2016年1月27日水曜日

甘利氏 金銭疑惑に答えず TPPの売国性も明らかに

 千葉県の建設会社からの1200万円に上る「あっせん利得」疑惑が持ち上がっている甘利大臣は、「記憶が不確か」などと常人には理解しがたい理由で真相を語ることを避けています。
 29日に発売される「週刊文春」で次には何が暴露されるのかが分からないと、議会での弁明も出来ないというのが理由のようですが、真実は一つなのですから本末転倒の話です。
 甘利氏には真実を語る気はなくて、ただただどう言い逃れをすればいいのかに腐心している、ということがこれからも分かります。
 罠に嵌められたというような言い方も、まさに真相を胡麻化そうとしていることの現れで、1200万円を受け取ったか否かの「真実」の前には、罠の有無などは関係のないことです。
 
 民主党の岡田克也代表は26日、衆院本会議で甘利氏の金銭授受疑惑について「今日に至るまで国民に対するまともな説明は一切なされていない」と指摘しました。
 また首相に対して「任命責任首相自身に重大な説明責任がある」と迫るとともに、「緊急事態条項」については、緊急事態宣言の発令で首相に権限が集中すると、基本的人権を制約する懸念があることを指摘し「現行憲法で具体的に何が足りないのか」と糾しました
 
 日刊ゲンダイは、「甘利大臣がTPP交渉で見せた“売国的妥協”」と題して、これまで安倍首相は 「TPP大筋合意でコメは守られた”」と説明してきましたが、政府の概要書には『関税の撤廃(第2、4条)』の項目に『コメを含む農産品は漸進的に関税を撤廃する』と書いてあるとして、農民だましたことを明らかにしました。他にもこれまでの説明とは異なる事実が判明しています。
 これらはまさに氷山の一角で、今後TPP協定の訳文と原文を合わせて読み進めば、恐怖の売国協定であることがさらに明らかにされます。
 
 政府は「余人をもって代えがたい」として2月4日の調印式に甘利氏を出席させる意向だということですが、ついこの間の少なからぬ金額の授受について思い出せないような人間に、5000ページ余の協定の取り扱いが出来る筈もありません。甘利大臣は勿論ですが、安倍内閣は全く信用できない政権です
 
 東京新聞、日刊ゲンダイ、LITERAの記事を紹介します。
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甘利氏疑惑の説明要求 岡田氏「首相に任命責任」
東京新聞 2016年1月26日
 安倍晋三首相の施政方針演説など政府四演説に対する各党の代表質問が二十六日午後、衆院本会議で始まった。最初に登壇した民主党の岡田克也代表は、甘利明経済再生担当相の金銭授受疑惑について「今日に至るまで国民に対するまともな説明は一切なされていない」と指摘。首相に「任命責任はもちろん、首相自身に重大な説明責任がある」と迫った。自民党草案にある九条改憲に触れ「限定のない集団的自衛権行使を認めるものだ。何のために必要なのか」と真意をただした。
 
 岡田氏は、改憲を目指す安倍首相を「憲法は権力者の権力乱用から国民を守るものだという立憲主義の基本を理解しない」と批判。首相の立憲主義に対する認識を確認した。緊急事態条項に関しては、緊急事態宣言の発令で首相に権限が集中すると、基本的人権を制約する懸念があることを指摘し「現行憲法で具体的に何が足りないのか」と聞いた。
 
 安倍政権が昨年九月に成立させた安全保障関連法の廃止法案を今国会に提出することも明言。政府が進める米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う同県名護市辺野古(へのこ)への新基地建設についても「ただちに中断すべきだ」と主張して、安倍政権との対立軸を明確にした。
 
 二十六日は岡田氏に続いて自民党の谷垣禎一幹事長、維新の党の松野頼久代表も登壇する。二十七日は衆参両院、二十八日は参院で代表質問を行う。
 
 
ワイロより悪質 甘利大臣がTPP交渉で見せた“売国的妥協”
日刊ゲンダイ  2016年1月26日
 1200万円ワイロ疑惑で、辞任へ一直線の甘利経再相だが、疑惑はまだある。立役者などとおだてられているTPP交渉の方である。ここでも国民の信頼を完全に裏切り、しかし、嘘をついてスットボケていたことが判明。改めて、その下劣な品性が問われている。
 
  1200万円ワイロを報じた「週刊文春」が発売になる2日前、TPP問題を追い続ける山田正彦・元農水大臣(弁護士)が甘利大臣の“売国奴的交渉”を暴露した。根拠になっているのは政府文書だ。
 「TPP大筋合意で安倍首相は『コメは守られた』と説明してきましたが、(大筋合意内容を説明する)政府の概要書を見ると、『関税の撤廃(第2、4条)』の項目に『(コメを含む農産品は)漸進的に関税を撤廃』と書いてあった。『関税は撤廃されなかった』という安倍政権の説明は合意内容と明らかに違う。農民はだまされたのです」(山田正彦氏)
  山田氏が英語の原文に当たると、「progressively eliminate its customs duties」という文言があった。progressivelyは「漸進的」で、eliminateが「撤廃」だ。これを見たとき、山田氏は思い当たることがあったという。
 
 「2012年1月にアメリカに行ってTPP現地調査をした時、USTR(米国通商代表部)は、概要書の内容と同じことを言っていたんです。つまり、『関税は撤廃する。コメも例外はない』と断言していたのです」(山田氏)
  山田氏が話した相手はカトラー次官補だ。カトラー氏は「TPPは高いレベルで包括的、基本的にはすべての物品やサービスを交渉のテーブルに乗せる」という原則論を繰り返した。それに対し、山田氏らは「テーブルに乗せるけれども、交渉で議論をした結果、外れる余地があるのか」と質問したところ、「それはない」と言われたという。
  結局、アメリカの姿勢は4年前から全く変わらなかったことになる。甘利大臣は譲歩に次ぐ譲歩を繰り返しただけのことだ。
 
 「さらにTPPの文書を調べていくと、『7年後に再協議(再交渉)に応じなければならない』ことも記されていた。再交渉を踏まえてコメを含む全ての農産物の関税が撤廃される可能性が高いのです」
  関税撤廃の時期を山田氏は「30年後」と推測する。
 「アメリカ現地調査で、自動車業界や農業関係の幹部と会いましたが、『コメと自動車はセット』と言っていた。自動車の関税撤廃が30年後なので、恐らく同じ時期にコメの関税も撤廃されるとみています」
 
 「食の安全」に関わる「遺伝子組み換え食品の表示」についても、政府の説明と公表文書(概要書)の間には大きなギャップがある。
 「政府は『遺伝子組み換え食品の表示は撤廃されない』と説明していますが、表示が認められていたのは『有機農産物』だけでした。裏返して言えば、『有機農産物以外の表示は認められない』ことになる」(山田氏)
  甘利大臣という政治家、何から何まで信用できない男である。


甘利大臣賄賂疑惑で安倍政権・自民党がふりまく“謀略説”に騙されるな! 
口利き・賄賂受け取りは明らかな事実だ
LITERA 2016年1月26日
「週刊文春」(文藝春秋)の“実名告発スクープ”で、政界を揺るがす大問題に発展した甘利明・経済再生相の賄賂疑惑。ところが、ここにきて、自民党サイドが「甘利は罠にハメられた」「告発者は怪しい人物」というカウンター情報をしきりに流し始めた。
 1月23日には、自民党の高村正彦副総裁が記者の前で、「録音や写真を撮られていたりと、ワナを仕掛けられたという感がある。ワナのうえに周到なストーリーがつくられている」と主張。
 さらに、25日になると、甘利大臣本人が会見で「先方は最初から隠し録音をしたり、写真を撮ることを目的とした人たちだ」「こちらにアプローチする最初から、いろいろな仕掛けを行っている」と、文春と告発者のやり方に疑問を呈した。
 表だった発言だけではない。官邸や自民党の幹部はオフレコで「『文春』と告発した業者がグルになって仕組んだやらせだ」「『文春』は恐喝に協力したようなものだ」といったコメントをしきりに口にし、告発者についても「暴力団組員」「フロント企業」「恐喝屋だ」などのネガティブ情報を流しているという。
 
 だが、こんな詐術に騙されてはいけない。たしかに、今回「週刊文春」に告発した人物に怪しい影がちらついているのは事実だ。甘利氏にUR(都市再生機構)への口利きを依頼したS社は建設会社というより産廃業者、告発者もS社の社員ではなくトラブル交渉を請け負うそのスジのプロとの見方がある。
 しかし、だからといって、甘利氏の罪や責任が減ぜられるわけではまったくない。改めて強調しておくが、甘利氏側がURに圧力をかけ、その結果、約2億2千万円がS社に支払われたことは、UR側も認めている客観的事実なのだ。もし、告発者が暴力団と関係していたとすれば、甘利氏はそういう反社会的な人物から賄賂を受け取り、URに億単位の金を支払わせたことになるわけで、その罪は逆に重大になるというべきだろう。
「ワナ」「謀略」「最初から告発目的」などという指摘も、イチャモンとしか思えないものだ。自民党や甘利サイドは、告発者が甘利事務所との会話を録音していたこと、さらには甘利大臣に渡した現金のコピーをとっていたことなどから、こんな戯言を言っているようだが、贈収賄事件で賄賂を贈る側が証拠をとっておくことは珍しくもなんともない。
 
 また、甘利サイドは昨年10月19日の現金受け渡しの現場に「週刊文春」の記者がいて、受け渡し場面を隠し撮りしていたことをもって、最初から記事にするのを目的に仕組まれていたといっているが、これも明らかに見当違いだ。
 S社と告発者は甘利事務所に都合3回の口利き依頼をしており、文春が同行したのは3度目の口利きの謝礼を支払う現場のみ。2013年の最初の口利き、翌年の2回目の口利きの段階では、告発者はまだ「週刊文春」にアプローチしていなかった。
 当たり前だ。前述したように、告発者とS社は最初の口利きでURから2億2千万円もの補償金をせしめることに成功しているのだ。週刊誌に告発してもその100分の1にもならない。そんな割の悪いことをするはずもないだろう。
 
 告発者が文春にアプローチしたのは、2回目の口利き依頼をめぐって、甘利事務所との間に亀裂が入ったためだった。
「告発者は1回目の成功に味をしめて、2014年、URにさらなる補償をさせようと、再び甘利事務所に口利きを依頼するんです。そして、甘利事務所もこれを安請け合いするんですが、交渉は失敗に終わり、結局、補償金は一銭も引き出せなかった。ところが、甘利事務所はその後も交渉失敗を隠して、告発者に接待や資金提供を要求し続け、その金額は1千万円以上にのぼった。途中で告発者が騙されていることに気づき、激怒。甘利事務所にこれまでかかった金を返却させようと動き始めたらしい。最初は、甘利事務所を脅すために『文春』を利用しようとしたフシもあったようですが、そこは百戦錬磨の『文春』、逆に告発者を『そんなことをしたら恐喝になる』と説得して、実名告発を決意させたということのようです。そして、証拠をおさえるために、3回目の口利き依頼の際に同行し、隠し撮りをしたのです」(「週刊文春」関係者)
 
 いったいこれのどこが「謀略」なのか。3回目については、仕掛けた部分はもちろんあるが、捜査権を持たないメディアが物的証拠をおさえるためにこうした方法をとるのは当然だろう。むしろ、文春の報道はもっとも週刊誌らしい調査報道、あっぱれなスキャンダルすっぱ抜きといっていい。自分たちは権力をかさに口利きや賄賂受け取りという不正を働きながら、隠し撮りを「卑劣」などというのだから、自民党や甘利サイドの厚顔無恥ぶりには、開いた口がふさがらない。
 しかも、暗澹とさせられるのは、マスコミもこうした話のスリカエにまんまと乗せられてしまっていることだ。実際、新聞は高村副総裁や甘利大臣の「謀略説」を大々的に報じ、ワイドショーやニュース番組でもそれに呼応するように、出演者らが「もしも告発者が最初からテープレコーダーを持って接触していたとしたら妙な話だ」「50万円を渡したときにお札のコピーをとるなんて、普通ここまでしますか?」「最初から告発を仕込んでいたのでは?」などとコメントしている。
 
「今週には『週刊新潮』あたりが、官邸や自民党の情報をもとに、告発者と文春をバッシングする記事を準備中、という話もありますね。そうなったら、さらに報道がそっちに流れていくかもしれません」(週刊誌記者)
 自民党はこれまでも、こういうやり口で自分たちのスキャンダル報道を封じこんできた。告発者の素性に関するカウンター情報を流し、メディアの「取材上の問題点」をあげつらい、野党やマスコミの追及を鈍らせ、世論をマスコミ批判のほうに誘導していく……。
 今回もまた、同じ事態が繰り返されることのないよう、我々は何が問題の本質で、誰が追及されるべきなのかを、強く意識し続ける必要がある。 (田部祥太)