2023年11月12日日曜日

12- 減税財源がないという与太話(植草一秀氏)

 経済学者で国家財政にも明るい植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 内閣支持率の低下が止まらないため、人気取りに腐心している岸田首相が4兆円規模の減税を打ち出そうとしたことに対し、鈴木財務相が「財源がない云々」と述べたことを取り上げたものです。
 私たちは「一般会計」(だけ)に目を向けがちですが、実は「特別会計」の方が巨額です。植草氏は、両会計の歳出を合計すると22年度は合計支出額は270兆円で、その内 政策支出(社会保障・防衛・コロナを除く)の合計金額は22・8兆円であることを示しました。
 その一方で、例えば20年度は「コロナ」を建前にして、なんと73兆円の支出追加を行いましたが、一律給付金の13兆円を除きその支出の大半が利権支出で消えました。財政事情が苦しいならこのような放漫財政を実行できるわけがないとして、その財務省が国民に対する4兆円の負担軽減策に「そんなお金はない」との風説を流布すること犯罪的であると述べました。

 折しも河野行革相は12日、国の基金の残高は現在17兆円弱(近年は年4兆円のベースで増加)に達したと述べ、今後は厳しく点検し国庫返納も指導すると述べました。いわゆる「○○基金」は省庁にとって使い勝手が良いため好んで設立したがるようです。ようやくメスが入るようですが遅きに失しました。
 役人たる者、国民の目が届かないのをいいことに不明朗なことをするべきではありません。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
減税財源がないという与太話
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年11月10日
「借金して減税するのは馬鹿だ」との言説が流布されているが、この情報流布は財務省の思惑によるもの。主張の出所と思惑の背景を理解しておかないとザイム真理教の罠にはまる。

たしかに岸田首相の提案は筋が良くない。
どの筋が悪いのかと言えば
 1.減税の時期を来年夏としていること
 2.減税の規模が小さすぎること
 3.減税が1回限りのものであること
このような減税を実施しても効果はない。

一人4万円の減税を1回限りで実施するなら4万円の一律給付にして年内に実施すればよい。
また、財政政策の目玉として政策を提示するなら党内、政府内関係部局の根回しをしておく必要がある。首相の政策提言を財務相が批判すること自体が異常
岸田首相は首相としての実権を失っていることを示している。
また、岸田氏は自民党総裁を兼ねているのだから自民党から異論が噴出することがおかしな話。自民党旧安倍派を中心に岸田降ろしが始動してしまっているということになる。
岸田首相退陣が想定より早まる可能性が拡大していると推察される。

財政論議に話を戻すが、借金で首が回らないという「フェイクニュース」に国民が騙されている。国家財政の基本構図を正確に理解すると、近年の財政政策運営が完全に常軌を逸していることが分かる
「4兆円の減税の財源がない」などという財務相の与太話に国全体が騙されているのである。
2022年度と2023年度の当初予算ベースの一般会計・特別会計歳出純計を見てみよう。

         2022年度一般会計・特別会計歳出純計 








         2023年度一般会計・特別会計歳出純計













まずは2022年度歳出純計を見てみよう。
歳出純計額は270兆円。
2022年度の日本の名目GDPが563兆円だからGDPの2分の1を超える。
とてつもない金額が政府から支出されている。
しかし、政府が政策運営のために支出する金額はこの数字とはかけ離れて圧倒的に小さな数値になる。
「その他」の34兆円が社会保障以外の政策支出の合計値になる。
国債費93兆円は国債の利払い費と償還費。
金額が大きいが償還する国債の財源の大部分は国債の発行によって賄われる。
国債の満期が到来すると償還金を払うが、そのお金は「借換国債」を発行して賄っている。
基本的に「右から左」のお金の流れになる。

社会保障関係費が97兆円と大きい。年金・医療・介護の支出だ。
国・地方合わせて社会保障給付は131兆円に達するが、最大の財源は保険料収入の74兆円。国が負担するのは36兆円だ。国の財政支出のなかで一番大きなウエイトを占める。
残りは地方公共団体に使途自由な財源として提供する地方交付税交付金が20兆円、国が行う貸付の原資支出が26兆円だ。
「その他」のなかに「防衛関係費」54兆円、コロナ予備費50兆円、予備費12兆円がある。
「その他」から「防衛関係費」、「コロナ予備費」、「予備費」を差し引くと228兆円。
これが1年間の政策支出(社会保障・防衛・コロナを除く)の合計金額になる

このなかに公共事業、文教及び科学技術振興、食糧安定供給対策、エネルギー対策、経済協力、中小企業対策などのすべての支出が含まれる。
国の政策支出の合計金額は1年間で23兆円である。
その一方で、例えば2020年度は「コロナ」を建前にして、なんと73兆円の支出追加を行った
この年は税収見積もりを下方修正したからその財源補填を含めて80兆円の国債を増発してこの補正予算を組んだ。財政事情が苦しいならこのような放漫財政を実行できるわけがない

73兆円の補正予算は、一律給付金の13兆円を除き、その支出の大半が利権支出で消えた。
このような放漫財政を仕切ったのは財務省。
その財務省が国民に対する4兆円の負担軽減策に「そんなお金はない」との風説を流布することが犯罪的であると言える。

11月20日午後3時からの院内緊急集会
減税・給付 財政政策を考察する!院内緊急集会
  ---森永卓郎さんご講演---
場 所:衆議院第一議員会館 第4会議室
主 催:ガーベラの風(オールジャパン平和と共生) https://x.gd/GVZe7 
参加ご希望の方は下記アドレスへ氏名を明記の上、お申し込み下さい。
e-mail:info@alljapan25.com 
定員に達し次第、受付を終了させていただきます。

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」https://foomii.com/00050
のご購読もよろしくお願いいたします。
続きは本日の メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第3628号
「消費税減税こそ最優良経済政策」でご購読下さい。

メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。