宇都宮大の「福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト」グループが行った園児の保護者アンケートで、栃木県の北部では91%の人たちが放射能の影響を心配していること、そしてその一方で県北部では放射能の心配を話しにくいムードにあることが分かりました。
以前にも福島県では、放射線を避けるために一時他所に避難していた学童が、教室に戻ると教師から叱責されたり、マスクをして通学すると非難されるというような、他所では想像もできないような雰囲気であることが伝えられました。
国、県が「放射線は心配しなくて良い」というムードを先導している中で、被曝の惧れを感じながら居住している人たちに被曝の軽減や回避を許さないという、救いのない雰囲気が醸成されているわけです。
下野新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
放射能、9割が「心配」育児で那須塩原の保護者 宇大プロジェクト調査
下野新聞2012年10月14日
福島第1原発事故後、育児に気になること、心配なことがある-。那須塩原市の幼児を持つ保護者の94%がこう考えていることが13日、宇都宮大の「福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト」のアンケートで分かった。同日、同大で開かれた報告会で公表した。同プロジェクトは、事故から時間が経過し「放射能の影響を心配し続けることへの疲れも見られる」と分析した。
アンケートは7月、同市内の幼稚園と保育園各1カ所の協力を得て園児がいる461世帯を対象に実施し、回収率は53%だった。
「気になること、心配なこと」の内訳(複数回答)をみると、91%が「放射線の影響」、82%が「食べ物や飲料」、52%が「外遊びやプール遊びの是非」を挙げた。
懸念が「ある」との回答が大半を占めたことについて、同プロジェクトの清水奈名子准教授は「県北では保護者に心配する気持ちが強いことが分かるが、そんな実情を他地域ではあまり知られていない」と、意識の地域間格差を指摘した。
「県民は隠れた被災者」 宇大プロジェクトで市民団体報告
下野新聞2012年10月14日
宇都宮大の「福島乳幼児・妊産婦支援プロジェクト」が13日、同大で開いた報告会は、福島第1原発の隣県で放射能被害を受けているのに見過ごされがちな本県民を「隠れた被災者」と位置付け、光を当てた。独自の活動に取り組む二つの市民団体が草の根の除染活動などを発表。問題とどう向き合うか、参加した市民や学生ら約110人と議論を深めた。
同プロジェクトの清水奈名子准教授は報告会で「放射能の悪影響を心配する人は多いが、県北では問題を話しにくいムードがある」と指摘。原発事故後、地域の学校が「これまで通りで支障ない」との前提で運営されていることや、観光や農業の風評被害への懸念が背景にあり、そのことが被災者の姿を見えにくくしているという。「不安を持つ人が孤立しかねない。自由な議論が大切」と強調した。
那須町を中心に放射線量測定や除染などに取り組むNPO法人「那須希望の砦」。大笹貴靖事務局長は環境省を訪れた際の担当者らの対応を踏まえ、「地域の現状に対する(同省側の)認識は薄い」。国費を使い本県で実施できる除染メニューが、福島県とは大きく見劣りする原発隣県の「苦境」を訴えた。