2025年10月30日木曜日

高市挙党内閣の深謀遠慮/主権者信任なき自維金権政権(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
「高市挙党内閣の深謀遠慮」では、高市政権は別掲の記事のように短命に終わる可能性が高いのですが、新体制の発足に当たり小泉進次郎防衛相と赤沢亮正経産相という二つの地雷を組み込んであるということです。
 高市氏は防衛費GDP比2%は愚か 3.5%でも構わないと平然と口にしています。年間5兆円規模の防衛費を年間10兆円に激増(GDP比2%になれば年間12兆円)させるのですが、そのための財源はどうするのでしょうか。
 その分〝民生″が圧迫されるのは目に見えています。GDP3・5%なら実に年間20兆円です。
 兵器は大体10年ほどで時代遅れになってあまり役に立たないのですが、それを廃棄するのは大損なので日本に高額で売って儲けようというのがトランプの作戦だと識者は見ています。
 当然国会論戦というハードルは高く、小泉進次郎氏の手に負えるものではありません。高市氏はその行き詰まりを想定して小泉氏を防衛相に起用した疑いが強いと述べています。

 また、赤沢亮正氏を日米交渉担当の特命相から経産相へ横滑りさせました。
 赤沢氏は、石破内閣の任期末期に米国との関税交渉で合意・署名しましたが、その中身はトランプの威力と強引さに屈したものでした。最大の問題は5500億ドル(約80兆円)の対米投資で、投資先は米国が決定し利益は9割が米国のものになるという「売国合意」でした。
 この問題で国会が大紛糾する可能性は高く、赤沢氏の経産相横滑りはこうした問題からの逃亡を許さないというもので 彼に問題処理を担わせるという意図です。随分底意地の悪い人選をしたものです。赤沢氏のみならず石破氏も貶める意図が感じられます。
 植草氏は、「高市氏が責任を赤沢経産相一人に押し付けることは不可能だ。『政治とカネ問題放棄』という最重大問題もある。高市内閣が行き詰まるのは時間の問題である」と述べます。

 併せて植草氏の記事「主権者信任なき自維金権政権」を紹介します。
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高市挙党内閣の深謀遠慮
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年10月27日
高市新体制が発足したが二つの地雷が組み込まれている。
小泉進次郎防衛相と赤沢亮正経産相。

高市氏は防衛費GDP比2%を打ち出した。一般会計予算における防衛関係費は従来年額5兆円規模だった。岸田文雄元首相が独断で防衛費の激増方針を決めた。5年で27兆円の防衛費を5年で43兆円に増大させた。債務負担行為を含めれば実質倍増。
年間5兆円規模の防衛費を年間10兆円に激増させた。GDP比2%になれば年間12兆円。

財政危機を叫びながら軍事費だけは突出して増大させる。
これは国を守るための支出ではない。関係者と関係業界に利益を供与する方策。軍事産業の製品ほど価格が不明朗なものはない。法外な価格を設定して原価との差額が自民党得意の「裏金」になる。

軍事費=防衛費激増は打ち出の小槌。しかし、国会論戦というハードルがある。ここに小泉進次郎氏をぶつけた。小泉氏は祖父が防衛庁長官を務めただけで防衛の専門家でない。国会論戦での行き詰まりが想定される。
高市氏はその行き詰まりを想定して小泉氏を防衛相に起用した疑いが強い。

赤沢亮正氏は日米交渉担当の特命相から経産相への横滑り。石破内閣の任期末期に米国との関税交渉で合意・署名した。この合意は一言で表現すれば「売国合意」。
25%の追加関税率がトータルで15%の関税率に変わった。
自動車産業は歓迎するがTPP交渉の際の日米並行協議で、日本から米国への乗用車関税率は現行の2.5%をゼロにすると決定されたから、必ずしも大きな得点と言えない。

主力のピックアップトラックの関税率は25%が15%に引き下げられる。
だが、トランプ大統領がただで関税率引き下げを日本に寄贈することはない。
引き換えに日本政府が何を提供したのか。7月20日に参院選が行われた。
日米交渉の決着は7月22日。石破首相は参院選敗北での退任圧力を日米合意で跳ね返そうとしたと見られる。

このような「打算」に満ちた交渉決着は極めて危険。足元を見られて国益を売り渡すことになる。実際に合意内容を見ると重大な問題を多く確認できる
ボーイングの旅客機を100機購入する合意は不自然を越えて犯罪的。民間が購入する航空機のメーカーを国家が指定するという話。ロッキード事件を知らぬわけがないだろう。
石破氏は田中角栄氏の秘書から政界入りした人物だ。

米国製の高額トラックを日本政府が購入する話も盛り込まれた。
だが、最大の問題は5500億ドルの対米投資。投資は米国が決定し、利益は9割が米国のものになるという。その投資資金提供だけを日本が負わされる
80兆円規模の上納金献上が決定されたと言える。石破内閣の途方もない負の遺産。
赤沢亮正氏の経産相横滑りは、上納金問題からの逃亡を許さないというもの。赤沢経産相に問題処理を担わせる。

しかし、この問題で国会が大紛糾する可能性は高い。
高市氏が責任を赤沢経産相一人に押し付けることは不可能だ。「政治とカネ問題放棄」という最重大問題もある。高市内閣が行き詰まるのは時間の問題である
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主権者信任なき自維金権政権
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年10月28日
政権の基盤は国民の信任。国民の負託を受けて政権は成り立つ。
新たに樹立された高市政権に対する国民の負託根拠は不確かなもの。
現行制度の間隙を縫って樹立された政権という意味しかない。

昨年10月の衆院総選挙で自公は過半数割れに転落。本年7月の参院通常選挙で自公は参院でも過半数割れに転落。最大の問題は「政治とカネ」。自民議員多数が政治資金を裏金にして懐に入れた。所得税法違反の疑いも濃厚。
1000万円以上の不正を働いた議員が21名。警察・検察が腐敗しているから刑事事件として立件されたのはほんの数件。しかし、史上空前の巨額裏金事件は国民の自民党に対する信頼を一段と地の底まで低下させた

事態を打開するチャンスはあった。25年通常国会で企業団体献金を禁止する法制を整えることができた。千載一遇のチャンスだった。
しかし、石破首相は提案を拒絶。国民民主が自民にすり寄り企業団体献金禁止は闇に葬られた。
そのあおりで惨敗した公明が高市自民に最後通牒を提示。高市新党首は公明の提案を拒絶。
結果として公明は連立離脱を決断した。

過半数を大幅に割り込んだ高市自民は下野する危機に直面したが、ここに維新がつけ入った。
「企業団体献金禁止」を自民に呑ませて連立に持ち込むなら国民の理解を得られただろう。
しかし、維新の行動は真逆だった。企業団体献金の規制強化さえ放り投げて自民に連立を呼びかけた。これに高市自民が応じて連立政権が樹立された。
長々と記述したが要点は新たに樹立された自維連立政権が国民の意思からかけ離れているということ。

国民は自民に退場通告をした。維新も直近の衆参両院選挙で国民からダメ出しされている。
参院比例代表得票数は以下の通り(単位:万票)。
      2022    2025    減数
自民    1826    1281   -545
維新     785     438   -347
自民も維新も国民からの信任を大幅に低下させている。

その自維が「金権腐敗」で足並みを揃えて連立政権を樹立した。
維新が連立の条件に掲げたのが衆院比例代表定数の削減。不適切にもほどがある
自民も維新も比例代表の得票を激減させた。
維新の議席の多数は大阪の小選挙区で確保されている。ここには自民の小選挙区選出議員がほとんどいない。維新は大阪の小選挙区を自民から割譲する考えだろう。
比例代表選挙は民意を正確に議席数に反映させる。多党分立時代には比例代表選挙が最適だ。

完全な二大政党体制に移行しているなら比例代表議席定数を減らしても弊害は少ない。
しかし、多党分立時代に比例代表議席定数を削減することは民意の切り捨てに他ならない。
自分たちの比例代表得票が激減したから比例代表議席定数を減らすというのは自己中心主義の極みである。

最大テーマの「政治とカネ」対応を完全放棄。「裏金がどうした内閣」誕生。
高市新政権を主権者国民は信任していない。早期に衆院総選挙で民意を問う必要がある。
            (中 略)
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4233号
「米は自維ふてほど内閣歓迎」 でご高読下さい。
            (後 略)