ジャーナリストの本澤二郎氏が、「プーチンと死の商人と」と題した記事を出しました。
テーマは多岐にわたっていますが、前段は、最初の節 <「ウクライナ オン ファイアー」(ストーン監督の記録映画)を見るべし> で、これまで「ゼレンスキーに同情ばかりしたが、しばらくして彼が市民を盾にして粋がるナショナリストだと分かってきた」「改めて彼が民主主義の衣をかぶった、過激な民族主義者であることを理解することができる」として、ウクライナ侵攻問題に触れ、<死の商人を警戒せよ、警戒せよ!> の節から始まる後段では軍需産業・産軍複合体の問題に触れ、最終段の節 <メディアの情報操作から身を守る知恵が生きる道> で「メディアの情報操作から身を守れる人間になれ、との指摘に頷くばかりだ」と全体を結んでいます。
ところで「死の商人」にまつわる軍事費を、自民党の安全保障調査会は、NATOの加盟国が対GDP比2%以上を目標にしていることを念頭に、日本も5年をメドに同程度の予算水準の確保を目指し、必要な予算を積み上げるとの提案を行うということです。まさに「便乗値上げ」もいいところで呆れるばかりです。
「軍事対軍事」あるいは「軍事には軍事で」の行き着く先に何があるのか知らないのでしょうか。ウクライナ侵攻はプーチンに非があるのは明らかですが、ゼレンスキーが、あれほどまでにあからさまにロシアやドンバス住民に敵対的な態度を取らなければ、こういう事態にはならなかった筈です。
憲法9条を持つ日本はその点にこそ注目すべきであり、活路を求めるべきです。
NHKの記事を併せて紹介します。
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プーチンと死の商人と
本澤二郎の「日本の風景」2022年04月15日
<「ウクライナ オン ファイアー」(ストーン監督の記録映画)を見るべし>
現在の日本を語ろうとすると、どうしても近現代史を知る必要がある。明治・大正・昭和の歴史、特に侵略戦争の背景を知らないと、現在の自民党の、特に安倍政権の本当の姿形がわからない。誤解してしまい、その結果、誤魔化されるだけである。
同じことがウクライナにおいても通用する。尊敬する弁護士に言われて、昨夜米国の反骨の記録映画監督オリバーストーンの「ウクライナ オン ファイアー」をYoutubeで見た。プーチンがウクライナに軍事侵攻した場面では、不勉強のためゼレンスキーに同情ばかりしたが、しばらくして彼が市民を盾にして粋がるナショナリストだと分かってきた。
ストーンのウクライナの近代史の記録映像から、改めて彼が民主主義の衣をかぶった、過激な民族主義者であることを理解することができる。喧嘩両成敗が正しい。特に戦争の場合は、そうである。双方に非がある。
<核の時代に戦争はいかなる事由があろうとも反対>
軍事力で圧倒的に勝るロシアの独裁者が、西側の軍事同盟であるNATOの東方拡大作戦は、過去における米ソのキューバ危機を連想させる。この時、米国大統領は、核戦争を覚悟した。一触即発の場面で、ソ連のフルシチョフが妥協して危機は回避された。キューバは米国の裏口、ウクライナの軍港はロシアの玄関口に相当する。
プーチンが怒り狂うのも理解できるが、その解決のための手段方法が間違っている。砲艦外交でケリをつけようとして、見事に失敗した。ゼレンスキーの背後を、鉄壁のように防御していたバイデンの米国を甘く見ていた。かくして現在の国際的力学ではるかに勝る中では、プーチンが戦争犯罪者としての汚名を着せられるだろう。
77年前の日本では、勝利者の連合軍側が、理屈に合わない不条理な処理をした。このことが、今日の日本政治の民主化にブレーキをかけている。知識人は分かっているはずだったろうが、日本の国民も審判を下さなかった。戦争犯罪者の最高責任者を罰しないという不条理な処理は、いよいよ夏の参院選後に浮上することになろう。2022年危機は、戦後最大のものとなろうか。今後の日本と東アジアに、深刻な不安定要因となろう。心配である。
<ウクライナを笑えない日本の戦後体制>
繰り返すが、連合軍も主権者の地位を手にした国民も、昭和天皇の戦争責任を問わなかった、その悲劇は日本国憲法の第一章に明記された。同時に、たとえそうだとしても、天皇自ら退位するという決断をしなかった、これも不可解である。
そして悲劇は、天皇擁護の右翼陣営から、繰り返し憲法改正論が飛び出し、それが夏の国政選挙の後から、激しく噴き出そうとしているが、多くの国民にその覚悟が出来ていない。侵略戦争の教訓を生かした憲法の平和主義に対して、右翼政権がまき散らしてきたナショナリズムへの情報操作に屈するかもしれない。戦争反対派は国民多数に及んでいるのだが。
天皇を神とする右翼陣営は、戦争する国・軍国主義による利権アサリに狂奔している。すなわち武器弾薬造りの財閥の傀儡となって、そこに肩入れしている。歴史の教訓を排除する日本に対して、隣国も身構えている。既に助走が見られる。同じくウクライナの内部抗争に関与するロシアとアメリカなどNATO諸国によって、キエフの今後も揺れ動くのであろうか。悲劇だ。
<死の商人を警戒せよ、警戒せよ!>
「死の商人」について少し触れてみたい。武器弾薬を販売して巨利を手にする輩や組織体の蔑称である。駆け出し記者のころ、平和軍縮派の宇都宮徳馬さんが、米国の産軍複合体のことをよく語ってくれて、ワシントンの危険な体制を知った。「彼らは世界各地の緊張を利用してますね」と問いかけると、彼は「そうだ、緊張がないと、緊張を作り出すんだよ」という説明に納得した。緊張は作り出せるのだ。
宇都宮さんの父親は、佐賀出身の陸軍大将・宇都宮太郎だ。長州の山県有朋に対抗して屈しなかった、との説明を受けたが、大勢は動かなかった。「軍人は勲章を欲しがって困ると親父は言っていた」「軍人の中に戦争好きがいる」のである。しかし、もっと怖い存在は、武器弾薬メーカーである。産軍体制は日本にも存在したことになる。
日本占領軍は真っ先に軍と財閥を解体した。国家神道も廃止した。しかし、これら死の商人は間もなく復活した。その先頭に立っているのが、主に自民党の清和会だ。首相を辞めた後も清和会を率いて恥じない。死の商人の輪は大きく広がっている。
<復活してしまった戦前体制=国民は屈してはならない>
気付くべきだ。首都のそばに横田基地がある。北に三沢基地、神奈川に原水基地の横須賀基地、そして沖縄は基地だらけだ。こんな外国があるだろうか。日本だけである。日本独立はいつの日か。
神国派は、憲法を改悪して、日本を核武装することが独立を意味すると考えているのであろうか。愚かでお粗末すぎる。武器弾薬は、平和を約束しない。死の商人は、世界各地で緊張を作り出し、戦争を起こそうとしている。
<メディアの情報操作から身を守る知恵が生きる道>
ワシントンの罠にはまったプーチンは、有能な国民の命や生活を守る指導者とは言えない。米国の死の商人の策略に乗ってしまったゼレンスキーも、善良な政治指導者ではない。日本もまた、この戦争の輪にはまってしまっている。日本の危機でもある。
確かストーン監督は「情報操作に要注意」と警鐘を鳴らしている。メディアの情報操作から身を守れる人間になれ、との指摘に頷くばかりだ。
2022年4月15日記
(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)
自民が提言原案 “防衛費を5年めどに対GDP比で2%水準に増額”
NHK NEWS WEB 2022年4月16日
政府の国家安全保障戦略などの改定に向けて、自民党が提言の原案をまとめ、防衛費について、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産に対する割合で2%以上を目標にしていることを念頭に、日本も5年をめどに同程度の予算水準の確保を目指すとしています。
自民党の安全保障調査会は、国家安全保障戦略など安全保障関連の3つの文書を年末までに改定する政府の方針を受けて、提言を検討しており、その原案をまとめました。
原案では、防衛費についてNATOの加盟国が対GDP比2%以上を目標にしていることを念頭に、日本も5年をメドに同程度の予算水準の確保を目指し、必要な予算を積み上げるとしています。
NATOの防衛費には、沿岸警備の予算なども含まれていて、同じ基準で換算した昨年度の日本の防衛費は、対GDP比で1.24%になり、原案ではこれを増額していくべきだとしています。
一方、敵のミサイル発射基地などを破壊する、いわゆる「敵基地攻撃能力」をめぐっては「ミサイル技術の急速な変化・進化によって、迎撃のみでは、我が国を防衛しきれないおそれがある」として「専守防衛」の考え方のもとでこうした能力を保有し、対象は基地に限定せず、指揮統制機能なども含めるよう求めています。
調査会では「敵基地攻撃能力」の名称変更を求めることにしていますが、新たな名称は結論が出ておらず、来週さらに検討を進め、今月中に提言をとりまとめる方針です。