2017年2月12日日曜日

12- 憲法を蹂躙し自衛隊員を危険にさらす稲田防衛相 PKO日報問題 

 10日、国会前では、南スーダンへの自衛隊PKO派遣の撤退を求める抗議行動が行われ、約500人が参加しました。新聞社やテレビ局の取材陣も数多く詰めかけました。
 南スーダンの自衛隊日報昨年7月の大規模な交戦を「戦闘」と明記していたにもかかわらず、稲田防衛相は頑として「衝突」と言い換えてきただけでなく、「戦闘」としなかったのは「憲法9条上の問題になるから」と平然と言いのけたことに対する国民の抗議です。
 
 防衛省廃棄したとして情報開示をしなかった南スーダンPKOの陸上自衛隊派遣部隊の日報が、後に統合幕僚監部が保管していたとして開示されましたが、その間の事情はきわめて不明朗で隠蔽しようとしたものと言われても仕方がありません。
 そして河野太郎議員の請求で開示された日報には各所に「戦闘」の表記るにもかかわらず、稲田防衛相は野党からの追及に対して、「法的な意味での”戦闘行為”ではなく”武力衝突”である」と強調しました。そして何としても憲法9条に抵触することを避けたいとして、あからさまに「9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とまで述べています。
 率直と言えばこれ以上はないほどそうですが、同時にそれはゴマカシを白状するものに他なりません。
 
 そのことを指摘するいくつかの新聞社説の抜粋・要約版と冒頭の抗議行動に関連したLITERAの記事を紹介します。
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(朝日新聞社説) PKO日報 国民に隠された「戦闘」 2017年2月9日
 政府は「戦闘行為」について「国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、または物を破壊する行為」と定義する。こうした「戦闘」が起きていると認めれば、憲法やPKO参加5原則に抵触し、自衛隊はPKOからの撤退を迫られる。
 そのため「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」(8日衆院予算委 稲田防衛相)と述べているが、それは派遣継続ありきでそのために「戦闘」と認めないものである。
 
東京新聞社説  PKO日報開示 「戦闘」認め、撤収検討を 2017年2月10日
 南スーダンの首都ジュバ自衛隊派遣の前提とするPKO五原則の要件を満たしているとは言い難い状況だ。にもかかわらず、稲田防衛相は「法的な意味における戦闘行為ではない」と答弁した。自衛隊派遣継続のための詭弁ではないか。
 安倍晋三首相は自衛隊員に死傷者などの犠牲が出た場合辞任の覚悟を持たなければいけないと語ったが、より重要なことは死傷者を出さないために何をすべきかである。直ちに撤収を検討すべきである。
 
しんぶん赤旗主張)南スーダン陸自日報「戦闘」隠し派兵を続けるのか 
                                              2017年2月10日
 安倍晋三政権は当時、「散発的な発砲」だと偽り続けたが、16年7月11日~13日の日報を見ると極めて深刻な事態で、それを安倍政権が、「戦闘」ではなく「発砲事案」だとか「衝突」だとごまかしてきた責任は極めて重大。国会で追及された稲田防衛相は、日報の「戦闘」という表現は「法的な意味の戦闘行為ではない」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と居直ったが到底通用しない。
もしも「駆け付け警護」の新任務を付与された陸自部隊が政府軍に武器を使用すれば、日本政府の解釈からも違憲の武力行使となる。稲田防衛相をはじめ安倍政権の責任が厳しく問われ
 
(新潟日報社説)  PKO日報 隠蔽とのそしり免れない 2017年2月10日
 稲田防衛相は、南スーダンで一般市民を殺傷する行為はあったが、国際的な武力紛争の一環としてのものではなく、法的な意味での「戦闘行為」ではないと強調した。
 さらには「(戦闘行為が)仮に行われたとすれば、憲法9条の問題になる。9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」とも述べている。
 忘れてならないのは、どんな言葉を使おうとも隊員が危険な状況に置かれていたという事実だ。南スーダンは危険な状態が続いているとみられている。撤退も考えるべきではないか。
 
琉球新報社説) 防衛相の資質 9条形骸化は許されない 2017年2月11日
 南スーダンの状況をなぜ「戦闘」と認めないのか。
 稲田防衛相は、「法的な意味での戦闘行為はない」と繰り返している。稲田氏は戦闘ではなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法9条の問題」になるのを避けるためと説明した。
 言葉の置き換えによって事実を隠蔽(いんぺい)することは、憲法9条の歯止めの形骸化にほかならない。閣僚による憲法順守義務違反だ。自衛隊員のリスクも軽視しており、防衛相としての資質を大いに疑う。
 安倍政権はこれまでも安保関連法を「平和安全法制」、共謀罪法案は「テロ等準備罪」と言い換えた。昨年12月に名護市安部で発生したMV22オスプレイ墜落は「不時着」と説明した。かつて日本軍の退却を「転進」、全滅を「玉砕」と美化した大本営発表と重なる。不都合な事態を隠すために、言い換えで印象操作する手法は、全体主義にもつながる。
 
 
憲法を蹂躙し、自衛隊員の命を危険にさらす稲田防衛相、安倍政権に
国会前で抗議デモ! テレビはトランプ一色だが…
LITERA 2017.02.11.
「稲田朋美は大臣辞めろ!」「安倍晋三も一緒に辞めろ!」「安保法制いますぐやめろ!」「自衛隊の命を守れ!」
 
 寒空の下、国会前に響き渡るコール。 昨日10日、国会前では、南スーダンへの自衛隊PKO派遣の撤退を求める抗議行動がおこなわれた。主催者発表によると、その数は500人。新聞社やテレビ局の取材陣も数多く詰めかけた。
 もちろん、今回の抗議の発端となったのは、南スーダンの自衛隊による日報において、昨年7月の大規模な交戦を「戦闘」と明記していたにもかかわらず、稲田朋美防衛相は頑として「衝突」と言い換えてきただけでなく、「戦闘」としなかったのは「憲法9条上の問題になるから」と平然と言いのけたことだ。
 
 稲田防衛相の発言は、南スーダンへのPKO派遣が「憲法に反する」状態にあることを認めた上で、「憲法に反していても、言葉を言い換えれば憲法違反にならない」と言い張る、とんでもないものだ。稲田防衛相は法曹家であるにもかかわらず、憲法99条によって自らに課せられた「憲法を尊重し擁護する義務」などはなから無視しているのである。
 違憲状態にあることを自ら認めながら、「それがどうした」と言わんばかりの態度。それは、稲田防衛相が「憲法違反で何が悪い」「9条があるから悪いんだ」と考えているからこそ出てくるものだ。
 
 しかも、稲田防衛相と歩調を合わせるように、自衛隊トップである河野克俊統合幕僚長は「(「戦闘」という言葉を)よく意味を理解して使うように(隊員に)指示した」と言い、実質上、「戦闘」という言葉を使うなと “規制” した。南スーダンでは今後、さらに状況が激化することが国連の調査などで予測されているが、これでは現地の隊員が事実を伝えることはできなくなってしまうだろう。つまり、稲田防衛相や安倍首相をはじめとする為政者たちの「言葉遊び」によって、自衛隊員の命を危険に晒し続けているのである。
 
 改憲するまでもなく、もはや憲法は意のままにできる──。この思い上がりも甚だしい稲田防衛相に対し、国会前には思い思いのプラカードを掲げた市民が集結。大きな主催団体があったわけでもなく、急遽SNSでアナウンスされた抗議活動だったが、大勢の人びとが「憲法を守れ!」と声を上げたのだ。
 
 今回の抗議行動に参加し、スピーチをおこなった中野晃一上智大学教授は、どんな法案も強行採決で押し通してしまう政治は「手強い」と指摘。監督義務者である国民によって退陣に追い込む必要を訴えると同時に、詰めかけた取材陣に向かって「マスコミも監督義務者」「マスコミには責任がある。遠慮している場合ではないですよ」と促した。
 
「言葉を壊すな」。市民による抗議では、こんなコールも飛び出した。言葉によって事実をねじ曲げていく政権の暴走と、言葉を選び、当たり前の批判もできないマスコミ。だからこそ、失望して見て見ぬ振りをすることはもうできない。もうこの国は、「戦争」を「事変」と言い換えた、あの時代まで巻き戻っているのだから。(編集部)