2017年2月24日金曜日

南スーダンは危険 PKO5原則は崩れている と公述人

 いま国会で、7月の南スーダンにおける戦闘の様子を伝えた現地自衛隊からの日報が、一時「廃棄された」として情報開示に応じなかった問題が追及されています。
 その中で稲田防衛相は、国会の質疑応答で「国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、”戦闘”ではなくて一般的な意味で”武力衝突”という言葉を使っている」と、何の説明にもならないことを平然と口にしています。安倍首相をはじめとしてそれに連なる閣僚たちも、何故答えになっていない答えを平然と口にするのでしょうか。いまや国会の品格も地に落ちました。
 
 21日、衆院予算委員会で行われた中央公聴会で、日本国際ボランティアセンターの今井高樹氏が南スーダンの深刻な実情について陳述し、政府の説明とは裏腹に既にPKO5原則は崩壊していると述べましたまた稲田氏の「武力衝突」への言い換えは「言葉遊びのようなものだ」と批判しました。確かにそういうしかありません。
 そして日本がやるべきことは、自衛隊による 「駆け付け警護」や宿営地防護ではなく憲法9条をもつ国として、紛争当事者間での話し合いの場をつくる、和解の手助けをすることだと述べました
 自衛隊は一刻も早く南スーダンから撤退すべきです。
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陸自派兵地「最も不安定」南スーダン 深刻 公述人「PKO5原則崩れる」
衆院予算委 中央公聴会
しんぶん赤旗 2017年2月22日
 衆院予算委員会は21日、2017年度予算案に関する中央公聴会を開きました。予算案について公述人の小田川義和・全労連議長らが意見を陳述するとともに、自衛隊がPKO(国連平和維持活動)に派兵されている南スーダンの深刻な実情について日本国際ボランティアセンター(JVC)の今井高樹氏が陳述しました。
 
 今井氏は、自衛隊が活動する避難民保護施設の周辺地が「ジュバの中でも最も不安定な、何かしらの衝突が起こっても全く不思議ではない場所だ」と指摘。施設内に避難する元副大統領のマシャール氏の出身部族に対し、政府軍が襲撃を繰り返していると話し、「日本政府は『ジュバは落ち着いている』というが、(停戦合意の成立などを派兵の要件とした)PKO5原則は崩れている」と強調しました。
 
 国会審議で紛糾する南スーダンPKOの陸上自衛隊部隊の日報をめぐり、「戦闘」という言葉を稲田朋美防衛相が「武力衝突」と言い換えたことに対し、今井氏は「言葉遊びのようなものだ」と批判。「現地からみれば、みなさん自分の家族を亡くし、あるいは家を追われ、いまも避難生活を続けている。多くの方が亡くなった。国会でどう表現しようと現場で起きていることは変わらない」と訴えました。
 
 日本共産党の宮本徹議員は、日本政府が昨年12月、国連安全保障理事会での南スーダンへの武器輸出禁止の制裁決議案に棄権し、廃案に追い込んだことに対する見解を尋ねました。今井氏は、「実際に戦闘が起こっている中では(武器禁輸は)何よりも重要だ」とするとともに、正規輸入ルート以外に周辺国から武器が流入する現状も指摘。「(禁輸だけではなく)どうやって和解を達成していくかが重要だ」と述べました。
 
 
日本に敵対感情も 日本国際ボランティアセンター  今井 高樹氏
 (「衆院予算委員会 中央公聴会」 しんぶん赤旗 2017年2月22日より転載)
 
 昨年7月の南スーダンの首都での大きな戦闘以降、被災・避難民のために緊急人道支援活動を行っています。国民の約3人に1人が避難生活を送り、半数が深刻な食糧不足です。民族間の対立、報復と憎悪の連鎖が広がっています。国連も警告するように、まさに紛争状態にあると認識します。
 
 この2週間の間に、キール政権の労働大臣と軍の司令官が辞任しました。大統領のディンカ族を中心に他の民族を排斥していると抗議を表明したのです。こうした政治的な混乱のなか、軍の内部分裂や住民の暴動、それに対する虐殺が起きる可能性は少なくありません。自衛隊が (安保法制=戦争法に基づく) 「駆け付け警護」や宿営地防護をすれば、紛争に巻き込まれて戦闘当事者になり、日本に対する大きな敵対感情が巻き起こるでしょう。
 仮に私たちが拘束された場合には、決して武力ではなく、現実的には話し合いで解決する方がよほど安全です。また、かつて南スーダンのPKO部隊の一部が反政府勢力に拘束されましたが、交渉によって収まりました。
 
 日本に何ができるのか。それは決して自衛隊派遣ではなく、憲法9条をもつ国として、紛争当事者間での話し合いの場をつくる、和解の手助けをすることです。PKOは必ずしも軍だけではなく、文民警察もあります。行政機構や法律を整備する部門に派遣するなど、日本は大きな貢献ができるはずです。
 目の前で苦しんでいる人たちへの人道支援は大きな課題です。そして安倍晋三首相は(国会審議で)、現地で頑張っているNGOの方を見捨てていいのかという話をしました。しかし、日本の外務省は日本のNGOスタッフを南スーダンに入りにくくしている現状があります。日本のNGOは外務省から助成金を受け取ると、南スーダンへの渡航を規制されます。そのために日本に入ってくる南スーダンの情報も非常に限られているのです。
 政府や民間、研究者がいろんな情報を集めて、初めて現地に対して正しい判断ができます。ぜひ再考をしていただきたいと思います。