2017年2月23日木曜日

23- 「テロ等準備罪」= 共謀罪 には何の歯止めもない

 政府は「テロ等準備罪」と名前を改めた共謀罪を3月に入ると提出する予定です。共謀罪は国民の思想や内心を取り締まる憲法違反の法案で、実際に犯罪行為を行わなくても処罰できるという日本の刑法の大原則を覆すものです。
 政府は「一般人は対象にしていない」としきりに弁解していますが、その一方で「犯罪を犯す集団に一変した場合」には当然処罰の対象になるともしました。その「犯罪を犯す集団に一変した」という判断は警察や検察が行う訳なので、結局は警察や検察の裁量でいくらでも一般人を処罰の対象にすることが可能となります。政府の説明は何の歯止めにもなっていません(しんぶん赤旗)。
 また、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受けて、政府は新た「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と適用範囲を限定する説明もしています。しかしその「準備行為」について、条文で「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定する方針だということです。
 限定を行う条文の中に「その他」の文言が入ってしまえば、それによっていくらでも拡大解釈ができるので何の限定にもなりません(東京新聞)。
 
 かくして「テロ等準備罪」=共謀罪は、何の限定も課されていない旧来通りの法案であるということです。政府は弁解できるのでしょうか。
 かつて安保法案がそうであったように共謀罪もまた憲法違反の問題山積のシロモノです。国民の自由を国家権力で蹂躙する治安維持法の再来と言われる所以です。
 
 しんぶん赤旗の主張「共謀罪の導入 危険浮き彫り 法案提出やめよ」と東京新聞の記事:「共謀罪拡大解釈の懸念 準備行為、条文に”その他”」および「かっちの言い分」を紹介します。
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主張「共謀罪」の導入 危険浮き彫り 法案提出やめよ
しんぶん赤旗 2017年2月22日
 捜査機関が「犯罪を計画・話し合った」とみなせば実行しなくても処罰できる「共謀罪」法案の危険性が、国会審議の中でさらに浮き彫りになっています。安倍晋三政権は盛んに「一般の人は対象にならない」と繰り返してきたのに、法務省は一般人が対象にされる余地がある見解を明らかにし、新たな問題となっています。「テロ対策に必要」との説明についても金田勝年法相らは、その根拠をまともに語れません。国民の思想や内心を取り締まる憲法違反の法案の深刻な矛盾は明らかです。共謀罪法案の閣議決定・国会提出は、きっぱり断念すべきです。
 
捜査機関の解釈次第で
 共謀罪は、まだ起きていない「犯罪」について、2人以上で話し合い「合意する」ことが犯罪に問われるというものです。実際に起きた犯罪行為を罰するとした日本の刑法の大原則を踏みにじるとともに、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とした憲法19条に反する危険な内容です。共謀罪法案は過去3回国会に提出されましたが、国民の批判の高まりで、3度とも廃案に追い込まれた経過があります。
 
 国会に4度目の提出を狙う安倍政権は、「共謀罪」ではなく「テロ等準備罪」だとか、一般人は対象外だ、と説明してきました。
 その“根拠”に挙げていたのが、取り締まる対象は「組織的犯罪集団」に限るということです。ところが先週、法務省は「正当に活動する団体」でも「犯罪を行う団体に一変したと認められる場合」には処罰の対象との見解を示しました。「一変した」との判断は、捜査機関に事実上ゆだねられるとみられます。捜査機関の解釈や裁量で、労働組合や市民団体でも対象にされかねません。首相も、国会で法務省の見解を正当化しました。今回の法案が、「一般人は対象にならない」どころか、歯止めのない危険がいよいよ際立つばかりです。
 
 共謀罪をテロ対策に必要だとする根拠の一つにしている「国際組織犯罪防止(TOC)条約」締結のためという理由も説得力を失っています。TOC条約のもともとの主眼は、マフィアなどによる経済犯罪を念頭にしたものであり、過去には南野(のおの)知恵子法相(当時)もその立場から答弁していました。当時の説明との食い違いを衆院予算委員会で追及された金田法相は、しどろもどろの答えしかできません。
 
 これまでの議論の経過を無視して、「テロ対策だ」「東京五輪が開けない」などと国民を欺いて、なにがなんでも共謀罪を押し通そうという安倍政権に大義も道理もないことは明らかです。
 
「質問封じ」法相は辞任を
 自らの答弁不能を棚に上げ、“法案が国会に出されるまで質問するな”とする文書を作成した金田法相の責任は重大です。批判を浴びて文書は撤回しましたが、その後も金田氏は、共謀罪の肝心な部分で質問を受けると「法案ができたら説明する」と繰り返すばかりで、まともに審議する態度ではありません。国会審議を無視し、三権分立の原則に反したことに無反省の金田法相は辞任すべきです。
 国会に出される前から問題が噴出している共謀罪法案について、安倍政権は3月上旬の閣議決定・国会提出を狙っています。そんな暴走は、絶対に許されません。
 
 
「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」
東京新聞 2017年2月22日
 「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、政府は、犯罪の合意に加えて処罰に必要な要素として検討している「準備行為」について、条文で「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定する方針を固めた。「その他」の文言が盛り込まれることで拡大解釈が際限なく広がり、準備行為が歯止めとならないことが懸念される。 (山田祐一郎)
 
 共謀罪法案は、犯罪に合意しただけで罰するのは内心の処罰につながるといった批判を受け、過去三度も廃案になってきた。安倍晋三首相や金田勝年法相らは今回、新たな共謀罪法案について「準備行為があって初めて処罰の対象とする」と過去の法案よりも適用範囲を限定する方針を説明。一方でハイジャックテロや化学薬品テロでは、現行法の準備罪や予備罪よりも前段階での処罰が可能になるとして、テロ対策での必要性を強調してきた。
 
 新たに明らかになった条文では「犯罪を行うことを計画をした者のいずれか」によって「計画に基づき資金または物品の手配、関係場所の下見その他」の準備行為が行われた場合、処罰対象となる。ただ、準備行為はそれ自体が犯罪である必要がない。
 例えば、基地建設に反対する市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めた場合、捜査機関が裁量で組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団だと判断し、仲間への連絡が準備行為と認定される可能性がある。
 また、政府への抗議活動をしている労組が「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めれば、組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定され、誰か一人が弁当の買い出しに行けば、それが準備行為とされる可能性がある。
 
 米国の共謀罪に詳しい小早川義則・名城大名誉教授(刑事訴訟法)は「米国では、顕示行為(準備行為)は非常に曖昧で、ほんのわずかな行為や状況証拠からの推認で共謀が立証される」と説明。「日本の法体系と全くの異質のものを取り入れる必要性があるのか」と疑問を呈した。
 
 また、「その他」は無制限に解釈が広がる恐れがある。新屋(しんや)達之・福岡大教授(刑事法)は「何でも当てはめることができ、限定にはならない。結局、犯罪計画と関係ある準備行為かどうかは、捜査側の判断になる」と述べた。


共謀罪、本当の怖さを知る者は、ほんのわずか。気が付いたときは、もう遅い。  
かっちの言い分 2017年2月22日
 共謀罪が、国会で審議されている。この法案の怖さを、どれだけの国民が考えているだろうか?
 考えているのは、ほんの、ほんの一部の人だけだろう。しかし、この法案は、戦中の治安維持法に準じる怖さを含んでいるのである。下に、この怖さを具体的に実例を挙げ、その行為を図で示している。
 例えば、沖縄で市民団体が、工事車両を止めようと合意した場合は、警察は組織的威力業務妨害だと認定出来、組織的犯罪集団と見なされるそうだ。さらに、この共謀罪の本当の怖さは、座り込みの相談を、ライン、電話で連絡し、途中でやめても、「準備行為」と見なされてしまう可能性を含んでいるのである。
 
こう書くと必ず、そんなことをするはずは無いと言う者がいる。そもそもこんな法律を作ることは、自分たちに不都合な人物、行動を取り締まることを担保しているのである。取り締まる側の一存で、どうにもなる法律なのである。明日は、わが身である。
デモに出るだけでチェックされ、電話を盗聴される可能性が出てくる。今の政府は、明らかに秘密法の延長として、共謀罪の法制化を行い、反体制の根を絶つことを目指している。
気が付いて、後でいくら悔やんでも、その時にはもう遅い。
 
 「共謀罪」拡大解釈の懸念 準備行為、条文に「その他」
2017年2月22日 朝刊
(重複のため省略)