ロシアのウクライナ侵攻から2ヶ月が経ちました。ウクライナでは多くの市民の生命が奪われていますが、ゼレンスキーは「ロシアの奴隷になることはあり得ない」として、一歩も引かない姿勢を鮮明にしています。しかしプーチンは別にウクライナ国民を奴隷にしようとしている訳ではありません。
外交評論家の孫崎享氏によれば、ウクライナ戦争を終結させるにはウクライナが「NATOに加盟しない」ことと「東部に『自決権』を与える」に合意すればいいとしています(プーチンは当初要求していた「ゼレンスキー政権の退場」や「非ナチ化」は取り下げました)。
孫崎氏はさらに米国の目的はウクライナを救うことではなく、ロシアを破壊することだと明らかにして、国家が危機に瀕した時、指導者が最優先すべきは国民の命の消耗をできるだけ少なくすること、国民ができるだけ正常な生活に戻ることである筈だと述べています。
ゼレンスキーの戦争継続の姿勢はまさに米国が望むもので、戦争継続以外の選択肢を持たないように見えるのは不思議なことです。それは「一将功成って万骨枯る」の道を行くものです。
西側も「負けるな」とばかりに、ウクライナに武器や資金をを供給して戦争を継続させていますが、それは正しいのでしょうか。
孫崎氏が、「ウクライナ侵攻の早期終結はない 米国の目的はロシアを破壊すること」という記事を出しました。
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日本外交と政治の正体
ウクライナ侵攻の早期終結はない 米国の目的はロシアを破壊すること
孫崎享 日刊ゲンダイ 2022/04/22
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
国家が危機にひんした時、指導者は何を最優先すべきか。ウクライナ問題が提示している問題である。最優先すべきは、国民の命の消耗をできるだけ少なくすること、国民ができるだけ正常な生活に戻ることと思う。
今のウクライナにその道があるかと言えば、答えは「ある」だ。
プーチン大統領が求めている「ウクライナはNATOに加盟しない」「東部に『自決権』を与える」に合意すればいいのである。
では、プーチンの要求は不合理なのか。
キッシンジャー元米国務長官は、「ウクライナは自由な経済体制を選択すべきだが、NATOへの拡大は行うべきでない」と述べていた。
このことは「ソ連の封じ込め政策」を提言した米外交官で政治学者のケナンや、ソ連崩壊時の駐ソ米国大使マトロックらもキッシンジャーも同様だ。
プーチンの要求は国際基準でみると、決して法外な要求ではなく、ある種の合理性もある。
国連憲章は第1条の目的で、民族の自決権を大原則と掲げている。
「侵略したロシアと合意したくない」というのは立派な主張である。しかし、この主張を貫くことは合意の不成立を意味し、そのことはウクライナの「戦場」の継続を意味する。つまり、どちらの「悪」を選択するか、である。
ただ、ゼレンスキー大統領は和平を求めないであろう。米国が必要な武器を支援している。
この戦争の実態は「米国の武器」対「ロシア軍」の戦いで、ロシア軍が米国の兵器に勝ることはない。他方、ウクライナ東部のロシア人を守るという名目で戦争したプーチンは絶対にウクライナ東部から離脱できない。かくして、戦争は続く。ウクライナ、ロシアともに疲弊する。
米国の政治作家、ダイアナ・ジョンストンは3月16日、「ワシントンにとり、戦争は終わらない(For Washington,War Never Ends)」という論文を発表。「米国の目的はウクライナを救うことではない。ロシアを破壊することだ。だがそれには時間がかかる。もはや、ロシアは自ら戦争を終えることはできない。米国はあらゆる手段を講じて戦争を継続させる」と予言していたが、事態は彼女の予言通りに展開している。
そして、「米国はあらゆる手段を講じて戦争を継続させる」という戦略の下に“踊っている”のがゼレンスキー大統領なのである。彼を大統領に選んだ国民にそのツケが重くのしかかっている。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。