自民党の安倍元首相は「敵基地攻撃」論について、「『敵基地攻撃』という言葉にこだわらない方がいい。いわば軍事中枢自体を狙っていく、軍事をつかさどるインフラを破壊していく、目標が基地である必要は全然ありません」と繰り返し述べていますが、それは「専守防衛」という憲法9条自体を全く無視した暴論です。そして軍事費の対GPD比2%への引き上げも主張し、来年度の当初予算で「6兆円程度」の確保が必要だとも述べました。「打撃力」の確保のため軍事費も天井知らずに増額させる、これが安倍氏のそもそもの目的であると考えられます。しんぶん赤旗が伝えました。
安倍派の関係者からは「安倍氏は木曜の派閥会合では毎回延々と持論を展開し、勉強会や講演会になれば勇ましいことばかり口にする。~ 一体、何を焦っているのか、焦り方が尋常じゃない」という声が上がっているということです。
安倍氏の焦りの背景としては2つの見方があり、ひとつは「検察に対する牽制」で、検察から捜査の手が伸びることを防ぐため、「マスコミに出て自分がまだ権力を持っていることを検察にアピールしようとしている」ことであり、もうひとつは「自分の健康問題で、勇ましい発言で強い自分を見せている」ことが考えられるということです。どちらにしても身勝手な話です。日刊ゲンダイが伝えました。
もう一つ、安倍氏の信頼が厚くずっと歩調を合わせてきた萩生田光一経産相が、3日のNHK「日曜討論」で「日本経済をどう立て直すか」と問われ、
<過去を振り返って、イノベーション(⇒改革・革新)がなかったことが日本の成長につながらなかったという反省は分かっているわけですから、~ >
と発言し、アベノミクスの失敗を認め 暗に批判しました。安倍氏の落日を思わせる出来事です。日刊ゲンダイが伝えました。
3つの記事を紹介します。
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安倍氏 9条無視の暴論 「軍事中枢を狙え」発言
しんぶん赤旗 2022年4月5日
自民党の安倍晋三元首相は「敵基地攻撃」論について、「基地に限定する必要はない。中枢を攻撃するべきだ」(3日、山口市)と発言しました。同氏は2月27日のフジテレビ系番組では「『敵基地攻撃』という言葉にこだわらない方がいい。いわば軍事中枢自体を狙っていく、軍事をつかさどるインフラを破壊していく、基地である必要は全然ありません」と述べています。これは「専守防衛」、ひいては憲法9条自体を全く無視した暴論です。
もともとの「敵基地攻撃」論とは、敵の誘導ミサイルなどによる攻撃を防ぐなど、相手の基地そのものをたたく以外に手段がないときに、やむを得ない手段として「可能」とされてきたもの。本来、わが国に対する攻撃を排除するための「実力行使」は、日本の領域内にとどまり、他国領域には及びえないとされたことのいわば「例外」とされているものです。相手国の基地そのものをたたく以外にないという、やむを得ない軍事的必要性から認め得るとされたもので、針の穴を通すような議論です。
根本が揺らぐ
ところが、「基地でなくてよい」ということになれば、専守防衛の例外として「やむを得ない」とされた根本が揺らぎます。
安倍氏の「基地に限定せず、軍事中枢をたたけ」という発言は、「敵基地攻撃」論の本質をあらわすもので、政府組織、国家元首(最高指揮官)の関係諸機関をも攻撃対象とせよというものです。ロシアのプーチン大統領がウクライナに対して行っている戦争行為と違いはなく、憲法9条と全く相いれません。
安保法制で憲法を破壊し、ウクライナ危機に乗じて「力の論理」を振り回す安倍氏に、もはや憲法の制約など全く見えないかのようです。
さらなる増額
安倍氏はまた、3日の発言の中で、軍事費の対GDP比2%への引き上げも主張。来年度の当初予算で「6兆円程度」の確保が必要だとも述べました。過去最大となった今年度の軍事予算は5兆3687億円で、さらなる増額を主張しています。
安倍氏のいう「打撃力」の確保のため、軍事費も天井知らずに増額させる意図が明らかです。そうなれば生活関連予算への大きなしわ寄せとなることも避けられません。
(中祖寅一)
安倍元首相が今度は「中枢攻撃」発言…派内から聞こえる「会長は何を焦っているのか」の声
日刊ゲンダイ 2022/04/05
またしても安倍元首相の発言が物議を醸している。
3日、地元・山口の自民党県連などが主催した憲法改正に向けた「総決起大会」で講演した際、防衛費に関し「2023年度は当初予算で6兆円程度を確保するべきだ」と訴え、さらに、敵基地攻撃能力の保有について「(対象を)基地に限定する必要はない。向こうの中枢を攻撃することも含むべきだ」と言い放ったのだ。「中枢攻撃」とは勇ましい。むしろ日本を危険にさらすことにならないのか。
この「中枢」発言について政府は困惑気味で、4日の記者会見で松野官房長官は「コメントは差し控える」だった。
松野氏は安倍派所属。派閥のボスを否定などできないのだろうが、実は安倍派内では、安倍氏が最近、問題発言を繰り返していることに、「会長は何を焦っているのか」と疑問の声が出ているらしい。
「木曜の派閥会合では毎回延々と持論を展開し、勉強会や講演会になれば勇ましいことばかり口にする。あえてマスコミに取り上げられることを狙っているかのよう。一体、何を焦っているのか、焦り方が尋常じゃない、というわけです」(安倍派関係者)
安倍氏の焦りの背景として2つの見方が語られている。ひとつは「検察に対する牽制」。日大事件で背任罪で起訴された医療法人前理事長の裁判が進行中。前理事長は安倍氏と懇意だった。他にも安倍氏絡みの怪しい疑惑は山ほどある。そんなことから、「マスコミに出て自分がまだ権力を持っていることを検察にアピールしようとしているのでは」(前出の安倍派関係者)という。
「健康問題」も再燃?
もうひとつは「健康問題」の再燃。スーツがブカブカだったり、痩せた感じにも見える。健康問題で2度も政権をブン投げただけに、自らの体調に神経質になっていておかしくない、というのだ。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「もともと気が小さくて神経がこまやかな人ですから、ちょっとしたことで不安になる。桜を見る会の問題でも国会で118回も嘘をついた。うしろめたい気持ちは当然あるでしょう。健康問題については、持病がある以上、常に“爆弾”を抱えているようなものです。その恐怖感を隠そうと、勇ましい発言で強い自分を見せている面もあるのではないでしょうか」
身勝手な理由で近隣諸国を刺激し、国民を危険にさらすのはやめてもらいたい。
萩生田経産相が突然アベノミクス批判…呆れた「おまえが言うな」変節に透ける打算
日刊ゲンダイ 2022/04/04
3日のNHK「日曜討論」に出演した萩生田光一経産相。原油高騰の追加対策や対ロシア経済制裁の強化などについて語っていたが、聞き捨てならなかったのは番組終了間際の発言だ。「日本経済をどう立て直すか」と問われ、こう言ったのである。
「イノベーションがなかった」
<過去を振り返って、イノベーションがなかったことが日本の成長につながらなかったという反省は分かっているわけですから、岸田内閣の『新しい資本主義』では市場に任せるだけじゃなく、官も一歩、共に前に出る>
「イノベーションがなかった」「成長につながらなかった」──。驚いたことに、安倍元首相の最側近である萩生田氏が、アベノミクスという愚策の失敗を認め、暗に批判したのである。
アベノミクスは、①大胆な金融政策②機動的な財政政策③民間投資を喚起する成長戦略が3本の矢だった。しかし結局、「異次元緩和」という1本目の矢に頼っただけ。円安誘導で輸出企業の利益拡大と株高を演出したが、企業は円安にあぐらをかき、成長につながる技術開発や投資というイノベーションが進まなかった。
だが、「おまえが言うか」と突っ込みたくなる。萩生田氏は第2次安倍政権の7年8カ月、自民党総裁特別補佐(筆頭副幹事長)→官房副長官→自民党幹事長代行→文科相と、常に要職に就き、安倍元首相をそばで支え、時に代弁者となってきた。安倍元首相と“一心同体”だったと言っていいほどだ。
2014年の総選挙時には、筆頭副幹事長として在京テレビキー局の選挙報道に“圧力文書”で介入。「全然アベノミクスは感じていない」という街頭インタビューに安倍元首相が激怒したことに対応したものだった。
“アベ友案件”だった加計学園の「国家戦略特区」やコロナ禍で雲行きが怪しくなっているカジノを「成長戦略の柱」だとして推進してきた安倍政権のド真ん中にいたくせに、「イノベーションがなかった」とはどの口が言う、ではないか。
「言わざるを得なくなってきた、ということですよ。円安による物価高で国民の厳しい目がアベノミクスに向けられている。火の粉をかぶる前に安倍氏と距離を置き、岸田政権で得点をあげようとしているんじゃないですか」(政治評論家・本澤二郎氏)
ちゃっかり「心は岸田派」に転向か。