2023年11月15日水曜日

どれだけ子どもが殺されればイスラエルの暴力を止めるのか ~ (世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 どれだけ子どもが殺されればイスラエルの暴力を止めるのか」はイスラエルへの呼びかけではなく、その蛮行を容認している米国をはじめとする西側の首脳たちへの呼びかけであり、日本の「週刊金曜日」や「TBS報道特集」への呼びかけです。

 それにしてもこの衆人環視の中のイスラエル軍による大虐殺は一体どう理解すればいいのでしょうか。一人米国が「二重基準」を愧じていないだけでなく、日本も含めた西側の首脳たちもそうであるからと思うしかありません。
 かつてナチスドイツがユダヤ人に行ったホロコーストは、終戦後、世界中から徹底的に批判されました。あの時の正義感は一体どうなったのでしょうか(尤も、米国はそうした中でもナチスドイツの首謀者たちの南米などへの逃亡を手助けしたようですが)。いまは西側首脳たちが「米国の意向に沿う」ことを至上の命題と決めているからとしか思えません。

 米国をはじめ西側諸国の国民も、政府の意向と別にイスラエルのガザ攻撃に反対する行動に敢然と立ち上がってはいるのですが、世に倦む日々氏は、アラブ諸国が期待されたほどの対応をとっていないことを嘆いています。
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どれだけ子どもが殺されればイスラエルの暴力を止めるのか - ガザを報じない週刊金曜日とTBS報道特集
                      世に倦む日日 2023年11月13日
最新の報道では、11/11 時点でガザの死者数は1万1千人を超え、うち4割の4500人が子どもとなっている。国連職員が101人、ジャーナリストが46人犠牲になった。WHOの報道官の発表では、11/6 までに16人の医療従事者が勤務中に殺害されている。WHO報道官は 11/7 の会見で「ガザの民間人が耐え忍んでいる恐怖を正当化するものは何もない」と述べた。世界人権宣言前文には「恐怖と欠乏のない世界」が謳われていて、この文言は1941年の大西洋憲章に由来し、日本国憲法の前文(われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する)にも刻まれている。それを思い出せば、目の前で何が起きているか意味が悟られる。イスラエルがガザで行っているのは、虐待と拷問を加え続けての大量殺戮だ。

国連にとって不倶戴天の敵となる「人道に対する罪」の戦争犯罪であり、国連を成立せしめている神聖な前提的命題を、すなわち国連の存在意義を、イスラエルは暴力で否定し蹂躙して開き直っている。そしてそのイスラエルに対して、アメリカを始めとする西側諸国は公然と支持を与え、残虐で苛烈な蛮行を「自衛権」の名で正当化して擁護している。どれほど深刻な事態だろう。あとどれだけガザの人々の命が奪われれば、世界の指導者たちはイスラエルを止めに動くのだろう。どれほどイスラエル軍がパレスチナの子どもを殺せば、西側首脳たちはイスラエルの攻撃を不当だと言うのだろう。あとどれだけ、恐怖と飢餓に苦しみ抜いた末に人が命を差し出せば、欧米先進国はガザを赦すのだろう。5万人か、10万人か、20万人か。イスラエルはガザのパレスチナ人を皆殺しにする気だ

先週末(11/10-12)、世界では、イスラエルに抗議しパレスチナに連帯する動きが途切れることなく起こった。ロンドンでは30万人(警察発表)の市民のデモが起こり、朝日は過去4度と比較しても最大規模だと書いている。ベルリンでも、パリでも、バルセロナでも、ブリュッセルでも起き、欧州の主要都市では例外なく起きている。不屈の持続力で国際世論を動かす力になっている。が、少し残念なのは、中東諸国、特にアラブ諸国での動きがやや不活発な点で、これは予想外の進行である。エジプトで大きなデモが起きたという報道に接しない。治安統制が厳しく、シシ政権による弾圧と封殺が奏功しているからだろうか。中東諸国では10月下旬にかけて各地で大きなデモが起きた。10/20 にカイロで数千人のデモが起き、10/28 にはイスタンブール150万人(主催者発表)の大規模デモがあった。

が、その後、少し下火になった感を否めない。イスラエルによる虐殺は過激さを増していて、死者数は増える一方なのだから、本来なら近隣諸国での怒りと抗議のモメンタムが昂まってよいはずで、民衆が政府を突き上げる運動が爆発してよいはずだ。11月に入ってからの中東の静けさは意外感がある。11/12 に中東諸国のサミット(アラブ連盟とイスラム協力機構の合同の臨時首脳会議)が開かれ、リヤドに首脳が集合して宣言を出したが、どこまでガザの暴虐を止める実効性ある政治を作れたのか分からない。今週(11/12-)のテレビ報道で分析されるだろうが、ガザを救う具体的なアクション・プログラムが策定・合意されてない不満が残る。イランの大統領が10年ぶりにサウジを訪問してバイの首脳会談を持ったのは朗報だ。が、二国の態度と方針が異なっていて、どこまで議論と調整がされたか不明である。

共同宣言抽象的であり、言葉は前向きに耳に響くけれど、具体的にガザをどう救うかという中身がなく落胆させられる。ガザに今すぐ食料・水・燃料・医療品をどう入れ、病人をどう救助するかのオペレーション・プランを立て、それを国連とアメリカに提案し、イスラエルに提示して受諾させるという積極的な外交策を成果に出してもらいたかった。そのガザ救援措置を実行するためのコアリッションの部隊編成まで準備し、ヨルダン・サウジ・エジプト・トルコの諸軍が人道活動を防護するという地平まで踏み込むべきだった。グテレスはそれが欲しかっただろうし、安保理の中国・ロシアも同様だろう。残念ながら、サウジとエジプトのアメリカへの依存と忖度が強すぎ、イスラエルへの怯懦が強すぎて、その実現が叶わない昔は中東イスラムの反イスラエルはアラブ勢力が牽引していたが、今はすっかりそれが後退し消滅した

10月には動静が注目されたヒズボラも沈黙して影が薄くなった。そのため、イスラエルは何の障害もなく虐待と殺戮を続けている。だが、どこかで事態は臨界点を迎えるだろう。10/7 の衝撃のような、イスラエルとアメリカにとって思惑外の決壊現象が突如起きておかしくない。このまま暴力と虐殺を続け、ガザ絶滅という最終目標へと突進すれば、必ず想定外のカタストロフに逢着するはずだ。「もう我慢できない」「これ以上座視できない」と誰もが思っている。そうした可燃性の空気濃度が高まった状況で、12年前の「アラブの春」の発端となったチュニジア青年の自殺のような悲劇が起きれば、それが呼び水となり、過激な勢力が "聖戦”の直接行動に踏み切るとか、民衆が一つの政治的方向へ蹶起するという場面が生じるだろう。イスラエルの狂気の作戦は、設計上、臨界点のブレイクを必然的に組み込んでいるように私には見える。

週刊金曜日は、10/26 号以降3週連続でガザを特集しなかった。TBS報道特集は、11/3 放送以降2週連続してガザをスルーした。関心がないらしい。膳場貴子の報道者としての責任意識と番組編成の判断基準はどうなっているのだろう。理解できない。われわれが一番知りたいのはガザ情勢であり、番組に期待するのはガザ問題での正しい報道である。もし岡真理が最初にテレビで解説するとすれば、出演するのはTBS報道特集だろうとわれわれは普通に考える。そして、その放送内容に期待して注目する。それが世間の常識というものだろう。ところが、週に一度のTBS報道特集が、ずっとガザ報道の回避を続け、ガザ情勢を無視し、視聴者の期待を裏切り続けているのである。不審な不作為に徹している。いったい、直近の一週間のあいだに、何人の子どもが残酷に殺されたことだろう。子どもの虐殺数は日を追って増えている。減ってない。

具体的に、11/2 の累計死者数は8796人で、うち子どもは3648人。11/9 の累計死者数は1万812人で、うち子どもは4412人。子どもの犠牲者のペースは上がっている。TBSの村瀬健介と膳場貴子に言いたいのは、こんな、一週間に子どもが800人も無残に虐殺される瞬間に、今まで立ち会ったことがあるかということだ。私はない。ルワンダ虐殺では、おそらく規模的には同様の殺戮があっただろう。だが、ルワンダとガザでは問題の構図と性格が全く異なる。ルワンダは、国際世論が気づかない暗闇の中で行われた。今回のガザは、毎日毎晩、虐殺ショーが世界中のテレビに流されている。子どもの虐殺が(事実上)正当化された中で行われている。しかも、その虐殺は民間人の斧や鉈ではなく、国家権力の軍隊の武力によって一方的にだ。ミサイルや白リン弾によってだ。こんな不条理と悪魔的な世界が許せるのか。正常な神経で見逃せるのか。

虫けらのように人が殺されるという日本語表現があるけれど、この年になって、その比喩がそのまま現実化される地獄図を直視するとは思わなかった。その不幸に絶句する。TBS報道特集は、昨年2月にウクライナ戦争が始まった後、毎週毎週、これでもかとウクライナを特集し、ロシアを叩いてウクライナとNATOを擁護し、世論をウクライナ支援に傾ける報道に尽力した。それなのに、今回はガザを特集せず、一方的に虐殺されているパレスチナを擁護しない。ガザ問題を無視することで、日本政府とアメリカ政府に靡き阿る姿勢を示唆している。週刊金曜日に至っては、あまりの欺瞞的態度に言葉も出ない。マスコミ誌ではないのだから、別に当局から圧力がかかる等の要素はなく、懸念も不安もあるまいに、恰もガザなど二の次とばかり平然と脇に捨て置いている。この行為自体が一つの面妖で奇怪なデモンストレーションで、編集部の意図と思想をよく示すものだ。

11/10 の都内のデモについて、マスコミの報道が少なすぎるとクレームが上がっているが、肝心の週刊金曜日がガザへの無視に徹し、TBS報道特集がガザを取り上げない事実がある。矛盾してないか。