2023年11月1日水曜日

中東におけるアメリカ支配に新たな打撃を与えたガザの悲劇

 マスコミに載らない海外記事」に掲題の記事が載りました。
 国連では、パレスチナ人寄りの決議は米国とその同盟国によって悉く拒否、乃至否決されています。記事は現在の悲劇的な出来事は、同盟諸国の助けを借りて、中東和平の取り組みをアメリカが独占している」ことから「アメリカの行動または怠慢の結果だ」と述べるとともに、アメリカの独善性を批判する各紙の論調を紹介し、「ガザの悲劇」はアメリカの中東支配に新たな打撃を与えたと述べています。
 アメリカの中東における存在感は今後一層希薄になっていく筈ですが、異様なまでのイスラエル尊重の姿勢は簡単には変わりそうもありません。
 併せて「耕助のブログ」掲載の「パレスチナを地図から消し去るイスラエルの卑劣なチャンス」を紹介します。
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中東におけるアメリカ支配に新たな打撃を与えたガザの悲劇
                マスコミに載らない海外記事 2023年10月31日
                     Veniamin Popov 2023年10月24日
                           New Eastern Outlook
 パレスチナ人を無視しながらの、イスラエルに対するアメリカの揺るぎない支援は、グローバルサウス全体、特にイスラム世界で怒りを引き起こした。
 いくつかの国が反米抗議行動をしたが、それにはアメリカ議事堂も含まれる。数時間、500人の普通のアメリカ人(その多くはユダヤ人だった)が国会議事堂を支配し、パレスチナを救うよう要求した。
 アメリカ政府の行動が非常に悪質だったので、ジュネーブの人権理事会に出席した人々のほとんどが、発言したアメリカ特使に背を向けた。
 これには多々例がある。バイデン政権の「近視眼的で、破壊的で、不当で、我々が公式に支持する価値観と矛盾する」政策決定に至った「一方への無批判な支持」に抗議して、国務省政治軍事局の議会・広報部長を務めていたジョシュ・ポールが辞任した
 今年10月16日の国連安全保障理事会で、パレスチナとイスラエルの紛争地帯、ガザ地区での人道的停戦に関するロシアの決議草案をアメリカはイギリスとフランスとともに阻止した
 この文書は、民間人の大虐殺や苦しみを止め、捕虜を解放し、飛び地での人道的災害を回避し、紛争が地域の他の国々に広がるのを防ぐための多くの具体的かつ即時の措置を規定していた。非常に微妙な状況を考えると、早急な行動が必要だった
 ロシア発議を17カ国のアラブ諸国を含む約30カ国が共同提案した。
 その結果、国際の平和と安全の維持を担当する主要機関は、流血に終止符を打ち現在の未曾有の状況に対する解決策の舞台設定に役立つ選択ができなかった。
 アメリカや他の西側諸国の姿勢は、合理的で自然な決定の妨げになった。現在の状況を考えると、この提案は道徳的で、人道目的のため絶対必要だ。
 数百人のパレスチナ人の死をもたらしたアルアハリ病院への壊滅的空爆またはミサイル攻撃は、国連安全保障理事会がガザ地区での人道的停戦に関するロシア提案を支持していれば、おそらく回避できたはずだ。行動を起こさずに過ぎ去る日々は、死者と負傷者数の増加をもたらし、封鎖された地域に閉じ込められ、イスラエルとパレスチナ間の長引く未解決の紛争の人質である民間人の継続的な苦しみをもたらす。

 現在の悲劇的な出来事は、同盟諸国の助けを借りて、中東和平の取り組みをアメリカが独占しているため、アメリカの行動または怠慢の結果だ。
 10月17日、ガザへの人道援助を許可するため戦闘の一時停止を求めながら、イスラエルに対するハマスの攻撃を非難するブラジルが提案した国連安全保障理事会決議(UNSCR)をアメリカは拒否した。アメリカ代表によると草案はイスラエルの自衛権を無視している。決議の文言は安全保障理事会の他の15人のメンバー全員に反対なしに受け入れられた。
 このように、アメリカは、緊張緩和や、状況緩和や、民間人保護を犠牲にして、パートナーのイスラエルを「保護」することが主な関心事であることをまたしても示した。中東中の人々を激怒させたイスラエルとハマス間の紛争に対するアメリカの対応に言及して、「イスラエルに対する断固たる支持がアメリカの偽善への非難を引き起こした」とニューヨーク・タイムズ紙が述べたのは当然のことだ。
 トルコのハカン・フィダン外相によれば、アメリカはこの地域と最後の決別をしようとしているのかも知れない。

 ガザ住民への攻撃は「残酷で凶悪な犯罪」だとサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン・アル・サウード皇太子は表現した
 2023年10月16日のアルジャジーラ・ウェブサイトによると、ガザのパレスチナ人に対してイスラエルが大量虐殺戦争を繰り広げる中、アメリカは中東で地域警官を演じるのに戻った。その声明を支持するため、バイデン政権は一隻ではなく二隻の空母を派遣し、主要同盟国を攻撃しないように他の国々に警告した。
 アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官がイスラエルを訪問し、続いて10月17日にバイデン大統領がイスラエルで数時間過ごした。
 10月12日のエジプトのアル・アハラム紙によると、バイデン大統領の「斬首されたイスラエルの赤ん坊」に関するウソは証拠がなかったが、イスラエルを支援するためにアメリカ政府が利用した最も汚い戦術の一つだったその結果、アメリカはイスラエルと提携し、「ガザ・イスラエル双方の無辜の民間人に対して地獄の扉を開いた」。

 サウジアラビア・アラブ・ニュースによると、中東での紛争はイスラエル人の命が重要でアラブ人やイスラム教徒の命は重要ではないという欧米道徳の歪んだ理解によって引き起こされている。何千人ものパレスチナ人が殺され、数万人が負傷し、何千もの民間アパートが破壊されたガザ地区で起きている大虐殺をバイデン政権は本当に気にしていない。
 10月19日、更に1000億ドルの援助をイスラエルとウクライナに提供するようバイデン大統領は議会に要請した。二つの紛争をバイデンが人為的に組み合わせたとルモンドは主張している。全ての問題を解決するため武力を行使するというアメリカの飽くなき要求にアメリカ国民は、しかるべく対応してはいない。最近の調査によると、アメリカ人の半数以上が更なる軍事援助に反対しているのは偶然ではない。
 フォーリン・ポリシー誌記事「30年間のアメリカ政策はいかにして大惨事に終わったか」で「アメリカ指導部は、イラク、シリア、スーダン、イエメンで壊滅的戦争をもたらし、レバノンは虫の息で、リビアは無政府状態で、イスラエルに安全はなく、パレスチナ人には安全も正義もない。彼らの狙いが何であれ、アメリカ指導者連中は前向きな結果を達成するのに必要な洞察力や客観性に欠けていることを常に示してきた。」とハーバード大学ロバート・ベルファー・レネー・ベルファー国際関係学のスティーブン・M・ウォルト教授は述べている。

 ヴェニアミン・ポポフはロシアの外務省モスクワ国際関係大学MGIMOの「文明パートナーシップセンター」所長、歴史科学博士候補、オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2023/10/24/the-tragedy-in-gaza-has-dealt-a-fresh-blow-to-us-dominance-in-the-middle-east/


パレスチナを地図から消し去るイスラエルの卑劣なチャンス
                耕助のブログNo. 1958  2023年10月30日
 Israel’s Despicable Chance to Wipe Palestine From the Map
 もしバイデンとイスラエルが、市民の苦しみを和らげることを本当に心配しているなら、イスラエルにつながるガザの交差点を開くだろう。  
                         by Finian Cunningham
イスラエルの指導者たちはしばしば、アラブやイランの敵が「イスラエルを地図から消し去りたい」と望んでいると非難する。この非難は、相手がイスラエル国家を消滅させる邪悪な計画を抱いていると名指しすることで、暗にナチスのニュアンスを含んでいる。
皮肉なことに、過去2週間にわたるイスラエルとパレスチナの暴力の激化は、イスラエルの過激派に何十年もの間シオニストの夢を阻んできたパレスチナ問題を最終的に解決する機会を与えているようだ。
ベンヤミン・ネタニヤフは10月7日のハマスによる大量殺戮をイスラエルの「9.11の瞬間」と呼んだ。
ハマスの銃とロケットによる攻撃以来、ネタニヤフ政権は毎日、通常のイスラエルの血への渇望をはるかに超える復讐心でガザ地区を空爆してきた。広範囲に及ぶ無差別空爆とパレスチナ市民の殺害は、イスラエルの基準からしても衝撃的である
10月7日にハマスによって殺害された1,300人のイスラエル人に対し、パレスチナ人の死者は今のところ3,000人近くにのぼる。さらに1000人のパレスチナ人が瓦礫に埋もれて行方不明になっており、1万人近くが負傷している。暴力から逃れようとする民間人の車列をイスラエルが空爆し、病院が破壊されたことで、死者数は今後さらに増えるだろう。
ハマスがいかに凶悪な殺人を犯したにしても、パレスチナ市民の虐殺を正当化する理由はまったくない。
このイスラエル国家による連日の大虐殺を前にしたアメリカやヨーロッパ政府の沈黙には呆れるばかりだ。西側諸国はイスラエルの戦争犯罪の幇助に加担している。
重要なことに、恐ろしい爆撃とともにガザ地区の食料、水、燃料といった基本的な人道支援の完全な封鎖が行われており、これによってパレスチナ人が食料難から逃れることが不可能になっている。彼らはエジプトと国境を接するガザの南端に集団で移動するよう命じられている。

ガザ地域にはわずか3つの国境交差点しかない{2}。北部のエレズ検問所と南部のケレム・シャローム交差点で、いずれもイスラエルに入る。この2つのポイントは閉鎖されている。同じくガザ南部にあるエジプトにつながるラファの第3の交差点は、イスラエルがガザにもたらしている爆撃地獄から抜け出す唯一のルートとして交渉中である。
ネタニヤフが言及した「9.11の瞬間」は、パレスチナ人をガザから完全に排除する「最終的解決策」という最も邪悪な計画を実行に移す好機のようである。テルアビブの現政権を構成するファシストたちにとって、パレスチナ人を一切排除した領土を手に入れるというシオニストのプロジェクトを完成させる決定的なチャンスなのだ。もしガザが消滅すれば、パレスチナの国家性も消滅する

米帝国のプランナーたちが、2001年9月11日のテロ攻撃を口実に潜在的に望んでいた対外戦争を開始し、地政学的な敵対国に対して全面的な支配力を行使し、自国民に対して徹底的な国家監視権を発動したように、イスラエルは10月7日のハマスの残虐行為をより大きな目的のために利用しているそれはイスラエルの中にいるパレスチナ人を根絶するために、鬱積した計画を実行することだ
30年近く米国が支援してきた歴史的な和平プロセスは、パレスチナ人にとっては皮肉な袋小路に過ぎなかった。問題は、その間は少なくともワシントンとテルアビブが名目上でも口先だけで支持していたパレスチナ国家を作るという選択肢があったということだ。
しかし今、イスラエルはパレスチナを地図から完全に消し去るチャンスを手にしている。
世界が目撃しているのは、1948年にイギリスの植民地であったパレスチナ委任統治領からイスラエル国家が誕生したときにパレスチナ人が味わった大惨事「ナクバ」の再来である。ナクバの後、約70万人のパレスチナ人が土地を奪われ、ホームレスとなった。彼らの多くはヨルダン、レバノン、シリアの近隣諸国で永住難民となった。今日に至るまで、彼らの子孫はパレスチナの祖国に戻ることを禁じられている

悲惨な歴史が繰り返すように、75年経った今、ガザに住む230万人の人々は爆弾が降り注ぐ中、追放を強いられている。ガザにいるパレスチナ人の中には、これが裏の計画ではないかと恐れ{3}、周囲の爆撃テロにもかかわらず脱出を拒んでいる者もいる。
イスラエルとバイデン大統領が率いる米国政権は、パレスチナ市民は「安全のために」ガザからの退去を命じられていると皮肉にも主張している。米国人は数日以内に予想されるイスラエルによる地上侵攻を支持している。東地中海に2つの米空母打撃群が存在するのは、他の地域の国々に対してパレスチナ人を助けるために軍事介入しないよう警告しているようにも見える。
著名な調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、ネタニヤフの戦争内閣がハマスの存在を消し去るためにガザ地区全体を消滅させることを計画しているというイスラエルの情報源を引用している。ハーシュによれば{4}、イスラエル軍は米国が供給した地下50メートルで爆発する2トンのバンカーバスター爆弾を投下する準備をしているという。
さらにパレスチナ人をエジプトのシナイ砂漠に大量追放し、ヨルダン、レバノン、シリアに逃れた1948年のナクバ後の難民と同じように恒久的なテント村に住まわせることも、邪悪な基本計画の一部なのだ。

バイデン政権は「民間人の犠牲を最小限に抑える」ために、ガザに人道的回廊を設置する方法を模索していると主張している。その一方でイスラエルには、民間人の大量殺戮を含むあらゆる復讐行動をとるための、完全かつ無制限な軍事的支援を与えている。
もしバイデンとイスラエルが市民の苦しみを和らげることを本当に心配しているのなら、イスラエル領につながるガザの他の2つの交差点を開けるだろう。しかし彼らはそれをしない。明らかに、検討されているのはエジプトへの交差点だけだ。なぜならそれで、ネタニヤフ政権が長年切望してきた民族浄化が容易になるからである。

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