日本の核兵器に関する政策を決めるのが外務省というのは大いに違和感がありますが、「アメリカの傘の中にあり続ける」ことが日本の不動の戦略であるということを前提とすれば、(官僚は)外務省の所掌であると考えるということでしょうか。
しかし半世紀以上も信奉してきたその戦略は、ここにきて俄かに破綻の兆しを見せてきました。
核の脅威を取り除くためには即時完全廃絶以外にはないことは、数十年も前に確立されていた方法論でした。逆に核を相互に持ち合うことで「平和」と安定が保たれるという「核抑止」論の破綻は明瞭になりました。
今こそ、日本は虚妄の「核の傘論」を捨て去り、核兵器禁止条約に参加し、核廃絶の先頭に立つことが求められています。
しんぶん赤旗が取り上げました。
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破綻明らか「核抑止力」論 核の脅威をとりのぞくには廃絶以外にない
しんぶん赤旗 2022年4月4日
ロシアのプーチン大統領による核の先制使用の隙隙でヽ核戦争の危機が現実のものとなっています。互いに核を持つことで平和が保たれるという「核抑止力」論の破綻はいよいよ明白です。日本共産党の志位和夫委員長は、いち早く「核抑止力」は無力となったと指摘。核の脅威を取り除くには核兵器廃絶以外にないと呼びかけてきました。いま、各方面の識者、専門家からも「核抑止」の崩壊、破綻が指摘されています。(中祖寅一)
指導者の合理的思考前提 それを覆したプーチン氏
「核抑止」とは、互いに核を保有することで核戦争が回遊されるという考え方です。
例えば、核保有国の間で、A国による核攻撃でB国に壊滅的打撃を与えても、潜水艦などで生き延びたB国の核による報復攻撃でA国も致命的打撃を受ける - こうなると互いに核攻撃ができず、結果として 「平和」が保たれるとされてきました。1960年代に米国のケネディ・ジョンソン両政権のもとで国防長官だったロバート・マクナマラ氏が提唱したものとされ、「相互確証破壊戦略」ともいわれます。
しかし、核兵器が存在する以上、核戦争の危険がゼロといえるのかという根本問題は存在し続けてきました。
例えば、偶発的戦争の危険や、紛争がコントロールできずにエスカレートし核戦争に至る危険など、その落とし穴はあいまいなまま放置されてきました。
同時にこの枠組みは、合理的に行動する指導者の存在を前提にするものでした。プーチン大統領は「ロシアの存在しない世界は無意味」だとしており、自国民の滅亡も辞さないというような権力者のもとでは、相互確証破壊による平和の確保という論理は成り立ちません。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「プーチンが核の先制使用を公言する中で、いま『核抑止』は揺らいでいる。米国1強の世界で、ロシアのように敵対的な関係にある国との一定の交渉や対話を通じた『信頼』が揺らぐ中で核抑止が揺らぐ。それがまさに今回の事態であり、互いに核を持ち合えば平和が保たれるというのは幻想の世界に入ってきた」と語りました。さらに同氏ば「もともと1990年代の終わりから単独行動を強めた米国は、イランや北朝鮮などをターゲットに核の先制使用のオプションは持ってきた。この点でも核抑止は一種の幻想だ」と語ります。
米ソ時代に続けられてきた戦略核や中距離核ミサイルの削減や管理のための交渉は途絶えてきました。孫崎氏は「『好き嫌い』ではなく、衝突を避けるための意思疎通や交渉のための直接的な対話のルートをつくることが急務だ」と強調します。
他方で「核抑止は、裏を返せば、先制攻撃を受けて自分が死ぬことを覚悟することで、相手の攻撃を回避するというもの。普通の人には理解できない話だ。そういうはかな話でしか核の安定はないというのが歴史だ。現在のように相互の意思疎通が難しい状況では、先に撃つことが最も簡単で確実ということにもなる」と語りました。
核武装強化主張する逆流 被爆国こそ廃絶の先頭に
ところがこうしたもとで、「核抑止」の強化、すなわち核による武装の強化を主張しているのが安倍晋三元首相であり、日本維新の会です。核共有とは、米国の核兵器を同盟国内に配備し、核兵器を共同で運用する政策とされ、平時には米国が核弾頭を管理し、有事には同盟国が航空機に搭載して使う想定というものです。
安倍氏は「産経」3月26日付で、自らが「核共有」を主張してきた経緯に触れ「今の日本は日米同盟に基づいて日本の周辺国に対し抑止力を持つ『核の拡大抑止(核の傘)』の中にありますが、この機能の確実性をどう確保するかも大切です」などと述べています。
日本維新の会も3月3日に外務省に提出した「緊急提言」で「核共有」を主張。「ロシアが核による威嚇という暴挙に出てきた深刻な事態を直視し、核共有(二ュークリア・シェアリング)による防衛力強化等に関する議論を開始する」としました。
「核共有」で、米国の核の傘の機能の「確実性を確保」という安倍氏は、仮に米国がためらっても、日本の自衛隊が核の行使に主体的にかかわることで日本の平和が守れると主張しています。
しかし、核を相互に持ち合うことで「平和」と安定が保たれるという「核抑止」の破綻のもとで、核を相互に持ち合うことは、まさに破滅的な核兵器の撃ち合いになりかねません。「先手必勝」とぱかりに、先制核攻撃への「誘惑」はますます強まります。自衛隊機が、他国に第3、第4のヒロシマ・ナガサキをつくりだすことを認めることなど絶対にあってはなりません。
唯一の戦争被爆国の政治家、政党としてまさに失格です。
日本国憲法9条が一切の戦力の不保持を定めた背景には、史上初めての戦争被爆体験があったことは間違いありません。今こそ、日本は核兵器禁止条約に参加し、核廃絶の先頭に立つことが求められています。