2016年1月16日土曜日

蓮池透氏が安倍首相の“逆ギレ”の国会答弁に反論!

 そもそも私は安倍さんを単に批判するために本を書いたのではない。膠着した拉致問題に向け政府がきちんと動いてほしい、それだけです
 
 12日の衆院予算委で、緒方林太郎議員(民主)が安倍首相に対して、蓮池透氏の告発本「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」の真偽を糺しました。
 その時の安倍首相は、例によってまともに答えることはせずに、ただ激高し、ブチ切れ、日刊ゲンダイのいう「幼児性」「反知性」「独善性」を地で行くもので、見るに堪えませんでした。
 「その本はまだ読んでいないがウソが書かれている。私の言うことが真実だ」と、つじつまの合わないことも口にしました。
 
 客観的に判断して、蓮池氏が覚悟をもって上梓した本にウソが書かれてある筈はありません。事実関係については法廷に立っても負けない自信があったからこそ、敢えて告発の書を出した筈です。
 
 国会の論戦を聞いた元ジャーナリストの上杉隆氏は、「もしもウソだというのであれば、安倍氏は(週刊誌を告訴したように)名誉棄損で訴えればいいじゃないか」と揶揄しました。
 天木直人氏は、「蓮池透さんは自分の書いたことにウソはひとつもないと明言している。蓮池透さんを国会に呼んで白黒つけるべきだ安倍首相は必ず蓮池さんに負ける」、とブログに書きました
 
 LITERAは13日と14日の2日間にわたって、蓮池透さんのインタビュー記事を掲載しました。それを読むと、何とかして拉致問題を解決に向けて進めてもらうためにはああするしかなかったという心情が伝わってきて、ただ空虚な多弁を弄するだけで拉致問題への取り組みの覚悟などはゼロである安倍氏とは、月とスッポンの違いです。
 
 天木直人氏のブログとLITERAの記事を紹介します。
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緒方議員と民主党は蓮池透さんの覚悟を台無しにしてはいけない
天木直人 2016年1月15日
緒方林太郎という民主党議員が12日の衆院予算委員会で質問した。
 「拉致を使ってのし上がったのか」と。
 この質問にブチ切れた安倍首相は、「私の言ってることが真実であることに議員バッチを賭ける」、とまで言って否定して見せた。
 この安倍首相の発言は、物凄い発言である。いか安倍首相が追い込まれたかということだ。
 蓮池透さんは明言している。私の書いた事にウソはひとつもないと。
 もし緒方議員と民主党に蓮池透さんの覚悟があるのなら、蓮池透さんを国会に呼んで白黒つけるべきだ。
 そして安倍首相を辞任に追い込むべきだ。安倍首相は必ず蓮池さんに負ける。
 かつて西山太吉記者が命がけで入手した沖縄密約の極秘電報を、当時の社会党の横路孝弘衆議院議員が軽々に爆弾質問をし(1972・3・27予算委員会)て、その後の追及を台無しにしてしまったことがあった。
 その誤りを繰り返してはいけない(了)
 
    元家族会・蓮池透氏インタビュー(編)
蓮池透氏が安倍首相の“逆ギレ”国会答弁に堂々反論!
「安倍さんは議員バッジより先にブルーリボンを外すべきだ」
LITERA 2016年1月13日
「私が申し上げていることが真実であることはバッジをかけて申し上げます。私の言っていることが違っていたら、私は辞めますよ。国会議員を辞めますよ」
 1月12日の衆院予算委員会で、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)元副代表の蓮池透氏の著書について問われた安倍晋三首相は、こう声を荒らげた。
 蓮池氏の著書とは先月発売されたばかりの『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)。同書では、安倍首相のついたいくつもの嘘が明らかにされ、「首相は拉致問題を政治利用した」と主張されていることから、民主党の緒方林太郎議員が安倍首相に「拉致問題を利用したのか」とこの問題をぶつけたのだ。
 すると、安倍首相は「議論する気すら起きない。そういう質問をすること自体、この問題を政治利用している」と逆ギレしつつ、「利用したこともウソをついたこともない」と反論、さらに緒方議員が「では蓮池さんがウソを言っているのか」と畳み掛けると、冒頭のように、議員辞職まで口にしたのである。
 この安倍首相の逆ギレ答弁について、当の蓮池氏はどう考えているのか。本サイトは13日に緊急インタビューを行った。
 
―― 昨日、予算委員会で蓮池さんの著書が取り上げられ、安倍首相がバッジをかけてそんなことはない、と反発していましたが。
蓮池 安倍さんが「バッジをかけて」って言った瞬間、議員バッジではなく、拉致問題の象徴でもあるブルーリボン・バッジのほうを外すのではと思ったほどでした。それくらい安倍首相の拉致問題への姿勢には失望しているし、彼は議員を辞めるつもりなんかないと思ったのです。私が『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(以下、『見殺しにした安倍首相』)に書いた内容はこれまで自分で体験し見聞きしてきたことです。Twitterにも書きましたが決してウソなど書いていません。
    それにしても、一国の最高権力者である総理大臣がですよ、私のような一介の市民が書いた本で批判されたからといって、本気で対決姿勢を示すというのはいかがなものかと思いました。最後にはキレ気味でしたからね。そうではなくさらりと流したほうが総理としての器を示せたのではないかと思います。
── とくに「政治利用した」「拉致問題でのし上がった」という言葉に安倍首相は反応していました。
蓮池 安倍さんが、拉致問題で総理大臣になったのは事実です。そして総理に返り咲いてからもまだ拉致問題を利用している。私は決して安倍さんを批判するために本を書いたのではありません。拉致問題の恩恵を受けて総理になったのであれば、恩返しという意味でも拉致問題の解決に向けきちんとやってください、そういう思いを込めたつもりです。しかし今回の発言を聞くと本当に残念です。
    2002年の小泉訪朝から13年もの長い時間が経っているのに何も変わらない。だから一石を投じるつもりでこの本を書いたのです。弟家族が帰国できたのだから黙っていたほうが楽だろうとも言われます。しかし、こんな状態で黙っていることはできない。弟はまだ帰ってこない被害者の人々のことが頭にこびりついているんです。肉体的には解放されたけど、精神的にはまったく解放されていないんです。心身ともに自由に暮らせるようなってもらいたい。そんな思いもあって私は声をあげている。だから“批判のための批判”みたいに捉えられるとすごく嫌ですね。
── 安倍首相は、国会答弁で蓮池さんの本について「家族会の中からも、実はその本に対して強い批判があるということもご紹介させていただきたい」と主張していました。他家族のことを持ち出し、伝聞という形で蓮池さんを批判しています。
蓮池 私のところには家族会からの“強い批判”は直接きたことはありません。ネット上では、この本を出したことで「これでお前も終わりだ」「身辺に気をつけろ」などと書かれましたが。
── 薫さんら5人が帰国した際、日朝政府間は「一時帰国」とし北朝鮮に戻すという約束をしていました。しかし当時、官房副長官だった安倍氏が「日本に残すべきだ」と判断して小泉首相の了解をとりつけたと言います。昨日の委員会でも関係者を集めて「最終的に私は返さないとの判断をした」と、蓮池さんの本の内容とは真逆の答弁をしています。
蓮池 安倍さんには、あなたがいつ説得などしたのか? と訊きたくなりましたよ。本にも書きましたが、弟を説得したのは私であって、安倍さんじゃない。実際に電話のひとつもなかったんですから。当時、政府は5人のスケジュールをびっちりと埋めて作っていましたし、「一時帰国」を変更不可能なものとして進めていたのです。家族たちの間では「帰りのチャーター便はどうするのか?」と、北朝鮮に戻すことを前提に具体的な話し合いまでもたれていたのです。
    また、政府はこうも言っていました。「今回は一時帰国だけど、次回は子どもも含めて全員が帰ってきますよ」と。安倍さんも一貫して、5人を北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた。でも、弟と話し合うなかで「ああ、これは2回目などないな」と確信を持ったのです。だから必死で止めた
── 被害者の方々が日本に留まるという決意を伝えたとき、政府は慌てていましたか?
蓮池 慌てていたというより「そうですか」って感じでしたね。ようするに、弟たちの日本に留まるという強い意志が覆らないのを見て、しぶしぶ方針を変えただけなんですよ。にもかかわらず、安倍さんは相変わらず「決断したのは自分だ」というようなことを言う。大人の答弁だとは思えないですね。
    また、小泉訪朝時、安倍さんは「『拉致問題で金正日から謝罪と経緯の報告がなければ共同宣言に調印せずに席を立つべき』と自分が進言した」と言っていますが、でも、それは安倍さんが突出して言っていたことではない。(当時、アジア大洋州局長として会談に同行した外務省の)田中均さんがその後のインタビューなどで答えているように、それは訪朝したメンバー全員の共通認識だったんです。それを自分だけの手柄のように吹聴したわけでしょう、安倍さんは。
── 著書では、最近の安倍首相による拉致問題の“政治利用”について、蓮池さんのご両親の選挙応援の事例が記されています。これに対し、昨日、安倍首相は「政治利用はしていない」としながらも完全にはぐらかしていましたが。
蓮池 両親が選挙に駆り出されたのは事実です。2014年の衆院選で、新潟二区で立候補した自民公認の細田健一候補の地元・柏崎に安倍首相が応援演説に駆けつけた。そこに講演会にまず弟が招かれたんですが、多忙を理由に断ると、今度は両親が駆り出された。
    ここに蓮池薫さんのご両親も来てくださっています!」なんて演説で言われて。警察を動員して両親の道案内までしていた。弟が帰って何年も経って、なぜ両親が出て行かないといけないのか。これが政治利用じゃなければ何なんですか。一方では刈羽原発再稼働の問題がある柏崎で、原発のゲの字も言わない。母は「結局、安倍さんのダシに使われたね」って言っていましたが、この期におよんでまだやるか……と思いましたよ。
    ただ、国会でこの話題が出たときに本当に残念だと思ったのが、緒方議員が安倍さんから当事者の話をまったく聞いていない、と切り返されたことです。実際、緒方議員から私に事前に何の連絡もありませんでした。本を読んだだけだから、本人に確認したと言えない。だから、安倍さんに「本の引用だけじゃないですか」と言われる隙を作った。なぜ電話の1本でもくれなかったのか。
    繰り返しますが、そもそも私は安倍さんを単に批判するために本を書いたのではない。膠着した拉致問題に向け政府がきちんと動いてほしいだけですから。
    もうひとつ。本を書いた理由に拉致被害者支援法の実態があまりに世間の認識と乖離していることでした。この法律の草案の段階で、私は自民党本部で安倍さんや中山(恭子・拉致被害者家族担当内閣官房参与【当時】)さんなどから支援法の草案を見せてもらったことがあった。そこでまず驚いたのは、そこに「慰謝」と書いてあったことです。「え? 月額13万で『慰謝』って?」と思いました。正確にいうと夫婦で24万ですから、割ると12万、そして子どもひとりにつき3万円です。しかも、働いて収入が発生したら減額です。24年のブランクがあり学歴もキャリアも中断され、いきなり日本に帰ってきて政府はこれだけで自立しろと言う。北朝鮮に強制的に拉致され、24年も放置されてこれは酷すぎるんじゃないのか
    草案の段階で「慰謝」は削除してもらったのですが、同時に金額が低すぎると訴えました。すると法案作成にかかわった自民党議員から「野党が金額が低いと吊り上げるから大丈夫」と説明されたのです。しかし結果は逆。野党は13万円は高すぎると主張し、その金額のままになってしまった。
    その際、私は安倍さんに言いました。「国の不作為ですから賠償請求で国を訴えますよ」と。すると、安倍さんは薄ら笑いを浮かべてこう言ったんです。「蓮池さんね、国の不作為を立証するのは大変だよ」って。この言葉は今でも本当に忘れることができません。
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 安倍首相の逆ギレ答弁とは対照的に、蓮池氏は終始冷静に、しかし、具体的な根拠をひとつひとつあげながら、安倍首相の答弁をくつがえしていった。
  両者の言い分を読み比べてみたら、どちらが嘘をついているかは、明らかだろう。
  だが、蓮池氏の話はこれで終わりではない。北朝鮮の水爆実験、この間の交渉の問題点、さらには家族会の政治利用などについても、言及していた。
  その内容については、後編をぜひ読んでいただきたい。  (編集部)
 
 
    元家族会・蓮池透氏インタビュー(後編)
蓮池透氏がさらに安倍首相の詐術を徹底批判!
 「安倍さんはきっと北の核実験を利用し、逃げ道にする」
LITERA 2016年1月14日
 昨日、本サイトで掲載した拉致被害者家族・蓮池透氏の安倍首相への反論インタビューは大きな反響を呼んだ。
安倍首相は1月12日の衆院予算委員会で、蓮池氏の著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)の内容を否定し、「私が言っていることは議員バッジをかけて真実」と大ミエを切ったが、これに対し蓮池氏が真っ向から反論。
具体例を細かにあげながら、「私が書いていることはすべて本当の話」「安倍さんが拉致問題で嘘をつき、政治利用していたのは事実」と述べたうえで、「安倍さんは議員バッジの前にブルーリボンを外すべき」とまで言い切ったのだ。
しかも、蓮池氏の話はそれで終わりではなかった。安倍首相へのさらなる不信、北朝鮮の“水爆”実験、この間の政府の交渉のやり方への疑問、さらには言論弾圧まで……。後編はこうした問題についての蓮池氏の発言を紹介したい。
 
── 先日、北朝鮮は水爆の核実験に成功したと公表しました。安倍首相はこれを強く批判し、日本独自の経済制裁復活を検討しています。拉致問題への影響についてどう考えているのか。
蓮池 拉致問題に悪影響しか与えません。しかも、政府はこれを利用しかねない。「核実験を行う北朝鮮はけしからん、暴挙だ」といって、進まない拉致問題の隠れ蓑、言い訳に使う。そういうことだけは本当にやめてほしい。
    でも、現実には「一生懸命やったけど、みなさんご存知の通り北朝鮮はけしからん国だ。しょうがない」と、安倍さんの逃げ道になる可能性は高いんじゃないでしょうか。
    そもそも安倍さんは拉致問題に対し退路を断って対処しているわけじゃないし、どれほどの決意や熱意があるのか、疑問です。勇ましい言葉にしても国内向けにすぎない。だいたい、ひたすら圧力をかける、経済制裁をすると言っても、それが通用しないというのはもう歴史的にわかっている。ちょっと学習してほしいです。
    6者協議にしても、私は、核と拉致を同列に扱ったらうまくいかないと思っています。ですから日朝独自外交を国交正常化交渉とセットでやる。もちろんアメリカからの横槍が入るでしょうが、もし安倍さんが本気なら、そこまでしてくれないと。まあ、アメリカべったりの安倍さんには無理だとは思いますが。
    実は拉致解決に関して、私は今年前半が勝負だと思っていたんです。なぜかと言えば、5月に北朝鮮労働党の党大会がある。そこで今後の政策や人事を決めるわけですから、変な決議や決定がなされたら拉致問題にも大きな影響がでてくる。たとえば北朝鮮が日本とつきあっても何の利益もないといって、対日政策はあくまで強硬でいくと決定すれば、拉致問題も動かなくなってしまう。少なくとも党大会以降もこの運動を続けられるよう、5月までに布石を打っておかないと。そう思っていたところに核実験ですからね。
── 核実験にしても、結局は安倍首相に有利に働いた部分があります。北朝鮮は何をするかわからない。だから安保法制は必要だし、憲法改正もしかり、と。拉致問題にしても引き延ばすことが安倍政権の利益になるのではないのかと思えるほどです。
蓮池 北の脅威を煽っていたほうが安倍政権の思い通りにいくのは確かでしょう。やっぱり北は危ないからちゃんとした軍備が必要だ、と。でも集団的自衛権があっても自衛隊が北朝鮮に行くなんて考えられない。ですから私から言わせれば、制裁を強化した段階で、拉致問題は断念したことと同じなんです。圧力をかければ向こうも反発して、今までのパイプが切れてしまう可能性だってありますからね。
── かつては強硬派として知られた蓮池さんが、こうして安倍首相への不信感を持ち、考え方が変わったのはいつからなのでしょう。
蓮池 小泉訪朝前、たしかに私たち被害者家族は誰も頼る人がいなくて孤立した存在でした。そんななか、秘書時代の安倍さんは私たちにやさしかった。救う会にしてもそうですが、彼らの言うことを私たちは鵜呑みにしてすがるしかなかった。第一次安倍政権のときには、何かあると家族会のメンバーを食事に招待してくれて。でも、その場でなぐさめてくれるだけなんです。
    「がんばります」「全力を尽くす」「あらゆる手段を講じる」という常套句だけで、具体的なものはなかった。外交問題は政治家にとってすごく便利なものです。「やっている」と言いながら、「では具体的に何をやっているのか?」と聞くと、それは外交機密だっていう逃げ道がある。安倍さんもまさにそう。本当に戦略というのがあるのか、当初から疑問でした。
    2014年のストックホルム合意についても、非常に安易な合意でした。お互いのゴールが一致していない。非常に広範な問題を一括しているし、最初からこれは難しいなと思っていました。安倍さんが拉致問題最優先って言っているわりに、北朝鮮側のプライオリティは非常に低い。あの時の戦略といったら、独自制裁の一部解除だけ。それで帰ってくるわけがない。しかも北からの報告がなし崩し的に遅れて、現在でもなしのつぶてです。こうした事態を日本側はきちんと検討したのか。家族からしてみれば半年、1年は死ぬほど長い時間です。しかも安倍さんからは何の説明もない。誰が責任を持ってやっているのかさえわからないのです。交渉しているかもわからない。
    これまでも安倍さんが言ってきた「毅然とした」姿勢というのは、決して北朝鮮に向けたものではなく、国内向けでしょう。強硬姿勢はウケがいいですからね。遠い対岸に向かってひたすら吠えているようなもので、それは対岸に届かないことをわかってやっている。
    しかも、そうした指摘を大手マスコミも書かない。安倍さんの意向を忖度している、言論統制に近いようなものを感じます。
── やはり蓮池さんも安倍政権の言論に対する姿勢に疑問を持っているということですね。
蓮池 今回の本を出した時にもそれは感じました。朝日新聞の取材を受けたとき、「ちょっとこのタイトル……う〜ん」と言われてしまって。他でもいくつかの媒体で同じような反応があったと聞いています。テレビでも本の表紙をあえて映さなかったり。安倍批判はダメだし、安倍批判をするとすぐに「反日」ですからね。書店だって隅っこに置かれていて。すごく嫌な国になった、そう感じました。でも今、拉致問題に関してはここまで過激なタイトルをつけないと誰も見向きもしないのが現実なのです。
    政府はあまりにも無策で、時間だけが過ぎていっているのに、マスコミはタブーが多すぎる。また、家族会のことも聖域化しちゃって、今でも都合の悪い話はほとんど書かない。だから洗いざらいぶちまけようと思ったんです。世間の関心も低下し、世代交代も感じています。拉致問題をリアルタイムで知らない世代が増えている。そんな危機感もあります。
── たしかに、すでに東日本大震災や福島原発事故でさえ風化が危惧されていますから、拉致問題は尚更です。
蓮池 今、すごく感じるのは、震災で被害を受けた方々、原発で避難されている方々、あるいは沖縄の基地の問題などいわゆる被害者の人たちの民意を、政権はまったく汲まないということです。多くの被害者がいて反対もあるのに、原発を再稼働し基地を強引に移設しようとする。そういう意味では拉致問題も同じです。自国民をほったらかしなんです
    そうした意味でも拉致問題に関して志を同じにする人たちで、本当の意味で拉致問題を解決するグループを作ろうと、昨年から少し動き出していました。家族会や救う会ではなく、マスコミOBや大学の名誉教授、与野党問わず国会議員など本気で思ってくれる人が集まって。しかし、それも北の核実験があり水を差されてしまった状態です。
    拉致問題の解決。言葉で言うのは簡単です。しかしそのためにも拉致問題の解決とは何か、どういう状態になれば全面解決なのか、その定義を安倍さんと政府ははっきり示して欲しい。そうでなければ何ら進歩のないまま、拉致問題がまたずるずると時を重ねるだけでしょう。
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蓮池氏の話はまさに、安倍首相のやり口の本質を突くものだった。実体のない勇ましいスローガンを声高に叫ぶだけで、実際は国民の生命や安全などつゆほども考えていない──。
しかし、おそらく安倍首相はこれからも「拉致問題解決が最重要課題」などといって、この問題を徹底的に政治利用していくだろう。
日本国民がこの詐術に気がつき、政府が国内右派向けの人気取りでない、リアルで戦略的な拉致問題解決に動き出す日ははたしてやってくるのだろうか。  (編集部)