2023年11月25日土曜日

司令部がないことを承知で病院を攻撃したイスラエル・・・

 シファ病院を破壊したイスラエル軍は、そこにハマスの司令部があったかのように偽装していますが、司令部などはなかったことは明瞭で、イスラエル自身もそれを知っていながら同病院を爆撃し破壊したというのが真相のようです。
 事実イスラエルはこれまで各地で蛮行を重ねるたびに虚偽の口実を並べてきました。
    ⇒11月4日)イスラエルの欺瞞の文化(賀茂川耕助氏) ほか
 櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りました。
 同ブログの記事:「イスラエル軍がガザで苦戦、泥沼にはまり込む可能性が指摘されている 」を併せて紹介します。
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司令部がないことを承知で病院を攻撃したイスラエルを支持する英労働党に逆風 
                         櫻井ジャーナル 2023.11.24
 エルサレム・ポスト紙が11月14日に掲載した記事によると、イスラエル軍は数日前、ハマスが最高司令部の地下に地下司令部を建設、トンネル網とつながっていることを明らかにしていた。トンネルの深さは30メートルに達し、7人程度が乗れるエレベーターも設置されているという。この地下施設を制圧するためにイスラエル軍は精鋭部隊を投入したが、全体を占領することは困難だとされている。
 この司令部はイスラエル軍がハマスの司令部があると主張していたアル・シファ病院から85キロメートル離れた場所にある。病院の地下に司令部があるとするイスラエル政府の主張は説得力がないと言われていたが、彼らは司令部が存在しないことを知った上で病院を攻撃していたことになる
 11月15日にアル・シファ病院へ到着したイスラエル軍はハマスが病院内にいたとするプロパガンダを開始、イスラエル国防総省のジョナサン・コンリクス報道官はAK-47、手榴弾、軍服が床に整然と並べられた軍装品を見せているが、そこにハマスのメンバーがいたことを示す証拠とは到底言えない代物だった。

 イスラエルとハマスは11月22日、戦闘を4日の間中止することで同意したが、イギリス議会では11月15日、ガザ関するふたつの停戦案が採決された。ひとつは労働党が保守党の支持を受けて作成した「人道的措置の一時停止時間をより長くする」というもので、もうひとつはスコットランド国民党の「完全かつ即時の停戦」を求めたもの。どちらも否決されたが、労働党議員のうち56人が造反、スコットランド国民党の案を支持している。
 10月7日以来、イギリスでもイスラエル軍によるガザの破壊とパレスチナ人虐殺に反対するデモが繰り広げられ、第1次世界大戦の休戦記念日にあたる11日には数十万人が停戦を求めて行進したイスラエルとの完全な連帯を表明している保守党のリシ・スナク政権にとって不愉快な出来事で、内務大臣だったスエラ・ブレイバーマンは停戦を求めるデモを「憎悪行進」と非難してしまい、13日に辞任している。
 現在、労働党の党首を務めているキア・スターマーは親イスラエルを公言している人物。彼はイスラエルに接近、自分の妻ビクトリア・アレキサンダーの家族はユダヤ系だということをアピールしている。
 イギリスの労働党はイスラエルが「建国」されて以来、親イスラエルだったが、1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラでイスラエルとファランジスト党がパレスチナ難民を虐殺して以来、親パレスチナへ変化しつつあった
 この虐殺はファランジスト党の武装勢力はイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧、その際に数百人、あるいは3000人以上の難民を殺したと言われている。イギリス労働党の内部ではイスラエルの責任を問い、パレスチナを支援する声が大きくなった。
 ところが、1994年5月、労働党の党首だったジョン・スミスが急死、その1カ月後に行われた投票で勝利したのがイスラエルを後ろ盾にするトニー・ブレアだ。1994年1月に彼は妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後にロンドンのイスラエル大使館で開かれたパーティーに出席、そこで全権公使だったギデオン・メイアーから富豪のマイケル・レビーを紹介され、それ以降、レビーはブレアの重要なスポンサーになった。
 レビーだけでなく、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアは労働組合を頼る必要がない。そこで国内政策はマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義、国外では親イスラエル的で好戦的なものになったのだ。

 労働党員の中にはブレアのような姿勢に反発する人は少なくない。そこで台頭してきた人物がジェレミー・コービン。2015年9月から党首を務めるが、これを米英の支配層は嫌う。両国の情報機関や有力メディアはコービンを引きずり下ろそうと画策、「反ユダヤ主義者」というタグを付けられた
 サブラとシャティーラにおける難民キャンプで虐殺が引き起こされた頃、アメリカのロナルド・レーガン政権はイギリスとの結びつきを強めようと考え、メディア界の大物を呼び寄せて善後策を協議している。そこで組織されたのがBAP(英米後継世代プロジェクト)だが、そこには少なからぬメディアの記者や編集者が参加していた。
 コービンに対する攻撃には偽情報も使われているが、その重要な発信源のひとつが2015年に創設されたインテグリティ・イニシアチブ。イギリス外務省が資金を出している。「偽情報から民主主義を守る」としているが、その実態は偽情報を発信するプロパガンダ機関にすぎない。そして2020年4月4日、党首はスターマーに交代した。
 スターマーはスナックと同様、虐殺を肯定するため、イスラエルには自国を守る権利があると主張、「労働党はイスラエルの味方である」ともしてきた。こうした姿勢は労働党への怒りを強めているが、党内でも反発が強まり、地方議会では労働党議員の離党が伝えられている。


イスラエル軍がガザで苦戦、泥沼にはまり込む可能性が指摘されている 
                         櫻井ジャーナル 2023.11.25
 ガザでの戦闘は10月7日にハマスの戦闘部隊がイスラエルへ攻め込んだところから始まった。
 ガザはイスラエルが建設した一種の強制収容所であり、その収容所を取り囲む壁には電子的な監視システムが張り巡らされ、人が近づけば警報がなる。地上部隊だけでなく戦闘ヘリも駆けつけることになっているのだが、10月7日にハマスはイスラエルへ突入できた。しかも突入の数時間後、2隻の空母、ジェラルド・R・フォードとドワイト・D・アイゼンハワーを含む空母打撃群を地中海東部へ移動させている。
 そうしたことから、ベンヤミン・ネタニヤフ政権とジョー・バイデン政権はハマスに攻撃させたのではないかと疑う人が少なくない。その攻撃を口実にしてガザのパレスチナ人を追い出すか皆殺しにする計画だったのではないかというのだ。
 攻撃の際、約1400名のイスラエル人が死亡したとされた。その後、犠牲者の人数は1200名だと言われるようになるが、相当数のイスラエル人が死亡し、拉致されたことは間違いないだろう。
 しかし、イスラエルの新聞ハーレツによると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊したという。イスラエル軍は自国民を殺害したということだ。ハーレツの記事を補充した報道もある。
 イスラエル軍は自国の兵士が敵に囚われるのを嫌い、かつて、自軍を攻撃し傷つける代償を払ってでも、あらゆる手段で誘拐を阻止しなければならないという指令を出した。「ハンニバル指令」だ。1986年にレバノンでイスラエル軍の兵士が拘束され、捕虜交換に使われたことが理由だという。発想としては「生きて虜囚の辱を受けず」と似ている。
 この指令は2016年に撤回されたとされているが、今回、発動したのではないかという噂がある。ガザでの戦闘が始まった時点でイスラエル政府の高官は記者団に対し、人質が拘束されていると思われる場所を特定できていればイスラエル軍はその場所を標的にしないだろうが、そうでなければ人質の安全を優先して作戦が制限されることはないとしていたと伝えられている。

 アル・シファ病院の場合、イスラエル軍は別の場所にハマスの地下司令部があることを知っていながら病院を攻撃、患者や避難民を殺傷している。当初、勘違いしていたとしても、そこが司令部だということを確認せずに攻撃することは許されない。知ってからは確信犯だ。ウクライナでロシア軍は人質の安全を優先したことから攻略に手間取ったが、そうしたことをイスラエル軍は嫌ったのだろう。
 それほどイスラエル政府は強硬で、ガザからパレスチナ人を一掃するまで戦闘を止めるようには見えなかったのだが、イスラエルとハマスは11月22日、戦闘を4日の間、中止することで合意した。停戦が始まってもイスラエル軍はガザ市民を銃撃しているようだが、合意したことは確かだ。

 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めた​スコット・リッターも指摘しているように、イスラエル政府が停戦に合意したのは彼らが想定したような戦況になっていないからだろう。ガザでの戦闘が西側で言われているような状況でなく、イスラエル軍が苦戦していることはハマス側が流している映像でも推測できる。ハマスのトンネルのうち完全に破壊されたのは約3割にすぎないという。
 イスラエル軍はパレスチナ人を虐殺するだけでなく、ハマスと本当に戦っているのだとするならば、「飼い犬に手を噛まれる」といった状態だ。アメリカが自分たちの傀儡としてパキスタンと共同で組織したタリバーンと同じパターンとも言える。