2016年1月3日日曜日

「日本のメディアはますます悪化」 古賀茂明氏

 日刊ゲンダイが (直撃!2015年「アノ事件」は今) と銘打って、昨年報道ステーションを降板した古賀茂明氏のインタビュー記事を載せました。
 
 古賀氏は降板に当たって自分が一石を投じれば日本のメディアやコメンテーターが奮起するのではないかと期待したそうですが、メディア側の反応は思ったほどには現れず、むしろ海外メディアの方が反応してくれたということです。
 
 昨年、日本のメディアの「政権からの独立度」は世界で61番目という烙印を押されました。実際、日本のメディアはほとんど政権の批判はせずに、安倍政権の暴走に相俟つかのように沈黙の度合いを強め、まさに戦争前夜の様相を見せています。
 記事は、「気が付いてみたら戦争になっていた。そんなことになりかねません」と結んでいます 
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          (直撃!2015年「アノ事件」は今)
報ステ降板の古賀茂明氏 「日本のメディアはますます悪化」
日刊ゲンダイ 2015年12月31日
「流行語大賞逃しました」――。待ち合わせ場所に現れた古賀氏は、冒頭、そう言って笑わせた。
 2015年1月、報道ステーションの生放送で「I am not ABE」と掲げ、コメンテーターを事実上降板となった。その後、テレビ朝日から呼ばれることはないが、大阪の朝日放送で夕方のニュース番組のレギュラー(毎週火曜)は今も続けている。BS―TBSにも2度出演したという。ただ、安倍政権に対するテレビ局側の萎縮はさらに加速したと、危機感をあらわにした。
 
■ガンジーの「警告」通りになってしまった
 私があの時、「I am not ABE」を掲げたのには2つ理由があります。まず、「安倍さんがイスラム国と戦う」と言い、米国と一緒に世界中で戦争をするようなイメージをばらまいていたので「日本人は安倍さんとは違う」というメッセージを海外に発信しなきゃいけないと思ったこと。
 もうひとつは、安倍政権批判をする人がどんどんテレビから排除される状況になっていたので、私が一石を投じれば、それに勇気付けられてテレビ局が奮起したり、他のコメンテーターも頑張ってくれるのではないかと思った。
 しかし、ほとんど盛り上がりませんでしたね。むしろ海外メディアの方が反応してくれました。外国特派員協会から「報道の自由の友賞」というのをいただいたり、米紙ニューヨーク・タイムズから寄稿を頼まれたりしました。
 
 日本のメディアはというと、ほとんど政権批判できなくなっていて、ますます悪化しています。本来なら、真実を伝えないメディアからは、読者や視聴者が離反するから、歯止めがかかるはずなんです。ところが、あまりにも偏った情報が蔓延しているから、おかしなことを伝えられているということに読者や視聴者は気付けない。逆に批判している人の方がおかしいという空気になってくる。いまはそんな状況です。
 報ステ最後の出演で私はガンジーの言葉を出しました。
〈あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである〉
 圧力とか自粛に慣れて、知らないうちに自分が変わってしまい、本当に大きな問題が起きているのに気が付かない。この言葉は、そうならないで欲しいという警告だったのです。しかし、やっぱりこの1年で、その通りになってしまいました。
 
 このままだと本当に危ない。マスコミの機能不全は政権による国民の洗脳を可能とします。先日亡くなった作家の野坂昭如さんは「1日で平和国家になったのだから、その逆だって1日で起きる」と言っていました。あの言葉は重い。気が付いてみたら戦争になっていた。そんなことになりかねません