岸田文雄政権が発足して4日で6カ月になりました。
しんぶん赤旗は3日、「岸田政権6カ月 危険で冷たい政治を変えよう」という「主張」を掲げました。
そのなかで、新型コロナ対策では見るべきものは何もなく、安倍・菅政権のコロナ対応の失敗に学ばない政治のままでは国民の命と健康を守れないとし、際立つのが、安保法制のもとで敵基地攻撃能力保有の議論を進めていることで、それは事実上先制攻撃の議論であり、9条の規定とは絶対に両立しないと批判しました。
そして、安倍・菅政権下で噴き出した国政私物化・「政治とカネ」疑惑に幕引きを図る立場も露骨で、「国民の声を聞く」は言葉だけと断定しました。
共産党の小池晃書記局長は4日、記者会見し、岸田首相が「新しい資本主義」を掲げて半年経つが「まだ中身がまったく出てこない」と指摘し、「コロナ対策でも、第6波で過去最多の死者が出ているにもかかわらず、その反省も対策の見直しもないまま第7波を迎えようとしている(要旨)」と批判しました。
そして施政方針で初めて敵基地攻撃能力の検討を表明した岸田首相は、「ハト派と言われるが、安倍・菅政権以上に危険な政権でないか」と述べる一方で、「朝日」が「内実はもろさを抱える」と評しているとして、「非常にもろい政権で、崩れ出したらあっという間に崩れ去るのではないか」との見方を示しました。
毎日新聞は「岸田政権発足から半年 『聞く力』の先が聞きたい」との社説で、先ず毎日新聞の3月の内閣支持率が48%で不支持率を10ポイント上回った理由について、「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げ、安倍・菅両政権の強引な手法に比べて野党との感情的な対立や、かみ合わないやり取りは減ったことが評価されたとしたうえで、「さまざまな意見に耳を傾けるだけでは不十分だ。それを取捨選択して、明確なビジョンを示すのが政治指導者の責任」で、首相の「聞く力」の先に何があるのか。今まさにそれが問われていると結んでいます。
3つの記事を紹介します。
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(主張) 岸田政権6カ月 危険で冷たい政治を変えよう
しんぶん赤旗 2022年4月3日
岸田文雄政権が発足して4日で6カ月になります。岸田氏は2021年10月4日に首相に就任し、安倍晋三政権・菅義偉政権の骨格を引き継ぐ組閣を行った直後、解散・総選挙を実施しました。衆院で改憲勢力3分の2以上の議席を維持した後は、敵基地攻撃能力保有の議論を加速するなど9条改憲に前のめり姿勢が鮮明です。新型コロナ対応では、なりゆきまかせに終始し、「第6波」の感染爆発を引き起こしました。「安倍・菅政治」以上に危険で国民に冷たい姿が浮き彫りになった半年間でした。
9条改憲に前のめり姿勢
岸田政権半年について松野博一官房長官は「山積する課題にスピード感を持って取り組んできた」(3月31日の記者会見)などと自慢げに述べました。実際の政治とあまりにもかけ離れた発言です。
コロナ対策では、ワクチンの3回目接種や検査などが大幅に立ち遅れました。感染者は激増し菅政権時の「第5波」をはるかに上回る感染者数を記録し、亡くなる人もこれまでで最悪となりました。
3月21日でまん延防止等重点措置を解除しましたが、危惧される感染リバウンドへの有効な対処方針は見えません。病床削減の政策も改めず、公的医療費をはじめ社会保障費カットも続ける立場です。安倍・菅政権のコロナ対応の失敗に学ばない政治のままでは、国民の命と健康を守れません。
際立つのが、9条に狙いを定めた改憲の動きです。なかでも重大なのは、安保法制のもとで敵基地攻撃能力保有の議論を進めていることです。安保法制は、日本に対する武力攻撃がなくても「存立危機事態」と認定すれば、他国と戦争を始めたアメリカを助けるため、集団的自衛権を行使して武力行使できる仕掛けです。
現在の敵基地攻撃能力保有についての検討は、安保法制施行以前の議論とは大きく異なり、アメリカと一緒に自衛隊が海外に攻め込むことと結びついています。それは先制攻撃の議論であり、9条の規定とは絶対に両立しません。
9条に自衛隊を書き込む改憲を任期中に実現すると岸田首相が明言していることは、新たな企てと一体です。安倍・菅政権でもできなかった危険な道に突き進むことは許されません。
首相は「新しい資本主義」を看板にして、新自由主義の弊害を口にしますが、どこが間違っていたのかは説明せず、どう転換するかも示しません。自民党総裁選では、金融所得課税の強化を売り物にしたのに、首相になって以降は棚上げしています。大企業・富裕層を優先し、国民の所得向上を置き去りにしてきた政治の抜本的な転換が欠かせません。
疑惑の幕引きは露骨に
安倍・菅政権下で噴き出した国政私物化・「政治とカネ」疑惑に幕引きを図る立場も露骨です。「森友」事件で公文書改ざんを強いられ自死した近畿財務局職員の妻が真相を知りたいと開始した訴訟では、国側が突然賠償に応じ裁判を「強制終了」させました。「桜を見る会」疑惑でも首相は解明に動きません。参院広島選挙区の大規模買収事件では自民党本部の資金提供の実態について再調査を拒みました。「国民の声を聞く」は言葉だけです。
公示まで3カ月をきった参院選で民意に逆らう政権に厳しい審判を下すことが必要です。
岸田政権 発足6カ月 非常にもろいタカ派 小池書記局長が記者会見
しんぶん赤旗 2022年4月5日
日本共産党の小池晃書記局長は4日、国会内で記者会見し、発足から6カ月を迎えた岸田文雄政権への評価を問われ、内政、経済、新型コロナウイルス感染症対応、外交の実態や主要各紙の指摘も示し、「非常にもろい政権で、崩れ出したらあっという間に崩れ去るのではないか」との見方を示しました。
小池氏は、4日付各紙世論調査では岸田内閣支持率は横ばいだとしつつ、「読売」は「他によい人がいない」が最多の42%を占めるなど「支持理由をみると、安泰とはいえない状況が浮かび上がる」と指摘し、「朝日」も「内実はもろさを抱える」と評していることを示し、「この指摘は当たっているのではないか」と強調しました。
小池氏は、岸田首相が「新しい資本主義」を掲げて半年たつが、大金持ち優遇の金融所得課税の見直しは引っ込めるなど「中身はまったく出てこない」と指摘。自民党の福田達夫総務会長からも「骨格をそろそろ出してもらわないと困る」と苦言を呈されるありさまだと強調しました。
また、「コロナ対策でも、第6波で過去最多の死者が出ているにもかかわらず、その反省も対策の見直しもなく、第7波が起ころうかという状況が生まれている」と批判しました。
さらに、岸田氏がプーチン大統領にすり寄った安倍晋三首相(当時)を外相として一貫して支え、ロシアやインドも含めた安倍「価値観外交」を推進したが、その後はロシアによるウクライナ侵略という事態に陥っているとして、「外交の破綻も明白だ」と批判しました。
小池氏は、施政方針演説などでは初めて敵基地攻撃能力の検討を表明した岸田首相は「ハト派と言われるが、ハトの羽根をまとったタカで、安倍・菅政権以上に危険な政権でないか」と述べました。
小池氏は「後半国会の論戦と、参院選に向け、岸田政権の問題点を正面から指摘をしつつ、新しい政治をつくろうと訴えていきたい」と表明しました。
社説 岸田政権発足から半年 「聞く力」の先が聞きたい
毎日新聞 2022/4/5
ロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルス禍という内憂外患の中、岸田文雄内閣が発足から半年を迎えた。
毎日新聞の3月の世論調査によると、内閣支持率は48%で、不支持率を10ポイント上回っている。
首相は「聞く力」と「丁寧な説明」を掲げ、大きな政治的失点もまだない。安倍、菅両政権は数の力をたのむ強引な手法がしばしば批判されたが、岸田政権下では、野党との感情的な対立や、かみ合わないやり取りは減った。
コロナ対策ではまん延防止等重点措置の全面解除にこぎつけた。ウクライナとの連帯を表明し、主要7カ国(G7)の協調を重視してロシアへの強い経済制裁を決断した。こうした対応が国民から一定の評価を受けているのだろう。
首相はきのう「難しい決断の連続だった」と振り返り、「緊張感と危機感を持って引き続き取り組む」と語った。
問題は、首相が何をやりたいのか、いまだに見えないことだ。
看板政策の「新しい資本主義」は具体像が不明確なままだ。政府は今春に実行計画をまとめる予定だが、抽象論だけに終わらせてはならない。コロナ禍で浮き彫りになった格差の是正につながる政策こそが求められる。
個別の施策では不手際も目に付いた。ワクチンの3回目接種は初動が遅れ、感染拡大の第6波に間に合わなかった。
エネルギー価格の上昇に伴う物価高で傷んだ経済への手当ても迷走している。
年金受給者に一律5000円を給付する与党案に前向きだった首相が、「ばらまき」批判を受けて一転、白紙に戻したことは象徴的だ。身内の主張を安易に聞き入れようとしたのが原因だった。
与党寄りの姿勢を強める国民民主党に配慮する場面も目立つ。野党の分断を狙ったものだろう。しかし政策の内容より夏の参院選対策を優先すれば、必ず国民に見透かされる。
さまざまな意見に耳を傾けるだけでは不十分だ。それを取捨選択して、明確なビジョンを示すのが政治指導者の責任だ。
首相の「聞く力」の先に何があるのか。今まさにそれが問われている。