2023年1月4日水曜日

04- 藤倉善郎 × 鈴木エイト どうなる旧統一教会… 宗教法人解散か延命か

 日刊ゲンダイに藤倉喜朗氏と鈴木エイト氏の対談が載りました。藤倉氏はニュースサイト「やや日刊カルト新聞」の総裁(09年に創刊)で、カルト問題を20年以上にわたって取材しています。目下マスコミで引っ張りだこの鈴木エイト氏は同紙の副代表・主筆を務めています。

 「被害者救済新法」は何とも物足りずに残念な結果になりました。対談の冒頭でエイト氏は「ドロボーがドロボーを規制する法律を作ったようなもの」と述べ、藤倉氏も「ドロボーがドロボーに『配慮してね』じゃあねえ」と応じています。
 また「岸田首相は何かと菅前首相に助言を求めていますが、安倍さんと並ぶ元凶です」(鈴木氏)という発言も出ています。安倍政権・菅政権のツートップが統一協会と深く関わっていた訳で、これでは自民党が協会に深く浸食されるのは当たり前のことです。
  ⇒(11月1日)山際前大臣と統一教会の黒幕は菅義偉氏 江田憲司氏が体験を語る
 以下に紹介します。
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藤倉善郎×鈴木エイト どうなる旧統一教会…宗教法人解散か延命か、他の団体への波及は?
                         日刊ゲンダイ 2023/01/02
 安倍元首相銃撃事件は日本列島の隅々にまで激震を走らせた。青天の霹靂によって、反社会的な性質が再びあらわになった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は宗教法人の解散に追い込まれるのか。その流れは似たり寄ったりの集団に波及するのか。カルトをめぐる問題を粘り強く追及してきた「やや日刊カルト新聞」の2トップはどう見る?
                ◇  ◇  ◇
【藤 倉】 臨時国会で成立したいわゆる「被害者救済新法」は物足りない内容でしたね。
【エイト】 ドロボーがドロボーを規制する法律を作ったようなものですから。
【藤 倉】 野党はマインドコントロール下にある人に対する勧誘行為を確実に規制できるよう「配慮義務」を禁止規定として明記するよう求めましたが、政府・与党にはね返された。ドロボーがドロボーに「配慮してね」じゃあねえ。ただ、スピード審議の中でも原案に多少は修正が加えられ、まとまったのは良かった。
【エイト】 統一教会問題は法整備で一件落着、自民党と教団の癒着の究明はなし崩しでオシマイ。これが政府・与党のシナリオでしょうが、そうさせるわけにはいかない。

■あちこちで妨害工作、宗務課の警戒
【藤 倉】 次のフェーズは宗教法人格の剥奪。文化庁の宗務課には解散命令の請求までしっかり持っていってほしい。約20.5万人が賛同したオンライン署名を提出した時の宗務課長とのやりとりでは、「やるぞ」という雰囲気が感じられましたよね。
【エイト】 「ちゃんとやる」という意思は感じられました。今後の流れで言うと、宗教法人法に基づく質問権の再行使が12月14日になされ、回答期限は1月6日。教団が弁明する機会をそこで一区切りとするのなら、解散命令の請求は最短で1月末、あるいは2月あたり。宗務課は教団からの妨害を非常に警戒していてフロアマップの記載を消し、容易に担当者が分からないようにしています。
【藤 倉】 統一教会もかなり抵抗するでしょう。オウム真理教の場合は解散命令の申し立てから確定まで7カ月でしたが、教団は最高裁に特別抗告して対抗した。
【エイト】 統一教会側が国や地方議会に嘆願書や陳情書を送り、「解散命令請求はしないでほしい」「私たちは反社会的団体ではない」などと訴えている。
【藤 倉】 関係者とおぼしき人物が統一教会を批判的に報じるメディアを非難し、放送免許取り消しを求めるオンライン署名活動をやったり、テレビ局やコメンテーターを名誉毀損で提訴したり。

火の粉を恐れるカルト団体の弥縫策
【エイト】 2世信者の小川さゆりさん(仮名)は会見の際に中止を求める両親の署名入りファクスを送り付けられただけでなく、ツイッター上でも攻撃を受けています。本来のカルト性が随所に見える。内部文書の「0810対策」を入手したんですよ。通称「エイト対策」。僕らの取材への対応がまとめてある。
【藤 倉】 「エイト」なら8の後の10いらないじゃない。「ト」まで入れているんだ。
【エイト】 「笑顔でエイトと仲良さそうな写真を撮らせる」「巻き込む」とか、細かいシチュエーションが書いてあってメッチャ面白いですよ。メッコール(関連企業が販売する炭酸飲料)をくれたのも巻き込む作戦だったのかも。教団は「カルトは差別語」とか「カルトという言葉自体がヘイトスピーチ」と盛んに主張していますけど、河野消費者担当相が「私の個人的な認識は、カルトに該当するというものだった」と国会答弁した。統一教会をハッキリとカルト呼ばわりした河野大臣を教団は訴えるのか。展開を期待しちゃいます。
【藤 倉】 (献金被害対策の)法整備に集中する時期は過ぎたので、改めて政治家と統一教会の関わりをしっかり追及していかないと。
【エイト】 更迭された山際前経済再生相なんかは小物。岸田首相は何かと菅前首相に助言を求めていますが、安倍さんと並ぶ元凶です。仰ぐんじゃなくて、スガスガしく追及してほしい。火ダルマの統一教会を眺めながら、他のカルトはうまく立ち回ろうとしている。いろいろな宗教団体が火の粉が飛んでこないように与党執行部に陳情しているとか。
【藤 倉】 それは創価学会に限らず?
【エイト】 伝統宗教も含め、ですね。
【藤 倉】 通常営業か、おとなしくするか。それぞれですよね。例えば、統一教会と同様に正体隠しの勧誘をする浄土真宗親鸞会。公共施設を借りて仏教講座を開き、参加者を引き込むのですが、その手口をいまなお継続している。一方、幸福の科学はこのところ静か。銃撃事件発生から3日後、安倍さんの霊が大川隆法総裁のもとに降りてきたそうです。
【エイト】 ネットで〈「安倍元首相の霊言」を公開!〉と告知していましたよね。
【藤 倉】 大川さんの口を通じて、安倍さんの霊がいろいろなお話をされたそうなんです。通常はその映像を収録して全国の教団施設で上映し、書籍化するパターンなんですが、今回は霊言公開を告知した途端に炎上して、数時間後には告知そのものを削除しちゃった。どうやらお蔵入りしたみたい。
【エイト】 あの日以来、安倍さんの肉声を聞く機会は失われているのに……。
【藤 倉】 まあ、肉声じゃないですけどね。騒ぎ以降、霊言を発表していない。
【エイト】 霊言でいうと、統一教会との激しいバトルもあった。
【藤 倉】 2010年でした。映像によると、大川さんが統一教会教祖の文鮮明氏の霊を降ろした。これが地獄にいるクモであるかのような設定で。文氏の霊が降りた大川さんはポーン、ポーンとクモの糸を飛ばしていて……。存命中の教祖をバカにされた統一教会は幸福の科学に抗議文を送り付け、幸福の科学が応酬し、かなりやり合ってましたね。
【エイト】 振り返ってみると、銃撃事件発生前のカルト的な動きでいったら、国政進出をうかがっていた参政党の方がよほど危険視されていた。
【藤 倉】 反LGBTや夫婦別姓反対といった保守的政治運動を推し進めているのは、統一教会だけじゃない。自民党を支える日本会議や神道政治連盟もそう。参政党が分かりやすい例ですが、陰謀論とかスピリチュアル含みの新たな政治運動はデフォルト(⇒基本点)が右派なんですよ。
【エイト】 僕もそこはキッチリ取材したいと思ってるんですけど。
【藤 倉】 参政党は「小麦はダメ」「水銀中毒になる」などと主張しているんですが、その理由はユダヤ国際金融資本に支配されたGHQが持ち込んだ小麦は日本の食文化にはなじみがないからというもの。言うまでもなく、小麦は戦前どころか、はるか昔から食べられていますし、うどん県の香川県民や粉物大好き大阪府民は怒るべきところ。トンデモな偽科学的、オカルト的陰謀論を口にする人たちは「伝統的な日本文化を守ろう」というフレーズで、どういうわけか保守方面を目指す。統一教会もそうした要素のひとつと意識した方がいい。
【エイト】 統一教会問題を利用しようという動きもある。
【藤 倉】 9月に統一教会本部(東京都渋谷区)が数百人に包囲されたでしょう。
【エイト】 「統一教会も創価学会も源流はユダヤでCIAだ!」とか口走る陰謀論集団に。
【藤 倉】 呼びかけたのは、政治団体「つばさの党」の黒川敦彦代表(NHK党幹事長)。反ワクチンとかの陰謀論者を寄せ集めて「新しい国民の運動」と名付け、1月中旬に公明党本部(東京都新宿区)も包囲するとか。統一教会は関連団体を通じた政界工作だけでなく、市民運動として集会やシンポジウムを開いたり、ビラを配ったりして浸透を図ってきましたけど、それをもっとヤバくしたようなものが蔓延しつつある。そういう点でも、統一教会問題は政治家との関係はもちろん、運動そのものをしっかりと総括しないと危ない。
【エイト】 山上徹也容疑者がいよいよ起訴され、公判が始まれば、本人の証言も出てくる。犯行前のツイートなどを含め、劇場型の事件。統一教会問題をますます多方面から見ていかなきゃいけない。
【藤 倉】 山上証言を切り取って「教団も2世問題も関係ない」「逆恨み」という声が強まるかもしれない。ですが、山上容疑者を生きづらくさせた統一教会はケシカラン、という話じゃない。カルト問題の中の2世問題を語る当事者の証言などによって、教団の反社会性は浮き彫りになっている。山上容疑者に左右されることじゃないでしょう。

▽藤倉善郎(ふじくら・よしろう) 1974年、東京都生まれ。カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、総裁就任。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

▽鈴木エイト(すずき・えいと) 1968年、滋賀県生まれ。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」の副代表、主筆を歴任。近著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)の発行部数は7・5万部突破。2人が出演する新春恒例の「カルト新年会」(阿佐ケ谷ロフトA)を1月4日に開催予定

2023年1月3日火曜日

戦争推進でなく終結目指せ / ウクライナ戦乱のゆくえ(植草一秀氏)

 先にアンゲラ・メルケル元独首相は独ツァイト誌のインタビューで、「ミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかった」と話して驚かせましたが、今度はフランソワ・オランド元仏大統領が、やはりインタビュー記事で、「2022年のウクライナの回復力の成功は、2014年から2015年の彼自身の外交努力(ミンスク合意Ⅰ及びⅡ)に部分的に起因している」という表現で、メルケルの発言を肯定しました(「キエフ独立」紙12月28日付他)。
 ⇒(12月11日)ミンスク合意はウクライナ軍の戦力を強化するための時間稼ぎだったと前独首相
 何のことはない、ミンスク合意に立ち会った独仏の指導者二人が揃って「実は時間稼ぎ(の欺瞞の合意)だった」と述懐したわけです。
 そしてキエフ政権はその後5年余り、合意を実行する代わりに軍備を充実させて、いよいよ22年の3月からドンバス地方を総攻撃する準備が整った段階で、バイデンが盛んにプーチンを挑発し、その結果現在の悲惨な事態に立ち至ったのでした。
 ミンスク合意が「時間稼ぎのため」ということは、米国をはじめキエフ政権、NATOの主要国はすべて承知であった訳です。こうした経過を知れば,ロシアが「悪の権化」で、それに対してウクライナ政権は「正義のシンボル」という評価は正しいとは思えません。「正義の戦だから引けない」「引くべきではない」という主張も疑問です。またウクライナ侵攻は「絶対悪」なのだから、「どっちもどっち」という議論はすべきではないという主張も同様です。
 いまは何が「正義」であるかにこだわるのではなく、戦争を終結させることに全力を集中すべきです。
 植草一秀氏が大晦日と元日の2日、ウクライナ戦争に関する記事を出しました。
 併せて櫻井ジャーナルの記事:「ミンスク合意は西側がキエフ政権の戦力を増強するための時間稼ぎだと元仏大統領」を紹介します。
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戦争推進でなく終結目指せ
              植草一秀の「知られざる真実」 2022年12月31日
激動の2022年が間もなく終わる。
この1年の出来事を振り返り、新年に活かすことが大切だ。
何よりも大切なことは平和と共生。
2月24日にウクライナ戦乱が勃発した。
この戦乱がいまも続いている。
この日にロシアが特別軍事作戦を始動させたが、戦乱そのものは、その前から発生していた。
2014年にウクライナ政権が転覆されて以降、ウクライナ西部で内戦が勃発していた。
この内戦を収束するために関係諸国が協議し、合意が成立した。
この合意を関係国が遵守していればウクライナ内戦は収束したはず。
ウクライナ内戦が収束していれば、今回の戦乱も発生していない。
2月24日以前にウクライナ政府は東部地域に対する軍事攻撃を激化させた。
これに呼応するかたちでロシアが軍事作戦を始動させた
ロシアがウクライナ国内に軍を進め、軍事行動を取ったことは批判されるべきだ。
しかし、それ以前にウクライナ国内で内戦が発生しており、この内戦を収束するための合意が成立したにもかかわらず、ウクライナ政府が合意を踏みにじって戦乱を誘発した点を見落とせない。

2022年のウクライナ戦乱について、日本のメディアはロシアが悪でウクライナが正義の図式で報道する。
しかし、真実とは異なる。
戦乱を誘発したウクライナと米国の責任は重大である。
日本のメディアは戦乱を可能な限り早期に収束することを模索する方向で報道しない。
ウクライナのロシアに対する攻撃を支援するスタンスで報道する。
戦乱の早期収束ではなく、ウクライナがロシアに勝利することが重要とのスタンスで報道を展開する。
これは戦争抑止でなく、戦争推進を目指すもの。
ロシアの軍事行動を批判する見解を報じるが、ウクライナの軍事行動を批判する見解を報じない。
ウクライナ国内でもウクライナの戦争に反対する市民は多数存在する。
ウクライナ市民の人権が侵害されて、ウクライナ市民の犠牲が拡大している。
戦争を推進するウクライナ政府の姿勢を批判するウクライナ市民が多数存在するが、この声をまったく伝えない。
「国際社会」という言葉が多用されるが、日本のメディアが用いる「国際社会」は、「米国の支配者」のこと。
「米国の支配者の主張」を「国際社会の主張」として報じているだけだ。
いま、何よりも求められることは戦争の終結。

ロシアが軍事行動を実行した理由がある。
ロシアが紛争の解決のために武力行使した点を除けば、非はウクライナの側にある。
2015年に制定された「ミンスク合意」はウクライナ東部2地域に対して高度の自治権を付与することにより停戦を終結することを内容とした。
合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した。
ミンスク合意を履行しないことは国際法違反である。
ウクライナ政府はミンスク合意を踏みにじり、ロシアとの軍事対決路線を鮮明にした。
同時にロシアが嫌うNATO加盟方針を鮮明にした。
そもそも、ミンスク合意が成立したのは、東部2地域への自治権付与がウクライナのNATO加盟を不可能とする意味を有したからだった。ウクライナのNATO加盟を不可能にするミンスク合意であるからロシアが同意したのである。

ウクライナ政府はミンスク合意を踏みにじっただけでなく、ウクライナ東部のロシア語系住民に対する軍事攻撃を激化させた。
その結果としてウクライナ戦乱が誘発された。
ウクライナとその背後で糸を引いた米国の責任が重大だ。
これらの経緯を踏まえて問題解決を目指さなければ戦乱収束は実現しない。
ロシアの主張に十分に耳を傾けることが必要不可欠だ。
この問題にこそ「聞く力」が求められる。

岸田首相は米国の命令に服従するだけで、ロシアの主張を「聞く力」を一切示さない。
日本の報道は第二次大戦下の大政翼賛報道と変わらない。
ロシアを批難し、ウクライナの軍事行動を支援する行為は、戦乱収束ではなく戦乱拡大しかもたらさない。
2022年が幕を閉じようとするいま、私たちは戦争推進ではなく、戦争の一刻も早い収束のための道を模索するべきだ。
日本政府の対応、日本メディアの対応は平和を希求するものではなく、戦争を推進するものになっている。

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ウクライナ戦乱のゆくえ
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年1月 1日
癸卯(みずのとう)2023年の新しい年が明けました。
みなさまにとりまして今年一年が佳き年になりますことをお祈りいたします。
本年もよろしくお願い申し上げます。
世界で戦乱が繰り広げられるなかでの年明けとなりました。
日本は戦争の悲惨さと愚かさを誰よりもよく知る国の一つです。
現代の戦争では一般市民が戦争に巻き込まれ、多大の被害に直面することが大きな特徴になっています。

ウクライナで一般市民の犠牲が生じていることが報じられますが、日本では第二次大戦中に日本各地の大都市で大規模空襲が挙行され、さらに原爆が投下されて驚くべき数の一般市民が犠牲になりました。
一般市民に対する殺戮行為は国際法によって戦争犯罪とされますが、戦争後に戦争犯罪を問うのは戦勝国です。戦勝国の戦争犯罪は問われることがありません。
日本国民に対する殺戮行為が戦争犯罪として追及されることはありませんでした。

ウクライナにおける戦乱について、日本のメディアはウクライナを正義とし、ロシアを悪と位置付けて、ウクライナがロシアに対して軍事攻撃で勝利することを支援するスタンスを取っていますが、これが正しい姿勢だと言えるでしょうか。
ウクライナが軍事的にロシアを撃破するためには戦闘の拡大を避けることができません。
両国が総力戦に移行すれば、比例して被害が拡大することを避けることができません。

「聞く力」という言葉が使われていますが、ロシアの主張にも耳を傾ける必要があります。
ウクライナで問題が発生したのは2022年になってではありません。
1991年に独立したウクライナは独立してまだ31年しか経過していない歴史の非常に浅い国です。
ウクライナはかつてのソ連邦を構成する一つの共和国でした。
この時代の国境線には大きな意味がありませんでした。
ソ連邦の一つの地域に過ぎず、国境線は便宜的に定められていたに過ぎません。
そのウクライナは特異な特性を有していました。
西北部に居住する住民と南東部に居住する住民に大きな相違が存在しているのです。
西北部はウクライナ人、カソリック、ウクライナ語を基本属性とします。
南東部はロシア人、ロシア正教、ロシア語を基本属性とします。
この属性の相違が存在することがウクライナの大きな特徴になっています。
このことについて、元米国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏は次のように指摘しました。
「この国で一方の地域が他の一方の地域を支配しようとすれば必ず分裂か戦争になる」
このような特性をウクライナが保持していることを踏まえることが必要です。

ウクライナでは当初、親ロシア政権が樹立されましたが、2004年と2014年に親ロシア政権が反ロシア政権に差し替えられる政変が生じています。
いずれも、米国が地下工作を展開して親ロシア政権を反ロシア政権に差し替えたものでした。
とりわけ、2014年の政変は暴力行為を伴う野蛮な政権転覆でした。
その内実を知る手がかりを与えてくれているのがオリバーストーン監督の『ウクライナ・オン・ファイヤー』というドキュメンタリー映画です。https://bit.ly/3jCZfPX 
ウクライナ問題について考察する際に、この映画を視聴し、問題の背景を知ることは必須であると思います。

2013年11月21日から2014年2月22日にかけて発生したウクライナにおける市民運動は、当初は平和的活動でしたが、途上から暴力行為がエスカレートし、14年2月22日にはデモ隊とウクライナ警官が多数狙撃される暴力革命騒乱に転じました。
この暴力化を工作したのが米国および米国と連携するウクライナネオナチ勢力でした。
ウクライナの親ロシア政権は米国が画策した暴力革命によって破壊されました。
この暴力革命によって創設された新政府=非合法政府がウクライナ東部のロシア系住民に対する弾圧、人権侵害行為を断行したのです。
ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク地域のロシア系住民が抵抗して、ウクライナ東部で内戦が発生しました。

この内戦を収束するために2015年にミンスク合意が締結され、国連安保理で決議されました。東部2地域に高度の自治権を付与することにより、内戦を収束することが取り決められました。
ウクライナのゼレンスキー政権がミンスク合意を誠実に履行していればウクライナの戦乱は発生していません。
ところが、ゼレンスキー大統領はミンスク合意を一方的に破棄する行動を加速し、ロシアとの軍事対決路線を鮮明にしたのです。その延長線上でウクライナ戦乱が勃発したのです。
このような経緯を踏まえたときに、ウクライナがロシアを軍事的に撃破することを応援することが正しい対応と言えるのでしょうか。
私たちが求めるべきゴールは平和と安定です。メディアが主導するウクライナによる戦乱拡大路線に洗脳されることなく、平和と安定を確保するための方策を日本国民が提唱することが求められていると思います。
                 (後 略)

ミンスク合意は西側がキエフ政権の戦力を増強するための時間稼ぎだと元仏大統領
                         櫻井ジャーナル 2023.01.01
 アンゲラ・メルケル元独首相 はツァイト誌のインタビューで、「ミンスク合意」はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと口にしたが、その発言を事実だとフランソワ・オランド元仏大統領 は語っている。メルケルが首相を務めたのは2005年11月から21年12月まで、オランドが大統領を務めたのは2012年5月から17年5月まで。ふたりとも「ミンスク合意」の当事者だ。
 ミンスク合意の目的は停戦の実現にあるとされていた。ドイツとフランスが調停役になり、ウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)が起草、この3者のほかドネツクとルガンスクの代表が2014年9月、協定書に署名している。この合意をキエフのクーデター政権が守らないため、2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印された。

 結局、これも守られなかったのだが、ドイツやフランスもこの合意で戦争を集結させるつもりはなかったことをメルケルとオランドは確認したわけだ。当時からこの「合意」はクーデター体制の戦力を増強するための時間稼ぎにすぎないと言われていたが、この推測は正しかった。

 このクーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権にほかならない。2013年11月にウクライナでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すためにクーデターを始動させ、翌年の2月に目的を達成した。その際、混乱を話し合いで解決しようとしたEUについて国務次官補だったビクトリア・ヌランドはウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。アメリカ政府は暴力でヤヌコビッチ政権を倒そうと決めていたのだ。オバマ政権はウクライナ征服を暴力で実現するときめていたと言える。
 このクーデターに反対するドンバスの住民は立ち上がり、軍事衝突に発展する。オバマ政権を後ろ盾とするネオ・ナチのクーデター政権はドンバスの反クーデター軍を制圧する力がなく、クーデター体制の軍事力を強めるためには時間が必要だった。そのためのミンスク合意だ。

 この現実をロシアのウラジミル・プーチン政権は理解したようで、新たな軍事作戦の準備を進め、近いうちに作戦を開始するはずだ。アメリカ/NATOはロシア軍の戦車部隊による攻撃を想定、応戦の準備をしているようだが、それをロシア軍はミサイル攻撃などで破壊している。

 アメリカの統合参謀本部はロシアとの戦争を望んでいない。2003年のイラクへの先制攻撃以来、アメリカの戦争には大義がなく無謀だと考えているようだ。ウクライナでの戦争も同じように考えている。NATOの内部でもロシアとの戦争に反対する国が少なくないようだ。その戦争がヨーロッパを破滅させることは確実で、正常な思考の持ち主なら反対するだろう。 

中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める(田中宇氏)

 米国が唯一の覇権国としての地位を維持できているのは、圧倒的な軍事力と経済力によるものですが、人為的に計画された「ペトロダラー」体制のお蔭も大きいと言われています。

 米国は71年にドルを「非兌換券」化し変動相場制に移行しました。73年にオイルショックが起きると米英とサウジアラビアが結託して、石油取引の決済をドルのみに限定する体制を作りました。それはドルを権威づけるものですが、同時に大量に発行されるドル「紙幣」を米国に回収するルートでもありました。
 中国の習近平が12月初めにサウジアラビアを訪問して、アラブ諸国全体との関係を強化したと見られましたが、その際にサウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子との間で、サウジがこれまで輸出原油のすべてを米ドル建てで売っていたのをやめて、輸出原油の多くを人民元建てで、中国とその傘下の諸国に売る新体制に移行する話が行われたということです。
 そしてアラブなど30カ国の首脳陣がサウジに結集し習近平と会っているので、UAEやクウェートなどペルシャ湾岸のアラブ産油国の全体が、ドル建てで米国側(米欧など)に売る石油を減らし、人民元建てで中国やその他の非米諸国に売る石油を増やすことを決めたと見られています。
 この転換は数年とか10年がかりになるようですが、そうなれば米国の権威(に加えて実利)は大いに失墜することになります。日本は西欧中心の視点しかなくてその他の勢力については「第三世界」などと軽視していますが、世界はこの先大きく変わります(岸田首相のNATO第一主義には驚くしかありませんが、どこから見ても正当性は有りません)。
 フリーの国際情勢解説者田中宇氏の記事を紹介します。
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中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める
                 田中宇の国際ニュース解説 2022年12月30日
この記事は「中露が誘う中東の非米化」の続きです。

前回の記事で、中国の習近平が12月初めにサウジアラビアを訪問して、アラブ諸国の全体との関係を強化した話を書いた。その後わかったのだが、習近平とサウジのMbS皇太子は、世界経済を根底からひっくり返すような内容の取り決めを結んでいた。それは、サウジがこれまで輸出原油のすべてを米ドル建てで売っていたのをやめて、輸出原油の多くを人民元建てで、中国とその傘下の諸国に売る新体制に移行する話だった。 (Inflation, Recession, & Declining US Hegemony)

習近平のサウジ訪問に合わせてアラブなど30カ国の首脳陣がサウジに結集し、習近平と会っている。サウジだけでなく、UAEやクウェートなどペルシャ湾岸のアラブ産油国の全体が、ドル建てで米国側(米欧など)に売る石油を減らし、人民元建てで中国やその他の非米諸国に売る石油を増やすことを決めたと考えられる。ドルの基軸性は多方面で低下しているので、この転換は不可逆的なものだが、転換に要する期間は数年とか10年がかりとかになりそうだ。

サウジアラビアは1974年以来、ドル建てだけで原油を輸出してきた。米国は戦後の財政放蕩の結果、終戦時にブレトンウッズで決めた金本位制を守れなくなり、1971年の金ドル交換停止(ニクソンショック)で金本位制を放棄してドルの安値と信用失墜が加速した。1974年の米サウジ協定は、失墜したドルの威信を取り戻すためのもので、サウジが原油をドル建てのみで売ることによって、ドルは石油の貴重さと結びついた通貨(ペトロダラー)の地位を確保し、見返りに米国はサウジを軍事的に守る安全保障を確立した。このペトロダラー体制と、その後1980年代以降の債券金融システムの急拡大により、ドルは強い覇権・基軸通貨の地位を取り戻した。 (The New Cold War Has Begun)

だが米国は、2001年の911テロ事件以降、事実上サウジにテロ支援国家の濡れ衣を着せるなど、サウジを困らせることを連続してやり続けた。米国は、2003年にイラクを侵攻・占領して失敗し、イラクをスンニ派支配の国からシーア派(イラン)支配の国に転換してしまったり、2011年からはシリア内戦を起こして失敗し、この地域でのサウジの影響力を低下させた。同じ2011年には、米国がエジプトなどで「アラブの春」を誘発し、エジプトをサウジ傘下のムバラク政権からサウジの敵であるムスリム同胞団の政権に転換してしまった。2015年にはイエメン戦争を起こしてサウジを泥沼のイエメン占領に陥れた。 (やがてイスラム主義の国になるエジプト)

(911テロ事件はサウジ人らの仕業でなく、米諜報界の自作自演の可能性が高い。侵攻される前のイラクのサダム・フセイン政権は、米国から制裁されていなかったら同じスンニ派としてサウジともっと仲良くできた。イエメン戦争は、イエメンに駐留していた米軍が突然撤退することで引き起こし、サウジはイエメンで泥沼の内戦介入に追い込まれた) (米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ)

米国はイランに核兵器開発の濡れ衣を着せて敵視し続けたので、対米従属のサウジもイランを敵視せざるを得ず、米国の中東覇権が低下するほどイランが台頭し、サウジは不利になって馬鹿をみている。これらの米国による中東政策の失敗の連続は、サウジに対する「意図的な嫌がらせ」とも感じられる。サウジ王政は、911直後には米国に着せられた濡れ衣を黙認していたが、2015年に若いMbS(=ムハンマド・ビン・サルマーン)皇太子が独裁的な実権を握った後、米国から離反する傾向を強めた。中東の覇権は、自滅的に失敗し続けた米国から、イランやシリアなどに味方して優勢になった中露に移っていき、サウジも米国から離れた分、中露との戦略関係を強化した。(サウジアラビアの自滅)

米国の中東覇権が低下しても、ペトロダラー体制は現在まで維持されてきた。サウジは、すでに中国に対して原油を人民元建てで売っているふしがあるが、公式な話になっていないのでペトロダラー体制は崩れていない。だが、今年初めにウクライナ戦争が起こり、欧米がロシアから石油ガスなど資源類を買わない対露制裁を開始し、中国など非米諸国がロシア側について、世界の資源類の利権の大半が中露・非米側に行き、G7諸国など米国側が持っているのは金融バブルだけという状況になるとともに、MbSのサウジは勝ち組になるため、非米側に入る傾向を一気に強めた。 (産油国の非米化)

そして今回の習近平のサウジ訪問で、サウジは石油輸出の中心的な通貨をドルから人民元に切り替えていくことを決めた。50年に及ぶペトロダラーの歴史が終わり、ペトロユアン(=オイル人民元)体制に転換していく流れが始まった。 (Suddenly Everyone Is Hunting for Alternatives to the US Dollar)

サウジの石油輸出量は日産700万バレル台で、中国の石油輸入量は日産1000万バレル超だから、中国だけでサウジの石油を全部買い占めることができる。そうでなく、中国はサウジの輸出石油の全量を人民建てで買い上げ、その輸入枠の一部を一帯一路やその他の非米諸国の転売することもできる。サウジ以外の産油諸国(多くが非米側)やロシアなどOPEC+が丸ごとこのペトロユアン体制に参加し、非米側の全体が人民元建てで石油を輸出入するようになりうる。

世界の石油利権の大半は非米側にある。先進諸国も、OPEC+から石油を輸入しようと思ったら、ドルでなく人民元を用意せねばならなくなる。世界の石油は、中国側に買い占められていく。米欧が、この流れを阻止するためにサウジと中国を経済制裁すると、米欧が買える石油がなくなってしまう。ウクライナ戦争の対露制裁でロシアからの石油ガス輸入を止めたので、欧米とくに欧州が買える石油ガスが足りなくなっているが、それと同じことがもっと大きな規模でこれから起きる。(Escobar: Xi Of Arabia & The PetroYuan Drive)

米国側のマスコミは、習近平がサウジ訪問時にペトロユアン体制を作りたいと表明したことを報道しつつも、それが実現するはずがない、ペトロダラー・米覇権体制が揺らぐはずがない、習近平が猛言しているだけだと「解説」している。だが私から見ると、米覇権に対する超楽観論で猛言しているのはマスコミの方だ。ウクライナ開戦後に対露制裁としてロシアからの石油ガス輸入を止めた 欧州はとても困窮している。欧州の困窮を見るだけで、ロシアだけでなくサウジ(や他のOPEC諸国)の石油までもが米国側に来なくなったらどんなに困るか、簡単に想像がつく。(米英覇権を潰す闘いに入ったロシア)

世界はウクライナ戦争開始後、米国傀儡のG7など先進諸国と、米国の言うことを聞かない傾向を強める非米諸国との分裂が一気に強まった。世界のトップ20の産油国のうち、米国側は米加ノルウェー英の4か国しかない。4か国の合計で産油量はトップ20全体の28%、埋蔵量では15%を占めるに過ぎない。残りは非米側だ。米国は、産油量で世界の20%近くを占めてダントツの世界一だが、国内消費が多いので他の先進諸国に輸出できる分は大したことない。米国側の主な原油輸出国として加米英蘭豪があるが、この5か国の合計で、世界の原油輸出総量のうち18%を輸出しているに過ぎない。産油量、埋蔵量、輸出量とも、非米側が世界の70-85%を占めている。米国側と非米側の分裂が明確化・長期化するほど、米国以外の米国側諸国はエネルギー不足が深刻化する。これがウクライナ戦争の最大の意味である。 (資源の非米側が金融の米国側に勝つ)

中国がサウジ(などOPEC)を誘って人民元建てで石油を輸入するペトロユアン体制を具現化し始めたら、日韓ASEANなどアジアの(なんちゃって)米国側諸国は、非公式にペトロユアン体制に入り、中国から許しを受けてサウジから元建てで石油を輸出し続けるだろう。「なんちゃって諸国」はすでに米国側の対露制裁を隠然と無視してロシアから石油ガスを輸入し続けている。中国やサウジは「元建て」にこだわっているのでなく「失策と圧政だらけの米国の世界支配をやめさせるためにドル建てをやめること」にこだわっている。だから中国が了承すれば、日本は円建てでサウジやOPECから石油を輸入できるようになるし、韓国はウォン建てで、インドはルピー建てで輸入できる。サウジは外貨準備を多様化したいので歓迎だ。この体制下で、中国とインドの対立も解消されていく。なんちゃっての隠然非米化・非ドル化がどんどん広がる。  (The Era Of Cheap Oil Has Come To An End)

これからの日本は中国やサウジやロシアに媚を売らないとエネルギーを売ってもらえなくなる。だが、マスコミはそのような状況を全く報じず、むしろ逆に、中露やサウジを独裁だ残虐だと酷評してボロクソに報じている。酷評して今だけ気持ちいいかもしれないが、これからとても困るのだということを無視している。大馬鹿である。マスコミ権威筋が無視するので、非米化は隠然と進む。

03- 22年:アメリカ覇権の終焉を告げた年(マスコミに載らない海外記事)

 日本の政府は言うに及ばずマスコミや言論界にとって、米国はあたかも神聖にして冒すべからざる存在であるかのようです。実際に米国は第二次世界大戦後世界に対して覇権国家として君臨してきました。

 日本は米国に服従する点において極端でしたが、米国は日本に対してだけでなく、そうした服従を世界中の国々に要求しているのでした。
 ブログ:「マスコミに載らない海外記事」が「2022年:アメリカ覇権の終焉を告げた年」とする記事を出しました。
 2022年に勃発した最大の出来事はロシアのウクライナ侵攻で、いまもその真っただ中にあります。バイデンはロシアにウクライナ侵攻をさせるうえで決定的な役割を果たしましたが、米国の関与は決してその時点だけではなく、そこに至る入念な仕掛けに一貫して関わってきたのでした。
 その米国がやがて覇権を失うのは歴史の必然でしょうが、それは決して簡単なことではなく、多分その後もNATOのリーダーとして西欧における火種として長く君臨し続けるように思われます。
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2022年:アメリカ覇権の終焉を告げた年
               マスコミに載らない海外記事 2022年12月31日
           論説 Strategic Culture Foundation 2022年12月30日
                                              
 この一年ウクライナでの戦争で持ちきりだった。エネルギーや食料品の急騰する価格や他のグローバル危機はウクライナでの紛争の副次的被害だ。
 この紛争はヨーロッパの中心でロシアの戸口に局地化されたキーウの反動反ロシア政権が関与しているだけのものではない。この紛争はアメリカとそれが率いるNATO軍事同盟の同盟諸国とロシア間の歴史的対決だ。この対決が起きるのはとうの昔から分かっていた。
 それはこうした猛烈な法外な形で起きなくともよかった。
 ロシアは長年アメリカとNATO同盟諸国にロシア国境への同盟拡大は不適切で戦略的安全保障上の脅威だと警告していた。モスクワのこの警告は長年見過ごされてきた。
 ほぼ一年前ロシアは以前受け入れられていた「個別の安全保障」の原則に基づいた包括的安全保障条約を主張して紛争を避けるため最後の外交的方法を提示した。この外交構想はワシントンとヨーロッパ同盟諸国に即座に却下された。
 ネオナチを奉じるキーウ政権のそれ以上の軍国化は許容できないとモスクワは繰り返し警告していた。南東ウクライナのロシア語話者の人々に対する8年間の低強度戦争は終わらせなければならなかった。NATOによるウクライナ軍国化と、同盟候補としてもてはやされることはロシアにとって超えてはならない一線だった。その一線を越えると決めたのはアメリカとNATO加盟諸国だった。その場合軍事措置をとるとロシア大統領ウラジーミル・プーチンは誓っていた。2月24日に始まったキーウ政権の軍事的無力化はその結果だった。

 起きているのはNATOとロシア間の準戦争だ。ウクライナはNATOの武器弾薬であふれていた。攻撃はロシア内深く行われ、ロシア指導部を暗殺し、モスクワに政権交代を要求するという欧米政治家や評論家連中の無謀なむかつくような話がある。
 ウクライナはアメリカが長年抱き続けたロシアを攻撃する帝国計画を放つ機会だったのは明白だ。ロシアの自然な富はワシントンの世界覇権野心で皆欲しがるものだ。ウクライナでの戦争はワシントンに部分的利益をもたらした。ヨーロッパはこれまで以上にアメリカ指導に従属させられた。ガスと兵器のヨーロッパへの販売は激しく揺れるアメリカ資本主義経済に役立った。第二次世界大戦の直後にNATO創設者が構想した通り、アメリカが入り込み、ロシアを締め出し、ドイツ人(ヨーロッパ人)は抑え込まれたのだ。
 アメリカ/西欧とソ連/ロシア間の地政学関係は長い間緊張緩和のエピソードによって中断されていたと尊敬される碩学の故スティーヴン・F・コーエンが最後の著書「War with Russia? (ロシアとの戦争?)」で指摘した。
 1930年代、アメリカが最終的にソ連の主権を認めるのに同意して緊張緩和があった。その緊張緩和はナチスドイツを破るため便宜的同盟を生み出した。だが第三帝国が征服されるとすぐアメリカと同盟国イギリスは即座に冷戦として知られる敵意の新時代に移行した。
 1960年代ジョン・F・ケネディ大統領任期中に核戦争による相互確実破壊の恐れに起因し緊張緩和が再開した。その後数十年にわたりいくつか画期的軍縮協定が交渉された。
 だが1991年ソ連崩壊後、アメリカはロシア連邦に対し素早く新たに帝国の尊大さと軽蔑方針をとった。唯一の超大国と完全支配という傲慢な概念が定着した。
 先の約束にもかかわらずアメリカとアメリカ軍の手先NATOは容赦なく、30年間にわたり加盟国を2倍以上にしてロシア国境を侵害した。ロシアを標的にする軍事演習や、ヨーロッパ中に新しいミサイル施設を設置し、軍縮協定を破棄し、意図的に旧ソ連共和諸国を取り込みは全て一つのことの兆しだった。ロシアは数十年前ナチスドイツが目的を実現できなかった形で征服されするはずだった。
 アメリカがモスクワに対して緊張緩和したりやめたりという手口は常に身勝手な便宜的ゲームだった。冷戦が終わったとされた後、尊重する必要があったロシアはもはや大国ではないというのがワシントンの体系的見方になった。ロシアは征服の標的だった。
 だが問題があった。ロシアは言う通りに屈服するのを拒否した。モスクワは戦略的安全保障を主張し、アメリカの野心を受け入れるのを拒否した。テロリスト代理人を使うアメリカ主導の政権転覆戦争から同盟国シリアを守る2015年末のロシア軍事介入は大胆な示威行動だった。
 戦争を解決する外交をモスクワが懸命に求めた時があった。だがワシントンはゼロサムで、勝者総取りという世界支配の野心は執念深く飽くことを知らないというのが今の認識だ。ワシントンとアメリカのうぬぼれが強いメディアはナルシシズムと美徳のふりが得意だ。彼らが「ルールに基づく世界秩序」について語る時、実際には常にうぬぼれて温和とされるアメリカ覇権下での本当の完全支配を意味するのだ。
 要するに、国はアメリカ帝国の権益に奉仕する属国か、攻撃と究極的には破壊の標的に定められる敵になるかのいずれかだ。
 戦略的権益の擁護にロシアが固執したことがアメリカ権力の愛想良い仮面の下の醜い顔を暴露した。それは単なる一年の終わりではなくアメリカ帝国とされるものの傲慢さの世紀の終焉だ。アメリカ権力の独善さは暴露された。世界の国々に対するワシントンの要求は服従だ。それは常にそうだったが、目には見えない形のものだった。
 アメリカ権力の極悪非道な本性はロシアと中国との益々狂乱する関係で、むき出しの野蛮さが今や明らかに見えている。
 ウクライナの砂の中のロシア戦線はアメリカ権力を下から支える暴力を曝した。その権力は国連憲章に基づく世界では持続不可能で不適格だ。ウクライナでの紛争は岐路だ。第二次世界大戦の灰の中、国際連合で構想されたような国際法と平等な関係に基づく多極世界が出現するか、あるいはワシントン帝国主義者のゼロサム覇権のため世界が戦争を運命づけられているかのいずれかだ。
 ロシアや中国や益々多くの国々は国際法に基づく平等な関係の多極世界を求めている。アメリカは例外的特権という幻想的概念を抱く、これまで以上に自称至上主義政権であることが暴露された状態だ。その主流政治条件の下のアメリカは多極世界にとどまれず、またそれを好まない。平和な関係の世界はワシントンにとって基本的に忌み嫌うものなのだ。それ故その戦争挑発の実績は史上他のどの国と比較しても傑出している。

 ウクライナでのロシアの抵抗は世界の戦争屋の正体をあばいた。その傲然とした姿勢はアメリカ覇権とされるものの終焉を告げている。
記事原文のurl:https://strategic-culture.org/news/2022/12/30/2022-the-year-that-marked-end-of-america-hegemony/

2023年1月1日日曜日

新年のご挨拶

 新年おめでとうございます

 昨年は多くの皆様にご訪問いただきましてありがとうございました

 今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます

                  2023 年 元旦