2022年3月8日火曜日

08- ウクライナ・オン・ファイヤー(植草一秀氏)

 植草一秀氏が、米国のオリバー・ストーン映画監督によるドキュメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』(2016年)を紹介しました。

 ウクライナでの2004年のオレンジ革命と2014年の暴力革命は、2000年以降 旧共産圏諸国において起きたフラワー革命に類するものですが、その裏側には影の主役・米国が存在していて、その二つの革命を経てウクライナは親露から親欧米に転じました。
 そこでの政権転覆がどのように遂行されたのかを『ウクライナ・オン・ファイヤー』は鮮明に描き出しています。植草氏は全世界必見の優良作品だとしています。

 実は8日早朝、上映時間(約90分)を確認しようとしたところ既に削除されていました。植草氏がブログで宣伝したことによって、この映画を観て欲しくない勢力が削除させたものと思われます。映画には、当時のウクライナ大統領ら(ロシアのプーチンも)が登場して淡々と事実関係を述べているだけなのですが、それを知られることが余程都合が悪かったのでしょう(誰にとって都合が悪かったのかは明らかです)。
 植草氏は、6日付と7日付のブログでこの映画についてふれています。残念ながら映画自体は見られなくなりましたが、映画の内容や位置づけについて簡単に触れられているので2つのブログを紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウクライナ・オン・ファイヤー
                植草一秀の『知られざる真実』 2022年3月 6日
メディアが流す情報は統制が取れている。悪魔のロシア。正義のウクライナ。そして、正義を代表する米国。
世界はいまロシアを打倒するために結束している。そして、悪魔のロシアによって攻撃を受けるウクライナを支援しなければならない。
悪魔の帝国を殲滅するため、先頭に立つ正義の騎士は米国である。こうした情報の「流れ」が形成されている。このとき、この「流れ」に抗することは極めて困難になる。

留意が求められるのは、一連のプロセスを創出する主体が存在するのかどうか。
シナリオライター、演出家、総合プロデューサーが存在するとなると、全体を鵜呑みにするわけにはいかない。現代の戦争の最重要側面としての「情報戦」が浮かび上がる。
「情報戦」の最先端を進むのが米国だ。徹底的な用意周到さを持ち合わせている。
逆に言えば、どのような情報戦略があるのかを知ることが必要になる。私たち一般の市民にこれは難しい。

しかし、人々に情報戦の裏側を教える教師が登場するなら状況は変化する。
現在のウクライナ問題を理解するには、ウクライナの歴史を知る必要がある。
ウクライナは東と西を分ける要衝に立地する国。南側は黒海に面している。地政学上の要衝である。
このウクライナで二度の政変が生じている。2004年のオレンジ革命と2014年の政権転覆。共通するのは二つの革命の裏側に米国が存在していること。影の主役は米国と言ってよいだろう。二つの革命を経てウクライナは親ロから親欧米に転じた。

もうひとつ見落とせない重要事実がある。ウクライナの民族構成だ。
北西部はウクライナ人が大勢を占める。これに対して、南東部はロシア系住民が太宗を占める。ウクライナは民族的に二分されるのだ。
2004年と2014年の政権転覆がどのように遂行されたのかを、米国を代表する映画監督のオリバー・ストーンが鮮明に描く。
作品名は 『ウクライナ・オン・ファイヤー』。2016年の作品である。
日本語字幕付きの動画を閲覧することができる。「ウクライナ・オン・ファイヤー」
   ⇒ https://www.nicovideo.jp/watch/sm40134434 
90分程度の作品だが、全世界必見の優良作品だ。メルマガ読者も教示してくださった。
この作品が教えてくれる最重要のテーマは、「情報の流れ」が人為的に創作されていること。
政治的に重大なイベントが発生する。そのイベントは用意周到に準備され、実行される。
しかし、その際に決定的に重要になるのは、そのイベントをどの色に染めて伝えるのかである。当然のことながら、巨大なお金が動く。
そして、そのイベントをメディアがどのように人々に伝達するか。
「お金」と「メディア」がキーワードになる。
イベント実現に向けて地道に努力を積み重ねるのが米国の情報機関であるCIA。
実行部隊は米国の外務省=国務省と大資本支配下のメディアが担う。
長きにわたって米国のウクライナ担当を務めてきたのがバイデンとヌーランドである。
ウクライナ問題を考えるに際しては、すべての人が、まずこの作品を閲覧することが有用だ。
メディアが流す情報に対する捉え方が必ず変わるはずだ。

鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」) https://bit.ly/39BTgmd 
10月5日発売の鳩山友紀夫元首相、孫崎享氏、前川喜平氏との共著『出る杭の世直し白書(ビジネス社)https://amzn.to/3hSer8a のご高覧も賜りたい。
             (以下は有料ブログのため非公開)

正義に成りすます米国の正体
                植草一秀の『知られざる真実』 2022年3月 7日
米国のこれまでの行動とロシアの行動を比較したときに、一方を悪とし、一方を善と決めつけることはできない。
今回のロシアによる軍事作戦遂行を是認できない。武力による紛争の解決を遂行するべきでない。しかし、米国が正義の騎士であるかのように振る舞うのは噴飯もの。

イラク戦争を再評価するべきだ。イラクの罪なき市民が、どれだけ犠牲になったのか。
メディアは、イラクの市民生活を報道したか。イラクの街からの中継を連日行ったか。
米軍の軍事侵攻を非難したか。
米国はイラクが大量破壊兵器を保持していると主張した。しかし、国連は軍事侵攻の前に踏むべきプロセスがあるとして、米国による軍事侵攻を是認しなかった。
しかし、米国は制止を振り切ってイラクに軍事侵攻した。イラク市民の犠牲者は数十万人に達した。現在のウクライナでの犠牲者数との比較を示すべきだろう。
米国による軍事侵攻ののち、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。
単なる侵略戦争だったことが明らかになった。

ウクライナでは2004年と2014年に二度、政権転覆が遂行されている。この二つの政権転覆の裏側に米国が位置している。
米国が介入して政権を転覆させたのであれば、糾弾されるべき存在は米国である。
米国は「情報力」を駆使して、自らの行動を正当化してきた。
しかし、その行動が「善」であるのか、「悪」であるのか、評価は定まっていない。
この問題を米国の著名映画監督であるオリバー・ストーン氏がドキュメンタリー映画にした。
昨日も紹介した
「ウクライナ・オン・ファイヤー」
   ⇒ https://www.nicovideo.jp/watch/sm40134434 
画面に流れるコメントは簡単な操作で非表示にできる。
ウクライナ問題を考えるなら、必見の作品だ。オリバー・ストーン氏は自説を強要しない。
淡々と、事実を伝えてくれる。
その事実を、どう解釈するのかは視聴者に委ねられる。
しかし、米国がウクライナの極右勢力を温存し、対ロシア戦略に活用してきたことはよく理解できる。東欧カラー革命が類似した手法で遂行されてきたこともよく分かる。
ウクライナの反政府デモは、当初、穏健な活動だった。デモ隊とヤヌコヴィッチ政権との間で大統領選の前倒し実施で合意も成立しかけた。
しかし、平和な妥協が成立しては困る勢力が存在した。平和なデモを、暴力行為、流血の泥沼に移行させることを必要とした勢力が存在した。この「転換」を担ったのが米国と連携する極右勢力だった。
彼らが採用したのが「偽旗作戦」である。
デモの最中に極右勢力がライフル銃などを用いて、故意にデモ隊に発砲し、死傷者を生み出し、それをヤヌコヴィッチ政権の治安部隊によるものであるとの情報を拡散する。
この「偽旗作戦」によって民衆の行動を特定の方向に誘導するのである。
詰まるところ、暴力革命によって政権転覆を図る。これが2014年政権転覆の基本図式である。
同時にウクライナ極右勢力は親ロシア勢力が支配権を持つ東部ドネツク州、ルガンスク州においても挑発行為を繰り返す。このことによって、一種の内戦状態が生み出された。
事態を収拾するために停戦協議が行われ、2014年と2015年に「ミンスク合意」が締結された。「ミンスク合意」は東部地区の自治を広範に認める内容を含んでいた。
ロシアにはロシアの主張がある。
この点を含めて、早期に停戦が実現するように、すべての関係国が尽力するべきだ。

一方的な非難、攻撃、追い込み戦術だけで問題を解決することはできない。
鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」)
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2022年3月6日日曜日

イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 - ~ (世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が「イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 -『窮鼠』を封じる暗殺作戦」とする記事を出しました。
 記事は、従来の国際紛争に対する国連の態度と今回のウクライナ紛争に対する対応が二重基準になっている、ということから書き起こされています。それはそのまま西側メディアについても言えることです。
 そして後段では突如、「プーチンに内在して考えたとき、今、戦況を挽回する手は核を使うという選択しかないのではないか」と書き進めています。唐突に感じられますが、プーチンの思いに即して考えればそのとおりなのでしょう。
 これまでの事態を見るとバイデンの目的は殆ど達成されました。しかし単にプーチンを世界が非難するだけではことは解決しません。せめて中国なり独国・仏国なりが、具体的な落としどころを見出して、ロシアとウクライナを説得するしかない筈ですが・・・
  お知らせ
 都合により7日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 -「窮鼠」を封じる暗殺作戦
                          世に倦む日々 2022-03-02
40年ぶりに国連総会で緊急特別会合が開かれ、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案が採択されようとしている。テレビを見ながら、はて、こんな制度があったのかと思った。これにはP5の拒否権は使えないらしい。40年前、1982年に緊急特別会合の議題になったのはイスラエルによるゴラン高原の占領問題だったと記事にある。イスラエルに対する非難轟々だったと思われるが、どういう決議が採択されたかの情報はない。そこから40年間、この制度はなぜか封印されてきた。出番がなかった。

アメリカのイラク侵攻が起きたのは2003年の3月。19年前のちょうど今頃、NYの国連ではこの問題をめぐって侃々諤々の議論が紛糾していた。安保理で連日激しい論争が交わされ、開戦に反対する仏ロ中と、攻撃やむなしとする米英と、P5が2派に分かれて激論の火花を散らしていた。伊達男のドヴィルパンが主役に浮上して活躍、華麗な弁舌と論陣で注目と人気を集めた。なぜ、あのとき、米英以外の理事国13か国は、今回のように総会の緊急特別会合開催へ歩を進める手続きに出なかったのだろう。

3月17日にブッシュがテレビ演説で最後通牒を発し、19日夜にバグダッドにトマホークの雨を降らせた後、国連はしんとなって忽然と表舞台から消えてしまった。今回のように、侵攻が始まった後にさらに活発に動き、侵略国を糾弾して袋叩きする挙に出ることはなかった。議論は終わりになり、マスコミ報道は戦場となったイラクに焦点を移した。西側マスコミは米英多国籍軍の従軍広報となり、「正義の戦争」の戦果を発表する大本営報道部と化した。なぜ、あのときと今回で国連はこれほど違うのだろう。

何度も起きたガザ侵攻。06年、08年、14年。とりわけ記憶に残っているのは08年から09年のときである。毎日懸命にブログを書いた。イスラエルの爆撃を受け、子どもたちが殺された。イスラエルは、そこに多くの子どもがいるのを知っていながら、故意にミサイル空爆して大量殺戮した。市街に入った地上部隊が残酷に子どもを小銃で射殺した。兄弟の目の前で。何で、何で、安保理理事国は今回の手続きを使い、国連総会で虐殺を糾弾する動きに出なかったのか。総会での非難決議の政治を行わなかったのか。口惜しい。

パレスチナを守ろうとして武器援助をする国はなかった。ガザを救うために20億円も寄附する市民はいなかった。イスラエルに経済制裁する国はなかった。ガザ市民の生の声を夜のテレビ報道で流すことはなかった。08年の頃までは、少しは西側のジャーナリズムが現地の悲痛な声を拾って届ける動きがあったけれど、14年の侵攻からはそれが全く途絶え、パレスチナは世界から見捨てられ無視された状態になっている。イスラエルの行為を国連憲章違反とも人権侵害だとも言う声は聞こえて来ない。イスラエルは懲罰を受けず、人道への罪で国際司法裁判所に提訴されることもない。

08-09年のガザ侵攻で、パレスチナ側は1417人の死者を出し、926人が民間人でうち子どもの死者が313人である。2014年のガザ侵攻では同じく2251人の死者を出し、70%が民間人で、うち子どもが551人である。これほど大量に、数次にわたって子どもが殺されたのに、残虐な暴力と人道への罪に対して国連は何もしなかった。2012年に報告されたイラク戦争の民間人の犠牲者は12万7980人。50万人という推定もある。戦争が長期化し、イラク側がゲリラ戦で抵抗したため、犠牲者の数は途方もなく多くなった。民間人を殺してPTSDになった帰還米兵には同情が集まるが、名も無く殺されたイラク人を弔う者はいない。二重基準。

核戦争が始まるのではないかという予感を漠然と抱く。プーチンに内在して考えたとき、今、戦況を挽回する手は核を使うという選択しかないのではないか。最近、テレビとネットで「窮鼠猫を噛む」という諺が喋々されている。2月13日のツイートでこれを書いた。別にパクられたとか言って自慢するつもりはない。奪われた主導権を握り直すための独裁者の手段としては、この窮余の策しかなく、この切り札を武器にして瀬戸際からの反転と状況の再均衡を図ろうと発想しておかしくない。少なくとも、プーチンの場合はブラフではなく、プランがあり、実際に戦略ミサイル軍が戦闘状態で命令を待つ態勢にあるはずだ。

アメリカの方は、こうしたプーチンの危険性を嗅ぎつけ、また口実にして、どうやらプーチンの斬首作戦を立案する段階に入っている。プーチンの精神状態が異常だという説が週末からどんどん流されている。プーチンの人格否定の言説攻勢が始まり、この男は頭がおかしくなっているのだ、ロシア政府内でも浮き上がっているのだ、ロシア国民から支持されてないのだ、という情報宣伝が流布され敷き固められている。だから暗殺されてもしかたないのだという世論作りの布石だ。カダフィやアラファトのときも、似たような言説工作をやっていた。トマホークで仕留めるか、SEALs刺客団を送るか。

この作戦を決行して成功させれば、戦争を早く終わらせることができると、そう英米は考えるだろう。プーチンがこのままだと、核を使うことはなくとも戦争は長引く。経済制裁で欧州の企業と経済が疲弊する。だが、仮に英米がこの奇襲作戦に出て失敗した場合、プーチンはどう反撃するか。アメリカとの戦争状態の突入であり、アメリカに対して報復攻撃に出る根拠をロシアは得る。また、仮にプーチンの首を獲ることができても、ロシアの世論が英米の思惑とは逆に振れて、反米感情が沸騰して対米戦争やむなしの奔流になる可能性がある。その場合は、プーチンの後継者が核のボタンを引き継いで21世紀の「大祖国戦争」に出る事態となる。

それはトゥキディデスの罠(⇒従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す。Wikiより)に踏み込み、世界が破滅に向かう進行に違いない。キューバ危機のときのことを思い出すべきだと思う。あのとき、戦略を仕掛けた側はソ連で、追い詰められた側はアメリカだった。そして、フルシチョフの譲歩で事なきを得た。今回、同じ展開があり、今回は追い詰められた側がロシアで、振り上げた拳の落としどころに窮したのはロシアだった。プーチンは、2月12日のバイデンとの電話会談で、アメリカが譲歩してくると踏んだのだろう。核戦争・第三次世界大戦を回避するにはそれしかなく、必ずロシアの要求に耳を傾けて妥協してくると推断したはずだ。

その見通しは甘く、読み間違いであり、プーチンの思考回路の老衰と劣化と自滅を私は感じるのだけれど、プーチンはすがるようにそこに希望を託し、二大核大国の「ボス交」で山場を凌ぐシナリオを確信していたのではないか。プーチンは現在もその戦略(アメリカへの無理なプロポーズ)を追求していて、核戦争が嫌ならロシアの言い分も聞けとゴネる姿勢にある。つまり、チキンレース・ロシアンルーレットのアリーナ(⇒試合場)に米英欧を引き込むことで、自己のアドバンテージを盛り返そうとしている。拳は未だ振り上げたままであり、前回はそれをウクライナに落としたが、次に落とす先は核戦争だという脅しで身構えている。

四面楚歌の中で、そこしか(論理的な)活路と展望がない。もし仮に、核戦争になり、欧州と世界が破滅の地獄になったなら、すべての後で、この歴史はキューバ危機と比較されることになるだろう。あのとき、フルシチョフは苦汁の決断だった。結論を言えば、互いに妥協を試みた努力の末、トゥキディデスの罠から脱却することができた。今の国連の動きを見ながら、私はとても悲観的な気分になる。ロシアを悪魔視して一方的に仕置きしても平和の問題解決にはならない。ロシアの中には、一定部分、プーチンのウクライナ戦争の動機を支持する者がいるはずだ。

欧米がプーチンを失脚させ(暗殺含む)、レジームチェンジ(ロシアのカラー革命)に成功したとしても、そこから反動が起き、ロシア・ナショナリズムが勃興し、ロシア国内は内乱状態になるだろう。ヨーロッパは阿鼻叫喚の嵐になる。人命が大量に失われ、収拾がつかない破局と破壊に襲われる。 

06- この戦争と経済制裁は簡単には終わらない 日本経済にも凄まじい返り血

 西側諸国はロシアに対して最大限に近い経済制裁を科しました。ロシアにとっては大きな痛手ですが、この種の制裁は侵攻を止めたからといってすぐに解除されるものではないので、ロシアが矛をおさめる筈はありません。

 停戦協議ではお互いに相手がのめない条件を突きつけていて、適した仲介者もいないなかではこの戦争がいつどんな形で終わるのかまったく見通せません。
 日本経済も当然深刻な打撃を受けます。ロシアに進出している日本企業は347社ですが、このまま手をこまねいていて、ルーブルが紙屑同然になる前に早期に撤退しないと取り返しがつかないことになります。
 このまま原油価格が平均1バレル=110ドルで推移したら、22~23年の家計負担は計4万円も増えると見られています。ところが足元の原油価格は1バレル=116ドルを付けているので、負担増は4万円を軽く突破する恐れがあります。
 狂乱インフレによって庶民のなけなしの資産も紙屑になりかねず、国民生活は一気に苦しくなると見られています。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この戦争はそう簡単には終わらない ハッキリしてきた 日本経済にも凄まじい返り血
                          日刊ゲンダイ 2022/3/5
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 ロシア軍のウクライナ侵攻から1週間。プーチン大統領は、ウクライナが降伏するまでトコトン戦争を続けるつもりのようだ。
 3日、フランスのマクロン大統領と電話会談し、ウクライナの「非武装化」と「中立化」という目的を達成するまで軍事作戦を続けると明言してみせた。
 ロシアとウクライナの2回目の停戦協議も、結局“不発”に終わり、戦闘地域から民間人を避難させる「人道回廊」の設置で合意しただけだった。その数時間後、ロシア軍はウクライナ南東部にある欧州最大の原子力発電所を攻撃している。
 「人道回廊」で民間人を避難させた後、ロシア軍は「もう残っているのは軍人だけのはずだ」という理屈を持ち出して、首都キエフを無差別攻撃するのではないか、という解説も飛びかっている。もはや、狂ったプーチンの暴挙を誰も止められない状況だ。
 深刻なのは、この戦争は、いつどんな形で終わるのか、まったく見通せないことだ。当初、ロシア軍は短期間でキエフを陥落させ、ゼレンスキー政権を転覆させ、傀儡政権を樹立するのではないかと予想されたが、ウクライナ軍の強い抵抗に阻止され、キエフに向けた進軍は北25キロ地点で足止めされている。焦りを募らせたプーチンは、とうとう核兵器の使用までにおわせる始末だ。このままでは、戦争は長期化、ドロ沼化しかねない。
 軍事ジャーナリストの前田哲男氏はこう言う。
「心配なのは、停戦するための条件というか、ロシアとウクライナとの間の妥協点が見当たらないことです。お互い、相手がのめない条件を突きつけている。しかも、適した“仲介者”もいない。永世中立国であるスイスまでが、ロシア制裁に賛成しています」
 この戦争は、そう簡単に終わらないのではないか。

欧州で金融危機の恐れ
 この先、世界はどうなってしまうのか。もはや世界経済の混乱は避けられそうにない。
 産油国、農業大国、さらにレアメタルの産出国でもあるロシアに“経済制裁”を科したことで、すでにあらゆるモノの価格が急騰している。原油価格は13年半ぶりの高値となる1バレル=116ドルまで高騰。ロシアが輸出量世界1位の小麦(2021~22年度)も約14年ぶりの高値を付けている。世界生産の4割を占める希少金属・パラジウムも7カ月半ぶりの高値を付けた。
 さらに、石炭、アルミ、半導体製造に必要なネオンと、キリがない。ロシアからの輸出が止まり、需給が逼迫するとの疑念が広がり、何もかもが値上がりしている。世界的な狂乱インフレが発生しかねない状況だ。仮に戦争が終わっても、ロシアへの経済制裁はすぐには解除されないだろう。
 さっそくアメリカは、中央銀行に当たるFRBが3月中旬に0.25%の利上げに踏み切ると表明。金利を引き上げてでも、何としてでもインフレを抑えるつもりだ。
 とくにヤバいのが、ただでさえ天然ガス供給の4割をロシアに頼っている欧州だ。物価高のみならず、金融危機を起こしかねない。デフォルト懸念が高まっているロシア国債を大量に抱えているからだ。
 欧米の格付け大手3社は、ロシア国債の評価を投資に適さない「投機的水準」に大幅に引き下げている。ロシア国債がデフォルトとなるのは時間の問題とみられている。
「国際決済銀行(BIS)によると、イタリア、フランスの金融機関が保有しているロシア向け債権は昨年9月時点でそれぞれ約250億ドル。オーストリアも約170億ドル持っています。これらがすべて焦げ付く恐れがあります」(金融業界関係者)
 1998年にロシアがデフォルトを起こした際も、その後、ルーブルの切り下げによって大手ヘッジファンドが巨大な損失を出したことが判明し、「ルーブル・ショック」といわれる金融危機に発展している。
 ロシアに進出する日本の自動車大手各社も、現地の生産拠点を続々と操業停止にする予定だ。
 このままでは世界恐慌が起きる恐れも捨てきれない。
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「最悪のシナリオは、インフレを抑えるために金利を上げ、その結果、景気が冷え込み、物価高が続くというケースです。物価高騰と景気悪化が同時に進行するスタグフレーションです。今回、FRBのパウエル議長はインフレ抑制を鮮明にしています。利上げは、インフレ退治のみならず、ルーブル安を招きロシアに打撃を与えることになる。“通貨戦争”の様相です。しかし、ただでさえウクライナ危機で各国経済の先行きは不透明です。一歩判断を間違えると、世界経済は大ダメージを受けることになりかねません」

日本企業も大打撃
 日本経済も無傷では済まない。ロシアに経済制裁を科した返り血を浴びるのは間違いない。
 帝国データバンクの「緊急調査:日本企業の『ロシア進出』状況調査」(2月24日付)によると、ロシアに進出している日本企業は347社だった。
 リポートは〈ロシアに拠点を置き、多くの部品・製品をロシア国外から調達してきた製造業のほか、市場開拓を進めてきた日本の小売・卸売といった流通産業などもダメージが避けられなくなる〉と分析している。今後、多くの企業がロシアからの撤退を余儀なくされるはずだ。
 ロシア極東サハリンの石油・天然ガス開発事業から撤退するかどうか、大手商社はアタフタしているが、もはやロシアでのビジネスは諦めるしかないのではないか。欧米企業は次々とロシアからの撤退を表明している。
「急激なルーブル安で、これまで各企業がロシアで投資してきた資産は著しく目減りしている可能性があります。手をこまねいていると、ルーブルが紙屑同然になる危険がある。企業は早期に撤退すべきです。逃げ遅れれば取り返しがつかないことになる可能性があります」(斎藤満氏=前出)

国民生活も苦しくなる
 国民生活も一気に苦しくなるはずだ。
 このまま原油価格が平均1バレル=110ドルで推移したら、22~23年の家計負担は計4万円も増えるという。足元の原油価格は1バレル=116ドルを付けているから、負担増は4万円を軽く突破する恐れがある。狂乱インフレによって庶民のなけなしの資産も紙屑になりかねない。
「庶民にとって誤算なのは、これからはじまる春闘には期待できそうにないことです。ただでさえ、コロナ感染と資源高に直撃され、企業経営者は賃上げに二の足を踏んでいた。そこにウクライナ危機が加わってしまった。企業防衛に走り、賃上げを渋るのは間違いないでしょう。庶民は給料は増えないのに物価高によって支出だけは増える最悪の事態に直面しかねない。暮らしは相当、苦しくなるはずです」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)
 アベノミクスの失敗によって、ただでさえ日本経済は低迷している。2021年の経済成長も、アメリカは5.7%、イギリス7.5%なのに、日本は1.7%という惨状である。体力を失った日本は“世界不況”にのみ込まれる恐れがある。
 もう世界は“ウクライナ危機”以前には戻れない。世界も日本も、その覚悟が必要ということだ。

2022年3月5日土曜日

維新は「核共有提言」撤回せよ(志位氏)/維新に吹き始めた逆風(泉宏氏)

 維新の会は3日、ロシアによるウクライナ侵略を受け、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)の「議論を開始する」ことなどを求める「緊急提言」を外務省に提出しました。
 共産党の志位委員長は同日、記者会見し、維新の会が政党として「提言」した「核共有」の議論について、「まさに日本を核戦争に導く危険きわまりない『提言』だ。被爆者の強い警告を一顧だにせず、『提言』の提出を強行したことを強く批判したい」と述べました。そして「今日本がやるべきは、核兵器禁止条約への参加であり、『核兵器のない世界』を実現する先頭に立つという唯一の戦争被爆国としての役割を発揮することだ」と主張しました。
 しんぶん赤旗が紹介しました。
 維新の会の提言の概要についてはしんぶん赤旗が別の短い記事で要約しています。それを読むとまさに米国の「核戦略」の中に飛び込むという主張であり、防衛費をGDP2%にアップすることや「中国、ロシアといった大陸国家を封じ込める」ための経済安全保障体制の強化なども主張していて、維新の正体をリアルに示すものになっています。
 そのあまりにも右傾している主張には呆れるばかりですが、維新の正体を明らかにすること自体は結構なことです。
 政治ジャーナリストの泉 宏氏が「下がる支持率『維新の会』に吹き始めた逆風の正体」という記事を出していますので、併せて紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日本を核戦争に導く危険 維新は「核共有提言」撤回せよ
志位委員長が会見
                        しんぶん赤旗 2022年3月4日
 日本共産党の志位和夫委員長は3日、国会内で記者会見し、安倍晋三元首相や自民党の一部政治家が主張し、日本維新の会が政党として「提言」した「核共有」の議論について、「断じて許すわけにいかない議論だ。強く非難する」と述べました。維新の「提言」については「政党として日本を核戦争に導く危険な『提言』を決定した責任は極めて重い。撤回を強く求める」と表明しました。
 志位氏は、日本被団協が維新の「提言」について「日本国民を核戦争に導き、命を奪い国土を廃墟(はいきょ)と化す危険な『提言』」だとして撤回を求める声明(2日)を出したことに言及。「まさに日本を核戦争に導く危険きわまりない『提言』だ。被爆者の強い警告を一顧だにせず、『提言』の提出を強行したことを強く批判したい」と述べました。

 志位氏は、ロシアのプーチン政権が核兵器による威嚇を公然と行うもとで、いま世界が痛いほど感じているのは、核兵器は人間に決して持たせてはならない「絶対悪」の兵器だということだと指摘。その時に「日本も核共有をやる」という議論は「核による脅威に核で対抗しようというもので、プーチン政権と同じ立場に身を置くことになる」と批判。「世界が核による脅威に核で対抗するならば、世界の多くの国ぐにが核兵器を持つことになる。人類社会は破滅のふちに追いやられる」と述べました。
 その上で「核による脅威を取り除く方法は一つしかない。全世界から核兵器を廃絶することだ」と強調。「それを条約として刻んだのが核兵器禁止条約であり、日本はこの条約への参加こそ真剣に検討するべきだ」と訴えました。
 志位氏はまた、「非核三原則は昭和の価値観」などという維新の松井一郎代表の発言について、「21世紀の世界の流れをまったく見ていない発言だ」と強く批判しました。「核兵器禁止条約は、広島、長崎の非人道的な惨禍を経て日本が国是と定めた非核三原則の精神を、世界的規模で条約にしたものだ」と強調。「『昭和の価値観』どころか、21世紀のまさにメインストリーム(主流)にあるのが非核三原則であり、核兵器禁止条約だ」と批判しました。
 志位氏は「今日本がやるべきは、核兵器禁止条約への参加であり、『核兵器のない世界』を実現する先頭に立つという唯一の戦争被爆国としての役割を発揮することだ」と主張しました。


維新 「核共有」の議論主張
                        しんぶん赤旗 2022年3月4日
 日本維新の会は3日、ロシアによるウクライナ侵略を受け、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)の「議論を開始する」ことなどを求める「緊急提言」を外務省に提出しました。
 提言は、ウクライナ危機が東アジアの秩序にも影響しかねないとして、「軍事を含めた体制整備に能動的に取り組む」ことや「核についてもタブーなく検討する」ことを主張。核保有国による侵略のリスクが現実に存在するとして、「従来の枠組みに囚(とら)われない防衛費の増額(当面の目標:GDP比2%)を図り、自衛力を抜本的に見直す」と大軍拡を迫っています。
 提言はさらに、「中国、ロシアといった大陸国家を封じ込める」として、日米英豪印などのネットワークを基礎にした経済安全保障の強化などを主張。エネルギー価格の高騰を口実に「原発の再稼働も検討する」ことも盛り込みました。


下がる支持率「維新の会」に吹き始めた逆風の正体
                      泉 宏 東洋経済オンライン 2022/3/3
                         政治ジャーナリスト
 昨秋の衆院選で公明党を抜いて第3党となり、参院選に向けて進撃を続けてきた日本維新の会に逆風が吹き始めている。維新のシンボル的存在の橋下徹前大阪市長を巡る「ヒトラー」騒動のブーメラン化もきっかけとなって、政党支持率の下落が目立ち始めたからだ。
 衆院選での大躍進で維新の存在が政治的にクローズアップされ、各メディアも党幹部らの言動を大きく報道するようになった。それに伴い「同党の『独特な体質』にも国民の注目が集まり、不信感が芽生えた」(自民幹部)との見方が広がる。
 とくに「民間人コメンテーター」としてメディアで大活躍する橋下氏の政治的発言内容を、「一般国民の多くが、維新の政治理念や政策と受け止めていることが、逆風の遠因」(同)との指摘もある。立憲民主党の菅直人元首相が、橋下氏に投げつけた「ヒトラー」発言への過剰ともみえる維新の反発と、それに対する国民の反応が、その典型例というわけだ。

■メディアが面白おかしく報道し始めた
 そもそも、維新の代表の松井一郎大阪市長、副代表の吉村洋文大阪府知事は、地域政党・大阪維新の会を仕切るいわゆる「大阪コンビ」。そして、大阪維新を立ち上げた橋下氏は、中央政界でも「実質的には両氏の後見役」(公明党幹部)との位置づけだ。
 もともと橋下、松井両氏は12年近く前の大阪維新結党時からの盟友。その両氏がここにきて、両氏や維新への敵対的な発言をした政治家や芸能人らへの提訴などを乱発しているのに対し、攻撃対象となった政治家らは「訴訟などで脅す手法は、維新の強権的体質そのもの」とそろって反発する。
 衆院選前と違うのは、維新への国民の注目度の高さを背景に、各メディアがそうした騒動を面白おかしく報道し始めた点。それが「一般国民の間に『維新は変な政党』とのネガティブな印象」(立憲民主幹部)を広げる要因になっているようにみえる。
 現在の維新は、衆院選の余勢を駆って、夏の参院選でも議席を大幅に増やし、野党第1党の立憲民主を脅かすことを狙っているとみられる。しかし、衆院選後に大幅上昇した政党支持率は昨年末以降、低下が目立ち始めた。
 各メディアが実施した最新の世論調査では、岸田内閣がコロナ対応で批判されても、自民は高支持率をキープ。これに対し、衆院選後に維新に大きく差をつけられて低迷してきた立憲民主の支持率がようやく下げ止まる一方、維新は支持率下落がとまらず、複数の調査で立憲民主を下回る結果となっている。
 こうした状況について、政界では「自民に代わる新勢力として注目されたことで、党としての危うい体質も露呈した結果」(閣僚経験者)と指摘する向きが多い。維新を攻撃する他党の議員に対する名誉棄損訴訟や、国会での質疑を巡る懲罰動議などの乱発も、「党勢減退への焦りの表れ」(同)と受け止められている。
 岸田政権誕生までは、橋下、松井両氏は安倍晋三元首相、菅義偉前首相との太いパイプを誇示し、「与(よ)党」と「野(や)党」の中間の「ゆ党」を自認して、法案処理や憲法改正などで自民と連携してきた。しかし、岸田首相と維新の関係は疎遠とされ、岸田政権誕生後は維新側も「野党」としての厳しい対応が目立っている。

■安倍氏の「核共有」論に松井氏も同調
 そうした中、永田町に波紋を広げたのが、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けて、2月27日朝の民放情報番組に出演、対談した安倍、橋下両氏の言動。安倍氏がアメリカの核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有(ニュークリア・シェアリング)」の必要性を強く主張し、橋下氏とも意気投合したような場面が相次いでいたからだ。
 首都キエフの軍事的制圧を狙うプーチン大統領に対し、ウクライナ側の命がけの抵抗で、両国の停戦協議は難航し、長期化、泥沼化も懸念されている。その過程で、プーチン氏は「核使用」をちらつかせて西側陣営に脅しをかけた。情報番組では、これに反応した安倍氏が橋下氏の質問に答える形で、「日本も『核共有』を論議すべきだ」とぶち上げた。
 日本の「非三核原則」の抜本見直しを求めるような安倍、橋下両氏の言動には、ネット上でも賛成、反対双方の激越な書き込みがあふれ、炎上状態となった。また、自民党内では安倍氏に近い高市早苗政調会長らがすぐさま賛同。維新代表の松井氏も「昭和の価値観のまま令和も行くのか。議論するのは当然だ」などと同調した。

 これに対し、岸田首相は翌28日以降の国会答弁で「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えても認められない。(政府として)議論することも考えていない」と明確な表現で否定してみせた。
 大論争の端緒となった安倍、橋下両氏の発言は、内容的には必ずしも完全に一致しているわけではなかった。しかし「多くの視聴者は、(両氏が)事前に打ち合わせた上での発言と受け止めたはず」(民放テレビ幹部)との指摘が多い。
 この問題で安倍氏に同調するのは、自民党内のいわゆるタカ派グループが多い。このため、「維新の立ち位置は自民の保守派と同じ」(自民長老)との印象が、国民の間にも振りまかれる結果となった。
 維新の狙いが、参院選でも自民支持層に多い保守派の票を取り込むことにあるのは間違いない。「前回衆院選での成功体験に基づく戦略」(自民選対)とみられている。
 しかし「自民タカ派と同体質というイメージは、有権者の不信感や拒否感を広げる」(同)ことにつながるリスクも否定できない。
 これに先立ち、菅直人元首相の「ヒトラー発言」に維新側が「国際法違反」などと抗議し、謝罪を求めたことについて、政府は2月15日の閣議で「国際法や国内法に違反するか否かについては、答えることは困難だ」とする答弁書を決定した。これについても「岸田政権の維新へのいやがらせ」(閣僚経験者)とのうがった見方も広がる。
 そもそも、大阪限定の地域政党から本格的全国政党への脱皮を目指す維新にとって、「偏った政治理念と思想を持つ集団」とのレッテルを貼られれば、「最大の票田の中道的保守層の支持離れにつながる」(国民民主若手)のは間違いない。
 維新の新しい顔となった吉村氏の国民的人気の要因は、大阪のコロナ対策での府民優先で機動的な対応への評価だったとされる。しかし、ここにきて大阪の状況は「人口当たり死者数や医療のひっ迫度が全国ワースト」(感染症専門家)とされ、府民の不信や不満が顕在化している。

■「大阪組」と一線を画す維新国会議員団は焦り
 吉村氏は2月28日、他都府県知事に先駆けて、「感染者数は少し減少傾向にあると思うが、病床のひっ迫は非常に厳しい状態が続いている」として、3月6日が期限となっているまん延防止等重点措置について、政府に「3週間程度の延長」要請を余儀なくされた。これも維新の人気に暗影を投じる結果となりつつある。
 こうした状況が、維新内部での動揺や焦りにもつながっているようにみえる。特に、松井、吉村両氏ら「生粋の大阪組」(維新若手)とは一線を画す国会議員団は「超タカ派イメージを払しょくしないと、参院選での得票は先細りになりかねない」(同)と顔をゆがめる。
 さらに、「一民間人コメンテーター」としてメディアがもてはやす橋下氏についても、「政治的な中立、公平の観点からは、参院選に絡めての出演要請は自粛すべきだ」(立憲民主幹部)との声も出始めている。
 国会での与野党攻防では、国民民主党が突然、政府の当初予算案に賛成した。他党はそろって「参院選後の連立入りを狙った」(共産幹部)と読み「新たな政界再編のきっかけになる」(閣僚経験者)と波紋が広がる。

 松井維新代表は「(国民民主が)与党になるというのなら連携はできない。われわれは野党」と苦々し気に非難した。ただ、「出し抜かれた苛立ち」(同)と皮肉る向きもあり、維新の対するさまざまな逆風は当面、収まりそうもない。 

05- 最大ゆ党 維新躍進のカラクリ(4)(5)(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイ連載記事:「最大ゆ党 維新躍進のカラクリ」の(4)と(5)です。

 (4)では、大阪府が20年3月20日からの3連休に「コロナ自粛」を解除する方針を立てたことに慌てた厚労省が、西浦博教授らの作成した具体的な自粛要請の文書を手に大阪に飛び、「大阪府・兵庫県全域で今後3週間、不要不急な往来を自粛」する必要性を伝えたのですが、吉村府知事は「連休期間中(3日間)の大阪府・兵庫県間の往来を自粛」すると、独断で「大幅に縮小した」結果、2週間後の4月7日に大阪府下の第1波が始まったことを述べています。
 (5)には、維新が「徹底的な改革」を行って、公立の病職員数を半減し保健所などの職員を4分の3に減らした結果、大阪が「医療崩壊」に陥ったことが記されています。
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最大ゆ党 維新躍進のカラクリ(4)
維新失政の数々…“8割おじさん”の提案を吉村知事の独断で値切るクオリティー
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 アベノマスクに象徴される安倍ー菅自公政権の愚策オンパレードも酷いものだったが、維新が大阪で繰り広げた失策の数々もそれらに勝るとも劣らぬものだった。夢と消えた“大阪ワクチン”の開発話、防護服の代わりに募集された「雨ガッパ」騒動、「うそみたいなホントの話」とドヤ顔でポビドンヨードの有効性を記者発表した「イソジン騒動」などなど、こちらも枚挙にいとまがない。
 維新の創業者・橋下徹氏のテレビ復帰とその後の吉村人気の沸騰の陰に隠れて、こうした失政の数々はすっかりかき消されてしまったが、維新政治の実態を理解する上で、これらは避けては通れない事実だといえよう。しかし、それら全てに触れるいとまはない。コロナ禍の初動における重大な失策であり、維新の実態を雄弁に物語る一つのエピソードを紹介するにとどめよう。
 一昨年、3月20日からの3連休を前にした12日、松井大阪市長は記者会見で「社会を動かしていくことが職務」だとして、「(大阪市は花見の)自粛要請をやめようと思う」と述べたのだった。これを受けて橋下徹氏もツイッターで〈大阪・松井市長、花見自粛要請せず。「社会を動かすのが職務」……危機管理の見本〉(3月15日)と褒めそやした。この時点で、維新がコロナ禍を極めて甘く見ていたことがうかがえる。これを見た厚労省は“8割おじさん”こと西浦博北大教授(当時)らの作成した「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)」という文書(3月16日付)を手に大阪に飛んでくる。維新の能天気ぶりに大慌てしたわけだ。

■「3週間」を「3日間」に
 3連休直前の19日になって吉村府知事は記者会見を開き、この文書を手にしながら「連休期間中(3日間)の大阪府・兵庫県間の往来自粛」を要請した。メディアはこれを「3連休は阪神間の往来自粛を要請」と報じた。しかし西浦教授らの文書には、「大阪府・兵庫県全域で今後3週間の(中略)大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」と明記されていたのだ。「3週間」を「3日間」に、「大阪府・兵庫県内外の往来」を「大阪府・兵庫県間の往来」に吉村知事の独断で“値切って”いたというわけだ。文書を自分の手で示しながら、その中身とは全く異なることを平然と語る。これぞまさに維新クオリティーである。
 往来自粛が解けた連休明け、どっと人出が繰り出すこととなり、それから2週間後の4月7日に大阪における第1波が始まったことは言うまでもない。 =つづく

冨田宏治 関西学院大学法学部教授
1959年、名古屋市生まれ。名古屋大法学部卒。名古屋大法学部助手、関西学院大法学部専任講師、助教授を経て99年から現職。専門は日本政治思想史。原水爆禁止世界大会起草委員長も務める。「核兵器禁止条約の意義と課題」など著書多数。共著「今よみがえる丸山眞男」を2021年12月に上梓。


最大ゆ党 維新躍進のカラクリ(5)
維新の「徹底的な改革」で病職員数は半減、保健所などの職員も4分の3に
                          日刊ゲンダイ 2022/03/05
 吉村府知事、松井市長のコロナに対する初動対応のお粗末さを見るに見かねた橋下徹氏が、在阪テレビ局の情報番組への出演を再開し、頼りないツートップへの猛烈な援護射撃を始めたことはすでに触れた。この時、橋下氏はお得意のツイッターで自己批判とも開き直りともとれる発信(2020年4月3日)をすることからはじめたのだった。

■橋下徹氏の「自己批判」でウヤムヤ
〈僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします〉
〈平時のときの改革の方向性は間違っていたとは思っていません。ただし、有事の際の切り替えプランを用意していなかったことは考えが足りませんでした〉
 すでに触れたように昨年11月の段階で、大阪府の100万人当たりのコロナ死者数は全国平均の2.4倍、大阪市にいたっては3.3倍という異常な事態となっている。この原因が橋下氏も認めざるを得ないように、彼らの「徹底的な改革」の断行による医療体制の脆弱化と医療崩壊にあったことは火を見るよりも明らかだ。「考えが足りませんでした」ですむ話ではない。人の命にかかわる問題なのである。
 維新府政、維新市政のもとでの10年余り、大阪府下の医療機関では徹底的なリストラの嵐が吹き荒れた。「官から民へ」のスローガンのもと、赤字の施設は廃止され、黒字の施設は民間へと移管。住吉市民病院の廃止、府立健康科学センターの廃止、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の統合縮小、府立病院の予算の大幅削減、千里救命救急センターや大阪赤十字病院への補助金の廃止等々。まさに枚挙にいとまなしだ。
 その結果、コロナ患者の受け入れの先頭に立つべき公務員の医師・看護師などの病院職員数は、2007年の8785人から2019年の4360人へと50.4%も削減(全国平均は6.2%減)され、保健所などの衛生行政職員も2007年の1万2232人から2019年の9278人へと4分の3に減らされた(以上、国公労連・井上伸氏の調査)。そこにコロナ禍が襲ってきたのである。
 維新の新自由主義的「改革」なるものが、大阪の街に何をもたらしたのか。維新によって、人の命がいかにないがしろにされてきたのか。これらは決して忘れてはならない厳然たる事実である。(つづく)

冨田宏治 関西学院大学法学部教授
1959年、名古屋市生まれ。名古屋大法学部卒。名古屋大法学部助手、関西学院大法学部専任講師、助教授を経て99年から現職。専門は日本政治思想史。原水爆禁止世界大会起草委員長も務める。「核兵器禁止条約の意義と課題」など著書多数。共著「今よみがえる丸山眞男」を2021年12月に上梓。