2016年1月31日日曜日

31- 首相靖国参拝原告の差し止め請求棄却 大阪地裁 憲法判断せず

 安倍首相は第二次政権発足から年の1312、現職首相として公用車を使って靖国神社を参拝し、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で献花しました。
 それが政教分離を定めた憲法に反するとして戦没者遺族ら765人が国と安倍首相、靖国神社に将来の参拝差し止めと人当たり万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、28日大阪地裁であり、参拝の公私に関する区別や違憲かどうかの判断は示さずに請求を棄却しました。
 
 それは小泉純一郎元首相の参拝をめぐる06年の最高裁判決の判断手法をほぼ踏襲したもので、「神社に参拝する行為自体は他人の信仰や生活に干渉するものではなく、原告に法的利益の侵害があったとはいえない」というものでした。
 記者会見で福岡市の僧侶木村真昭さん(65)は「後退どころか、裁判所の存在理由を失わせるようなでたらめな判決だ」と批判しました。
 安倍首相の靖国参拝をめぐる訴訟は東京地裁でも起こされており、そちらはまだ判決に至っていません。
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首相靖国参拝憲法判断せず=原告の差し止め請求棄却
法的利益侵害認めず・大阪地裁
ウォールストリートジャーナル 2016 年 1 月 28 日
 安倍晋三首相が2013年12月に靖国神社を参拝したのは、政教分離を定めた憲法に違反し、平和的生存権の侵害だとして、全国の戦没者遺族ら765人が首相や国、靖国神社を相手に、将来の参拝差し止めと原告1人当たり1万円の慰謝料を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。佐藤哲治裁判長は「参拝による原告らの法的利益の侵害を認めることはできない」と述べ、請求を棄却した。違憲性の判断はせず、参拝が首相の職務行為か公私の区別にも言及しなかった。
 
 安倍首相の靖国参拝に関する訴訟は、東京、大阪両地裁に起こされ、判決は初めて。原告らは控訴する方針。
 
 佐藤裁判長は、首相の参拝について「特定の個人の信仰を妨げたりして圧迫、干渉するような性質のものではない」と指摘。内心の自由や信教の自由の侵害との原告の主張に関して、最高裁判決を踏襲し、「自己の心情や宗教上の感情が害されたとして不快の念を抱いたとしても、直ちに損害賠償を求めることはできない」と退けた。
 
 過去には小泉純一郎元首相の参拝で違憲判決が出ているが、佐藤裁判長は「社会情勢や国民の権利意識の変化で裁判所の判断が変わることもあり得る」とした。
 
 原告は首相の参拝について、憲法前文や9条で保障された「平和的生存権」の侵害と訴えたが、判決は「平和的生存権として保障すべき権利、自由が現時点で具体的権利性を帯びているか疑問」と退けた。
 安倍首相側は参拝は私的行為で、原告らの法的利益を侵害していないとして、請求棄却を求めていた。首相は第2次政権発足から1年となった13年12月26日、靖国神社を昇殿参拝した。「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳した。
 
 萩生田光一官房副長官は28日の記者会見で、判決について、「国の主張が認められたものと承知をしている」と述べた。首相が参拝に公用車を使用したことに関しては、「警備上の問題だとか、緊急対応の問題などを考えると、公用車以外の車で移動するということは想定できない」と話した。 [時事通信社]