していることには、真意を説明すれば理解は得られるとの考えを強調。4月の消費税増税に理解を求めるとともに、景気循環を好転させて国民の収入増実現を目指す意欲を語った。
 首相は憲法改正に関し「時代の変化を捉えて、憲法解釈の見直しや憲法改正について国民的な議論をさらに深めるべきだ」と指摘した。
 
 
インド外相「日本は歴史学習を」 靖国参拝で公明代表に
東京新聞 2014年1月6日 
【ニューデリー共同】インド訪問中の公明党の山口那津男代表は6日、クルシード外相とニューデリーで会談した。クルシード氏は安倍晋三首相の靖国神社参拝に絡み「日本は歴史的にいろいろ経験し、振り返って正しくないこともある。学習して先に進むのがベストだ」と述べ、中国や韓国の反発を踏まえた慎重な対応を求めた。
 
 山口氏は「もっと慎重に、いろいろな影響を最小限にすることが政治家には必要だ」と重ねて参拝に苦言を呈した。
 
 
<時代を読む>意図無ければ罪も無しか 
浜 矩子(同志社大教授) 東京新聞 12月29日
 「もとより、中国あるいは韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」。十二月二十六日、靖国神社参拝後に安倍晋三首相がこういった。
 この発言を含む首相談話の英語版が、首相官邸のホームページに掲載されている。上記の英語バージョンは次のとおりだ。
 It is not my intention at all to hurt the feelings of the Chinese and Korean people.
 日本語の「考えは毛頭ない」に相当する部分が It is not my intention at all の個所だ。 intention は「意志」あるいは「意図」の意味だ。
 
 「そんな意志は全くございません」「そのようなことは、全然意図しておりません」。こういう言い方を聞くと、たちどころに歯が浮いてかなわない。実に誠意がない。こんなふうにうそぶく人々は、およそ、何をたくらんでいるか分からない。実に腹立たしい。
 意図してさえいなければ、どんな結果を招いていてもいいというのか。許されるというのか。こちらに傷つける意図がなければ、相手は決して傷つかないとでも思うのか。あるいは、こっちが意図していないなら、傷つく方が悪いというのか。勝手に傷つくなら、致し方ない。知ったことか。そういうことなのか。
 
 この種の発言で突っ走って行く人は、やがて、つぎのようにいうようになる。「そんなつもりじゃなかったんです」。これが出た時は、もう手遅れだ。取り返しのつかないところまで、相手を傷つけてしまっているのである。
 意図が無ければ罪はない。意図が良ければ、悪くない。傷つける意図無き者は、決して相手を傷つけない。これが大人のいうことか。
 人の足を目いっぱい踏みつけても、意図がなければ、相手は痛がらないのか。相手がいくら痛がっていても、「だって知らなかったんだもん」と舌を出してそっぽを向くのか。その気が無ければ、人を車でひき殺しても、相手は死なないとでも言うのか。こちらにその気が無ければ、相手はひき殺されても仕方がないのか。
 
 かくも幼児的感覚で、政治が執り行われていいのか。政策が形成されていいのか。
 子どもと大人の最大の違いは、どこにあると考えるか。答えは明らかだ。それは、人の痛みが分かるか否かにある。新生児には、人の痛みが全く分からない。そこから出発して、人間は次第に人の思いに心を配るようになる。そして願わくば、人の痛みを自分の痛みとして受け止めることができるようになる。そのような魂の力こそ、大人の力だ。
 (後 略)
 
米「近隣国と関係改善を」 日米防衛相が電話協議
朝日新聞 2014年1月6日
 安倍晋三首相の靖国神社参拝が日米外交にも波紋を広げている。小野寺五典防衛相は4日夜、米国のヘーゲル国防長官と電話協議。年末に急きょ中止になっていた協議が年明けになって実現したかたちだが、米国防総省はヘーゲル長官が近隣諸国との関係改善を求めたことを明らかにした。
 電話協議で、防衛省は小野寺氏が「今後とも不戦を誓う意味で参拝した」と首相参拝の「本意」を説明したと発表。一方、国防総省は「ヘーゲル長官は、日本が近隣国との関係改善のための一歩を踏み出し、地域の平和と安定のため協力を促進する重要性を強調した」と発表した。
 電話協議の主な議題は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題だったが、安倍首相の靖国神社参拝によって日米韓の安全保障面での協力が停滞することや、日中の緊張がさらに高まることを懸念する立場から、国防長官としてあえて言及したとみられる。
 
日韓首脳会談「十分な準備必要」 朴大統領 初の年頭会見
 東京新聞 2014年1月6日
【ソウル=中村清】韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は六日、昨年二月の就任後初となる年頭記者会見を大統領府で開き、安倍晋三首相との日韓首脳会談に関し「首脳会談をしないと言ったことはないが、両国関係の発展のためには事前の十分な準備が必要だ」と述べ、当面の間は開催が難しいとの認識をあらためて示した。
 
 
 朴氏は「政権発足時から韓日関係の発展を願い(日本政府が)正しい歴史認識に関する誠意ある姿勢をみせるよう強調してきた」と説明。「韓日関係は村山談話と河野談話を基礎としてきたが、最近、これを否定し、両国関係を壊す言動が繰り返されており残念だ」と語り、安倍首相による昨年十二月の靖国神社参拝を間接的に批判した。
 (後 略)