2017年2月26日日曜日

26- 父親はCIAのために働いていたと麻薬王の息子が明かす 他

 アメリカの謀略部隊はCIAですが、彼らが資金調達に麻薬取引を利用していることは公然の秘密です。そしてアメリカのダブルスタンダードを示す一例です。
 櫻井ジャーナルが、かつてコロンビアに君臨していた麻薬組織のボス、パブロ・エスコバルCIAのために働いていたと、彼の息子が出版した本の中で述べていることを紹介しました。明確な事例がまた加わったというわけです。
 
 櫻井ジャーナルはまた2月に入って、「米支配層は支配の戦術として住民皆殺しを採用、ベトナム、中南米、中東/北アフリカなどでも実行」と題した、アメリカの作戦の残虐性を示す記事を発表しています。
 麻薬とは関係ありませんがこれもアメリカの巨大な負の側面を示すものです。
 二つの記事を紹介します。
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麻薬組織のボス、パブロ・エスコバルの息子は自著の中で
父親はCIAのために働いていたと明かした    
櫻井ジャーナル 2017年2月24日 
 かつてコロンビアに君臨していた麻薬組織のボス、パブロ・エスコバルの息子が本を出し、その中で父親はCIAのために働いていたと書いている。
 もっとも、CIAと麻薬組織との関係は有名な話で、ベトナム戦争時代には黄金の三角地帯(ミャンマー、タイ、ラオスの山岳地帯)で栽培されたケシを原料にヘロインが生産され、アフガニスタンでアメリカがワッハーブ派やムスリム同胞団を使ってソ連と戦争を始めるとアフガニスタンとパキスタンの山岳地帯にケシの栽培地は移動した。ラテン・アメリカではコカインが生産されている。エスコバルが扱っていた麻薬もコカインだ。
 
 コカインの生産はCIAがゲリラのコントラ=親米反政府派民兵を編成、ニカラグアの革命政権に対する攻撃を始めてから急増した。コントラは資金調達の一手段としてコカイン取り引きに手を出していたのだが、こうした話をアメリカの有力メディアは報道したがらない。
 そうした中、APの記者だったロバート・パリーとブライアン・バーガーはCIAに支援されたコントラの麻薬取引を知る。理想を持ってコントラに参加したが、その実態に失望したひとり、ジャック・テレルが麻薬密輸に関する情報などをパリーらに提供したのだ。コントラが「人々を豚のように殺す」ことに腹を立てていた。
 
 ふたりの記者はコスタリカの刑務所でふたりの傭兵、イギリス人のピーター・グリベリーとアメリカ人のスティーブン・カーからコスタリカにあるジョン・ハルというアメリカ人の牧場がコントラ支援の秘密基地として機能しているということを聞かされる。
 ハルはCIAと深い関係にあり、NSCから毎月1万ドルを受け取っていた。ふたりの傭兵は、コントラ支援工作に関わっていたフランシスコ・チャンスのマイアミにある自宅で大量のコカインを見たとする話もしている。
 また、取材を通じ、マイアミのエビ輸入会社『オーシャン・ハンター』がコカイン取引に関係している疑いを持つ。コスタリカの姉妹会社『プエンタレナス冷凍』から運ばれてくる冷凍エビの中にコカインが隠されているという噂を耳にしたのだ。この噂が事実だということは、後にアメリカ上院外交委員会の調査で明らかにされた。
 
 こうした関係者の証言を基にしてふたりはコントラが資金調達のためにコカインを密輸しているとする記事を1985年に書いたが、当初、ニューヨークにあるAP本社の編集者はふたりの記事に反発、お蔵入りにな。それが「ミス」でスペイン語に翻訳され、ワールド・サービスで配信されてしまった。(Robert Parry, "Lost History," The Media Consortium, 1999)
 
 1996年8月にはサンノゼ・マーキュリー・ニューズ紙にコントラとコカイン取引との関係を指摘したゲイリー・ウェッブの記事が連載された。当初、有力メディア、例えばロサンゼルス・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、あるいは有力ネットワーク局は沈黙していたが、公民権運動の指導者やカリフォルニア州選出の上院議員や下院議員が騒ぎ始めると一転して激しくウェッブを攻撃しはじめた。
 
 CIAの麻薬取引については、麻薬の消費地でもあるロサンゼルスの警察も知っている。そのロサンゼルス市警察で1973年から78年にかけて捜査官を務めていたマイケル・ルッパートの場合、CIAの麻薬取引について調べすぎたことから退職せざるをえなくなったという。
 ウェッブの記事が出た後、1996年11月にルッパートはロサンゼルスの高校で開かれた集会に来ていたジョン・ドッチCIA長官に対し、ロサンゼルス市警にいた頃の経験に基づいて質問、内部調査を約束させた。そして1998年1月と10月にIGレポートが出されたのだが、それはウェッブの記事の正しさを確認するものだった。
 
 つまり、有力メディアのウェッブ批判は間違っていたのだが、そうした間違った報道をいまだに訂正せず、謝罪もしていない。彼らの偽報道は中東、北アフリカ、ウクライナなどに限らないのだ。父親はCIAのために働いていたというパブロ・エスコバルの息子の話も彼らは無視しているようだ。 
 
 
米支配層は支配の戦術として住民皆殺しを採用、
ベトナム、中南米、中東/北アフリカなどでも実行
櫻井ジャーナル 2017年2月9日 
 アメリカにはロシアや中国との戦争に向かっている勢力が存在する。アメリカが「自由で民主的で平和的」だということはない。これは歴史が示している。もしアメリカが中国やイランとの軍事的な緊張を今以上に高めたなら、ほんのチョットした切っ掛けで全面核戦争に発展するだろう。ドナルド・トランプが大統領になったからそうした事態になっているわけではない。ヒラリー・クリントンはトランプより遥かに危険な好戦派だ。
 
 タスによると、ロシア軍は必要ならイランの航空基地を利用するとイラン駐在ロシア大使は語ったという。すでに昨年8月にはロシア軍機がイランの基地を使っているが、この発言はアメリカがイランに対して圧力を強めていることに対する警告のようにも見える。
 
 そのアメリカだが、ロシアとの関係を改善したいというトランプ大統領の意思は変化していないようだ。前にも書いたように、Foxニュースの政治コメンテーターであるビル・オライリーはドナルド・トランプ大統領にインタビューした際、ウラジミル・プーチンを「人殺し」と表現、それに対してトランプは「人殺しはたくさんいる。われわれは多くの人殺しを抱えている。われわれの国がそれほど罪がないとあなたは考えているのか?」と応じた勿論、トランプの主張は正しい。
 
 少なくとも第2次世界大戦後、アメリカは「人殺し」を戦術の軸に据えてきた。戦争の末期に編成されたジェドバラの人脈で極秘の破壊工作機関OPCが作られ、1951年にCIAへもぐ込んで計画局の核になった。この人脈がNATOの秘密部隊を編成、対キューバ工作を実行、ベトナムではフェニックス・プログラムで人びとを殺した。
 
 フェニックス・プログラムでは2万6000人から4万1000人が殺されたと言われ、その中には504名の村民が殺されたソンミ(ミライ)事件やボブ・ケリー元上院議員による非武装民の虐殺も含まれている。
 ケリーの場合、18名の女性や子どもを含む20名以上の武装していないタンフォンの村民を惨殺したのだが、報告では21名の南ベトナム解放民族戦線の兵士を殺したことになっていた。その「功績」で彼は青銅星章を授与されている。
 2001年にケリーが指揮していた部隊による虐殺が明るみに出ると彼を弁護する声が相次ぎ、その中には著名な「ジャーナリスト」のデイビッド・ハルバースタムはタンフォンを「最も純粋なゲリラ地域」で、1969年までそこに住む全員が第3世代の「ベトコン」だったと弁護している。アメリカは侵略軍にほかならず、その侵略軍を非戦闘員も敵視するのは当然。そうした感情を持つ人びとを殺すのは当然だとハルバースタムは主張しているのだ。
 
 村民皆殺しの目的はいくつか考えられる。まず共同体を破壊して組織的な抵抗を弱めること、ゲリラに対する食糧などの支援を断つこと、そして恐怖でアメリカに屈服させることなどだ。この戦術はラテン・アメリカでも使われ、「死の部隊」が編成されている。ズビグネフ・ブレジンスキーはサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心に戦闘集団を組織、対戦車ミサイルTOWや携帯型地対空ミサイルのスティンガーを含む武器を供給し、戦闘員を訓練した。
 1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックによると、そうした戦闘員のコンピュータ・ファイルがアル・カイダである。アラビア語で「アル・カイダ」とは「ベース」を意味し、「データベース」の訳として使われる。
 
 2003年にアメリカはイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を倒し、建造物を破壊、100万人とも推計されているイラク国民を殺した。その際、アメリカが投入した121機動部隊はフェニックス・プログラムの殺人部隊やラテン・アメリカの死の部隊と同じ役割を演じた。2011年春にアメリカはリビアやシリアの体制転覆に乗り出すが、ここで使われたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)も目的は同じ。だからこそ、こうした武装集団の危険性を訴えたマーティン・デンプシー統合参謀本部議長やマイケル・フリンDIA局長は任を解かれたわけだ。
 
 2001年9月11日の攻撃を利用してジョージ・W・ブッシュ政権は1992年にネオコンが作成した世界制覇プランを実行に移したが、1980年代から準備が進められていたCOGプロジェクトも始動している。COGとは「Continuity of Government」のイニシャル。
 
 核戦争が勃発した際、本来の政府の機能を秘密政府へ移す計画で、1979年に設立されたFEMA(連邦緊急事態庁)もその計画から生まれた。COGは1982年に創設され、88年には大統領令12656によって、その対象は核戦争から「国家安全保障上の緊急事態」に変更されている。この変更の結果、2001年9月11日にCOGは始動、「愛国者法」がすぐに施行され、憲法の機能が停止させられたわけだ。
 
 アメリカ国内のファシズム化や国外での侵略戦争は9/11を切っ掛けにして本格化、フェニックス的な作戦も実行しつつあるのではないかと言われている。その9/11は政府の自作自演だという指摘は納まる気配を見せていない。トランプ大統領もそうした疑問を口にしているひとりであり、安全保障担当補佐官に就任したフリンやジェームズ・マティス国防長官などはCOGにも反対していると言われている。トランプ政権にはさまざまな側面があるが、支配層、特に9/11を利用してきたグループにとって非常に危険な要素を持っていると言えるだろう。