2023年11月25日土曜日

国連憲章の遵守度、米国は最下位(賀茂川耕助氏)

 持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた学術研究の一環として、国連憲章やSDGsなどの国連が支援する目標を国連加盟国がどの程度遵守しているかを検証するグループが、暫定的な指標:「多国間主義指数」を作成しました(現在、それに対するフィードバックや提案を求めています)。
 因みに多国間主義指数による74カ国のランキングは、トップが小国のバルバドスで最下位が米国、最下位から2番目がイスラエルという結果でした。米国は桁外れに劣悪です。
 世には「孤高」という言葉もあるので、必ずしも「多数に準じる」ことが良いわけではありませんが、そもそも国連はそんな深淵な哲学を論じる場ではなく、ごく常識的な『大智』がベースになっているものです。
 上記の結果は米国とイスラエルが如何に世界の常識から逸脱しているかを見事に示しています。ことは人民の大虐殺に関わるものである以上「極悪非道の国家」とされるべきであって、「自衛権」などでは到底説明のつくものではありません。「耕助のブログ」を紹介します。
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国連憲章の遵守度、米国は最下位
                 耕助のブログNo. 1984  2023年11月24日
  US ranks last on adherence to UN Charter
         by Jeffrey D Sachs and Guillaume Lafortune
バルバドスは人口28万人と非常に小さな国だが、その平和的な多国間主義が大きな発言力を与えている。バルバドスの国連での投票記録は世界の他の国々(より大きく強力な国々を含む)の模範となるべきである。
持続可能な開発目標(SDGs)の達成方法に関する学術研究の一環として、私たちは国連加盟国が国連憲章とSDGsのような国連が支援する目標をどの程度遵守しているかを調査している。この目的に向けて私たちは暫定的な「多国間主義指数」{1}を作成したので、ご意見やご提案をお待ちしている。多国間主義指数による74カ国のランキングは以下の図1の通りである(⇒ https://www.commondreams.org/opinion/multilateralism-index-united-nations 

バルバドスは国連憲章に最も忠実な国連加盟国として最高位にランクされている。バルバドスは人口28万人と非常に小さな国だが、その平和的な多国間主義が大きな発言力を与えている。世界的に尊敬を集めるバルバドスのミア・モットリー首相は最近、フランスのエマニュエル・マクロン大統領{2}と手を組み、この6月にパリで「人と地球のための新たな世界金融協定のための重要なサミット」を共催した。このサミットは、バルバドスの首都にちなんで命名されたバルバドスのブリッジタウン・イニシアティブを基礎とし、気候変動に脆弱な国々が対処できるよう、世界金融アーキテクチャを改革するものである。

74カ国中、最下位は米国で、イスラエルは下位から2番目である。このところ顕著なように、両国は国連の多国間システムとしばしば対立している。
パンデミックから戦争、気候変動に至るまで、前例のない複雑な危機に直面し、相互に深く結びついた相互依存の世界では国連憲章に基づく多国間主義の必要性がこれまで以上に緊急性を増している。
米国はいくつかの点で国連憲章を遵守していない。最も顕著なのは米国が国連の委任なしに、またしばしば国連安全保障理事会の意思に反して、多くの戦争や政権交代作戦を主導してきたことである。2003年、米国は国連安全保障理事会で対イラク戦争の承認を得ようとした。安保理が反対しても、とにかく米国は戦争を開始した。後に明らかになったように、米国が戦争を始めた表向きの理由であるイラクの大量破壊兵器保有は、存在すらしていなかった
米国は、国連憲章の文言と精神に違反する、何十回にも及ぶ秘密裡の、そして公然の政権交代作戦に従事してきた。ある重要な研究{3}によれば、1947年から1989年までの冷戦期間中に米国は64の秘密政権交代作戦を行った。それ以降も米国の秘密作戦は数多く知られている。

多国間主義指数  https://www.commondreams.org/opinion/multilateralism-index-united-nations 
ジェフリー・D・サックス、ギヨーム・ラフォーチュン、イーモン・ドラムの調査に基づく多国間主義指数。
米国はまた、持続可能な開発の問題に関しても単独で行動している。2015年、193の国連加盟国すべてが、2016年から2030年までの間の国家政策と国際開発協力の指針となる「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。すべての国連加盟国は、自主的国家レビュー(VNR)と呼ばれるプレゼンテーションで、SDGsの国家計画、課題、成果を他の国々に発表することになっている。これまでのところ、193の国連加盟国のうち188カ国がVNRを発表しており、複数回発表することもある。例えば、バルバドスは2020年と2023年に2回のVNRを発表している。一度も発表していないのが5ヶ国、ハイチ、ミャンマー、南スーダン、イエメン、そして米国である。南スーダンとイエメンは現在、2024年にVNRを発表する国のリストに入っているが{4}、米国は入っていない。

現段階で、多国間主義指数は国連加盟193カ国のうち74カ国をカバーし、このグループのSDGs達成に向けた政府の取り組みに関する広範なデータを収集した。多国間主義指数はSDGsの取り組みと正の相関関係がある。つまり、国連のプロセスを遵守している国はSDGsへの強いコミットメントも示しているのだ。
国連システムの中で多国間であるということは、国連の戒律と国際社会の声を守るということである。
多国間主義指数は5つの指標に基づく。
1つ目は、1946年から2022年の間に各国が批准した国連条約の割合である。一例として、バルバドスは主要な国連条約の80%以上を批准しているのに対し、米国は60%未満にとどまっている。
2つ目は、国連が承認していない一方的な経済制裁(「一方的強制措置」と呼ばれることもある)を行っているかどうかである。国連総会は1974年{5}に「いかなる国家も,主権を行使するにあたって,他国の主権的権利の行使を従属せしめるために,経済的,政治的もしくはその他のいかなる態様の強制措置を使用し,もしくはその使用を奨励してはならない」と宣言した。
3つ目は、各国の主要国連機関への加盟度を測るものである。
4つ目は、各国の軍事化と戦争への傾斜を測るものである。この指標はグローバル・ピース・インデックス{6}の優れた研究に基づいている。
5つ目は、国民総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合で、高所得国と貧困国の経済的連帯度を測るものである。1970年10月の国連総会決議{7}によれば、高所得国はGNIの少なくとも0.7%をODAに充てることになっている。これに対して米国は、2022年にはわずか0.22%をODAに充てているに過ぎない{8}。
これら5つの指標を組み合わせて、多国間主義指数を作成した。
この指数は2022年までのデータに基づくものだが、その予測力は実証済みである。ここ数週間、投票に次ぐ投票で、私たちは米国が国連内で孤立していることを目の当たりにしてきた。国連システムの中で多国間であるということは、結局のところ、国連の戒律と国際社会の声を守るということである。
10月18日、米国は国連安全保障理事会で、ガザでの人道的停戦を求める決議を阻止するために拒否権{9}を行使した。投票結果は賛成12票、棄権2票で、米国が単独で拒否権を行使した。
同様に、2023年11月2日、国連総会は決議A/78/L.5{10}を採択し、米国に対し、長年にわたるキューバへの経済・金融・商業禁輸措置の廃止を求めた。控えめに言ってもこれは僅差の投票ではなかった: 187カ国が賛成票を投じ、反対票を投じたのは米国とイスラエルだけだった。ウクライナは棄権し、3カ国は投票しなかった。つまり、賛成187票、反対2票、棄権1票であった。今年の決議は、1993年までさかのぼる30件の同様の決議に続くものである。米国はこれらの国連総会決議をことごとく無視してきた。
パンデミックから戦争、気候変動に至るまで前例のない複雑な危機に直面する、相互に深く結びついた相互依存の世界において、国連憲章に基づく多国間主義の必要性はこれまで以上に緊急性を増している。いかなる政府も単独でそれを行うことはできない。バルバドスは他国が達成すべき最高の基準を示している。米国は、国連憲章の下で運営される国連システムこそが真の「ルールに基づく国際秩序」であることを認識する必要がある。

Links:
{1}https://sdgtransformationcenter.org/static/docs/methodologies/11-03-2023-Multilateralism_Index.pdf 
{2} https://www.commondreams.org/tag/emmanuel-macron 
{3}https://www.amazon.com/Covert-Regime-Change-Americas-Security/dp/1501730657 
{4} https://hlpf.un.org/sites/default/files/2023-10/Letter PoE to Member States VNR List 2024_0.pdf 
{5} https://daccess-ods.un.org/tmp/6013149.02305603.html 
{6} https://www.economicsandpeace.org/wp-content/ uploads/2022/06/GPI-2022-web.pdf 
{7} https://undocs.org/A/RES/2626(XXV) 
{8}https://www.oecd.org/dac/financing-sustainable-development/development-finance-standards/official-development-assistance.htm 
{9}https://news.un.org/en/story/2023/10/1142507#:~:text=The United States on Wednesday,aid to millions in Gaza.
{10} https://digitallibrary.un.org/record/4025763?ln=en 

https://www.commondreams.org/opinion/multilateralism-index-united-nations