植草一秀氏が、米国のオリバー・ストーン映画監督によるドキュメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』(2016年)を紹介しました。
ウクライナでの2004年のオレンジ革命と2014年の暴力革命は、2000年以降 旧共産圏諸国において起きたフラワー革命に類するものですが、その裏側には影の主役・米国が存在していて、その二つの革命を経てウクライナは親露から親欧米に転じました。
そこでの政権転覆がどのように遂行されたのかを『ウクライナ・オン・ファイヤー』は鮮明に描き出しています。植草氏は全世界必見の優良作品だとしています。
実は8日早朝、上映時間(約90分)を確認しようとしたところ既に削除されていました。植草氏がブログで宣伝したことによって、この映画を観て欲しくない勢力が削除させたものと思われます。映画には、当時のウクライナ大統領ら(ロシアのプーチンも)が登場して淡々と事実関係を述べているだけなのですが、それを知られることが余程都合が悪かったのでしょう(誰にとって都合が悪かったのかは明らかです)。
植草氏は、6日付と7日付のブログでこの映画についてふれています。残念ながら映画自体は見られなくなりましたが、映画の内容や位置づけについて簡単に触れられているので2つのブログを紹介します。
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ウクライナ・オン・ファイヤー
植草一秀の『知られざる真実』 2022年3月 6日
メディアが流す情報は統制が取れている。悪魔のロシア。正義のウクライナ。そして、正義を代表する米国。
世界はいまロシアを打倒するために結束している。そして、悪魔のロシアによって攻撃を受けるウクライナを支援しなければならない。
悪魔の帝国を殲滅するため、先頭に立つ正義の騎士は米国である。こうした情報の「流れ」が形成されている。このとき、この「流れ」に抗することは極めて困難になる。
留意が求められるのは、一連のプロセスを創出する主体が存在するのかどうか。
シナリオライター、演出家、総合プロデューサーが存在するとなると、全体を鵜呑みにするわけにはいかない。現代の戦争の最重要側面としての「情報戦」が浮かび上がる。
「情報戦」の最先端を進むのが米国だ。徹底的な用意周到さを持ち合わせている。
逆に言えば、どのような情報戦略があるのかを知ることが必要になる。私たち一般の市民にこれは難しい。
しかし、人々に情報戦の裏側を教える教師が登場するなら状況は変化する。
現在のウクライナ問題を理解するには、ウクライナの歴史を知る必要がある。
ウクライナは東と西を分ける要衝に立地する国。南側は黒海に面している。地政学上の要衝である。
このウクライナで二度の政変が生じている。2004年のオレンジ革命と2014年の政権転覆。共通するのは二つの革命の裏側に米国が存在していること。影の主役は米国と言ってよいだろう。二つの革命を経てウクライナは親ロから親欧米に転じた。
もうひとつ見落とせない重要事実がある。ウクライナの民族構成だ。
北西部はウクライナ人が大勢を占める。これに対して、南東部はロシア系住民が太宗を占める。ウクライナは民族的に二分されるのだ。
2004年と2014年の政権転覆がどのように遂行されたのかを、米国を代表する映画監督のオリバー・ストーンが鮮明に描く。
作品名は 『ウクライナ・オン・ファイヤー』。2016年の作品である。
日本語字幕付きの動画を閲覧することができる。「ウクライナ・オン・ファイヤー」
⇒ https://www.nicovideo.jp/watch/sm40134434
90分程度の作品だが、全世界必見の優良作品だ。メルマガ読者も教示してくださった。
この作品が教えてくれる最重要のテーマは、「情報の流れ」が人為的に創作されていること。
政治的に重大なイベントが発生する。そのイベントは用意周到に準備され、実行される。
しかし、その際に決定的に重要になるのは、そのイベントをどの色に染めて伝えるのかである。当然のことながら、巨大なお金が動く。
そして、そのイベントをメディアがどのように人々に伝達するか。
「お金」と「メディア」がキーワードになる。
イベント実現に向けて地道に努力を積み重ねるのが米国の情報機関であるCIA。
実行部隊は米国の外務省=国務省と大資本支配下のメディアが担う。
長きにわたって米国のウクライナ担当を務めてきたのがバイデンとヌーランドである。
ウクライナ問題を考えるに際しては、すべての人が、まずこの作品を閲覧することが有用だ。
メディアが流す情報に対する捉え方が必ず変わるはずだ。
鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」) https://bit.ly/39BTgmd
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(以下は有料ブログのため非公開)
正義に成りすます米国の正体
植草一秀の『知られざる真実』 2022年3月 7日
米国のこれまでの行動とロシアの行動を比較したときに、一方を悪とし、一方を善と決めつけることはできない。
今回のロシアによる軍事作戦遂行を是認できない。武力による紛争の解決を遂行するべきでない。しかし、米国が正義の騎士であるかのように振る舞うのは噴飯もの。
イラク戦争を再評価するべきだ。イラクの罪なき市民が、どれだけ犠牲になったのか。
メディアは、イラクの市民生活を報道したか。イラクの街からの中継を連日行ったか。
米軍の軍事侵攻を非難したか。
米国はイラクが大量破壊兵器を保持していると主張した。しかし、国連は軍事侵攻の前に踏むべきプロセスがあるとして、米国による軍事侵攻を是認しなかった。
しかし、米国は制止を振り切ってイラクに軍事侵攻した。イラク市民の犠牲者は数十万人に達した。現在のウクライナでの犠牲者数との比較を示すべきだろう。
米国による軍事侵攻ののち、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。
単なる侵略戦争だったことが明らかになった。
ウクライナでは2004年と2014年に二度、政権転覆が遂行されている。この二つの政権転覆の裏側に米国が位置している。
米国が介入して政権を転覆させたのであれば、糾弾されるべき存在は米国である。
米国は「情報力」を駆使して、自らの行動を正当化してきた。
しかし、その行動が「善」であるのか、「悪」であるのか、評価は定まっていない。
この問題を米国の著名映画監督であるオリバー・ストーン氏がドキュメンタリー映画にした。
昨日も紹介した
「ウクライナ・オン・ファイヤー」
⇒ https://www.nicovideo.jp/watch/sm40134434
画面に流れるコメントは簡単な操作で非表示にできる。
ウクライナ問題を考えるなら、必見の作品だ。オリバー・ストーン氏は自説を強要しない。
淡々と、事実を伝えてくれる。
その事実を、どう解釈するのかは視聴者に委ねられる。
しかし、米国がウクライナの極右勢力を温存し、対ロシア戦略に活用してきたことはよく理解できる。東欧カラー革命が類似した手法で遂行されてきたこともよく分かる。
ウクライナの反政府デモは、当初、穏健な活動だった。デモ隊とヤヌコヴィッチ政権との間で大統領選の前倒し実施で合意も成立しかけた。
しかし、平和な妥協が成立しては困る勢力が存在した。平和なデモを、暴力行為、流血の泥沼に移行させることを必要とした勢力が存在した。この「転換」を担ったのが米国と連携する極右勢力だった。
彼らが採用したのが「偽旗作戦」である。
デモの最中に極右勢力がライフル銃などを用いて、故意にデモ隊に発砲し、死傷者を生み出し、それをヤヌコヴィッチ政権の治安部隊によるものであるとの情報を拡散する。
この「偽旗作戦」によって民衆の行動を特定の方向に誘導するのである。
詰まるところ、暴力革命によって政権転覆を図る。これが2014年政権転覆の基本図式である。
同時にウクライナ極右勢力は親ロシア勢力が支配権を持つ東部ドネツク州、ルガンスク州においても挑発行為を繰り返す。このことによって、一種の内戦状態が生み出された。
事態を収拾するために停戦協議が行われ、2014年と2015年に「ミンスク合意」が締結された。「ミンスク合意」は東部地区の自治を広範に認める内容を含んでいた。
ロシアにはロシアの主張がある。
この点を含めて、早期に停戦が実現するように、すべての関係国が尽力するべきだ。
一方的な非難、攻撃、追い込み戦術だけで問題を解決することはできない。
鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」)
https://bit.ly/39BTgmd
10月5日発売の鳩山友紀夫元首相、孫崎享氏、前川喜平氏との共著『出る杭の世直し白書(ビジネス社)https://amzn.to/3hSer8a のご高覧も賜りたい。
(以下は有料ブログのため非公開)