2014年1月30日木曜日

NHKが「都知事選中は」と脱原発のコメントを拒否+

 NHKラジオ第一放送で30日朝に放送する番組で、出演予定の東洋大中北教授「経済学の視点からリスクをゼロにできるのは原発を止めること」などとコメントする予定だったことに対して、NHK側が「東京都知事選の最中は、絶対にやめてほしい」と要求したことが分かりました。
 
 中北教授29日にNHKに提出した予定原稿では、原発の安全確保の対策や保険の費用など原発再稼働コスト世界的上昇し、損害巨額になること、また事前に積み上げるべき廃炉費用が電力会社の貸借対照表に計上されていないこと」を指摘し、「廃炉費用が将来の国民が負担する見えない大きな費用になる」として、「即時脱原発か 穏やかに原発依存を減らしていくのか」との費用の選択になると総括しているということです
 
 教授はNHKの要求を「趣旨を変えることはできない」と拒否し、「特定の立場に立っていない内容だ。NHKの対応が誠実でなく、問題意識が感じられない」として、約20年間出演してきたNHKの「ビジネス展望」をこの日から降板しました。
 
 コメント予定の内容は極めて理論的なものであって、特定の立場に立ったものでもましてや特定の都知事選候補を応援するというものでもありません。それをNHKのディレクターが「絶対に止めて欲しい」というのは尋常ではありません。
 
 民放などでも出演者に対して、まだ告示もされていないうちから「都知事選が終わるまでは原発問題に触れないように」という指示が徹底されているということです。
 これらはすべて時の政権に対するマスディアの追従であり、ジャーナリズムの気概を持たない日本のメディアの情けないところです。
 
 それを国民の受信料で経営されている公共放送であるNHKまでが、というよりも先の特定秘密保護法案の審議過程の報道姿勢から明らかになったように、むしろNHKが率先して権力の意向を忖度して振舞っていることは大変に問題です。 
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NNHK、脱原発論に難色 「都知事選中はやめて」
東京新聞 2014年1月30日
 NHKラジオ第一放送で三十日朝に放送する番組で、中北徹 東洋大教授(62)が「経済学の視点からリスクをゼロにできるのは原発を止めること」などとコメントする予定だったことにNHK側が難色を示し、中北教授が出演を拒否したことが二十九日、分かった。NHK側は中北教授に「東京都知事選の最中は、原発問題はやめてほしい」と求めたという。
 この番組は平日午前五時から八時までの「ラジオあさいちばん」で、中北教授は「ビジネス展望」のコーナーでコメントする予定だった。
 
 中北教授の予定原稿はNHK側に二十九日午後に提出。原稿では「安全確保の対策や保険の費用など、原発再稼働コストの世界的上昇や損害が巨額になること、事前に積み上げるべき廃炉費用が、電力会社の貸借対照表に計上されていないこと」を指摘。「廃炉費用が将来の国民が負担する、見えない大きな費用になる可能性がある」として、「即時脱原発か 穏やかに原発依存を減らしていくのか」との費用の選択になると総括している。
 
 中北教授によると、NHKの担当ディレクターは「絶対にやめてほしい」と言い、中北教授は「趣旨を変えることはできない」などと拒否したという。
 中北教授は外務省を経て研究者となり、第一次安倍政権で「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の座長代理を務めた。NHKでは「ビジネス展望」だけでなく、二〇一二年三月二十一日の「視点・論点」(総合テレビ)で「電力料金 引き上げの前に改革を」と論じたこともある。
 中北教授は「特定の立場に立っていない内容だ。NHKの対応が誠実でなく、問題意識が感じられない」として、約二十年間出演してきた「ビジネス展望」をこの日から降板することを明らかにした。
 
◆詳細は答え控える
<NHK広報局の話> 中北さんに番組に出演していただけなかったのは事実です。詳細は番組制作の過程に関わることなのでお答えを控えます。
 
【解説】公平公正 裏切る行為
 中北徹東洋大教授のNHK降板問題で、中北教授はNHK側に「都知事選期間中は原発の話はやめてほしい」と迫られたという。再稼働を進める安倍晋三政権の意向をくんで放送内容を変えようとした可能性は否定できない。
 選挙期間中であっても、報道の自由は保障されている。中北教授は予定原稿で「現状では原発稼働がゼロでもアベノミクスが成果を上げている。原発ゼロでも経済成長が実現できることを実証した」「経済学の観点から、巨大事故が起きた際の損害額のリスクをゼロにできるのは、原発を止めることだ」と指摘した。
 
 NHK側が問題視した中北教授の原稿は、都知事選で特定の候補者を支援する内容でもないし、特定の立場を擁護してもいない。
 NHKの籾井(もみい)勝人新会長は就任会見で「国際放送で日本政府の意向を伝える」としている。原発再稼働を強く打ち出している安倍政権の意向を忖度(そんたく)し、中北教授のコメントは不適切だと判断したとも推測できる。
 原発政策の是非にかかわらず受信料を払って、政府広報ではない公平公正な報道や番組を期待している国民・視聴者の信頼を裏切る行為と言えるのではないか。 (中村信也)
 

NHKコーナー休止 ラジオ 脱原発の教授拒否番組
東京新聞 2014年1月30日
 NHKラジオ第一放送の番組で、中北徹東洋大教授(62)が原発の問題を話そうとしたところ、同局が「東京都知事選中は原発の話はやめてほしい」と難色を示したために番組を降板した問題で、同局は三十日、中北教授が出演予定だったコーナーを休んだ。
 このコーナーは、月~金曜の各日午前五時から放送される番組「ラジオあさいちばん」の中で、六時半台に設けられる「ビジネス展望」。
 三十日は男性アナウンサーがコーナー休止を告げ、コーナーと無関係の聴取者からの便りを読み上げた。休んだ理由は説明しなかった。三十一日以降は通常通り放送するという。
 「ビジネス展望」は、経済評論家の内橋克人氏や日本総合研究所理事長の寺島実郎氏らが交代で出演し、ニュースや話題を約十分で解説。中北教授は約二十年間にわたり出演していたという。
 NHK広報局は「都知事選では原発をめぐる問題が一つの争点になっており、選挙期間中はより公平性を期す必要がある。今回の場合、中北教授が出る翌日などに、別の視点を持つ方に出演してもらうことなども考えられたが、選挙期間中の出演者は既に決まっており、テーマの変更を求めた」としている。
 
◆言論封殺おかしい
 戸崎賢二・元NHKディレクターの話 選挙期間中は、特定の候補を推薦しない限り、争点となっている問題の論評を控える必要はない。放送が民主主義の発達に資するべきだという放送法の精神からすれば、この期間中こそ有権者の判断に役立つ意見や情報を豊かに伝える必要がある。原発は意見が対立している問題だが、多角的な視点は編成全体で実現すればよく、出演者の言論の自由を封殺する対応はおかしい。政権側の批判を恐れた疑いも捨てきれないのではないか。