帝国ホテルで26日、日経新聞社と米戦略国際問題研究所(CSIS)の共催によるシンポジウムが開かれました。このシンポジウムは米政府高官として東アジアの安全保障や日米同盟にかかわった外交・安全保障の専門家を講師として招き、内外の情勢の中で「日本がとるべき針路」について議論するもので、2004年に始まり今年が第9回目です。
講師は、アメリカ側がリチャード・アーミテージ(元米国務副長官)、カート・キャンベル(米国務次官補)、マイケル・グリーン(同研究所上級副所長/アジア・日本部長)、ジョセフ・ナイ(ハーバード大学教授)他で、日本側は玄葉光一郎(外相)、前原誠司(国家戦略相)、石破茂(自民党幹事長)、林芳正(元防衛大臣) ※他でした。
※これらアメリカ側メンバーは、しばしば「ジャパン ハンドラーズ(日本の操縦者たち)」と呼ばれます。日本側メンバーは彼らから覚えの目出度い人たちで、毎回ほぼ固定されているようです。アメリカの主要メンバーは野田首相とも会談を行っています。
CSISはこの8月15日にも、アーミテージとナイを主筆とする「対日政策提言」(第3次アーミテージ・ナイ報告)を発表しました。これは3年ぶり3回目の提言で、アメリカ信奉者にとってはバイブルにも当たるものだそうです。現に読売新聞などは翌々日17日の社説でその内容を紹介しました。CSISのもつ「威力」の程が知らされます。
今回のシンポジウムもそれを基調としていて、集団的自衛権の行使、原子力政策の継続、日米同盟の強化、TPPへの積極参加等々が、「上意下達」に擬せられる形で確認されたようです。
27日、28日付のしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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集団的自衛権行使で足並み 民・自幹部 日米共同シンポで
しんぶん赤旗2012年10月27日
玄葉光一郎外相、自民党の石破茂幹事長らが26日、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使へそろって前のめりの姿勢を示しました。都内で開かれた日本経済新聞と米戦略国際問題研究所(CSIS)の共同主催によるシンポジウムでの発言です。
玄葉外相は特別講演で、「私は集団的自衛権(の行使)について強い問題意識を持っている。まずはわが国自身がどのように主体的に防衛力を整備するかが大事」と発言。今年4月に野田佳彦首相が訪米しオバマ米大統領と共同声明を出したことに触れ、「日米同盟の中でわが国がさらなる役割と責任を果たす。弾道ミサイル、宇宙、サイバー、海洋など幅広い分野で安保協力を強化する」と強調し、共同訓練、共同の警戒監視・偵察活動、施設の共同使用を含む日米の「動的防衛協力」を急ぐとしました。
石破氏も特別講演し、「軍隊の規定のない日本国憲法は独立国の憲法とは言えない」と憲法を攻撃。そのうえで、「5年、10年で憲法改正を必ずやる自信はないが、それまでいまのままでいいとは思わない。自民党は、次の総選挙で国家安全保障基本法案を国民の前に提示し審判を仰ぐ。そのポイントは集団的自衛権の行使を可能にする条文を持っていることだ」と述べ、“立法改憲”で集団的自衛権の行使を可能にする意思を明らかにしました。
シンポには前原誠司国家戦略担当相、自民党の林芳正元防衛相も参加。米側からはキャンベル国務次官補、アーミテージ元国務副長官らが参加しパネル討論しました。
日米共同シンポ 異様な光景 玄葉外相、米から口頭試問?
しんぶん赤旗 2012年10月28日
「第3次アーミテージ・ナイ両氏の提言に感謝する。日本の真の友人の提言であり真摯に受け止める」
こう述べる玄葉光一郎外相の前には、米国のカート・キャンベル国務次官補、リチャード・アーミテージ元国務副長官、ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授、ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長らが座り、壇上を見上げます。日本政府の重要閣僚が米政府の高官らから口頭試問を受けるような異様な光景です。
26日に東京都内で開かれた日本経済新聞とCSISの共催によるシンポジウムでのことです。
8月に発表された第3次アーミテージ・ナイ報告は、野田佳彦首相の原発再稼働を称賛するとともに、原発政策の継続・推進を要求。TPP(環太平洋連携協定)への参加促進やシーレーン防衛への関与の継続、集団的自衛権の禁止の見直しなどを求めています。
この日のパネル討論で、ナイ氏は「原発ゼロは受け入れがたい」とし、アーミテージ氏は「(集団的自衛権に関する)憲法の再解釈は非常に重要だ」などと発言。キャンベル氏は「TPPは通商関係を抜本的に変える」として日本の参加に期待を表明しました。
これに対し玄葉氏は「集団的自衛権行使に強い問題意識を持っている」「日米の安保協力の強化を進める」などと次々と「誓約」を表明しました。自民党の石破茂幹事長も登壇し、国家安全保障基本法案で集団的自衛権の行使を可能にするとし、日本版海兵隊の整備を主張。日米同盟の変革と強化にあらゆる努力をすると述べました。
二大政党と国民との矛盾の根本に、日米同盟が横たわる姿をまざまざとみせつけました。(寅)