2012年10月10日水曜日

いっそ普天間飛行場を閉鎖すれば +


 9日付の毎日新聞に、「普天間飛行場をなくしても日米関係が壊れることはない」とする、元外務省国際情報局長の孫崎享氏がベストセラー「戦後史の正体」の中で行っている主張が、肯定的に紹介されました。 

「発信箱」コーナーの署名記事とはいえ、このように堂々と、「アメリカにすべての面で従属する必要はない」、とする記事が大手紙に載るのは極めて珍しいことです。
「アメリカとの同盟が揺らいだ結果、今日の尖閣列島を巡る日中間の騒動がもたらされた」、と主張する安倍自民総裁をはじめとする国内のアメリカ信奉者たちは、いつになったらアメリカ絶対視の「くびき」(=盲従)から離脱できるのでしょうか。 

孫崎氏はツィッターでも精力的に発信していて、注目されています。すべて歴史的事実を列挙することによるアメリカ批判なので、同氏の主張には説得力があります。
例えば106日には、「尖閣諸島:尖閣問題の重要な側面。『米国が日中間にくい込ませた楔』と題して、次のように述べています(要旨、一部省略)。
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19716月、国務省スポークスマンは尖閣諸島の『施政権』は日本に返還されるが『主権』の帰属については中立の立場をとるという態度を明らかに。

19723月、福田外相は、国会で“現在施政権を行使している米国が中立的な 立場をとることを正式に表明すれば、米国政府に対し厳重に抗議する”との意向を明らかに。
当時の)佐藤首相も、記者会見で米国の態度に強い不満。牛場駐米大使()グリーン国務次官補に会見し、尖閣諸島の帰属問題に関する日本の見解の支持を求めたが、同次官補は従来の米政府の中立の立場を繰り返す。何故米国この対応か。 

これについて)原喜美恵著『サンフランシスコ平和条約の盲点』(には次のように書かれている)。
1969年ニクソン政権は中国との関係正常化を外交の最優先課題に挙げて発足。その優先すべき中国政策を尖閣というちっぽけな島のために台無しにする気はなかった。
米国の尖閣諸島に対する政策については、 日中間、沖縄近辺に、係争地あれば、米軍駐留はより正当化(されるという位置づけ)。

尖閣問題は、時代の文脈に合わせて『最も好ましい結果を生じさせるためのインセンティブ(=動機づけ)と懲罰との組み合わせを作り出す』のに使い得る。
『沖縄返還時に 尖閣列島という楔が日本と中国の間に固定された』 」。 

手先で動いたのは前原と石原。そして国民は踊らされ熱狂している。
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ここで前原・石原の両氏を挙げているのは、①かつて尖閣諸島付近で中国漁船を拿捕した際に、国交相であった前原氏が直ちに「日中間の尖閣列島問題の棚上げ合意は正しくない」と、長年日中間で原則となっていた合意事項を否定して、突然日中間に「尖閣列島問題」を浮上させたことが、②そして石原氏が今年4月に、ワシントン市のヘリテージ財団で講演した際に、都が尖閣の土地を買収する計画を唐突に表明したことが、それぞれ今回の事態の発端になっていることを指していると思われます。 

 以下に毎日新聞の記事を紹介します。  



10/13 「中立 の裏に米国の打算」を追加

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「日米同盟が壊れる」の呪縛
毎日新聞 発信箱大治朋子※ 20121009
  外信部
 発売2カ月で20万部というベストセラー「戦後史の正体」を出版した元外務省国際情報局長の孫崎享さんと、あるシンポジウムでお目にかかった。
 「オープンにされている情報をしっかり見ることが大事です」。孫崎さんが強調していたポイントだ。例えば外交問題。歴史や事実関係を十分理解しておかなければ、意味のある議論はできない、と。 

 その孫崎さんが著書の中でも触れているのが沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題だ。米軍の求める通り名護市辺野古に移転すべきだと主張する人は、拒絶すれば「日米関係が壊れる」という。しかし日本には他にも多数の米軍基地があり、その「全体の価値は海外にある米軍基地の約30%」を占める。しかも「日本は基地の受け入れ国として半分以上の経費の負担」をしているから、普天間飛行場がなくなっても日米関係が壊れるものではないのだと。 

 景気の低迷が続く米国では、防衛予算も今後10年で約38兆円も削減しなければならない。中国をけん制するためにも、基地とカネを十分に提供してくれる日本の存在は、今まで以上に重要だ。米国は今後、さらなる同盟強化やそれに伴う負担を求めて来るかもしれないが、国益を第一に考える米国から見れば、ごく当たり前の手続きにすぎない。 

 問題は日本がそれをどう受け止めるか。沖縄にこれ以上負担を強いると米軍とのあつれきが高まり、かえって日米同盟を揺るがしかねない。米国の台所事情が苦しい今は、むしろ交渉をより優位に運べる時期だと見るべきだろう。普天間飛行場の移設など課題は多い。「米国の言う通りにしなければ日米同盟が壊れる」。そんな感覚にとらわれていては、外交にたけた米国とは対等になれない。
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(10/13 追加)
「中立」 の裏に米国の打算 (部分)
朝日新聞 「風」 立野純二※ 201210月8日
※アメリカ総局長

米国の真意はどこにあるのだろう。米中央情報局(CIA)の1971年の極秘報告書は、日本の尖閣領有権の主張には理があると認めていた。しかし、その後度重なる検討の末、尖閣の帰属先は明記されなかったという。 ……

「日本が対ソ交渉で、4島のうち2島返還へ動こうとした際ダレス国務長官は、ならば米国も沖縄を返さないと迫り、日本の対ソ接近を阻んだとされる。そんな歴史を振り返れば、尖閣・竹島・北方領土問題は、冷戦下の米国のアジア戦略から生まれた同根の問題に見えてくる。つまり反米陣営に染まりかねない近隣国と日本の間に領土問題を残し、米国が日本に足場を残し続ける構造を築いた」 との原貴美枝カナダ・ウォータル大学教授は分析している。折々の思惑を巡らせてきた米外交は、「中立」 の仮面に下にうつろう大国の打算に見える。