自民党の安全保障調査会で13日、軍事目的の科学研究を行わないとの声明を出している日本学術会議に対して、同党議員が「学術会議の『呪縛』を打破しないことには省庁間の壁も破れない。産学官一体と言っても、防衛省・自衛隊は混ぜてもらえていない」と発言しました。しんぶん赤旗が報じました。
学術会議法3条「同会議は独立して職務を行う」の定めは、憲法23条の「学問の自由」の規定に基づくもので、同会議の高度の独立性を謳っています。自民議員の発言は同会議の独立性を脅かすものです。
日本学術会議は創設された翌年の1950 年に、「戦争を目的とする科学の研究は絶対に
これを行わない」旨の声明を出しました。1967年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出しています。それらは「科学者コミュニティの戦争協力への反省」と「再び同様の事態が生じることへの懸念があった」からに他なりません。
そして2017年にも、「近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認」し、上記2つの声明を継承するとの幹事会声明を出しました。
日本学術会議の「軍事目的のための科学研究を行わない」とする意志は明確です。
20年9月に発足した自民党菅政権は、学術会議の半数改選に当たり同会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否するという法令違反を行いました。しかし菅氏は在任中、遂にその理由を明らかにしなかった(できなかった)のはまだ記憶に新しいところで、彼らが学問の自由についての認識をまったく欠いているのは明らかです。
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“学術会議の「呪縛」打破を”自民議員 調査会で訴え
軍事研究参加へ“圧力”
しんぶん赤旗 2022年4月17日
自民党安全保障調査会(会長、小野寺五典元防衛相)で、軍事目的の科学研究を行わないとの声明を出している日本学術会議に対して、同党議員が「呪縛」だとして「打破」を訴える発言をしたことが16日、分かりました。学術会議法は同会議が独立して職務を行うと定めています。自民議員の発言は同会議の独立性を脅かしかねないものです。(三浦誠)
同調査会は、政府が改定予定の国家安全保障戦略などについて自民党の提言を取りまとめるために議論しています。これまでの会合では、産学官一体でAI(人工知能)や無人機など先端技術の研究開発に重点投資することが、論点としてあげられています。
13日の会合で配布された資料によると、議員から「学術会議の『呪縛』を打破しないことには省庁間の壁も破れない。産学官一体と言っても、防衛省・自衛隊は混ぜてもらえていない」との発言があったとされています。
学術会議は1950年と67年に軍事目的の科学研究を行わない旨の声明を出しています。2017年にはこれらを「継承する」とした声明を決定しています。自民議員の発言は、産学官一体の軍事研究を進める立場から、学術会議の姿勢を敵視したものとみられます。
20年には菅義偉首相(当時)が、学術会議が推薦した会員候補の任命を拒否し、「学問の自由」に介入。さらに同会議に研究成果が民生にも軍事にも使われる「デュアルユース」(軍民両用)の検討を求めるなど、自公政権は軍事研究参加への圧力を強めてきました。
(写真)自民党安全保障調査会で配られた資料。学術会議の「『呪縛』を打破」などと書かれています