2023年11月16日木曜日

16- 主権者意思での万博中止は正当(植草一秀氏)/大阪・関西万博の凄まじい不人気ぶり(斉藤貴男氏)

 大阪市の市民団体「どないする大阪の未来ネット」は14日、25年大阪・関西万博の開催中止を求める約9万人分の署名を、日本国際博覧会協会と大阪府・市でつくる万博推進局にそれぞれ提出しました。「湯水のごとく公金が使われ、国内外の不人気で計画が大幅に遅れている」として再検討を求めました。

 FNN11~12日に行った世論調査で、大阪・関西万博について「開催中止」と答えた人が269%「費用を削減して開催」と答えた人は567%で、「現状での開催に不満を持つ人が全体の8割を超えました。
 会場の建設工事が間に合うのか も深刻な問題になっています。ある大手建設会社は海外パビリオンの契約を目指して、去年の夏から大使館を回るなどして40カ国以上の担当者と会い、「夢洲という土地は橋とトンネルの2カ所からしか車両の乗り入れができず混雑が予想され、通常よりも工事に時間がかかる」と焦りを伝えましたが、相手方には伝わらなかったということです。
 すべては「夢洲 大阪カジノ構想」を掲げる「維新の会」が大阪万博をそれに結び付けようとしたからで、海外勢にすれば何故そんなに地盤が不良でアクセスも不便な土地を会場に選んだのかというのが正直な思いでしょう。建設業者は万博を「1年延期するのが無難」と話します。

 植草一秀氏が「主権者意思での万博中止は正当」という記事を、斉藤貴男氏が「大阪・関西万博の凄まじい不人気ぶり…「空飛ぶクルマ」が飛ばないことだけがせめてもの救い」とする記事を出しました。
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主権者意思での万博中止は正当
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年11月15日
財政で一番大切なことは、本当に必要なもの、ことに支出を充てて、本当に必要でないもの、ことには支出を充てないこと。
しかし、現実は逆になっている。何よりも大切な政府支出は無残に切り刻まれる。
その一方で、必要性がまったくないものに湯水のようにお金が注がれる。どういうことか。
利権になる支出は拡大、利権にならない支出はカット、ということなのだ。

大阪万博問題が話題になっているが、正解はすでに出ている。中止するしかないだろう。
当初の予算で執行できるなら、当初の方針を決めた根拠に基づき対応すればよい。
もともと、大阪万博を開催する必要もないし、それだけの財政資金を投下するなら、これよりも大切なもの、ことへの支出を優先するべきだった。
しかし、議会等の意思決定のプロセスを経て決定したのなら、実施もやむを得ないだろう。
意思決定の仕組みが定められており、正規の手続きに則って決定をしたのなら、多数の人が反対するとしても、実施することに一定の根拠はあると言えるからだ。

しかし、いま問題になっているのは費用が激増しているということ
会場建設費が当初のおよそ19倍の最大2350億円に膨らむ見通しになった。
不足分を大阪万博実施に賛成の人や企業が自腹を切って捻出するなら実施も正当化される。
しかし、まったくそうではない。

当初、会場建設費は、国、府市、経済界で3等分して負担することとされた。
万博協会は当初、建設費が約1250億円と想定していたが、2020年の1度目の増額で1850億円に積み増しされた。
このときに府市両議会は再度増額が生じた場合は「国が責任をもって対応」とする意見書を可決した。府市が「府市が責任をもって対応」とすることを決めたのなら意味がある
府市が決めたのは、自らが負担することではない。
「国が負担すること」とする意見書を可決したところで、相手のあること。勝手に決められることではない。

建設費の増額分を「国、府市、経済界で3等分して負担」というと、国民の負担は発生しないかのような錯覚が生まれるが、とんでもない。
「国」、「府市」とは誰のことか。国民であり、府民であり、市民だろう。
万博開催で利益を得られると考えるから経済界はお金を出すのだろう。
万博を開催したい経済界と万博を開催したい個人が不足資金を賄うべきだ。
「国」の負担、「府市」の負担は国民、府民、市民の負担である以上、国民、府民、市民の同意が必要だ。

FNNなどが11月11・12日に実施した世論調査では、大阪・関西万博について「このまま開催」と答えた人は152%だったと報じられている。https://x.gd/ojrqo 
「開催中止」との回答が26.9% 「費用を削減して開催」との回答が56.7%
だったとのこと。
「開催中止」と「費用を削減して開催」が全体の8割を超えている。

世界のなかで日本経済の衰退は突出している。ドル表示名目GDPの推移では1995年を100としたとき、2022年の日本のGDPは76。
日本経済は27年前の4分の3の規模に縮小した

同じ期間に米国GDPは33倍になり、中国GDPは245倍になった。
日本の労働者一人当たりの実質賃金は1996年から2022年までの26年間に14・4
%も減少した世界最悪の実質賃金減少だ。
この状況下で、ほとんどだれも望んでいないイベントに1000億円単位の財政資金を注ぎ込もうとしていることが異常だ。

望んでいるのはその財政資金投下で潤う、一握りの利権関係者だけ。東京の都市博を中止した実例がある。日本国民が大声を出して万博中止を求めよう
岸田首相に「聞く力」があるのかどうかを検証する、極めてわかりやすい、良い機会だ。

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二極化・格差社会の真相 斎藤貴男
大阪・関西万博の凄まじい不人気ぶり…「空飛ぶクルマ」が飛ばないことだけがせめてもの救い
                           日刊ゲンダ 2023/11/14
 いったいいつまで、こうまでくだらなく、汚らしさも極まったイカサマ祭りに付き合わされなければならないのか。2025年開催予定の大阪・関西万博のことである。
 凄まじい不人気ぶりだ。共同通信が今月初めに実施した世論調査で、「不要」とする回答が全体の68.6%。推進の中心にいる日本維新の会の支持層に限っても、なんと65.7%を占めたという。
 それはそうだろう。なにしろ最近になって公表された会場建設費が2350億円。1250億円としていた当初の発表が、いつの間にか倍近くにも膨らんでいるのだから。
吉村洋文知事は、「今回が最後の増額」と強調も
 そのうち円周2キロの日よけだけで350億円なのだとか。日本維新の会の共同代表でもある大阪府の吉村洋文知事は、「今回が最後の増額」だと強調しているが、この男は20年の上方修正時にも同じ嘘八百を叫んでいた。参加国が費用を負担するタイプのパビリオン建設がまったく進んでいない現実も周知の通り。

 金があり余っていたバブルの頃ならいざ知らず、今のこの時代に、なんぼなんでもこれはない。東京五輪の例もあり、足りない分は国庫にたかり、いずれ下々にツケを回せば済むとタカをくくっているのに違いないが、とすれば万博も五輪同様、もともと汚職の舞台装置とするため以上でも以下でもない企画だったということか(今さら指摘するのもカマトトだけれど)。
 にもかかわらず、日本維新の会や大阪府・市、彼らを利用したい岸田政権、自民党、そして金儲けにさえなれば市民生活などクソ食らえとしか考えていないような財界、官界は、万博を中止しない。救いがあるとすれば、吉村氏が目玉扱いしてきた「空飛ぶクルマ」とやらが、思惑通りには運用されなさそうな見込みであることだ。政財官界の利権と引き換えに、大惨事まで起こされてはたまらないので、このことだけは大いに歓迎したい。
 兵庫県明石市の前市長で弁護士の泉房穂氏(60)が「X」で、前記の日よけをめぐる報道の姿勢を批判している。「マスコミ関係者から次々と“泣き”と“お詫び”の連絡が入ってくる。取材はしたけど、上層部の反対で、放送できなくなってしまったとか、上司の指示で記事の内容を書き換えさせられたとか」

 この手の国策メディア・イベントがあるたびに、この国の卑しさ、浅ましさばかりを見せつけられ、絶望に陥らされる。万博なんて要らない。腐臭をまき散らす自称リーダーや自称エリートのごときは、もっと要らない。

斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。