東電の新会長に予定されている數土氏が15日の記者会見で、電気料金を決める「総括原価方式」の問題性に言及しました。
日本の電気料金が世界一高いレベルに自動的に設定され、電力会社の高収益が保障されるこのシステムについて、電力会社自らが言及するのは極めて珍しいことです。
公共の電気、ガス、水道などの料金は「総括原価方式」といわれるシステムで決められ、電気料金は電気事業法第19条でこのシステムが規定されています。
「総括原価方式」は、電気料金として、電力会社の人件費、燃料費、修繕費、税務会計上の費用、廃棄物処理費、研究開発費等々の一切を乗せる他に、さらに発電所などの固定資産、建設中の設備資産、燃料在庫資産などの「レートベース」の合計額の3%が電気料金に上乗せできるとするものです。
要するにすべての原価を電気料金として回収できるので、電力会社には燃料を出来るだけ安く買ったり、発電設備等を出来るだけ安く作ろうという動機付け(インセンティブ)が働かなくなります。むしろそれらはより高い方が「レートベース」を押し上げるので、利益が大きくなるという関係になっています。
日本の電力会社の買う重油やLNG(液化天然ガス)の価格が、アメリカの数倍などと世界一高い理由の根源はここにありますし、さらにいまもなお東電が発注する工事(設備)の金額が相場の2~5倍というような高額になっている※理由も同じです。
「レートベース」には特定固定資産、建設中の資産、核燃料資産、特定投資(研究開発費など)、運転資本などが含まれますが、東電の場合はそれが合計9兆4,000億円にも上るので、その3%の3,000億円弱が企業の「利益」として毎年無条件に保障されます。
その莫大な「利益」こそが電力会社の権力の源泉であり、そのままメディアを東電にひれ伏せさせ、政界には原発推進議連を生ませる源泉にもなっています。
16日のブログ「みんな楽しくHAPPYがいい」に、東電數土新会長(予定)が記者会見で「総括原価方式」にふれた部分の書き起こしが掲載されましたので紹介します。
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東電數土新会長 「総括原価方式があるために日本の電力料金は韓国の2倍から3倍もする、アメリカの2倍もする」
みんな楽しくHAPPYがいい 2014年1月16日
質問(田中龍作:フリージャーナリスト)
ビジネスモデルの大胆な転換、なかでも総括原価方式の大胆な転換とおっしゃっていたが、私もそれには賛同します。
ところが総括原価方式、これこそが電力会社の力の源泉で、この力が政界を支配してきたんです。だから福島原発事故の処理でどんなに赤字を垂れ流しても電力料金に転嫁でき、税金をつぎ込む事が出来た訳で、また、政治家もこのお金と組織で選挙をさせてもらって、両方潤っている訳ですよ。電力会社も政界も。
だからここにメスを入れるなんて言ったら、それはいことですが、こんな書生じみたことを言っていたら遠からず新会長は…はしごを外されてみじめな辞め方をしなくちゃならないと思います。それについていかがお考えですか?
數土新会長(予定)
もうわたくしは惨めな気持ちになっております。但し、やらなければならないという覚悟は決めたと。おっしゃる通り総括原価方式は大変な問題ですけれども、しかしそれをやってきた結果、今、韓国の電気料金の2倍から3倍。アメリカの電力料金の2倍。これは政治家はもちろん、企業経営者・財界・国民が皆その現実をちゃんと理解しないとダメだと。
私は、現内閣はそれを十分知っておりまして、私に対する要望も趣旨も「総括原価方式に関わるな、地域独占に関わるな」と明言しておられます。
これは本当に我々、あなたも、もっと真剣に質問してもらいたかったと真剣さはよく伝わってきます。だけども今の日本の、今日もいろいろ報道がありました。おっしゃる通り日本の貿易赤字、これは大変なもの。経常収支も赤字になっております。
これをこのまま放っておいていいのかという危機感を、それを再編するのには東京電力が非常に大きな影響力を持っている。取締役、全員がそういう事を認識しております。
そう思い、今答えになるかどうかわかりませんけども、ええ。
田中
いやいや答えになっていません。メスを入れるんですか入れないんですか?
數土会長
入れます。メスじゃなくて一つ一つ丁寧に説明して、着実にやっていくと。
田中
いや、それは身内からも政界からも猛反対を食らいますよ。
數土会長
ええ、あの―、ありがとうございます。
東京電力は三つのカンパニーに分かれておりまして、15ある火力発電所の1キロワットアワー当たりの電力製造単価は、開示はされておりませんでしたけれども、社内では明記されておりまして、15の火力発電所の単価、原価、だけでなく、合計90ユニット(基)の電力単価の1位から90位まで全部出ていると思います。それを開示していくと。そういう事をやろうと思っております。
田中
開示して下さるんですか?
數土会長
これは企業秘密ですから、企業の中でそれを開示して、社外取締役にも開示される、そういう事だろうと思います。