2023年1月4日水曜日

04- 藤倉善郎 × 鈴木エイト どうなる旧統一教会… 宗教法人解散か延命か

 日刊ゲンダイに藤倉喜朗氏と鈴木エイト氏の対談が載りました。藤倉氏はニュースサイト「やや日刊カルト新聞」総裁09年に創刊)でカルト問題を20年以上にわたって取材しています。目下マスコミで引っ張りだこの鈴木エイト氏は同紙の副代表・主筆を務めています。

 「被害者救済新法」は何とも物足りずに残念な結果になりました。対談の冒頭でエイト氏は「ドロボーがドロボーを規制する法律を作ったようなもの」と述べ、藤倉氏も「ドロボーがドロボーに『配慮してね』じゃあねえ」と応じています。
 また「岸田首相は何かと菅前首相に助言を求めていますが、安倍さんと並ぶ元凶です」(鈴木氏)という発言も出ています。安倍政権・菅政権のツートップが統一協会と深く関わっていた訳で、これでは自民党が協会に深く浸食されるのは当たり前のことです。
  ⇒(11月1日)山際前大臣と統一教会の黒幕は菅義偉氏 江田憲司氏が体験を語る
 以下に紹介します。
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藤倉善郎×鈴木エイト どうなる旧統一教会…宗教法人解散か延命か、他の団体への波及は?
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 安倍元首相銃撃事件は日本列島の隅々にまで激震を走らせた。青天の霹靂によって、反社会的な性質が再びあらわになった統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は宗教法人の解散に追い込まれるのか。その流れは似たり寄ったりの集団に波及するのか。カルトをめぐる問題を粘り強く追及してきた「やや日刊カルト新聞」の2トップはどう見る?
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【藤 倉】 臨時国会で成立したいわゆる「被害者救済新法」は物足りない内容でしたね
【エイト】 ドロボーがドロボーを規制する法律を作ったようなものですから。
【藤 倉】 野党はマインドコントロール下にある人に対する勧誘行為を確実に規制できるよう「配慮義務」を禁止規定として明記するよう求めましたが、政府・与党にはね返された。ドロボーがドロボーに「配慮してね」じゃあねえ。ただ、スピード審議の中でも原案に多少は修正が加えられ、まとまったのは良かった。
【エイト】 統一教会問題は法整備で一件落着、自民党と教団の癒着の究明はなし崩しでオシマイ。これが政府・与党のシナリオでしょうが、そうさせるわけにはいかない

■あちこちで妨害工作、宗務課の警戒
【藤 倉】 次のフェーズは宗教法人格の剥奪。文化庁の宗務課には解散命令の請求までしっかり持っていってほしい。約20.5万人が賛同したオンライン署名を提出した時の宗務課長とのやりとりでは、「やるぞ」という雰囲気が感じられましたよね。
【エイト】 「ちゃんとやる」という意思は感じられました。今後の流れで言うと、宗教法人法に基づく質問権の再行使が12月14日になされ、回答期限は1月6日。教団が弁明する機会をそこで一区切りとするのなら、解散命令の請求は最短で1月末、あるいは2月あたり。宗務課は教団からの妨害を非常に警戒していてフロアマップの記載を消し、容易に担当者が分からないようにしています。
【藤 倉】 統一教会もかなり抵抗するでしょう。オウム真理教の場合は解散命令の申し立てから確定まで7カ月でしたが、教団は最高裁に特別抗告して対抗した。
【エイト】 統一教会側が国や地方議会に嘆願書や陳情書を送り、「解散命令請求はしないでほしい」「私たちは反社会的団体ではない」などと訴えている
【藤 倉】 関係者とおぼしき人物が統一教会を批判的に報じるメディアを非難し、放送免許取り消しを求めるオンライン署名活動をやったり、テレビ局やコメンテーターを名誉毀損で提訴したり。

火の粉を恐れるカルト団体の弥縫策
【エイト】 2世信者の小川さゆりさん(仮名)は会見の際に中止を求める両親の署名入りファクスを送り付けられただけでなく、ツイッター上でも攻撃を受けています。本来のカルト性が随所に見える。内部文書の「0810対策」を入手したんですよ。通称「エイト対策」。僕らの取材への対応がまとめてある。
【藤 倉】 「エイト」なら8の後の10いらないじゃない。「ト」まで入れているんだ。
【エイト】 「笑顔でエイトと仲良さそうな写真を撮らせる」「巻き込む」とか、細かいシチュエーションが書いてあってメッチャ面白いですよ。メッコール(関連企業が販売する炭酸飲料)をくれたのも巻き込む作戦だったのかも。教団は「カルトは差別語」とか「カルトという言葉自体がヘイトスピーチ」と盛んに主張していますけど、河野消費者担当相が「私の個人的な認識は、カルトに該当するというものだった」と国会答弁した。統一教会をハッキリとカルト呼ばわりした河野大臣を教団は訴えるのか。展開を期待しちゃいます。
【藤 倉】 (献金被害対策の)法整備に集中する時期は過ぎたので、改めて政治家と統一教会の関わりをしっかり追及していかないと
【エイト】 更迭された山際前経済再生相なんかは小物。岸田首相は何かと菅前首相に助言を求めていますが、安倍さんと並ぶ元凶です。仰ぐんじゃなくて、スガスガしく追及してほしい。火ダルマの統一教会を眺めながら、他のカルトはうまく立ち回ろうとしている。いろいろな宗教団体が火の粉が飛んでこないように与党執行部に陳情しているとか。
【藤 倉】 それは創価学会に限らず?
【エイト】 伝統宗教も含め、ですね。
【藤 倉】 通常営業か、おとなしくするか。それぞれですよね。例えば、統一教会と同様に正体隠しの勧誘をする浄土真宗親鸞会。公共施設を借りて仏教講座を開き、参加者を引き込むのですが、その手口をいまなお継続している。一方、幸福の科学はこのところ静か。銃撃事件発生から3日後、安倍さんの霊が大川隆法総裁のもとに降りてきたそうです。
【エイト】 ネットで〈「安倍元首相の霊言」を公開!〉と告知していましたよね。
【藤 倉】 大川さんの口を通じて、安倍さんの霊がいろいろなお話をされたそうなんです。通常はその映像を収録して全国の教団施設で上映し、書籍化するパターンなんですが、今回は霊言公開を告知した途端に炎上して、数時間後には告知そのものを削除しちゃった。どうやらお蔵入りしたみたい。
【エイト】 あの日以来、安倍さんの肉声を聞く機会は失われているのに……。
【藤 倉】 まあ、肉声じゃないですけどね。騒ぎ以降、霊言を発表していない。
【エイト】 霊言でいうと、統一教会との激しいバトルもあった。
【藤 倉】 2010年でした。映像によると、大川さんが統一教会教祖の文鮮明氏の霊を降ろした。これが地獄にいるクモであるかのような設定で。文氏の霊が降りた大川さんはポーン、ポーンとクモの糸を飛ばしていて……。存命中の教祖をバカにされた統一教会は幸福の科学に抗議文を送り付け、幸福の科学が応酬し、かなりやり合ってましたね。
【エイト】 振り返ってみると、銃撃事件発生前のカルト的な動きでいったら、国政進出をうかがっていた参政党の方がよほど危険視されていた。
【藤 倉】 反LGBTや夫婦別姓反対といった保守的政治運動を推し進めているのは、統一教会だけじゃない。自民党を支える日本会議や神道政治連盟もそう。参政党が分かりやすい例ですが、陰謀論とかスピリチュアル含みの新たな政治運動はデフォルト(⇒基本点)が右派なんですよ。
【エイト】 僕もそこはキッチリ取材したいと思ってるんですけど。
【藤 倉】 参政党は「小麦はダメ」「水銀中毒になる」などと主張しているんですが、その理由はユダヤ国際金融資本に支配されたGHQが持ち込んだ小麦は日本の食文化にはなじみがないからというもの。言うまでもなく、小麦は戦前どころか、はるか昔から食べられていますし、うどん県の香川県民や粉物大好き大阪府民は怒るべきところ。トンデモな偽科学的、オカルト的陰謀論を口にする人たちは「伝統的な日本文化を守ろう」というフレーズで、どういうわけか保守方面を目指す。統一教会もそうした要素のひとつと意識した方がいい。
【エイト】 統一教会問題を利用しようという動きもある。
【藤 倉】 9月に統一教会本部(東京都渋谷区)が数百人に包囲されたでしょう。
【エイト】 「統一教会も創価学会も源流はユダヤでCIAだ!」とか口走る陰謀論集団に。
【藤 倉】 呼びかけたのは、政治団体「つばさの党」の黒川敦彦代表(NHK党幹事長)。反ワクチンとかの陰謀論者を寄せ集めて「新しい国民の運動」と名付け、1月中旬に公明党本部(東京都新宿区)も包囲するとか。統一教会は関連団体を通じた政界工作だけでなく、市民運動として集会やシンポジウムを開いたり、ビラを配ったりして浸透を図ってきましたけど、それをもっとヤバくしたようなものが蔓延しつつある。そういう点でも、統一教会問題は政治家との関係はもちろん、運動そのものをしっかりと総括しないと危ない。
【エイト】 山上徹也容疑者がいよいよ起訴され、公判が始まれば、本人の証言も出てくる。犯行前のツイートなどを含め、劇場型の事件。統一教会問題をますます多方面から見ていかなきゃいけない。
【藤 倉】 山上証言を切り取って「教団も2世問題も関係ない」「逆恨み」という声が強まるかもしれない。ですが、山上容疑者を生きづらくさせた統一教会はケシカラン、という話じゃない。カルト問題の中の2世問題を語る当事者の証言などによって、教団の反社会性は浮き彫りになっている。山上容疑者に左右されることじゃないでしょう。

藤倉善郎(ふじくら・よしろう) 1974年、東京都生まれ。カルト問題を20年以上にわたり取材。2009年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、総裁就任。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島SUGOI文庫)、「徹底検証 日本の右傾化」(共著、筑摩選書、塚田穂高編著)など。

鈴木エイト(すずき・えいと) 1968年、滋賀県生まれ。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」の副代表、主筆を歴任。近著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)の発行部数は75万部突破。2人が出演する新春恒例の「カルト新年会」(阿佐ケ谷ロフトA)を1月4日に開催予定