15日、いわゆる文書交通費を日割りでの支給に改めるための法律が成立しました。国会議員に毎月100万円支払われる「文書通信交通滞在費」は、名称を「調査研究広報滞在費」に変更し、議員任期が始まるときや任期満了、議員辞職などの際は日割りでの支給に改められました。与野党は使いみちの範囲や、その公開のあり方、それに使わなかった分の国庫への返納など、残る課題について協議を続けることにしていますが、各党が合意できる可能性は殆どありません。
この件について植草一秀氏が「与野党が文通費骨抜き法改定」とする記事を出し、問題点を分かりやすく解説しているので紹介します。因みに共産党はこの法律に反対しました。
併せて、くろねこの短語氏の記事「 ~ 『使途公開』はそのままで『使用目的拡大』の焼け太り!!」を紹介します。
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与野党が文通費骨抜き法改定
植草一秀の「知られざる真実」 2022年4月15日
使途の公開義務がなく非課税、月のうち1日でも在職すれば議員1人に1ヵ月分100万円が支給される文書通信交通費の制度変更が国会で論議されてきた。
発端は昨年10月31日の衆院総選挙。
10月の在職日数が1日しかないのに1ヵ月分が支給されたことで問題が表面化した。
自民と立憲民主党などは制度を日割り支給に変更する改正法案を4月14日に衆院を通過させる方向で一致。法案は4月14日に衆院本会議で可決された。
4月15日にも参院で可決、成立する見通しだ。
「文書通信交通滞在費」の名称が「調査研究広報滞在費」に変更される。
昨年12月の臨時国会で論議されたが自民党が法改正を先送りした。
日割り支給を優先させたい与党側と領収書添付による使途公開や未使用分の国庫返納を可能にすることを求めた野党側の主張が対立し、法改正が見送られたとされる。
しかし、今回の決着を見ると、野党が使途公開と国庫返納の主張を貫いたと言えない。
これらの重要点をうやむやにしたい自民党に他党が同意したとしか見えない。
共産党だけが反対した。
使途公開、国庫返納については今国会中に結論を得ることとしているが法改正時に決着しなければうやむやにされるのが通例だ。
しかも、「文書通信交通滞在費」から「調査研究広報滞在費」への変更は使途拡大を意味する。つまり、何に使ってもよい資金を使途公開なし、国庫返納なしの制度に変更することになる可能性が高く、改悪以外の何ものでもない。
使途公開、国庫返納については議員関連団体への寄付禁止を盛り込まなければ、これが抜け穴になるため、使途公開、国庫返納、議員関連団体への寄付禁止を一括して法改正に盛り込むべきだ。
本ブログ、メルマガでは昨年12月以来、
12月11日付 「「政治とカネ」核心は政策活動費」https://bit.ly/3epGIRe
12月13日付 「維新は組織活動費使途開示すべし」https://bit.ly/3sE8ZMt
12月20日付 「国民・維新は政策活動費公開せよ」https://bit.ly/3svagVW
12月21日付 「1日で100万円文通費温存を決定」https://bit.ly/30W9Igi
12月26日付 「「政治とカネ」透明化拒絶の自公維国」https://bit.ly/339oL6Y
1月6日付 「巨額の不透明政治資金を糺す」https://bit.ly/3OcpdEE
などに問題を記述してきた。
「政治とカネ」の問題は文通費だけにとどまらない。重大問題が放置されている。
第一は、政党から政治家個人に対する寄付が認められていること。
第二は、企業団体献金が認められていること。
政党から議員個人への寄付が認められている問題が「政策活動費」、「組織活動費」の問題。
「政党から政治家個人に寄付された資金は使途を公開する義務がないという法の抜け穴を各党が活用し、巨額の資金が党幹事長らに流れ込み、使途が不明のままとなっている」という問題。
政治資金収支報告書の提出が義務付けられ、内容が公開されることで、議員の資金管理団体や政治団体の収支に対する監視が強化されてきたが、この現行制度に大きな抜け穴が存在している。これが「政策活動費」、「組織活動費」問題。
2020年の政治資金収支報告書での「政策活動費」に該当するものは、
自民党9億8330万円、
日本維新の会4497万円、立憲民主党3000万円、社会民主党1480万円、れいわ新選組240万円。
現在の国民民主党に支出はなかったが、2020年9月に解党する前の旧国民民主党では2億7000万円が支出されている。
この巨大な資金が政党から政治家に渡り、何にどのように使われたかが一切公開されていない。
政治資金規正法を改正して政党から政治家個人への寄付を禁止することが必要不可欠だが、今回の法改正は、文通費についてすら適正な改正を行えない日本政治の現状を浮き彫りにした。
本年7月10日の参院選で「政治とカネ」問題を最重要争点に位置付ける必要がある。
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(以下は有料ブログのため非公開)
「調査研究広報滞在費」に改称して、文通費改正法案が今日成立!! 「使途公開」はそのままで「使用目的拡大」の焼け太り!!
くろねこの短語 2022年4月15日
こういうのを焼け太りって言うのだろう。なんと、国会議員に100万円もの大金が支給される「文書交通滞在費」の改正案が、使途公開は置き去りにしたまま使用目的を大幅に緩和して、共産党以外の与野党賛成で今日成立する。
・文通費、日割り支給法が衆院通過 参院で15日に成立へ
・手放せぬ既得権益「文通費改正」与野党合意の欺瞞 国会議員の「第2の給与」、使途公開など先送り
そもそも、文通費問題は、「1日だけの議員在籍でも100万円支給」が発端だったんだね。そこで浮上したのが日割り計算で、そんなところでお茶を濁そうとしたら、ただでさえコロナ禍で四苦八苦している一般大衆労働者諸君からの怨嗟の声が高まり、文通費の最大の焦点である「使途公開」を含めた法改正に向けて動き出した・・・はずだったのだ。
それが、どこでどう捻じれちまったのか、「使い道の公開」や「使わなかった分の返納」についてはまったく無視したまま、「任期の開始や満了の月などについて日割りの支給」だけでシャンシャンとなってしまった。
しかも、「調査研究広報滞在費」に名称変更というおまけ付きだ。「調査研究広報滞在費」となると、たとえば居酒屋で飲み会やっても、「調査研究のための集会」ってことにすれば堂々と使えちまう。もちろん、領収書もいらないから、やりたい放題がさらに深まったというわけだ。
文通費ってのは経費なんだから、領収書による事後精算が当たり前だろうに、法改正を隠れ蓑にして議員特権をさらに拡大しようってんだからしベラボーな話なのだ。
立憲の「なぜ君は総理大臣になれないのか」の小川君が「日割り実現は途中経過に過ぎない。必ず透明化の部分に結論を出す」なんてほざいているが、それをするのが「今でしょ!」
(後 略)
“文書交通費”日割り法成立 残る課題の各党合意は不透明
NHK NEWS WEB 2022年4月16日
いわゆる文書交通費を日割りでの支給に改めるための法律が成立したことを受け、与野党は使いみちの範囲や公開のあり方など、残る課題について協議を続けることにしていますが、今の国会で各党が合意できるかは不透明な情勢です。
国会議員に毎月100万円支払われる「文書通信交通滞在費」は、1か月の在職日数が1日でも、全額が支払われる仕組みとなっていましたが、きのう成立した法律に基づいて、名称を「調査研究広報滞在費」に変更し、議員任期が始まるときや任期満了、議員辞職などの際は日割りでの支給に改められました。
自民党や立憲民主党など与野党6党は、使いみちの範囲や、その公開のあり方、それに使わなかった分の国庫への返納など、残る課題について協議を進め今の国会で結論を得ることを確認しています。
ただ、使いみちの範囲を具体的に決めるのは難しいという指摘や、領収書の公開などを義務づけた場合には事務負担が増えるという懸念も出ていて、会期末まで2か月を切る中、今の国会で各党が合意できるかは不透明な情勢です。