2022年3月6日日曜日

イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 - ~ (世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が「イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 -『窮鼠』を封じる暗殺作戦」とする記事を出しました。
 記事は、従来の国際紛争に対する国連の態度と今回のウクライナ紛争に対する対応が二重基準になっている、ということから書き起こされています。それはそのまま西側メディアについても言えることです。
 そして後段では突如、「プーチンに内在して考えたとき、今、戦況を挽回する手は核を使うという選択しかないのではないか」と書き進めています。唐突に感じられますが、プーチンの思いに即して考えればそのとおりなのでしょう。
 これまでの事態を見るとバイデンの目的は殆ど達成されました。しかし単にプーチンを世界が非難するだけではことは解決しません。せめて中国なり独国・仏国なりが、具体的な落としどころを見出して、ロシアとウクライナを説得するしかない筈ですが・・・
  お知らせ
 都合により7日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イラク戦争・ガザ侵攻時との国連の二重基準 -「窮鼠」を封じる暗殺作戦
                          世に倦む日々 2022-03-02
40年ぶりに国連総会で緊急特別会合が開かれ、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案が採択されようとしている。テレビを見ながら、はて、こんな制度があったのかと思った。これにはP5の拒否権は使えないらしい。40年前、1982年に緊急特別会合の議題になったのはイスラエルによるゴラン高原の占領問題だったと記事にある。イスラエルに対する非難轟々だったと思われるが、どういう決議が採択されたかの情報はない。そこから40年間、この制度はなぜか封印されてきた。出番がなかった。

アメリカのイラク侵攻が起きたのは2003年の3月。19年前のちょうど今頃、NYの国連ではこの問題をめぐって侃々諤々の議論が紛糾していた。安保理で連日激しい論争が交わされ、開戦に反対する仏ロ中と、攻撃やむなしとする米英と、P5が2派に分かれて激論の火花を散らしていた。伊達男のドヴィルパンが主役に浮上して活躍、華麗な弁舌と論陣で注目と人気を集めた。なぜ、あのとき、米英以外の理事国13か国は、今回のように総会の緊急特別会合開催へ歩を進める手続きに出なかったのだろう

3月17日にブッシュがテレビ演説で最後通牒を発し、19日夜にバグダッドにトマホークの雨を降らせた後、国連はしんとなって忽然と表舞台から消えてしまった。今回のように、侵攻が始まった後にさらに活発に動き、侵略国を糾弾して袋叩きする挙に出ることはなかった。議論は終わりになり、マスコミ報道は戦場となったイラクに焦点を移した。西側マスコミは米英多国籍軍の従軍広報となり、「正義の戦争」の戦果を発表する大本営報道部と化した。なぜ、あのときと今回で国連はこれほど違うのだろう

何度も起きたガザ侵攻。06年、08年、14年。とりわけ記憶に残っているのは08年から09年のときである。毎日懸命にブログを書いた。イスラエルの爆撃を受け、子どもたちが殺された。イスラエルは、そこに多くの子どもがいるのを知っていながら、故意にミサイル空爆して大量殺戮した。市街に入った地上部隊が残酷に子どもを小銃で射殺した。兄弟の目の前で。何で、何で、安保理理事国は今回の手続きを使い、国連総会で虐殺を糾弾する動きに出なかったのか。総会での非難決議の政治を行わなかったのか。口惜しい。

パレスチナを守ろうとして武器援助をする国はなかった。ガザを救うために20億円も寄附する市民はいなかった。イスラエルに経済制裁する国はなかった。ガザ市民の生の声を夜のテレビ報道で流すことはなかった。08年の頃までは、少しは西側のジャーナリズムが現地の悲痛な声を拾って届ける動きがあったけれど、14年の侵攻からはそれが全く途絶え、パレスチナは世界から見捨てられ無視された状態になっている。イスラエルの行為を国連憲章違反とも人権侵害だとも言う声は聞こえて来ない。イスラエルは懲罰を受けず、人道への罪で国際司法裁判所に提訴されることもない。

08-09年のガザ侵攻で、パレスチナ側は1417人の死者を出し、926人が民間人でうち子どもの死者が313人である。2014年のガザ侵攻では同じく2251人の死者を出し、70%が民間人で、うち子どもが551人である。これほど大量に、数次にわたって子どもが殺されたのに、残虐な暴力と人道への罪に対して国連は何もしなかった2012年に報告されたイラク戦争の民間人の犠牲者は12万7980人。50万人という推定もある。戦争が長期化し、イラク側がゲリラ戦で抵抗したため、犠牲者の数は途方もなく多くなった。民間人を殺してPTSDになった帰還米兵には同情が集まるが、名も無く殺されたイラク人を弔う者はいない。二重基準

核戦争が始まるのではないかという予感を漠然と抱く。プーチンに内在して考えたとき、今、戦況を挽回する手は核を使うという選択しかないのではないか。最近、テレビとネットで「窮鼠猫を噛む」という諺が喋々されている。2月13日のツイートでこれを書いた。別にパクられたとか言って自慢するつもりはない。奪われた主導権を握り直すための独裁者の手段としては、この窮余の策しかなく、この切り札を武器にして瀬戸際からの反転と状況の再均衡を図ろうと発想しておかしくない。少なくとも、プーチンの場合はブラフではなく、プランがあり、実際に戦略ミサイル軍が戦闘状態で命令を待つ態勢にあるはずだ。

アメリカの方は、こうしたプーチンの危険性を嗅ぎつけ、また口実にして、どうやらプーチンの斬首作戦を立案する段階に入っている。プーチンの精神状態が異常だという説が週末からどんどん流されている。プーチンの人格否定の言説攻勢が始まり、この男は頭がおかしくなっているのだ、ロシア政府内でも浮き上がっているのだ、ロシア国民から支持されてないのだ、という情報宣伝が流布され敷き固められている。だから暗殺されてもしかたないのだという世論作りの布石だ。カダフィやアラファトのときも、似たような言説工作をやっていた。トマホークで仕留めるか、SEALs刺客団を送るか。

この作戦を決行して成功させれば、戦争を早く終わらせることができると、そう英米は考えるだろう。プーチンがこのままだと、核を使うことはなくとも戦争は長引く。経済制裁で欧州の企業と経済が疲弊する。だが、仮に英米がこの奇襲作戦に出て失敗した場合、プーチンはどう反撃するか。アメリカとの戦争状態の突入であり、アメリカに対して報復攻撃に出る根拠をロシアは得る。また、仮にプーチンの首を獲ることができても、ロシアの世論が英米の思惑とは逆に振れて、反米感情が沸騰して対米戦争やむなしの奔流になる可能性がある。その場合は、プーチンの後継者が核のボタンを引き継いで21世紀の「大祖国戦争」に出る事態となる。

それはトゥキディデスの罠従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指すWikiよりに踏み込み、世界が破滅に向かう進行に違いない。キューバ危機のときのことを思い出すべきだと思う。あのとき、戦略を仕掛けた側はソ連で、追い詰められた側はアメリカだった。そして、フルシチョフの譲歩で事なきを得た。今回、同じ展開があり、今回は追い詰められた側がロシアで、振り上げた拳の落としどころに窮したのはロシアだった。プーチンは、2月12日のバイデンとの電話会談で、アメリカが譲歩してくると踏んだのだろう。核戦争・第三次世界大戦を回避するにはそれしかなく、必ずロシアの要求に耳を傾けて妥協してくると推断したはずだ。

その見通しは甘く、読み間違いであり、プーチンの思考回路の老衰と劣化と自滅を私は感じるのだけれど、プーチンはすがるようにそこに希望を託し、二大核大国の「ボス交」で山場を凌ぐシナリオを確信していたのではないか。プーチンは現在もその戦略(アメリカへの無理なプロポーズ)を追求していて、核戦争が嫌ならロシアの言い分も聞けとゴネる姿勢にある。つまり、チキンレース・ロシアンルーレットのアリーナ⇒試合場に米英欧を引き込むことで、自己のアドバンテージを盛り返そうとしている。拳は未だ振り上げたままであり、前回はそれをウクライナに落としたが、次に落とす先は核戦争だという脅しで身構えている。

四面楚歌の中で、そこしか(論理的な)活路と展望がない。もし仮に、核戦争になり、欧州と世界が破滅の地獄になったなら、すべての後で、この歴史はキューバ危機と比較されることになるだろう。あのとき、フルシチョフは苦汁の決断だった。結論を言えば、互いに妥協を試みた努力の末、トゥキディデスの罠から脱却することができた。今の国連の動きを見ながら、私はとても悲観的な気分になる。ロシアを悪魔視して一方的に仕置きしても平和の問題解決にはならない。ロシアの中には、一定部分、プーチンのウクライナ戦争の動機を支持する者がいるはずだ。

欧米がプーチンを失脚させ(暗殺含む)、レジームチェンジ(ロシアのカラー革命)に成功したとしても、そこから反動が起き、ロシア・ナショナリズムが勃興し、ロシア国内は内乱状態になるだろう。ヨーロッパは阿鼻叫喚の嵐になる。人命が大量に失われ、収拾がつかない破局と破壊に襲われる