米・タフツ大学の世界開発環境研究所がTPPの影響を分析した結果によると、TPP発効後10年間で、日本の国内総生産(GDP)は0・12%落ち込み、7万4000人の雇用が失われます。
同じく米国でもGDPは0・54%減少し、44万8000人の雇用が失われます。米国が主導したTPPのこの結果は一見意外ですが、米大企業の利益は米国民の利益にはつながらないということを示しています。
米国民は、22年前に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)でこのこと体験してきたので、TPPに対して強い警戒感を持っています。
それにしても最大の被害国になる日本で、TPPに対する国民の反対運動が起きないのは不思議なことです。
しんぶん赤旗の記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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TPP 日本のGDP0・12%減 米大学試算 雇用は7・4万人減少
しんぶん赤旗 2016年1月28日
米マサチューセッツ州にあるタフツ大学の世界開発環境研究所(GDAE)はこのほど、環太平洋連携協定(TPP)の影響を分析し、TPP発効後10年間で、日本の国内総生産(GDP)が0・12%落ち込み、7万4000人の雇用が失われると試算した調査報告書を公表しました。
同試算によると、GDPは日本のほか、米国でも0・54%減少します。雇用は、TPPに参加する12カ国すべてで減少します。米国で44万8000人減、カナダで5万8000人減、オーストラリアで3万9000人減、ニュージーランドで6000人減など、合計で77万1000人減となっています。
同試算はさらに、TPPによって、労働から資本への所得の再分配が進み、労働分配率が低下し、格差がいっそう拡大すると指摘しています。
GDAEは試算にあたり、国連経済社会局のモデル(GPM)を使用。他のモデルで除外されている雇用への影響を織り込んでいるとしています。他方、日本政府は国際貿易分析プロジェクトのモデル(GTAP)で分析し、TPPの経済効果をGDP14兆円増、雇用80万人増と試算。GTAPモデルは広範に使用されているものの、問題点も指摘されています。
フォードの日本撤退報道が見事に暴いたTPP交渉の売国ぶり
天木直人のブログ 2016年1月28日
フォード社の日本からの完全撤退を報じるきょう1月27日の東京新聞の記事は、今度のTPP交渉の売国ぶりを見事に暴いて見せてくれた。
さんざん報じられた今度のTPP交渉で、その交渉の中心は日米二国間交渉だった。
そしてその日米二国間交渉の中でも、メディアがさかんに取り上げた項目は、農産品と並んで米国車の日本市場シェア拡大のための優遇的規制緩和策だった。
ところが、日本が譲歩して与えた優遇策を盛り込んだTPP協定の発効を待たずして、フォードは日本からの完全撤退を発表した。
それを知った日本政府の交渉担当者は「交渉の苦労は一体なんだったのか」と徒労感をにじませていると東京新聞は書いている。
そこまではまだ許せる。
そんな事も分からずに交渉していたの、と交渉担当者の情報不足を叱ればいいだけだ。
ところが、日本政府の関係筋は次のようにも語っているというのだ。
すなわち、米国政府も、米国車の販売不振が日本の規制のせいではないことを分かっていたはずだ、欧州車は順調に輸出を伸ばしており、日本の規制が外国車に不利とはいえないからだ、と。
そしてさらに次の様に語っているという。
それでも米国政府が日本に強硬な姿勢を取り続けた背景には、「米国内の議員や業界の理解を得るために強い姿勢を見せ続ける必要があっただろうし、軟化する時に農産品など別の項目で日本から譲歩を引き出す狙いもあっただろう」と。
ここまでわかっていながら、日本は車もコメも大幅譲歩した。
まさしくTPP交渉は売国的だったということだ。
米国の不当な要求を知っていながら、日本の国内産業を犠牲にしてまでも米国の利益実現に協力した。
それがTPP交渉の正体だったということだ。
収賄疑惑に関する甘利大臣の発言はウソだらけだが、そのウソを追及して首を取る前に、TPPのウソも白状させなければいけない(了)