岸信夫防衛相は19日の閣議後の記者会見で、ロシアの侵攻を受けているウクライナに対し、防衛省・自衛隊が保有するドローンと、化学兵器対応の防護マスク・防護衣を提供すると発表しました。ウクライナからの要請を踏まえた対応で、数は調整中です。
岸氏は会見で、ドローンが「防衛装備移転三原則」の対象となる防衛装備品にあたるか問われ、「市販品だからあたらない」と説明しました。
日本政府は反対の意見もあった自衛隊の防弾チョッキなどの防衛装備品をすでにウクライナに提供しています。
現地ウクライナから記事を送り続けている田中龍作氏が19日、「ドローンに民生用も軍事用もない」という記事を送ってきました。市販品のドローンも極めて有用な偵察機器であることが分かります。
併せて毎日新聞の記事を紹介します。
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【キーウ発】ドローンに民生用も軍事用もない
田中龍作ジャーナル 2022年4月19日
岸信夫防衛相がきょう(19日)の定例会見で、民生用のドローンをウクライナに送ることを明らかにした。
「防衛装備移転3原則(武器輸出禁止3原則)にあたらない」というのが日本政府の見解のようだ。
笑止である。ドローンに民生用も軍事用もないのだ。もちろん防衛省がそれを知らないはずがない。
キーウ郊外は首都攻略を目指したロシア軍の戦車部隊がことごとく迎撃、破壊され、残骸が墓場のようになっていた。
ウクライナ軍兵士に「どんな兵器が有効だったのか?」と聞くと兵士は「①(攻撃用)ドローン、②(対戦車ミサイル)ジャベリン、③自走砲などからの砲撃」の順で答えた。
②と③にロシア軍戦車の居場所を教えているのは偵察用ドローンだ。偵察用ドローンの活躍がなければ、とっくに首都キーウは陥落していただろう。プーチン大統領が勝利宣言していた可能性もある。
← ウクライナ軍が飛ばしていたのは民生用だった。専門家の鑑定によれば20万円程度の代物だ。=8日、ウクライナ北部 撮影:田中龍作=
ウクライナ北部で軍が偵察用のドローンを飛ばしている現場に出くわした。
写真を撮ってドローンに詳しい人物に鑑定してもらった。10年も前にドローンを原発上空に飛ばし世を騒然とさせた、あの映像作家である。
映像作家によれば「20万円程度」の代物だそうだ。
このレベルのドローンは無線操縦で飛行範囲は狭いが、スターリンクとグーグルとに連動させれば、どこまでも飛ばせる。
そして敵の位置を正確に捉え、瞬時に自軍に知らせる。こうして敵は対戦車ミサイルや自走砲の餌食となるのだ。
私は「送るな」と言っているのではない。民生用もれっきとした兵器であることを国民に理解してもらい、そのうえで送ればよい。
現実認識を欠いた主張は世界からもの笑いにされる。ひいては武器商人とその手先の国家の言いなりになる。損をするのは納税者である。
【写真説明】砲塔が吹き飛んだロシア軍戦車(左手前)。戦車の位置を正確につかみ
自軍に教えたのは偵察用ドローンだった。=5日、キーウ近郊 撮影:田中龍作=
~終わり~
政府、ウクライナに民生用ドローン提供へ 防護衣やマスクも
毎日新聞 2022/4/19
岸信夫防衛相は19日の記者会見で、ロシアによる侵攻を受けているウクライナを支援するため、同国に対し防衛省が保有する民生用ドローンを提供すると発表した。ウクライナ側からの要請を踏まえた措置で、有毒物質から身を守るための防護衣、防護マスクも提供する。岸氏はドローンがどのような用途で使われるかとの質問に「いろいろな用途があると思う」と述べるにとどめた。
ドローンは防衛省が研究用として購入した市販品のため、武器や関連技術の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」は適用されないと説明している。ウクライナは民生用のドローンをロシア軍の位置の把握などに、軍用のドローンを戦車への攻撃などに活用しており、日本が提供するドローンも偵察などに用いられる可能性がある。
提供する物資・装備品は民間の航空機で周辺国に運んでからウクライナに移送する方針で、岸氏は「準備が整い次第、輸送する」と述べた。政府は3月にも、防弾チョッキやヘルメットなど殺傷能力のない物資・装備品をウクライナに供与している。【川口峻】