世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
トランプがイスラエルにたぶらかされて簡単にイラクを転覆できると思いこんで始めた対イラン攻撃でした。イランは大変な被害を受けましたが、それでも中東にある16の米軍基地を攻撃して、殆どを機能不全状態に陥れました。そしてイスラエルにも相応の被害を与えました。
米国はこの攻撃で、攻撃用ミサイルと防御用ミサイルを大量に消費し、その補充の目途も立たなくなった」ため休戦せざるを得なくなりました。
しかし数ヶ月程度の休戦では大量のレアアースを必要とするミサイルの補充などはできません。従って今後はトランプとしては、どんな風にして外面的に「勝利」を演出して「名誉ある撤退?」をするかが課題ですが、それはひと口に言えばとても困難なことです。
一方ネタニヤフとしては、戦争を続けていないと自分が逮捕される可能性があるので、ひたすら戦争を継続するしかないようです。とは言えイスラエルだけで対イラン戦争を続けられるかと言えばそれは無理でしょう。
ところで高市氏に取っての最重要事項は「台湾有事」がどうなるかでしょう。世に倦む日々氏は、米国にはもはや「台湾有事」を画策する余裕などはなく、もしも「米国が参戦しない」状態で「日中戦争」が始まるならば、米国は大歓迎するだろうということです。もしもそんなことになれば、日本が徹底的に破壊されるのは火を見るよりも明らかなのですが、中国もそれなり打撃を受けるからです。
高市氏がそこまでは愚かではないことを祈りますが、こればかりは分かりません。世界でただ一人、中国を嫌悪して止まない一国の宰相なのですから。
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台湾への武器売却問題の真相 - アメリカには中国と戦争する継戦能力がない
世に倦む日日 2026年5月25日
5/14 の米中首脳会談では、アメリカによる台湾への武器売却問題が最大の焦点となった。中国側はその中止・延期を強く要求し、トランプはそれに対して回答を控え、いわゆる「戦略的曖昧性」(Strategic Ambiguity)を押し通す外交で対応した。今回のアメリカによる台湾への武器売却は、総額140億ドル(約2兆2000億円)規模と報道されている。どのような中身が気になったのでChatGPT(無料版)に訊いてみると、以下の内訳を整理して出力した。
① HIMARS / ATACMS 40.5億ドル 82両 / 420発 地上ロケット砲
② M109A7 40.3億ドル 60両 自走榴弾砲
③ ALTIUSドローン 11.0億ドル 非公開
④ Tactical Mission Network 10.1億ドル
⑤ NASAMS 8.0 億ドル 36基 防空システム
⑥ PAC-3 MSE 数十億ドル 非公開 防空システム
中心となるのは①と②、および⑥となる。①はウクライナ戦争で有名になった地上発射の攻撃兵器で、トラックで移動運搬する高機動ロケット砲のプラットフォーム(HIMARS)に射程300キロの地対地ミサイル(ATACMS)をセットにしたパッケージ。高橋杉雄の顔が浮かぶ。台湾本島と中国大陸の距離は130-180kmのため、この武器で台湾侵攻を狙う中国軍部隊を狙って射弾し、海峡に出る前に無力化する想定だ。大陸沿岸部の集結基地や港湾やミサイル基地を狙う。②は155ミリ自走榴弾砲(Paladin)のパッケージで、上陸した中国軍部隊や橋頭保を狙って撃破する地上兵器。⑥は弾道ミサイル迎撃の防空ミサイルで、⑤は巡航ミサイルと戦闘機を迎撃する防空ミサイル。現在、この⑥の部分が未定で、内容が詰まってないらしい。今回、この武器売却について中国側が首脳会談で取り上げることを求め、トランプが議題化を認めた背景には、米軍内での弾薬不足が深刻に影響しているのではないかと推測する。
ATACMS については、在庫は3000発以上あるものの、すでに生産を終了し後継のPrSMに移行中となっている。そのPrSMの生産能力が年150発程度と小さく、今後の配備体制に不安の声が上がっている。ATACMSの在庫の多くが旧型(Block1)で、射程距離が短いため、台湾本島から中国沿岸まで届かないという問題があるらしい。台湾へのATACMSの売却は在庫処分なのだ。新型のPrSMはイラン戦争で40-70発消費し、在庫の45%以上を消耗してしまった。無論、生産にはレアアースが要る。PAC-3 MSEについては、イラン戦争前の在庫2300発を1000-1400発消費し、在庫が半減となった。生産能力は年600発程度で、現在それを全世界で激しく争奪し合っていて、アメリカは割り振りに苦悩している。当然、レアアース・レアメタルが製品生産の原材料に必要で、サプライチェーンの脱中国化を図っているアメリカは、量産スピードを上げて在庫を補充する必要と調達およびコストの足枷でジレンマに陥る局面となっている。
イラン戦争の結果、アメリカは攻撃用/防御用ともに、また、空中発射・海上発射・地上発射の全領域にわたって、虎の子のミサイル兵器の在庫を大幅にロスし、その補充と再配備の優先順位の選定に右往左往する事態に直面した。さらに、安価で大量生産されるドローンの飽和攻撃に対して、高価な迎撃ミサイルの配備と対抗では防空システムとして機能しない事実が明らかとなり、戦争の方法や前提そのものを根本から考え直す必要に迫られた。加えて、高性能ミサイルの開発と量産には材料たるレアアース・レアメタルが必須で、中国が支配する供給網体制の軛をいかに打破し克服するかの問題も有効な解決策を見い出せていない。トランプ訪中の与件として、こうしたアメリカが抱えた軍事戦略上の問題があり、そして中間選挙に向けての成果獲得という政治的必達目標があり、その二つが相俟って、台湾への武器売却の保留という外交態度が導かれたのだろう。それは、中国にとっては断固許容できないレッドゾーンの問題でもある。
ChatGPTの分析と要論を読むと、現状、アメリカにとって中国と戦争(して勝利)することがいかに難しく、避けなければならない国家の進路であるかが説明の論調から伝わってくる。9年前にG.アリソンが軽口を叩き、新冷戦への突入を扇動し、その遂行を指南していた頃とは情勢と環境が変わった。中国の工業力の圧倒的優位を認めるようになり、中国封じ込めは無理で、中国を潰すために台湾を利用して干渉するのは得策ではない、という冷静な思考にアメリカの安保専門家が変化しつつある空気を感じる。最早、〝デカップリング”や〝台湾有事”の策を仕掛けて攻勢をかける段階ではないという、新冷戦見直しの醒めた気運が内部で生じ、トランプをして「6つの保証」からの離脱へと背中を押したのだろう。台湾有事へのアメリカのコミットを消すのであれば、台湾に虎の子のミサイルを大量供給する必要はない。武器提供は中国を刺激して対立を深めるだけなので、それよりも中間選挙のために中国から取引で得る利益の方を選択したのだ。
5/5 の報道では、アメリカはドイツへのトマホーク配備見送りを決定している。日本についても、2027年までに400発納入する予定だった納期を遅延する可能性を伝えてきた。アメリカはイラン戦争でトマホークを1000発以上消費したと推定されていて、この数量は戦前在庫の30%に相当し、通常の生産ペース(年120発)だと回復まで数年を要してしまう。ドイツへの配備見送りはこの事情からだろう。ドイツに配備するトマホークは地上発射型で、ロシアがカリーニングラードに設置するイスカンダルに対抗する狙いの中距離ミサイルの位置づけだった。ドイツとしては喫緊の安全保障上の装備品だったに違いないが、冷や水を浴びせられる顛末となった。日本も同様で、海自の400発のトマホークはまさに(陸自のスタンドオフミサイル群と並んで)台湾有事を戦う主力兵器であり、これなしに日本の対中戦争は構想できない。そのトマホークも製造にはレアアースが必要で、供給安定化を早期に実現しないと量産ペースを上げることは不可能である。
結局、トランプが言う「自分の任期中に台湾有事はない」の発言は、客観的・軍事的・物理的には、アメリカには中国と戦争する継戦能力がないという意味に置き換えていいだろう。アメリカが誇るミサイルやF-35などのハイテク諸兵器は、どれも中国産のレアアースと電子部品を原材料にした工業製品ばかりだ。それが米中の軍事的関係の現時点の真実である。イラン戦争の結果がその急所の真相を浮き彫りにし、アメリカを一気に弱気な立場に追いやった。イラン戦争が残した意義として、第一に指摘し総括できる重要な結論だろう。アメリカはこれまで、最先端技術を駆使し結集したところの、きわめて付加価値の高い高額装備品の開発と実装によって「唯一の超大国」の軍事力を構築し態勢化してきた。それが合理的で最適な国家安全保障の手法だった。そこには、軍産複合体企業群への利益供与の利権の動機と論理もあった。イラン戦争を経て、安価なドローンの飽和攻撃とレアアース問題に直面し、米軍一強を担保してきた前提基盤が崩れ始めている。
前後して恐縮だが、台湾への今回の武器売却の中心物件であるHIMARS/ATACMSについて、欧州からどれほどロッキード・マーティン社に発注が届き、受注残になっているかをChatGPTで調べてみた。全体像として、欧州NATO諸国の兵器輸入額は2021年から2025年にかけて3倍超に急膨張している。うち58%が米国製輸入であり、F-35戦闘機、Patriot防空システム、HIMARS、JASSM等諸ミサイル、戦闘ヘリが中身を占めている。金額的にはF-35が巨大だが、地上戦で必要なHIMARSにも注文が殺到し、特にポーランドは486基という桁外れの数量を発注していた。ロ社のHIMARS生産能力は現在年96基で、ポーランドからの受注残を捌くのに5年かかってしまう。ポーランドの対ロ防衛意欲は強烈で、ロビイストの工作や米上下院議員の圧力がロ社の供給遅れを許さないだろうから、HIMARS/ATACMSの調達にも割り込みをかけている可能性がある。もしこの憶測が当たっていれば、トランプの台湾武器売却延期の理由の一つはそれかもしれない。
以上、台湾への武器売却をトランプが曖昧化した問題について、それが単に政治的な理由による決定ではなく、物理的な事情(在庫逼迫)によってもたらされた判断だという点を明らかにした。アメリカには中国と軍事衝突して全面戦争する継戦能力がない。それを遂行して成功(勝利)させられる物質的な基盤がない。だが、この事実の認識が、ただちにアメリカの中国に対する新冷戦戦略見直しに繋がるとか、アメリカが中国との戦争を断念し放棄するという方向性に直結するかというと、必ずしもそうではない。アメリカにはカードがある。それは日本である。日本が、ロシアと戦うウクライナやイランと戦うイスラエルの位置になり構図になれば、アメリカは目的が達成されるのである。狙いは戦争によって中国の国力を殺ぎ、アメリカの地位を奪う超大国になることを阻止することだから、日本が中国と戦争を始め、日中が国力を消耗し、中国がロシアのように疲弊してくれれば、アメリカはそれでよく、願ったり叶ったりで、自らが戦場で血を流す必要はないのだ。
高市と日本の右翼は、日本が中国と戦争を始めれば、それは日米同盟による対中戦争であって、アメリカと一緒に戦争するのだから必ず勝てるという単純な想定がある。サタンである中国(共産主義)が正義である日米(自由民主主義)に勝てるはずがないというイデオロギー上の信念と教条もある。アメリカの「戦略的曖昧性」の方針は、先に日本が突っ込んで開戦することで強引に「曖昧性」を終端させることができると、そういう計算がある。高市は戦争に前のめりであり、頭の中はそれ(サタン退治)しか考えてないのだ。それには理由があり、14年前の安倍晋三の”尖閣有事”がまさにその発想だった。日本が先に中国と軍事衝突を起こす。そしてアメリカを引っ張り込む。当時のオバマ政権はそれを警戒し、安倍の極右路線を牽制していた。軍事に無知な高市だが、高市にとって安倍は師匠であり神であり、安倍をコピーするのが最善だと盲目的に確信していて、安倍の政策を情熱的に踏襲しようとする。なので、日本がイスラエルになりウクライナになる可能性は十分あるのだ。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。