2014年1月22日水曜日

政府は辺野古への基地移転強行の構え

  沖縄県名護市で辺野古移転に反対する稲嶺市長が再選されたことを、20日の新聞の多くは一面トップで報じました。沖縄タイムスはそうした反響に驚いて、翌21日に「名護市長選:本土紙、関心高く1面トップ」とする記事を出しました。
 
 また各紙は社説でも取り上げて、その殆どが「地元の意思を尊重し、普天間基地の辺野古移転は見直すべし」と論じました。
 
 社説のタイトルと新聞名の一例は下記のとおりです。
 
 (21日)
市長選政府反応 民意無視は許されない     琉球新報  
名護市長選 辺野古移設は見直すべきだ      宮崎日日新聞  
名護市長選 移設強行は許されない           南日本新聞  
名護市長選 アメとムチは通用しない           高知新聞  
名護市長選 移設反対の民意は重い          徳島新聞  
名護市長選 混迷にどう向き合うのか           山陽新聞  
名護市長選に民意 辺野古移設押しつけるな   福井新聞 
名護市長選 移設反対 民意に応えよ         京都新聞  
名護市長選 尊重すべき市民の意思          岐阜新聞  
名護市長選「アメ」で民意は動かない           新潟日報  
名護市長選 政府は誠意ある対話を          秋田魁新報  
自治体選挙と国政「地方は従え」では困る      岩手日報 
 
(20日)
稲嶺氏再選 誇り高い歴史的審判 日米は辺野古を断念せよ 琉球新報  
稲嶺氏が再選 敗れたのは国と知事だ         沖縄タイムス  
名護市長選 この民意は無視できない          西日本新聞  
稲嶺市長再選 国は名護市の選択を尊重せよ   愛媛新聞  
名護市長選 辺野古は見直すしかない          神戸新聞  
名護市長選 辺野古移設は再考せよ           朝日新聞  
名護市長選 移設反対の民意生かせ           毎日新聞  
名護市長選「辺野古」 強行許されぬ            東京新聞  
名護市長選 移設反対の民意は重い           信濃毎日新聞  
名護市長選 辺野古案を厳しく拒絶             北海道新聞  
 
 安倍晋三首相は21日、官邸で記者団に「地元の理解をいただきながら、誠意を持って前に進めていきたい」と強調しましたが、何んと同じ日に、沖縄防衛局普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け代替施設の調査や設計の業者を募る入札を公告し、作業に着手しました。
 
 更に産経新聞によれば、防衛省の審議官1人を基地移転に反対する稲嶺町長への対処決める特命担当に指名し市長権限の行使によるさまざまな抵抗を想定し、是正措置や行政代執行などを含む必要な措置を24日までにまとさせるということです
 要するに首相が記者団に語った真意は、「地元の理解をいただきながら、誠意を持って」ではなく、ひたすら「前に進めていきたい」ということに尽きていたのでした。
 
 その上、前回の選挙で稲嶺氏が市長になってから止まっている 基地受け入れ関連の交付金も再開する気配はなく、選挙時に石破茂幹事長がわざわざ出張ってきて5百億円の振興基金創設すると約束した話も当然なかったことになります(東京新聞)。 
 
 これほどまでに基地移転反対の市長に敵対的で、市長選で示された民意への配慮などは全くせずに、ひたすら政権側の総力を挙げて、力任せに基地の移転を実行しようという首相というのも珍しいのではないでしょうか。そのやり方は暴力にも等しいものです。
 
 稲嶺市長は「選挙で示された名護市民の民意を無視して手続きを進めるのは民主主義社会としてあり得ない。あまりにひどい」と述べ、琉球新報は社説で「世界中を捜しても民意をこれほど露骨に踏みにじる民主主義国家は存在しないのではないか」と述べています。
 
 安倍首相は「では普天間基地を固定するということなのか」などという「誤った二律背反」を設定するのではなく、あらためて「民主主義」と「国家主義」の違いについて考え直してみる必要があります。
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辺野古 入札公告 民主国家の自殺行為だ  
 琉球新報 2014年1月22日
 世界中を捜しても民意をこれほど露骨に踏みにじる「民主主義国家」は存在しないのではないか。
 沖縄防衛局が21日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた代替施設設計などの受注業者を募る入札を公告した。
 19日の名護市長選で辺野古移設阻止を掲げた稲嶺進氏の再選から、わずか2日後だ。政府に求められるのは移設作業の加速ではなく、選挙結果を尊重し、県内移設を撤回することだ。
  稲嶺市長は「選挙で示された名護市民の民意を無視して手続きを進めるのは民主主義社会としてあり得ない。あまりにひどい」と政府を批判した。まさに正論だ。
  しかし、小野寺五典防衛相は「埋め立て承認を得られているので、関係法令にしたがって進めていく」と述べた。民主的な選挙結果を歯牙にもかけない態度は権力の暴走以外の何物でもない。
  ただ、移設作業には名護市長の許可や協議が必要な手続きもある。作業ヤード設置のための漁港使用、キャンプ・シュワブ内への水道敷設、資材搬入のための道路使用、飛行場施設への燃料タンク設置、建設で影響を受けた場合の河川の水路切り替えなどだ。
  稲嶺市長は「建設阻止へ権限を行使する」と述べており、市長権限の手続きについては、国から申請されても許可しない方針を示している。それでも国が強引に作業を進めるというのなら、民主国家としての自殺行為だ。
  名護市は、過去に基地建設に関する国の調査申請を不許可にしたことがある。こうしたことから、石破茂自民党幹事長は「市長の権限はきちんと法に従った形であるべきだ」と述べ、市長方針をけん制する。自治体の判断への介入を予告するような圧力は言語道断だ。
  今回の入札公告について、地元では条件付きで移設を容認する住民からも疑問の声が挙がる。辺野古有志会代替施設安全協議会の許田正武代表理事は「移設を百パーセント、ノーと言っている稲嶺進市長への当てつけだ」と批判する。政府は入札公告を取り消すべきだ。直ちに米政府に対し、辺野古移設の断念と普天間固定化の回避策について協議を申し入れるのが筋だ。
  沖縄は植民地扱いを拒否する。政府は沖縄の非暴力の異議申し立てを力で屈服させるつもりなら民主主義を語る資格を失うと自覚すべきだ。
 
辺野古移設 政府手のひら返し 入札公告強行「アメ」やめ「ムチ」
東京新聞 2014年1月22日 
 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設問題で、政府は二十一日、代替施設の調査や設計の業者を募る入札を公告し、作業に着手した。その一方で、名護市向けの五百億円の基金創設は立ち消えになりそうで、基地受け入れ関連の交付金は今後も停止を続ける。「アメ」をやめ「ムチ」ばかりの高圧的な政府の姿勢が早くもあらわになった。 (後藤孝好)
 
 沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が昨年末、辺野古沿岸部の埋め立てを承認して以降、移設に関する具体的な手続きは今回の入札公告が初めて。名護市長選で反対の民意が示された直後で、地元の反発がさらに高まるのは確実だが、政府は移設計画を強行する。
 沖縄防衛局が公告したのは、埋め立てや護岸の設計と、サンゴ類の分布・保全の調査、絶滅の恐れが高いジュゴンの監視装置の調査の三件。沿岸部のボーリング調査なども、入札に向けた作業を急ぐ。
 政府は三月中に業者と契約を結んで、作業を開始。遅くとも十一月までに設計と調査を終え、二〇一五年早々に埋め立てと滑走路の工事を始める計画だ。
 移設に反対する名護市の稲嶺進市長は、入札公告について「基地建設はノーという意思表示が出たばかりの時に、全く無視する形で進められた。民意をどのように受け止めているのか。とても信じられない」と批判。市長の許認可権で、工事を止める考えを繰り返し示している。
 これに対し、政府は自民党の石破茂幹事長が選挙中に約束した五百億円の振興基金創設を空手形に終わらせようとしている。沖縄振興策を担う内閣府の担当者は「全く検討していない」と明言する。
 稲嶺氏が市長になってから止まっている基地受け入れ関連の交付金も、再開する気配はない。
 安倍晋三首相は二十一日、官邸で記者団に「地元の理解をいただきながら、誠意を持って前に進めていきたい」と強調したが、政府の対応に理解を得ようという姿勢は感じられない。
 
辺野古移設、名護市長の妨害に備え特命担当 
政府、代執行、訴訟など対処方針
産経新聞 2014年1月22日
 政府は21日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古への移設をめぐり、名護市の稲嶺進市長が辺野古での代替施設の工事を阻止すると主張していることを受け、防衛省の審議官1人を対処方針を策定する特命担当に指名した。市長権限の行使によるさまざまな妨害行為を想定し、是正措置や行政代執行などを含む必要な措置を、通常国会が召集される24日までにまとめる。
 
 沖縄防衛局は21日、代替施設の設計などの受注業者を募る入札を公告した。工事に向けた具体的な手続きは初めて。3月末までに業者と契約し、ボーリング調査や設計に1年かけ、平成27年春に埋め立て工事に着手する。
 入札が公告されたのは(1)名護市の米軍キャンプ・シュワブ沿岸域でのサンゴの分布状況や保全の調査(2)同沿岸域でのジュゴンの監視装置に関する調査(3)施設設計-の3件。
 入札予定日はいずれも3月24日で、防衛省は業者が決まれば即座に調査や設計に着手させる。
 
 安倍晋三首相は21日、官邸で記者団に「地元の理解をいただきながら誠意を持って前に進めていく」と述べ、辺野古移設を計画通りに進める考えを強調。小野寺五典防衛相も記者会見で「関係法令に従い着実に進めていきたい」と語った。
 沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事が昨年12月、辺野古の埋め立てを承認し、代替施設建設に向けた主要な手続きは完了している。
 宜野湾市の佐喜真淳(さきま・あつし)市長は21日、仲井真氏と県庁で会談し、普天間の危険性除去に向けて5年以内の運用停止を政府に求めるよう協力を求めた。
 ただ、今月19日の名護市長選で再選された稲嶺氏は埋め立てを前提とする政府との協議に応じず、市長権限で工事を阻止する姿勢を示している。
 代替施設建設では、米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用に欠かせない燃料タンクの設置は消防法に基づく市長の許可が必要。また、施設に上水道を整備するには市長の承認を得なければならない。
 このため、杉田和博官房副長官が対処方針を策定するよう防衛省に指示。国会審議で野党側が稲嶺氏との対立や政府の対応をめぐり追及してくることは必至で、対処方針は国会開会までにまとめる。
 防衛省は是正措置や代執行のほか、訴訟や行政指導なども検討しており、稲嶺氏の妨害行為ごとに最も効果的な対策を準備しておく構えだ。