2026年2月26日木曜日

高市圧勝の ー ①中国という敵から高市を守り、②株価を上げるため高市を推し

 世に倦む日々氏による掲題の記事を紹介します。
 やや分かりにくいタイトルなので簡単に説明します。
 同氏は、高市圧勝を社会学的なアプローチで肯定するのは間違っているとして、「ウソをつきまくって他責で開き直る高市の性格の悪さは尋常ではなく、人物の面で高市がプラス評価を受ける資質的理由は微塵もない」と痛烈に酷評し、「高市圧勝の政治を有意味な社会現象として捉える見方に反対する」と述べます。
 そして「では、今回の有権者の投票行動と結果の真相は何だったのか」というと、「その答えは簡単で、中国に対する反発と逆襲である。中国から攻撃されている高市を守って助けようという行動であり、中国への敵意に動機づけられた対抗反撃行動に他ならない」と明言します。
 因みに同氏は「日本は反共のイデオロギー・バイアスが著しい国であり、それへの容赦がなく酌量の余地がない社会である。~ これほど反中・反共が同調圧力のコードとして強力に前提化され、言論上の拘束力と禁忌性の高い国は他にないだろう」と評します。
 以上がタイトル①の内容です。

 そしてもう一つの要因は、「高市の経済政策には安倍のような吸引力はなく、コンセプトの内容もなく、電通的な標語レベルとしても説得力がないので、ひたすら円安を招く」ことを前提にして、岸田政権のときに新NISAを制度化して『貯蓄から投資へ』の流れを作って2年経ったことで、「米国株での資産運用で(帳簿上の)資産増を得ていて、株依存症の経済人生を送っている人口が増えている。彼らにとっては、円の価値が下落し株が騰がれば騰がるほど儲かり小金持ちになる」という関係になっているので、「円安を推進する高市経済政策」を大歓迎しているというものです。
 世に倦む日々氏は「これが高市圧勝の第二の真実であり、マスコミが言う『高市人気』の裏側の秘密だろう。無産で物価高に喘いでいるはずの日本の労働者が、共産党やれいわに投票せず、高市自民を支持しているカラクリの一端はこの『投資』ブームの問題にあると言える」と述べます。
 どちらも他のコメンテータなどが着眼しなかった点であり、卓見です。
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高市圧勝の  ①中国という敵から高市を守り、②株価を上げるため高市を推し
                       世に倦む日日 2026年2月24日
衆院選の結果が出て2週間が経った。その間、マスコミから今回の民意を分析し総括する記事が大量に溢れている。その多くに共通しているのは、高市の勝利を奉祝し高市人気を合理化する言葉の数々だ。高市圧勝を肯定的な社会現象として受け止め、この投票行動をした有権者の心理を内在的な視角から評価し、この政治的事実を有意義化する学者たちの言説が乱発されている。「推し活」をキーワードにした中北浩爾の浮薄な評論がその典型だし、大澤真幸によるところの、高市が「見捨てられているとの不満を抱く人々に『癒やし』を与えて支持を得た」と憶測する奇論もそうだろう。大澤真幸は社会学者だから当然こうした論理と見解になるのだが、彼らの特徴は、社会学的なアプローチで高市圧勝を整理し表現する論法だ。社会で起きている現実を肯定し、批判的に接しない。それがどれほどファシズムと同質で類似の危険な現象でも、有意味な言葉を与えて意味づけする。

そうした学者たちの言説が撒かれることで、高市圧勝という政治は社会的に肯定的な事象に化け、マスコミによって正当化され、国民全体が前向きな判断で正しい結論を出したように総括される。その物語を国民全体が納得して共有する(させられる)進行になる。選挙に投票に行った有権者は全体の56%だ。44%は棄権した傍観者である。マスコミと学者たちの言説は、約半数の棄権者も含んだ全体の民意として物語化され、日本国民の政治的選択として妥当な図に描かれて確定される。恐ろしいことだ。私は、高市圧勝の政治を有意味な社会現象として捉える見方に反対する。「推し活」などの空疎な語で大衆的ムーブメントとして表象化し、この投票結果に内在的な根拠を与え受容する認識は根本的に間違っていると思う。特に政治学者なら、政治学が研究してきたファシズムの概念とモデルを用いて批判的に分析し、危機感を示すのが当然だろう。それが常識的な議論というものだ。

それでは、今回の有権者の投票行動と結果の真相は何だったのか。有権者はどういう判断をしたのか。「推し活」などの擬態語で欺瞞的に説明された政治の裏側に何があったのか。その答えは簡単だ。中国に対する反発と逆襲である。高市に対する「推し」なる行動は、実は中国から攻撃されている高市を守って助けようという行動であり、中国への敵意に動機づけられた対抗反撃行動に他ならない。高市そのものに何か韓流アイドルのスターのようなカリスマ性があって、その価値と魅力に大衆が惹き寄せられているわけではない。高市の磁力は、中国への憎悪のエネルギーが吸収され反射された実体であり、今回の高市祭りは反中国の民意を結集させ燃焼させたフェスだったのだ。昨年 11/7 に高市が台湾有事への干渉を国会答弁して以降、マスコミはずっと高市を擁護し、国論を高市擁護で固め、中国による経済制裁を批判してきたが、今回の選挙はまさにその国論が民意となった政治だった

実際のところ、年末から正月にかけての時期、高市は中国問題で追い詰められていた。レアアース禁輸の深刻な懸念が浮上し、日経までが高市に対して辛辣な論調に転じ、通常国会で高市が糾弾されて立往生する幕が見えていた。台湾有事に自衛隊を派遣するとコミットして突っ張り続けた発言は、自身の口から撤回せざるを得ない崖っぷちの状況になっていた。それを避けるためには、国民に選挙で自分を勝たせてもらうしかなく、現実に世論調査を重ねた情勢データでは勝利確実の予測だったので、不意打ち解散の賭けに出たのである。他にも統一教会の醜聞禍が口を開けて待っていて、解散せずに国会に突入したら火達磨の炎上となり、支持率激落の目は確実だった。選挙後の言説での表層のイメージでは、国民が高市を積極的に支持した物語になっていて、高市の「積極財政」に国民が期待を寄せた図に仕立てられている。だが、内実はそうではなく、「積極財政」など何も争点ではなかった

党首討論会でも高市の「積極財政」が議論になった場面はない。高市の政策が野党勢の批判を抑えて評価を受けたという観察はあり得ない。高市の「個人人気」なるものも、保守系マスコミでは頻繁に喋々され、高支持率を背景に神話化されてきたけれど、左派系が多くフローする私のXタイムラインでは真逆の評価であり、特に女性から激越に嫌悪され唾棄されている実情がある。具体的に一瞥したとき、高市に特に visual value ⇒視覚的価値)の具備が認められるわけではない。無論、野田と比較して競争となれば、顕著な優位性があったのは事実で、女性という属性も利点として効果があっただろう。だからこそ、中道は吉田をぶつけるべきだった。外見の点はその程度としても、ウソをつきまくって他責で開き直る高市の性格の悪さは尋常ではなく、人物の面で高市がプラス評価を受ける資質的理由は微塵もない。過去の経緯含めてキャラクターを客観視したとき、嫌われる要素ばかりであり、人気者になれる条件はどこにもない

なので、高市を人気者のキャラクター扱いし、期待感が躍動するブームを巻き起こしたカリスマに擬して称揚するマスコミの説明は、明らかに創作であり、政治的なトリックである。悪質な虚構の公論化に他ならない。実際には、有権者は中国を敵として騒めき立ったのであり、選挙を中国と戦う政治の場としたのであり、中国と喧嘩する高市を応援して一票を入れたのだ。暴支膺懲の感情を選挙の民意にしたのである。あのとき、11/18、もし習近平指導部が外交部の局長に北京でポケットに手を突っ込ませず、横柄で傲慢で無礼な態度で金井正彰をあしらう挑発の絵を見せていなければ、このような最悪の選挙結果には至らなかっただろう。11/18 の事件を機に、保守マスコミが攻勢をかけて 11/7 の高市の失態と暴走は意味が逆転し、日本の世論は右翼方向に、高市支持へと固まって行った。中国に対する保守派日本人の憤懣と鬱屈は、短期間の生成物ではなく、数十年間の”教育”の所産であり、幾層にも堆積されセメント化されたものだ

その反中の精神性は、反共の思想性でもあり、社会主義・共産主義へのネガティブネスは、おそらく日本は世界一の先鋭度と支配度を持った国だろう。デフォルト⇒基本)で中国は悪であり、脊髄反射的に社会主義・共産主義は悪だと断定される。そこに近ければ近いほど政治的に悪のフラグを立てられる。日本は反共のイデオロギー・バイアスが著しい国であり、それへの容赦がなく酌量の余地がない社会である。そのため、アメリカのようにマムダニ的契機が発生しない。私は数年前から日本は右翼大国だと言っているが、これほど反中・反共が同調圧力のコードとして強力に前提化され、言論上の拘束力と禁忌性の高い国は他にないだろう。その思想性もまた数十年かけて構築された建造物であり、昨日今日出来上がったものではない。そして、若年層になればなるほど固い信念と化していて、世代交代が進むほど日本社会の反中・反共の傾向と性格は強くなる。選挙をやればやるほど、日本は戦後民主主義から離れ、対極にある右翼的地平へ移行する

今回の衆院選は、高市を守って中国を叩く政治的な機会と祭典だった。それが第一の真実である。マスコミは社会学的な装いを凝らした空説で物語を加工しているが、それは本質を隠すカムフラージュであり、選挙はあくまで政治的選択が行われた場であった。勝利した有権者の最大の争点は、中国から非難されている高市を擁護することであり、高市(とその仲間の右翼政党)に一票を投じて高市の”正義”を証明することだった。反中反共のシンボルである高市に勝利の凱歌を上げさせ、対中の右翼路線で結束した日本政治を実現することだった。高市が圧勝する結果を得たことで、台湾有事を存立危機事態認定して自衛隊を出すとした発言は正義となり、国民が認めてお墨付きを与える正しい”方向性となった。安倍晋三が主導し扇動した「台湾有事=日本有事」の命題は、高市圧勝によって国策の位置に定礎された。今後の日本の安保政策は「台湾有事=日本有事」の基本方針に沿って立案され策定される。すなわち、中国との戦争を睨んだ国策の遂行となる。

高市にカリスマがありプラスの磁力があったから票を集めたのではなく中国という敵を拒否し排撃しようとするエネルギーが票を高市に向かわせたのだ。マスコミがその政治的真実を語らず、捻じ曲げた社会学的な言説で上塗りするのは、反中反共の右翼日本というイデオロギー的事実を客観的に認めたくなく、そこに生臭さと疚しさを感じるからで、お茶濁しで逃げて自己欺瞞したい衝動からだろう。誰もが自分自身の醜い姿は見たくない。本当の言葉を当てたくない。なぜなら、自我の断裂と混乱を招来し、平和憲法否定の右翼思想が普遍的で絶対正義の立場だと自信を持てないからだ。そもそも、高市が取った票は2000万票で、小泉や安倍と比べて大差なく、カリスマ性を美化するほどの数には当たらない。経済政策での大衆の吸引力と操縦力は、小泉や安倍の方がずっと大きかった。高市が得た議席数が突出しているのは、中道の選挙戦略が極端に失敗だったからであり、敵失によって法外な議席数に恵まれた点を看過できない。「高市人気」は中身のない空論だ。

第二の真実の仮説を試みよう。中国敵対とは別の次元で高市支持の大衆的真因が発見できそうだ。それは何かというと、円安株高の高市トレードである。上の段で、私は高市の経済政策には小泉や安倍のような吸引力はないと述べた。その指摘に同意していただける読者は多いだろう。高市の「積極財政」には安倍の「アベノミクス」のような魔術的な訴求力はない。コンセプトの内容もなく、電通的な政策コピーの標語レベルとしても説得力がない。だが、そう考えるのは、私や読者の多くが株式投資(投機)とは縁のない経済的存在だからである。岸田政権のときに新NISAを制度化して「貯蓄から投資へ」の流れを作って2年経った。それが始まった頃、円資産がドル資産に流出する問題がエコノミストに指摘され、円安が加速して国益を損なう一方だという警告が発せられていた。要するに、日本人がNISAを媒介に円資金をオルカンやS&Pに移し、米国株での資産運用で(帳簿上の)資産増を得ていて、株依存症の経済人生を送っている現実がある。その人口が増えている。

彼らにとっては、円の価値が下落すればするほど得で、株が騰がれば騰がるほど儲かるのだ。豊かな小金持ちになるのだ。高市トレードは円安を推進する経済政策である。金融市場のプレイヤーである資本家に対して、円の金融緩和継続を保障し、「積極財政」による財政毀損(円の信認低下)を意識づけ、円安トレンドの心性を導引させ続ける政策だ。アベノミクスと同じ。俄か投資家の彼らにおいては、円安によって物価は上がっても、それを上回る円換算の資産増が(現在進行形で)口座に計上され達成されているため、円安は大歓迎なのであり、高市トレードを永続して欲しいのである。つまり、彼らのマインドが資本家になっていて、金融資産を保有運用していない多数の日本国民がどれほど輸入インフレの物価高禍に喘いでも、他人の不幸は自分の幸福で、意に介することがなくなっている。高市自民に投票した2000万人の中には、そうした、本来は無産の労働者であり、所得的には賃金労働者なのに、NISAで素人投資家に化けた俄か資本家が多くいる。彼らにとっては高市は稼ぎの神なのだ。

これが高市圧勝の第二の真実であり、マスコミが言う「高市人気」の裏側の秘密だろう。無産で物価高に喘いでいるはずの日本の労働者が、共産党やれいわに投票せず、高市自民を支持しているカラクリの一端はこの「投資」ブームの問題にあると言える。若い世代になればなるほど、日本の労働者はNISAに依拠し信奉する者が多くなり、資本主義(新自由主義)を正面から肯定する態度になる。高市自民や維新や玉木国民や安野みらいを支持する政治的主体になる。すなわち、小ブルジョワ(Petite bourgeoisie)。マルクスは「存在が意識を規定する」と言った。まさしく、彼らが生きる土台の論理と運動が彼らの志向と選択を決定づけている。経済的生き方が政治的価値観を決めている。日本人の存在と意識の誤った変容が、政治を誤った方向に導いている。以上、①中国への敵対反発の民意 と ②高市トレードへの支持と、高市圧勝の真実を2点指摘した