2017年2月20日月曜日

20- 市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!(五十嵐仁氏)

 五十嵐仁氏が川崎区革新懇の「11.2講演と交流のつどい」で行った講演:「市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!」の要旨が、2月17日~19日の3回に分けて同氏のブログに掲載されました。
 以下にその3回分をまとめて紹介します。
 五十嵐氏は、戦後営々と築いてきた平和で民主的で自由な日本が安倍政権によって破壊されないように守り、それを子どもたちや孫に、次の世代に手渡すことが、今を生きている私たちの責務ではないのかと訴えています
   (関係記事)
2016年12月25日 野党共闘の発展の経過と今後の展望(五十嵐仁氏)
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市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!(その1)
五十嵐仁の転成仁語 2017年2月17日 
〔以下の講演要旨は、川崎区革新懇の「11.2講演と交流のつどい」記録集に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕
 
参院選の二つの側面―与党の勝利と共闘の勝利
 野党共闘の必要性についてはずっと以前から主張していたが、ようやくこの参院で共闘が実現した。32ある1人区で統一候補が擁立され、11人を当選させるという成果を上げた。これまで目標としてきた革新統一に向けた動きがようやくスタートを切った。新たな段階が始まったのだ。
 去年の今頃は、安保法が通ってみんながっかりしていた。その後、2000万署名が提起され、共産党が安保法廃止の国民連合政府を提起したけれど、それがどういう形になるのかだれも予想できなかった。それから1年経った。今では、これがどういう形をとるのかがはっきりと我々の目に映るようになっている。これが参院選の成果だ。
 確かに参院選で与党は勝った。改憲勢力も3分の2を越えるという結果になったけれど、他方で野党共闘の威力が示された。市民と野党が力を合わせれば新しい政治をひらくことができることが具体的な姿を持って証明された。これが参院選のもう一つの側面であり、ここに活路がある。
 
 さらにその後、大きな成果に結びついた。新潟知事選で原発の再稼働に反対だという米山さんが当選した。民進党が「自主投票」で迷走したにもかかわらず、市民と野党の統一候補として米山さんが告示日の6日前に、民進党を離党して立候補した。そして大差をつけて当選した。
 現地の人も言っていた。まさか当選するとは思わなかったと。しかし、途中から状況がどんどん変わっていった。これならいけるかもしれないということで当選。これが市民と野党共闘の力だ。
 共闘成立の背景には安保法案反対運動があった。闘いが始まった時、これを勝利させるためには野党が手を結ばなくてはいけないと言った。現代の「薩長連合」が必要だ。幕末に互いに殺しあった薩摩と長州が手を握って幕府を倒した。民進党と共産党は殺しあっているわけじゃない。手を結ぶことは十分に可能じゃないか。それを仲立ちする現代の坂本竜馬は皆さん、市民なんですと訴えた。
 去年は、こういう話をしていたけれど、それが野党共闘という形で現実のものになると、必ずしも確信していたわけじゃない。ところが、9月19日の安保法が通った日の午後に、共産党が国民連合政府を提唱した。とはいえ、この時は雲をつかむような話だった。
 その後、野党共闘に向けての協議が進み、今年に入って2月19日に「5党合意」が成立する。実は、沖縄がこの野党共闘の走りだった。それが本土でも実現した。その結果、自民党は参院選でたしかに勝ったかもしれないけど、それに対抗する形で野党共闘が大きな成果を上げた。1人区で議席増となって、我が故郷である新潟県の知事選での勝利に結びつく端緒をひらくことになった
 
共闘のどこが画期的だったのか―「共産党を除く」が除かれた
 1970年代には社共共闘が成立していた。これは国政選挙ではなく自治体選挙だった。革新自治体を作るという目的で社会党と共産党が共闘した。しかし、国政選挙では沖縄を除いては実現しなかった。それが参院選で共産党をふくむ形で共闘が成立した。「共産党を除く」という壁が除かれた。これが今回の共闘での画期的な面だと言える。
 背景に何があったのか。安保法制定などのアベ暴走政治だ。原発を再稼働するとか、沖縄の米軍新基地建設を強行するとか、暴走に次ぐ暴走。TPPが臨時国会で問題になっているけれども、安くていかがわしい食料を輸入しようとしている。日本の農業が潰れてしまうかもしれない。この暴走に対して多くの国民・市民が危機感を高めた。これが野党共闘成立の背景だ。
 このようななかで出てきた「野党は共闘」という声が民進党を動かして5党合意に結びつく。その結果、1人区での統一候補擁立が進んだ。最後は5月31日だった。参院選の告示は6月22日だったから3週間ほど前にようやく1人区全部で統一候補が出揃ったことになる。
 いわば、今回の参院選での野党共闘はプレハブ造りのようなもの。突貫工事で緊急に作ったような共闘だった。それでもこれだけの効果を上げることができた。それがどれほどの威力を発揮できるのかが示されたのが新潟県知事選挙だった。
 
 
市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!(その2
五十嵐仁の転成仁語 2017年2月18日 
どれほどの威力を生み出すのか―新潟県知事選の破壊力
 新潟県知事選では、当初、野党の候補がなかなか決まらなかった。ほとんど無風状態で森さん(自民党公明党候補・長岡市長)が当選しちゃうんじゃないかと心配していた。ところが、自民党や維新の党から立候補して落選経験のある米山さんが立候補した。米山さんの支持者だった自民の人、維新の人に加えて、今度は新たに共産党や社民党が加わり幅が広がった。  
 しかも、米山さんは人の話をよく聞いて柔軟にものを考える人で、変わるけれども誠実だ。弁護士であると同時に放射線関係の医者。原発事故で福島から隣の新潟県に避難してきている人もたくさんいる。柏崎刈羽原発をどうするのかということが選挙で大きな争点になったが、人ごとじゃない。新潟の人にとっては身近な問題だった。
 他方で、柏崎刈羽原発という世界最大出力の原発がある。そこで働いている人もたくさんいる。この人たちが原発推進の立場だ。しかも、その労働組合である電力総連が連合傘下の組合だということで民進党新潟県連の会長が野党共闘に強硬に反対したという。最後まで「うん」と言わなかった。結局、米山さんは、やむにやまれず民進党を離党して立候補することになったというわけだ。
 ところが原発問題が争点に浮上し、TPPの問題でも反対を表明する中で雰囲気が変わってくる。米山さんの選挙母体は、その前の参院選で当選した森裕子さんの選挙母体をそっくり引き継いだそうだ。本部長になったのが当選した森さんで生活の党。野党第1党の民進党が動かないから第2党の共産党が中心になった。宣伝カーも共産党の宣伝カーだったという。
 選挙戦の途中から雰囲気がどんどん変わっていく。それが民進党にも分ったのだろう。当選しそうだということで、「それは大変だ」と蓮舫さんがおっとり刀で応援に駆けつける。こういう形で急速に追い上げた。参院選の時は2200票の差だったのに今回は6万票の差になった。こんなに差がつくとは思わなかったと、現地の人は言っていたけれど、それほど運動の勢いがすごかった。
 米山さんは、最初は泉田路線継承で原発再稼働は慎重にという立場。それが、当選したら原発再稼働反対に変わった。どんどん態度が明確になっていく。言うことが進化していくわけだ。立場がはっきりしていって反自民。自民党と公明党は野党になり共産党と社民党は与党になった。少数与党で県政運営はなかなか難しいかもしれないけれど、立場は明確で県民の側に立つ県政が実現した。雨降って地固まる。良かったじゃないですか。
 
新たな共同の展望―本格的に政権交代への準備を
 これからの新しい共闘の展望だが、本格的に政権交代への準備を始めなければならない。市民プラス野党による共闘を拡大して、これなら新しい市民の立場に立った政府を樹立することができるという希望を国民に与える。これが大切だ。今までのどの政権よりも良い政権ができるんだという夢を国民が持てなければ、支持してもらえない。
 参院選が終わった後に朝日新聞が世論調査を行った。安倍内閣を支持すると答えた回答で一番多い理由が「他よりもよさそうだ」で、46%と最高だ。それ以前の内閣があまりにも悪すぎたということだ。次に出てくる政権がもっとよいと思ってもらえれば、「他よりよさそう」という人たちに支持してもらえるのではないか。また、参院選で与党に入れたと答えた人たちに理由を聞いたら「野党に魅力がなかったから」が71%もある。この魅力を高めれば、これらの人々も野党支持に変わっていくんじゃないだろうか。
 そのためにどうするのか。主体的な力をつけなければならない。多様なつながりや信頼を大切にして発展させる。共闘をすすめる中で、政党や会派が違う人たちの間で新しい結びつきができてきた。今までは挨拶ぐらいしかしたことがない、そういう人たちがメールアドレスを交換したり、いろいろ相談したり、連絡をとったりという形で結びつきが深まってきた。
 私の住んでいる八王子には「ノーウオー八王子アクション」があった。安保法案反対運動のなかで、民主党や共産党、社民党などの共同が進み、その枠組みを大切にしたいと思って、私も市長選に立候補した。その過程でいろいろな結びつきができる。話してみると悪い奴じゃないと、理解が深まるし信頼関係も生まれる。これはものすごく大切だ。この財産をぜひ生かしてもらいたい。
 政策的な一致の幅を広げ、合意の水準を高めることも重要だ。安倍政治後の未来を示すものであってほしい。すでに参院選1人区で政策協定が結ばれ、通常国会の最終盤には15本の野党共同提案の法案などもある。大衆運動での一点共闘も拡大している。草の根から連合政権の土台づくりをしなければならない。メーデーなどでも、できればそれぞれの地域で異なる潮流が一緒にやる統一メーデーの実現に力を尽くしてほしい。
 
 
市民と野党の共闘でアベ政治の流れをかえよう!(その3)
五十嵐仁の転成仁語 2017年2月19日 
政策的合意の拡大、臨時国会での共同―選挙区で統一候補擁立の準備
 野党共闘の核になるのは民進と共産の連携だ。市民からの要請と働きかけが鍵になる。今日の毎日新聞の夕刊に蓮舫さんのインタビューが掲載されている。「野党間の協議は続けます。選挙協力をするかしないか、100か0かの問題ではありません。地域事情を勘案して勝つことにこだわっていきます」と述べて、共闘はやると言っている。蓮舫さんの発言の中で、ポイントは「地域事情を勘案し」の部分だ。「地域事情」を、みなさんで作ってもらいたい。
 市民と野党とが一緒になって実質的な実りある共闘を生み出す。勝てる共闘を、それぞれの地域で実現するような動きを作っていけば良い。そうすれば、「沖縄方式」で勝てる。沖縄では4つある選挙区のそれぞれに野党が1人ずつ候補者を立てて全員当選したじゃありませんか。同じようなことを神奈川県でもやればいい。そのための「神奈川の地域事情」をつくり出してもらいたい。
 もし、じゃまされそうになったら、「これが神奈川の地域事情」だと民進党のトップに言えばいい。地域事情を勘案してやるって言っているわけですから。「民進党に欠けているのは信頼。そこが決定的に欠けている。政権の座に就いた旧民主党から裏切られたという人々の感情はいまだに収まりません」。彼女はこう答えている。ならば信頼を積み上げるしかない。そのためには約束を守ることが大切だ。共闘はするという約束についても守ってもらいたい。
 
 共産党が一方的に候補者を取り下げるという形ではなく、きちんとしたバーターで候補者調整を行う。そして一本化する。こういう風にすればさらに大きな力を発揮することができるだろう。北海道新聞の試算では、衆院選で参院選と同じ共闘が実現すれば野党の10勝2敗になるという。時事通信の試算では、前回の総選挙でも野党4党の得票を合算すれば47選挙区で逆転する。自公は3分の2を割るとされている。自民党の下村幹事長が若手の議員を集めて開いた会議で、野党が一本化すれば前回より86議席減る可能性があるとはっぱをかけた。
 通常国会冒頭解散とかいろいろなことが言われているが、「やれるもんなら、やってみろ」と言えるような準備を進めていけばいい。解散・総選挙をしたら必ず自民党が減ると思われるような状況を作れば、そう簡単に解散・総選挙はできなくなる。今からでも、総選挙がいつになっても闘えるような準備をすることが重要だ。
 
むすびに
 そのために私たち一人ひとりに何ができるのか。皆さんが戦後営々と築いてきた、平和で民主的で自由な日本が安倍さんにぶっ壊されないように守らなければならない。そしてそれを、子どもたちや孫に、次の世代に手渡すことが、今を生きている私たちの責務ではないのか。
 そのためには事実を知り、周りの人々にも知らせなければならない。知って学び、情報を発信して正しい事実を伝えていく。そのような努力をしなければならない。
 私と同世代以上の人たちに対しては、「シニアレフト」になろうと呼びかけたい。「シニア」とは高齢者、レフトは「左翼」。左翼じゃなくてもいいけれど、安倍さんにまともな世の中をぶっ壊されないように守ろうとする人々。そして次の世代に手渡すことが大切だ。
 そのためには様々な運動に参加する。「運動は体にいい」と言うから。社会運動の中で体を鍛える。国会前に行って大きな声で叫んでストレス解消。川崎の町を行進することで足腰を鍛える。こういう形で元気になったお年寄りがたくさんいる。
 これなら次の世代に手渡すことができるというまともな世の中にしてから、安んじて「お迎え」を待つというのが望ましい「シニアレフト」の生き方ではないだろうか。それまでは元気でたたかう。少なくとも、安倍さんより先には倒れない。
 このことを強調して、話を終わらせていただきます。少なくとも、私はそうありたいと考えております。共に頑張りましょう。