2022年4月18日月曜日

庶民の我慢は限界だ 1ドル130円ならば政権交代が必要(日刊ゲンダイ)

 日本円はこの1カ月で11円も下落しました。その理由は日米の金利差で、利上げに動く米国に対して日本は低金利政策を続けるしかないために、円を売ってドルを買動きが強まっているからです
 日銀の黒田総裁が13日「金融緩和を粘り強くつづける」と式典で挨拶したことも円売りを加速させました。この期に及んで黒田総裁がそう的外れな発言をするしかなかったというのが、輸出産業や富裕層・投資家などを潤しただけで、景気はさっぱり回復しなかったアベノミクスの行き着いた先なのでした。もともとアベノミクスには手仕舞いする「方法論」が欠如していました。そのことは当初から識者たちが等しく指摘していたところで、その最悪のケースの一つが到来した訳です。
 この先、電力、食料品などを中心に諸物価は高騰する一方なので国民の生活は困窮を極めます。そうなれば自民党では対応能力がないので政権交代は必至ですが、次の政権の舵取りは至難の業になります。つくづくアベノミクスは罪深いといえます。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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庶民の我慢は限界だ 1ドル130円ならば政権交代が必要
                         日刊ゲンダイ 2022/4/15
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 円の下落が止まらない。抵抗ラインとみられていた1ドル=125円をあっさり突破し、とうとう13日、126円31銭まで売り込まれてしまった。126円台に突入するのは、約20年ぶりのことだ。ただでさえ物価の高騰がつづいているのに、このまま円安が進んだら、輸入品が高くなり、さらにインフレが加速するのは間違いない。
 日本円はこの1カ月で11円も下落している。急落している要因は、日米の金利差だ。金利の引き上げに動くアメリカに対して、日本は低金利政策をつづけているため、金利の高いドルを買って円を売る動きが強まっている。さらに、日銀の黒田総裁が13日午後、「金融緩和を粘り強くつづける」と式典で挨拶したため、一気に円が売られてしまった
 はたして、円はどこまで下落するのか。止める手段はあるのか。
「これまで1ドル=125円が円安の壁だとみられていました。いわゆる黒田シーリングです。でも、126円台に突入し、黒田シーリングが突破されたことで、マーケットは次の節目を130円と認識しはじめています。ミスター円と称された榊原英資・元財務官も、130円程度まで円安が進むと予想しています。130円を突破すると、次の節目は135円になる。問題は、円安を止める手段が見当たらないことです。日銀が利上げに動けば円安はストップするでしょう。でも、黒田日銀は、景気が落ち込むことを恐れて絶対に利上げしようとしない。もう一つ、為替介入という手段もありますが、こちらも難しいと思う。効果的な介入にはアメリカの協力が不可欠ですが、アメリカが自国のインフレにつながる“円高・ドル安”を容認するとは考えづらいからです」(経済評論家・斎藤満氏)
 どこまで円が売られるのか、まったく見えない状況だ。

早くも始まった値上げラッシュ
 この先、円安が1ドル=130円、135円、140円と進んだら、インフレも凄まじい勢いで進行するはずだ。日本は、エネルギーも食料も原材料も輸入に頼っているだけに、円安が進むと、あらゆるモノが値上がりしてしまう
 すでに足元では、この4月から食料品の値上げラッシュが始まっている。日清オイリオグループやJ-オイルミルズはサラダ油などを1キログラム当たり40円上げた。雪印メグミルクや森永乳業、明治もスライスチーズなどを数%値上げ。過去42年間、値上げしなかった人気駄菓子のうまい棒も、とうとう10円から12円への値上げを余儀なくされている。
 庶民にとってインパクトが大きいのが電気料金の上昇だ。例えば東京電力だと、使用量が平均的な家庭の4月分の電気料金は、1年前から1813円もアップ、8359円になった。大手電力10社のうち7社が4月分の電気料金を上げ、5月分は全10社が値上げに踏み切る予定だ。過去5年間で最も高い水準になる
 物価上昇によって、庶民生活はどんどん苦しくなっている。内閣府の試算によると、エネルギー価格の上昇で、家計負担は年間2万円以上も増えるという。食料品についても、年間5396~9492円の負担増になるそうだ。
 経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「日本の景気は長期低迷し、過去20年にわたって労働者の賃金は上がりませんでした。それでも、なんとか多くの国民が生活できていたのは、モノの値段が安かったからです。ある意味、デフレに救われていた。それだけに、物価高騰の影響は深刻です。所得に占める税金や社会保障などの負担割合が、21年度は過去最大の48%になりました。手元に残る資金は減っている。そのうえ物価高です。はたして庶民の生活が成り立つのかどうか。しかも、物価高騰はまだつづくとみられますから、今後、困窮する人が増えてくる恐れがあります」
 庶民の我慢はもう限界だ。

最初から庶民は眼中になし
 庶民を苦しめるインフレに歯止めをかけるためには、まず円安をなんとかするしかない。円安進行がストップすれば、物価の上昇にもブレーキがかかるはずだ。
 なのに、黒田総裁は「円安は全体として我が国の経済にはプラス」と国会で答弁しているのだから信じられない。国民の多くが物価高騰に苦しんでいるのに、どうして“全体としてプラス”などと言えるのか。そもそも“全体”とは誰のことなのか。
 つい最近まで、円安は“企業にはプラス”“個人にはマイナス”とされてきた。しかし、いまや企業も円安の弊害を訴えている状況だ。原材料の仕入れ価格が上昇し、収益を悪化させているからだ。ロイター通信の調査によると、1ドル=120円超の円安水準について、48%が「減益要因」と答え、「増益要因」と回答したのは半分以下の23%だった。
 ファミレス大手のサイゼリヤの社長は「円安はすべての輸入品にきいてくる。最悪の一つだ」と決算会見で語り、牛丼チェーン吉野家の社長も「円安の影響は小さくない」と会見で吐露している。
 円安によって仕入れコストがアップしても、多くの中小企業は価格転嫁が難しく、ほとんど利益を出せなくなっている。
 黒田総裁が口にした“全体”とは、円安で潤う、一部の輸出大企業のことなのではないか。
 アベノミクスが実施されたこの9年間、異次元緩和と官製相場によって、大企業と富裕層だけが儲かり、庶民は切り捨てられてきた。要するに黒田日銀は、最初から庶民は相手にしていない、ということなのではないか。“全体”の中に庶民は入っていないということだ。

これが参院選の最大の焦点だ
 こうなったら、国民が思い知らせるしかないのではないか。黒田日銀もヒドすぎるが、岸田政権もあまりに無策だ。
 これだけ庶民が物価高に苦しんでいるのに、岸田首相からはインフレ退治への本気度がまったく見えてこない。物価高対策を巡って、野党が補正予算の編成を求めても、動こうともしない。理由は“選挙対策”だ。
「補正予算案を審議する場合、6月に衆参予算委員会を開催することになります。岸田自民は、夏の参院選前に野党に追及の機会を与えたくないわけです」(永田町関係者)
 そもそも、岸田政権に経済対策があるのかどうか。「新しい資本主義」を一枚看板に掲げているが、いったいどんな中身なのか、昨年10月に首相に就任してから6カ月たっても、いまだに“正体不明”である。
 結局、国民の生活など本気で考えていないのではないか。
 野口悠紀雄・一橋大名誉教授が14日の日経新聞で、円安阻止の必要性を訴えた上で、〈これは参院選の大きな争点にもなるだろう〉と語っていた。まさにその通りだろう。物価高が最大の争点になれば、参院選で岸田自民は「ノー」を突き付けられる可能性がある。
 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
富裕層を潤わせ、中間層以下を困窮させたアベノミクスを継続しているのだから、岸田政権で庶民の生活が良くなることはないでしょう。もし、インフレを退治したいなら、消費税減税をやるべきです。物価急騰が参院選の争点になれば、怒った国民は投票所に足を運ぶと思う。参院選は政権選択選挙ではありませんが、過去、時の政権を崩壊させています。07年参院選で負けた安倍首相は2カ月後に退陣し、1998年参院選では自民大敗の責任を取り、橋本龍太郎首相が辞任しています。結果によっては、政権交代につながる可能性もあるでしょう」

 もし自民を大勝させれば、岸田政権は3年間、国政選挙がない「黄金の3年間」に突入し、庶民にとっては「地獄の3年間」となる可能性が高い。国民はよーく考えた方がいい。