2017年2月2日木曜日

02- 安倍首相はトランプ大統領には何も言えない

 トランプ氏の入国禁止令をめぐって各国の首脳はそれぞれの見解を表明していますが、安倍首相は全く口をつぐんでいます。国会でそのことを問われると、アメリカの内政事項なのでコメントは差し控えると答えました。
 とはいえ、古くはベトナム人のボートピープルに始まって現在のシリア難民に至るまで、彼らが祖国に居られなくなった殆どのケースにおいて、その原因を作ったのはアメリカでした。そうであれば入国禁止令はやはり身勝手というそしりを免れず、当然一言あってしかるべきです。
 
 安倍首相はアメリカに対しては一方的に奥床しい(というよりも卑屈な)態度を示し続けていますが、そうであればなおさら日本のことに対しても、もしもトランプ氏から強引な要求があれば断固はねつけるべきです。
 来る10日の日米首脳会談では日本に対し日米FTAをはじめとする厳しい要求が出されるのは必至ですが、それをただ受け入れるなどということがあってはなりません。
 当然キチンと反論して国益を守るべきなのですが、LITERAは「この調子では、安倍がトランプの要求にほとんど抵抗せず、丸呑みしてしまう可能性はかなり高い」と、警告を発しています。
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トランプの入国禁止令めぐり安倍首相が“米国のポチ”ぶり全開!
首脳会談後に起きる恐怖のシナリオ
LITERA 2017年2月1日
 世界中から非難を浴びているトランプ大統領の発した“入国禁止令”。しかし、この問題は、日本政府、そして安倍首相がいかに対米従属の“ポチ”であるかをさらけ出すものとなった。何しろ、国会で大統領令についての認識を質された安倍首相はこんな答えを返すことしかしなかったのだ。
「これは米国のいわば大統領令としての米政府の考え方を示したものであろうと思います。それについて、私がこの場でコメントする立場にはございません
 
 改めて言うまでもないが、トランプがイスラム教圏の7カ国の出身者の入国禁止や難民受け入れ凍結の大統領令に署名したことは、法の下の平等や信仰の自由を著しく侵害する暴挙としかいいようのないものだ。
 しかも、それは現実的な政策としてもまったく整合性を欠いている。今回、入国禁止の対象としたのは、イラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの7カ国だが、1975年以降、米国人が殺害されたテロ事件の犯人に、これらの国の出身者は1人もいない
 
 一方、9.11テロの実行犯の出身国であるサウジアラビアや、トルコ、UAE、エジプトなどは、入国禁止対象から外れている。これは、サウジのホテル事業、トルコのトランプタワーなど、トランプがこれらの国でビジネスを展開しているからだ。ようするに、テロ防止といいながら、トランプの個人的な好み、利害関係で排除する国を決めているだけなのである。
 しかも、ここにきて、トランプの排外政策が逆にテロを誘発するケースが出てきた。現地時間1月29日夜、カナダ・ケベックのモスクで6人が殺害される銃乱射テロが起きたが、地元紙「グローブ・アンド・メール」によると、この容疑者はトランプ米大統領とフランスの極右政党・国民戦線のルペン党首に傾倒していた疑いがあるというのだ。フランスとカナダの二重国籍の白人男子大学生である容疑者は、市民活動家の間で “ネット上のアラシ”(online troll)として知られた存在で、とりわけイスラム教徒のケベックへの移民を攻撃対象にしていた。そして、難民を非難したり、ルペンやトランプの支持を表明していたという。
 
 いずれにしても、トランプの入国禁止措置や難民受け入れ凍結の大統領令はテロの防止どころか、逆に、人々の排斥感情や極右思想を正当化させ、民族主義的・差別主義的意識によるテロリズムを誘発するものだ。同盟国といえども、いや、同盟国だからこそこの間違った政策をきちんと諌め、撤回を提言すべきだろう。
 
 実際、各国の首脳からは批判が相次いでいる。たとえばドイツのメルケル首相は「テロとの戦いは、人を出身や信仰でひとくくりにして疑うことを正当化しないと確信している」としてトランプへの拒絶感を明確にし、フランスのオランド大統領は先月28日の電話会談で「難民保護の原則を無視すれば世界の民主主義を守ることが困難になる」と直接批判。カナダのトルドー首相は「迫害やテロ、戦争から逃れてきた方々へ、カナダ人はあなたの信仰にかかわらず歓迎します。多様性は私たちの強みです」とツイートし、大統領令の影響でアメリカに入国できない人たちの一時的なカナダ滞在を許可する方針を打ち出した。
 ところが、安倍首相は前述のように、この大統領令に対し言及を避け、「コメントする立場にない」「コメントすることは差し控えたい」などと逃げまわっているのだ。まさに「アメリカ様の言うことにはさからえない」というポチ体質丸出し。よくもまあこれで「戦後レジームからの脱却」などといえたものである
 
 安倍とトランプは今月10日に会談が予定されており、その際に在日米軍の駐留費用負担増や米国に二国間の通商協定を要求してくると予想されている。この調子では、安倍がトランプの要求にほとんど抵抗せず、丸呑みしてしまう可能性はかなり高い。排外主義政策についても、安倍首相はもともとトランプと共通する反民主主義・ヘイト志向をもっており、むしろ嬉々として追従するだろう。
 しかも、恐ろしいのは、日本の社会にはその動きを抑止する力がほとんどなくなってしまっていることだ。
 
 米国はたしかにトランプという狂犬を大統領にしてしまったが、一方では、言論の自由も三権分立も機能している。メディアや国民は一斉に批判の声をあげ、企業の経営者たちも「われわれが支持する政策ではない」(Apple社CEOティム・クック)などとメッセージを発し、懸念を表明。ニューヨークの米連邦地裁は、空港で拘束されたイラク人男性2名の解放などを求めた訴訟に関して、有効なビザ保有者や入国を法的に認められた個人についての強制送還の停止を命じる決定を下した。また15の州と首都ワシントンの司法長官が連名で「違憲で違法」とする共同声明を出し、ワシントンは連邦裁判所に提訴することを明らかにした。
 さらに、国務省内部でも「この禁止令は目的を達せず、逆効果になる」「イスラム圏の大半や指定7カ国との関係が直ちに悪化する」とする大統領令への抗議文書が回覧され、広い支持を集めている。
 
 しかし、いまの日本の状況を見ていると、仮に、安倍首相がトランプの要求に応じて在日米軍駐留費用の全額負担を決め、難民受け入れ拒否などの排外政策に追従したとしても、メディアでこんな批判が巻き起こるとは思えないし、権力内部でこうしたバランスが働くこともありえないだろう。
 むしろ、新聞・テレビからトランプ批判は一切姿を消し、「アメリカに守ってもらうためには駐留経費負担はやむをえない」という論調が大勢を占め、裁判所は政権の決定を後押しする判決を連発する。そして、人種差別やヘイトがいま以上に広がり、最後は、安倍首相とトランプの引き起こす戦争に国を挙げて一気になだれこんでいくのではないか。そんな気がしてならないのだ。
 
 トランプはたしかに危険だ。しかし、私たちはトランプを恐れる前に、それ以上に危険なものを自国の中に抱え込んでいることを自覚する必要がある。(宮島みつや)