2012年10月8日月曜日

いま、福島医大で何が進められているのか


・・・山下教授は「100ミリシーベルトまで浴びても大丈夫。戸を開けていいし、洗濯物も外に干していい。子どもを外で遊ばしてもいい」って。
そのころ村人は本当にそうして、子どもは外で遊んでいたんですよ。
国の方針として、「飯舘村は避難させない」というのがあったということでしょう。
最終的には、IAEAから「ダメだ」と言われて、そこも計画的避難区域になったけど、既に遅かったのです。
だから、自分たちがいま話しているのは、「飯舘住民は、あの高放射線のところで、研究材料にされたんだ」って。そう言ってますよ。 ・・・ 

これはブログ「クマのプーさん」2012104日 に掲載された、元飯館村在住の安斎さんの手記の一部です。( http://blog.livedoor.jp/amaki_fan/  

 最初に出てくる山下教授とは、福島県知事の招きを受けて県立福島医科大学の副学長 兼 同県放射線健康リスクアドバイザーに就任した山下俊一氏のことで、同氏は県民には「100ミリシーベルトまで被曝しても大丈夫」、「放射線の影響は、にこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」と話す一方で、福島医大の内部では「この大学は将来、放射線障害に関する知見において世界一の大学になる」と語った人として知られています。 

 その福島医大を中心にして、今どんなことが進められているのでしょうか。 

◇全ゲノム解析、抗ガン剤の開発、周産期・小児医療の拠点化(小児用ICUなど)・・
※全ゲノム解析=遺伝情報解析調査。究極の個人情報に当たるという指摘と、被曝による遺伝子への影響の解析は、理論的に出来ないという批判があります。
※周産期医学=妊娠28週から出産後7日までの期間。この時期は、胎児・新生児や母体に障害が起こりやすいので、障害が起こったときに迅速に対応できるように、産科と小児科が協力して、母児ともに総合的に管理し分娩を迎える医療体制。 

見出しに掲げた項目は、すべてガンなどの放射線障害を念頭にしたものです。
これからガンが増える、病気になる子どもが増える、出産に於いても異常が起きる・・・それらに対する対策であり、国も山下俊一氏も、最初からこうなることは分かっていたことでした。
かつて「奇形児の発生率があがる」と語った日本生態系協会のメンバーが批判されましたが、真実を語ることが批判されるのは筋違いです。そうなる事態を放置した行政や、被曝を「奨励」した医師らこそが批判を受けるべきです。 

特に、福島医科大学が新たに抗ガン剤開発のセンターになることに対しては、工学倫理の武田邦彦教授は、「懸命に被曝を避けさせようとしたのなら構わないが、被曝を勧めておきながらそんなことをするのは、自分で火傷を奨励しておいて、今度は火傷の薬を売り出すに等しいことだ」と批判しています。

新薬開発のセンターを福島に置く理由は、そこであれば将来新薬の被験者が容易に確保できるからに他なりません。
小児ICU室にしても、果たして需要に対応できるだけの数が想定されているのでしょうか。研究は出来るけれども治療にはとても対応できないという規模ではないでしょうか。
予算の問題は当然あるでしょう。しかし、災害復旧費の昨年度分の余り6兆円のうちから、1兆円が『特別会計』に繰り入れられて、役人たちの自由に使える金に替えられたことが明らかにされ、批判されました。そうしたことを考えれば、予算を口実にして必要なことを行わないことは許されません。 

 ところで地元紙は、これらのニュースをみな好意的に伝えています。それはいまとなっては、少しでも体制が整うことが望まれるので、当然のことと思われます。
以下に関連の記事を紹介します。
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福島で「全ゲノム解析」 被曝調査で環境相表明
産経新聞 2012831 

 細野豪志環境相は30日、東京電力福島第1原発事故の被曝による遺伝子への影響を調べるため、来年度から福島県民を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」に着手する考えを明らかにした。
 福島県立医大(福島市)で開いた私的懇談会の終了後、記者団に述べた。

 細野環境相は「政府としてしっかりと(福島に)向き合っていく。遺伝子の調査はすぐに不安の解消にはつながらないかもしれないが、人間の根源的な遺伝子を調べることで将来への予防になる」と語った。環境省は子どもを中心に調べる方針。
 細野環境相は県民健康管理調査や放射線の研究に加え、周産期※・小児医療の拠点として福島県立医大が設立を構想している新しいセンターについて来年度予算の概算要求に61億円を盛り込む考えも明らかにした。
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10月にも福島に研究拠点 抗がん剤開発
福島民報 2012930 

東京電力福島第1原発事故を受け、福島県と福島医大が取り組む創薬研究事業の全容が29日、明らかになった。
複数の薬品メーカーと連携し、研究費用を抑えて抗がん剤の新薬を開発する。10月中にも福島市中心部に暫定的な研究拠点を設け、遺伝子解析などの専門家ら約40人を常駐させる。

研究で得た基礎データを薬品メーカーに提供し、新薬開発を加速させて、関連企業の集積と雇用創出を目指す。創薬研究事業では全国の大学、研究機関から専門家を確保し、遺伝子やタンパク質解析など新薬開発の基礎研究に取り組む。
がん発症の要因となる遺伝子を究明する一方、副作用を生じさせず、がんの進行を抑える成分を突き止める。

創薬研究の拠点は、平成27年度までに福島医大敷地内に建設される予定だ。研究を急ぐため、福島市中心市街地にある民間ビルに暫定の拠点を設ける。
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「子ども ICU」初設置 福島医大、整備の医療センターに
福島民友ニュース 2012103
 

県と福島医大は、同大に小児医療の拠点として整備する「こども医療センター(仮称)」に、子ども専用の集中治療室(ICU)を県内で初めて設置し、専門医の確保と、救命を含めた小児医療の高度化を図る方針を固めた。 

東京電力福島第1原発事故による放射能汚染で高まった子どもたちの健康不安を解消する狙いがある。同大によると、子ども専用のICUは、通常のICUの小児版で、大けがや緊急を要する脳の病気など、高度医療が必要な疾患に対応できる設備とする。

これまで、県内各地域の病院で治療を受けていた重篤な患者も受け入れられる。
高度医療を提供するには医師や看護師ら医療スタッフの確保が必要になるが、同大は、小児医療の講座と同医療センターなどを連携させ、医師の技術向上を図るなど人材育成を進める。県内全域で不足が続く小児科医の確保にもつなげる考え。