遠藤誉・筑波大学名誉教授が、「ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!― アメリカとフランスの研究者が」とする記事で、シカゴ大学のミアシャイマー教授が3月3日に「ウクライナ戦争を起こした責任はアメリカとNATOにある」という動画を発表したことを紹介しています。
⇒(4月15日)ウクライナ戦争の責任はアメリカにある! 米・仏の研究者が(遠藤誉氏)
21日付の長周新聞に、ミアシャイマー教授の発言の概要が載りましたので紹介します。
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「ウクライナ戦争勃発の責任は米国に」シカゴ大学・ミアシャイマー教授の発言
長周新聞 2022年4月21日
米国の国際政治学者でシカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマー氏が、3月4日にYouTubeで公開した動画で「ウクライナ戦争勃発の第一の責任は米国にある」と発信している。ミアシャイマー氏は動画で、NATOの東方拡大、米国による日本への原爆投下や空襲、キューバ危機などについて言及し、欧米側がエスカレートさせているロシアを追い詰める行動が核戦争の危機を引き寄せていることに警鐘を鳴らしている。
ミアシャイマー教授は動画内で、ウクライナ危機に関して「今回の危機の原因を明確にすることは責任の所在を明らかにする上で非常に重要」と強調している。そして「西側諸国、特に米国がこの危機を引き起こした」という見解と「ロシアが危機を招いた」という見解が二分している現状にふれ、危機を引き起こした側がウクライナ危機に伴う大惨事の責任を負わなければならないと指摘した。
そのうえで「現在、米国や西側諸国はロシアに責任があり、とくにプーチンに責任があると主張しているが、私はこの主張をまったく信用していない。私は今日起きていることの第一の責任は西側にあると考えている」と明言。
「2006年4月、NATOがウクライナとジグルジア(ジョージア)をその一員とすると決定したことが主な原因だ。NATOは何があろうともウクライナをNATOに引き入れるつもりだった。しかし当時、ロシア側は、絶対に容認できないと反発した。当初はグルジアもウクライナもNATOの一員になるつもりはなかった。そんなことをすれば自国に極度の緊張をもたらすため、自身で一線を画していたからだ。だがグルジアがNATOに加盟するかどうかという問題が起こり、ロシアとグルジア間で戦争が起こった」「このとき西側には三つの戦略があった。核になったのは、ウクライナをNATOに統合することであり、他の二つの柱はウクライナをEUに統合するとともに、ウクライナを親西欧の自由民主主義国家にし、“オレンジ革命”を成就させることだった。これはすべて、ロシアとの国境に接するウクライナを親欧米の国にするための戦略だった。このときロシアは“こんなことはさせない”と明確に反論していた」と指摘した。
さらに「私が考えたいのは、2014年2月に“クリミア併合”という大きな危機が発生したことだ。昨年12月に再び大きな危機が発生し、今年の2月24日、ついにウクライナ戦争が始まった。この2014年2月には、陰で米国が支援する“マイダン革命”というクーデターが起き、ヤヌコヴィッチ大統領が倒され、親米派の大統領代行(トゥルチノフ)が後任となった。ロシアはこうしたなかでEU拡大について、西側やウクライナと激しく議論していた。この時期の背景には、常にNATOの東方拡大があった」と強調。
それがクリミア併合やウクライナ東部の内戦を発生させたことにもふれ、「この内戦が2014年以降、今日まで8年間も続いている。危機は2014年に爆発し、昨年半ばから再び過熱し始め、昨年末に2度目の大きな危機が訪れた。この危機を引き起こしたのは何か? 私の考えでは、ウクライナが事実上NATOの一員になりつつあったことが大きな要因だ」との見解を示した。
また、西側諸国の「ロシアはウクライナがNATOの一員になることを恐れることはなかった」という主張について「事実は違う」と反論。「米国がおこなったことは、ウクライナ人を武装させることだ。2017年12月、トランプ大統領はウクライナ人の武装化を決定した。米国はウクライナ人を武装させ、ウクライナ人を訓練し、ウクライナ人とこれまで以上に緊密な外交関係を結んでいた。このことがロシアを刺激した。昨年夏にはウクライナ軍がドンバス地域の親ロシア派住民に対して無人爆撃機を使用した。昨夏にイギリスが黒海のロシア領海を駆逐艦で通過したときも、ロシア沿岸から約20km以内の地域を爆撃機で飛行し、ロシアを挑発した」「ロシアのラヴロフ外相は今年1月、“なぜロシアがこのような状況になったのか”と問われ、“NATOの東方拡大やウクライナに関連する一連の軍事的挑発でロシアへの脅威が沸点に達した”と答えた。その結果、2月24日にロシアがウクライナに侵攻した」とのべている。
加えて、米政府要人などによる「(ロシアの侵攻と)NATOの東方拡大とは関係ない」という主張についても「ロシアの側は2008年4月以来、“NATOは東方拡大こそが目的であり、NATOのウクライナへの進出はロシアにとっての存亡の危機だ”と指摘し続けているのに、どうしてそんなことがいえるのか。まったく理解不能だ」と批判している。
西側諸国が「ウクライナはロシアをうち負かす」と色めき立っていることについて、「これは、2008年の南オセチア紛争や2014年に月のクリミア紛争よりもずっと悪い結果をもたらすことを認識すべきだ」と指摘した。
そして「太平洋戦争の末期、米国が何をしたかわかるだろうか? 終戦間近の1945年3月10日から、アメリカは日本各地の大都市の無辜の市民に、次々に無差別空襲爆撃をおこなった。その後、東京に最初に特殊爆弾(焼夷弾)を投下し、一夜にして広島や長崎の犠牲者よりもっと多くの一般市民を焼き殺したのだ。実に計画的かつ意図的に、アメリカは日本の大都市を空襲で焼き払ったのだ。なぜか? 大国日本に脅威を感じているときに、日本の主要な島々に直接軍事侵攻したくなかったからだ」「かつてのキューバ・ミサイル危機を思い出してほしい。キューバ危機で起こったことは、今回の状況ほど米国を脅かすものではなかったと思う。だが米国政府がどう考えていたか? 当時を振り返って見てほしい。米国は極度に脅威を感じていた。キューバにソ連のミサイルが配置されることは米国存亡の危機であるとみなし、ケネディの顧問の多くはソ連に対して本当に核兵器を使用することを計画していた」と強調。そのうえで「大国が存亡の危機に直面すると、これほどまでに真剣になる。だからこそ世界は今、極限的に危険な状況にある。核戦争の可能性は非常に低いと思われるものの、核兵器使用の可能性を完全に排除できない今、その結果を想像すると私は本当に怖ろしいと感じる。したがって米国も西側もロシアを追い込む行動には、細心の注意と自制心を払うことが最も重要だ」とのべている。
そして「ここで起こったことは、米国がウクライナを花で飾られた棺へとを誘導していった結果だ。米国はウクライナがNATOの一員になることを強く勧め、ウクライナ人をNATOの一員にするよう懸命に働きかけた。ロシアが“それは受け入れられない”とはっきりいったにもかかわらず、米国はウクライナをロシア国境の西の防波堤にしようと懸命に働きかけた」「米国は棒で熊の目を突いたのだ。当然のことながら、そんなことをすれば熊は反撃に出る。ここで起きている米国とロシアの対立は、まさにそういうものだ」と指摘している。
ミアシャイマー教授は最後に「今回のもっとも重要な問いかけに戻ろう。一体誰が、今回のウクライナ戦争の責任を負うのだろうか? ロシアが責任を負うのか? 私はそうは思わない。もちろん私はロシアの行為をたいした問題ではないなどと軽んじるつもりはまったくない。だが、誰が責任を負うべきか? という問いについての答えは、非常に簡単だ。それは米国だ」と結論づけている。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。