21年度に計上した在日米軍関係経費の総額が8242億円と過去最大となりました。防衛省が共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料から判明しました。世界でも例のない、たがが外れた米軍奉仕です。
本来は日米地位協定24条で、米軍駐留経費については土地の賃料などを除いて、全ての経費は米国が負担することになっているのですが、1978年度に始まった米軍「思いやり予算」を皮切りに、沖縄に関する日米特別行動委員会経費(97年度~)、在日米軍関係経費(2006年度~)と、支払い義務がない費目が次々に追加されてきました。21年度は、これら三つの費目の合計が4205億円で、全体の5割以上を占めています。
加えて日本は今年1月、新たな思いやり予算特別協定に署名しました。5年間で、過去のそれよりも約1086億円増の1兆0551億円に及ぶ見込みです。
しんぶん赤旗が報じました。
安倍元首相らはロシアのウクライナ侵攻を口実にして、米国との「核共有」や軍事予算の倍増、そして憲法9条の改変等を強調しています。
NHKは7日、「共産 志位委員長『憲法9条を生かす外交戦略こそ いま必要』」とする記事を出しました。これは共産党の地方組織代表者会議での志位委員長の報告から「戦争か平和か」の部分を要約したものです。
NHKの記事と志位報告の関連部分を併せて紹介します。
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在日米軍経費が過去最大8242億円 「思いやり」新協定でさらに増額も
21年度
しんぶん赤旗 2022年4月10日
日本政府が2021年度に計上した在日米軍関係経費の総額が8242億円と過去最大となったことが、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料から判明しました。国民生活は後回しで、世界でも例のない、たがが外れた米軍奉仕を根本から改める必要があります。
日米地位協定24条では、米軍駐留経費について、土地の賃料などを除いて、全ての経費は米国が負担することとしています。ところが、1978年度に始まった米軍「思いやり予算」を皮切りに、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費(97年度~)、在日米軍関係経費(2006年度~)と、米側の要求に応じ続け、地位協定上、支払い義務がない費目が次々に追加されていきました。21年度は、これら三つの費目の合計が4205億円で、全体の5割以上を占めています。
際立っているのが、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をはじめとした在日米軍再編経費です。今後、馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)移転など、さらなる増額が見込まれます。
加えて、日米両政府は今年1月、新たな思いやり予算特別協定に署名。5年間で、16~20年度より約1086億円増の1兆551億円に及ぶ見込みです。
共産 志位委員長「憲法9条を生かす外交戦略こそ いま必要」
NHK NEWS WEB 2022年4月7日
ウクライナ情勢を踏まえ、共産党の志位委員長は、いまこそ憲法9条を生かす外交戦略が必要だと指摘したうえで、夏の参議院選挙では、9条改定を阻止するため、与党などと対じする姿勢を強調しました。
共産党は地方組織の代表を集めた会議を開き、志位委員長が夏の参議院選挙に向けた方針を報告しました。
この中で、志位氏は「ロシアの侵略を見て『日本の平和は大丈夫か』と心配する声があるが、相手が軍事や核兵器の論理で来たときに、同じ論理で対抗して『軍事対軍事』の悪循環に陥ることがいちばん危険だ。憲法9条を生かす外交戦略こそ、いま必要だ」と指摘しました。
そのうえで「危機に乗じて憲法9条を改定し日本を危険な道に引き込む動きに、ストップの審判を下す」と述べ、与党だけでなく、日本維新の会や国民民主党とも対じしていく姿勢を強調しました。
一方、憲法9条については「無抵抗主義ではなく、個別的自衛権は存在している。万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくのが党の立場だ」と述べました。
三.戦争か平和か――日本の進路が根本から問われる選挙
(「参議院選挙勝利・全国総決起集会 志位委員長の幹部会報告」より抜粋)
しんぶん赤旗 2022年4月8日
(前 略)
危機に乗じた9条改憲を許さず、9条を生かした平和の外交戦略を
(中 略)
ロシアの侵略を見て、また日本をとりまく状況を見て、「日本の平和は大丈夫か」という心配の声があります。しかし、相手が「軍事、核兵器、力の論理」できたとき、こちらも「軍事、核兵器、力の論理」で対抗すればどうなるでしょうか。「軍事対軍事」の悪循環に陥り、それがエスカレートすることが一番危険ではないでしょうか。憲法9条を生かし、東アジアを平和な地域にする外交戦略こそ、いま必要ではないでしょうか。
岸田政権、維新の会の危険な暴走――平和を壊す「翼賛体制」を許さない審判を
一番危険な道を行くのが岸田政権であります。
いま岸田首相が、危機に乗じて叫んでいるのが、「日米同盟の強化」と憲法9条改定です。岸田首相は、「敵基地攻撃能力の保有検討」を繰り返していますが、「敵基地攻撃」とは一体どういうものか。それはミサイルを一発撃つという話ではありません。相手国の領域にのりこみ、レーダーや対空ミサイルなどをしらみつぶしに破壊し、さらに制空権を確保して、地下施設を含めて大規模な空爆を行う――相手国を焼け野原にするような一連のオペレーション(作戦)を行うことを「選択肢の一つ」だと岸田首相は国会答弁で認めました。岸防衛大臣は、相手国の領空に入って軍事拠点を爆撃することも「排除しない」と答弁しました。
重大なことは、いま議論されている「敵基地攻撃」というのは、かつて議論されてきたものとまったく違うものだということです。安保法制が強行される以前に議論されてきた「敵基地攻撃」は、専守防衛を建前とする自衛隊を前提としていました。しかし、いま議論されている「敵基地攻撃」とは、集団的自衛権行使を可能にする安保法制のもとでの「敵基地攻撃」というところに新しい重大な危険があります。すなわち日本が攻撃されていなくても、アメリカが戦争を始めれば、アメリカの相手国に対して、自衛隊が米軍と一体に「敵基地攻撃」をしかけることになります。それは、「日本を守る」こととは全く無縁であり、相手国から見れば先制攻撃そのものになります。
これを日本国憲法が永久に放棄した「戦争」と呼ばずして何と呼ぶのか。いま議論されている安保法制のもとでの「敵基地攻撃」が、憲法9条とは絶対に相いれないものであることは明らかではありませんか。だからこそ、こうした危険な道に大きな歯止めになってたちはだかっている憲法9条を改定しようというのであります。
(中 略)
さらに悪質なのが維新の会であります。維新の会は、安倍元首相と一体に、日本とアメリカで核兵器を共有する「核共有」の議論を党の公式の方針に掲げています。この動きに対して、日本被団協が「日本国民を核戦争に導く危険きわまりない提言」と抗議し、撤回を求める声明を発表するなど、強い批判の声があがっているのは当然です。ウクライナ侵略で、プーチン大統領が核兵器を使用する現実の危険があるときに、「日本も核を持つ」という議論を始めること自体が、どんなに危険なことかをこの政党は理解できないのか。世界の国ぐにが「核を持つ」という方針をとったら、人類は文字通り滅亡の淵においやられることになります。
(中 略)
日本共産党の「外交ビジョン」――9条を生かし東アジアを平和と協力の地域に
どうやって東アジアを平和な地域にしていくか。
日本共産党は、抜本的対案を示しています。私たちが注目しているのは、ASEAN(東南アジア諸国連合)のとりくみです。ASEANは、東南アジア友好協力条約(TAC)を締結し、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する努力を徹底して積み重ね、東南アジアに平和の地域共同体をつくりあげてきました。さらにASEANは、この流れを域外に広げ、ASEAN10カ国と日米中など8カ国で構成する東アジアサミット(EAS)を強化し、ゆくゆくは東アジア規模での友好協力条約を展望しようという壮大な構想を明らかにしています。2019年のASEAN首脳会議で採択されたASEANインド太平洋構想(AOIP)であります。
いま日本政府がとりくむべきは、「敵基地攻撃」などという物騒な話ではなく、ASEAN諸国と手を携え、東アジアサミットという、すでにつくられている平和の枠組みを活用・発展させて、東アジアを平和と協力の地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交ではないでしょうか。わが党は、この方向にこそ東アジアに平和をつくる唯一の道があると確信するものであります。
こうした日本共産党の「外交ビジョン」は、軍事同盟のような外部に敵を想定する排他的アプローチでなく、包括的アプローチ――地域的な集団安全保障体制をつくっていくというものにほかなりません。私は、これこそが国連憲章の本来の精神にたった外交構想であることを強調したいと思います。またそれは、「あらゆる紛争を戦争にせず、話し合いで解決する」という憲法9条の精神を生かした提案であることを訴えたいと思います。
(中 略)
9条を守り生かすことと、命と主権を守りぬくことの両方を、統一的に追求する
ここで憲法9条と日本の平和について、さらにわが党の立場を表明したいと思います。
ロシアの蛮行を見て、「憲法9条で平和を守れるか」という声も聞きます。もちろん、憲法9条を持っているだけで平和が訪れるわけではありません。今お話ししたように、憲法9条を生かした積極的・能動的な外交を積み重ねてこそ、平和をつくりだすことができる――これが日本共産党の立場であることを、まず強調したいと思います。
それでも、憲法9条を生かした日本政府のまともな外交努力がないもとで、「外交だけで日本を守れるか」というご心配もあるかもしれません。それに対しては、東アジアに平和な国際環境をつくる外交努力によって、そうした不安をとりのぞくことが何よりも大事だということを、重ねて強調したいと思います。同時に、万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくというのが、日本共産党の立場であります。
わが党は、綱領で、憲法9条の完全実施に向けて、国民多数の合意で、自衛隊問題を段階的に解決していく方針を明確にしています。その重要な第一歩は、安保法制を廃止して、海外派兵の自衛隊を、文字通りの専守防衛を任務とする自衛隊に改革することにあります。こうした立場で、急迫不正の主権侵害にさいしては自衛隊を活用します。
ここで強調しておきたいのは、憲法9条は、戦争を放棄し、戦力の保持を禁止していますが、無抵抗主義ではないということです。憲法9条のもとでも個別的自衛権は存在するし、必要に迫られた場合にはその権利を行使することは当然であるというのが、日本共産党の確固とした立場であることも、強調しておきたいと思います。
世界に誇る憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、国民の命と日本の主権を守りぬくための政治の責任を果たすことの両方を、統一的に追求するというのが、日本共産党の立場であります。9条も命もどちらも守りぬく――全党のみなさん。わが党のこの立場を、広く国民に伝えていこうではありませんか。