2023年11月18日土曜日

イスラエル軍 ガザ最大病院に突入 戦車も 患者たちは数千人

 イスラエル軍は15日、ガザ地区最大規模のシファ病院に突入しました。そこにはハマスの戦闘部隊が立て籠り、広大な地下施設は戦闘部隊中枢の拠点になっているとし、イスラエルの人質たちもそこに閉じ込められているというのが、戦車までも病院に突っ込ませた口実でした。
 しかし彼らが病院を完全に占拠したあとでも、それらの証拠は一つも提示されていません。ガザだけでなくイスラエルが蛮行を行うケースでは常にもっともらしい理由を掲げますが、そのほとんどはウソに塗れたものであることがこれまで明らかにされています。
 今回もそれに近いものと思われます。それにしても完全に占拠されるまでに病院内でどんな地獄絵が展開されたのか。病院内には数千人の患者や民間人が身を寄せており、病院を標的にした軍事行動に国際的な批判が高まっています。
 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
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ガザ最大病院突入 イスラエル 患者ら数千人
                       しんぶん赤旗 2023年11月16日
 イスラエル軍は15日、パレスチナ・ガザ地区最大規模のシファ病院に突入しました。目撃者がロイター通信に語ったところでは、兵士が病院内で部屋や地下を捜索しています。病院内には数千人の患者や民間人が身を寄せており、病院を標的にした軍事行動に国際的な批判が高まっていました。
 同病院の外科医アハメド・エルモハララティ医師は、ロイター通信の電話取材に対し、14日夕方以来病院の周辺や内部で戦闘が続き、スタッフが身を隠している状況を報告。「戦車は東側の門から病院内に立ち入った。戦車は、救急部門の真正面に止まっている。病院の周囲ではあらゆる武器が使われている。病院を直接狙っている。私たちは窓からできるだけ離れようとしている」と述べました。
 同医師は、病院の地下にハマスの司令部があるなどとするイスラエル軍の主張について、「それがウソだと私たちは知っている」と述べました。
 別の目撃者は、複数の戦車が午前3時に病院の敷地内に入り、イスラエル兵が中庭に展開して、地下を捜索し、建物に入っていった、と電話で語りました。
 イスラム組織ハマスによれば、病院の敷地には患者650人と民間人5000人~7000人が閉じ込められており、イスラエル軍の狙撃兵や無人偵察機からの絶え間ない銃撃を受け、燃料、水、物資が不足する中、ここ数日で40人の患者が死亡しています。


イスラエル軍、ガザ最大のシファ病院に突入 新生児含む患者数百人が足止め
                         東京新聞 2023年11月15日
【ハンユニス(ガザ南部)=AP】イスラエル軍は15日未明、ガザ最大のシファ病院を襲撃した。同病院では、新生児を含む患者数百人が、物資が不足し電気もない中、足止めされている。

◆イスラエル「ハマスが地下に司令部」と主張
シファ病院は、イスラム組織ハマスとイスラエルによる戦闘で広がるパレスチナ市民の苦しみの象徴となっている。一連の戦闘は10月7日、ハマスがイスラエル南部への奇襲攻撃で約1200人を殺害し、約240人の捕虜を奪った後に勃発した。
同病院はまた、包囲された領土における何千人もの死者と広範にわたる破壊の責任は誰にあるのか、といった対立の核心でもある。イスラエルは、ハマスがパレスチナ人を人間の盾として使っていると非難し、パレスチナ人と人権団体は、イスラエルはハマス壊滅を目指しているため、無謀にも民間人を危険にさらしていると非難している
ガザ地区の病院長であるモハメッド・ザクート氏は、イスラエルの戦車が医療棟に侵入し、戦闘員が集中治療室がある救急部門や外科部門を含む建物に入ったと述べた。
「占領軍は建物を襲撃した」。彼は電話で怒りをあらわにした。子どもを含む患者はおびえているという。「彼らは悲鳴を上げている。とても恐ろしい状況だ。患者のためにできることは祈ることだけだ」
イスラエル軍は「シファ病院内の特定区域で、ハマスに対する正確で的を絞った作戦」を実行していると述べた。兵士たちには医療チームが同行し、医療品やベビーフードとともに、保育器なども持ち込んだという。
イスラエルは、ハマスがシファ病院内とその地下に巨大な司令部を持っていると言っているが、目に見える証拠は示していないハマスと病院関係者はイスラエルの主張を繰り返し否定している。急襲の数時間前、米国は、ハマスが自らの軍事作戦を支え人質を拘束するために、シファや他の病院、その地下トンネルを使用していることを示す独自情報を持っていると述べた。
イスラエル軍は、シファを急襲した部隊は人質も捜索していると述べた。男性、女性や子供を含む捕虜の苦境は、戦闘におけるイスラエルへの支持を喚起し、人質の家族や支持者らはテルアビブからエルサレムに向けて抗議の行進をしている。
ガザ北部に戦車と地上部隊を送り込んでから2週間半、イスラエル軍はガザ市のいくつかの主要建物と繁華街周辺を制御しているとも主張した。

◆燃料不足に苦しむ支援者たち
ガザ市とその周辺に住む数十万人の住民のほとんどは、数週間にわたるイスラエル軍による爆撃の後、逃げ出した。数週間にわたり電気も水道もない北部に援助物資はほとんど届いていない
ヨルダン川西岸地区ラマラのパレスチナ保健省によれば、ガザでは1万1200人以上が死亡し、その3分の2は女性と未成年者だ。住民230万人の3分の2が家から逃げ、うち約2700人が行方不明で、ほとんどががれきに埋もれているとみられている。同省は集計で、民間人と武装勢力の死者を区別していない。
ガザ地区のほぼ全人口が、小さな領土の南3分の2の地域に押し込められ、そこでも爆撃は続き、状況は悪化している。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は14日、ガザにある燃料倉庫が空になったことを明らかにした。さらにガザ南部で深刻な過密状態にある国連運営の学校やその他の施設に避難している60万人以上の人々に向けたエジプトからの限られた食糧や医薬品の供給を含む救援活動を停止すると述べた。
燃料がなければ、ガザでの人道支援活動は終わるだろう。さらに多くの人々が苦しみ、おそらく死ぬことになるだろう」とUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は語った。
イスラエル国防当局者は15日未明、これまでの方針を転換し、人道的活動のために約2万4000リットルの燃料搬入を許可したと述べた。それまではハマスが燃料を軍事転用するとして、ガザへの燃料搬入を繰り返し拒否していた。
イスラエル政府でパレスチナ問題を担当する占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、15日遅くにはエジプト国境のラファで国連トラックが燃料を補給することを許可すると述べた。米国からの要請に応えた決定だとしている。



15日、イスラエル軍のガザ地区への攻撃で負傷し、南部ハンユニスの病院に運ばれるパレスチナ人=AP




15日、イスラエル軍のガザ地区への攻撃で負傷し、南部ハンユニスの病院に運ばれるパレスチナ人=AP





◆機能しなくなった病院

シファ病院に避難していた数千人の避難民と移動できる患者は、病院を包囲していたイスラエル軍がハマスの武装勢力と戦っていた間に最近設けた通路を通ってガザ市の医療施設群から(南部へ)逃れていた。
イスラエルは、医療スタッフや患者の避難を許可すると言っているが、脱出したパレスチナ人の中には、イスラエル軍が避難者に発砲したという者もいる。
シファ病院は、物資が減少し、電力不足で保育器や他の救命機器を動かす手段がないため、週末には活動を停止していた。何日も冷蔵設備がなかったため、遺体安置所の職員は14日、庭に120人を埋葬する集団墓地を掘った。
(ガザの)保健省によれば、シファの非常用発電機が12日に燃料切れになって以来、3人の赤ん坊を含む40人の患者が死亡したという。同省によれば、保育器の電源がないため、さらに36人の赤ん坊が死亡の危機にあるという。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスや他のパレスチナ武装勢力がシファや他の病院やその地下トンネルを軍事作戦支援や人質拘束のために使用しているという不特定の情報を米国は持っていると述べた。
ある米政府高官は匿名を条件に、米国は複数の情報源から独自にこの情報を収集したと語った。

◆ガザ市での戦闘
イスラエル軍は、ガザ北部の支配を拡大し、地域の立法府ビルと警察本部を占領したしかし、北部との通信がほとんど途絶えているため、ガザ市での戦闘に関する独自情報を収集することはほぼ不可能だ。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官によると、イスラエル軍は、建物が密集している地区であるシャティ難民キャンプの占領を完了し、街全体を自由に動き回っているという。
新たに占領されたいくつかの建物の中では、兵士たちがイスラエル国旗と軍旗を掲げて祝った。全国放送された記者会見で、ガラント国防相は、ハマスがガザ北部の「支配権を失った」と述べ、イスラエルはガザ市で重大な利益を得たと述べた。
しかし、今後の戦闘期間について質問されると、ガラント氏は「私たちは1日や2日ではなく、長い月日を費やしている」と述べた。
イスラエル軍によれば、軍は政府の建物や学校、住居で武器を発見し、戦闘員を排除したという。
イスラエルは、重要な中間レベルの指揮官を含む数千人の戦闘員を殺害し、ガザでは46人のイスラエル兵士が死亡したという
(AP通信11月15日更新 文・ワファア・シュラファ、サミー・マグディ、訳・岩田仲弘)