2017年2月11日土曜日

11- 軍国化への分岐点となる日米会談

 安倍首相にとっては「日米同盟」という言葉が金科玉条であって、ことあるごとに「日米同盟の強化」の必要性が「確認された」とか「合意した」などという言い方をします。
 日米同盟」の本質は、米国、直接的には米軍による日本の支配ということです。トランプ大統領にとっても「日米同盟(の強化)」は米軍の極東戦略を経済的にも人的にもサポートするものであり、さらには兵器を売り込むための絶好の口実になります。それこそトランプ氏が何よりも望む国益に他なりません。
 
 それにつけても何かというとすぐにもサード(弾道弾迎撃ミサイル・システム)などに飛びつきたがる稲田防衛相をトップに据えている日本は恰好の獲物です。
 彼女は、サードの軍事的実効性をどう考えているのでしょうか。迎撃は爆風では無効で弾頭を直撃する必要がありますが、そのためには目標到達時の正軌道からの変位は1m以内、標的到達時間の誤差は1万分の2秒以内である必要があります。そんなことが確実に実現できると考えているのでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   日本経済一歩先の真相  
“緊密な関係”に名を借り 軍国化への分岐点となる日米会談
日刊ゲンダイ 2017年2月10日
 トランプ政権の発足後、初めての日米首脳会談があと2日に迫った。安倍首相は「親密な信頼関係の構築を進め、安全保障や経済面で緊密な協力を確認したい」との考えだが、相手は極端な米国第一主義者である。アメリカファースト大統領のペースにのまれ、終始下手に出るような会談になりはしないか。今から不安がつきまとう。
 
 トランプ大統領の筋金入りの米国第一の考え方は、就任から3週間で世界中が嫌というほど思い知らされた。貿易は完全な保護主義政策で、日本の為替政策についても「金融市場を利用した通貨安誘導だ」と批判している。まるで鎖国に走りかねない、と国際社会が手を焼く大統領にノコノコと会いに行き、「緊密な関係」を呼びかけるのだ。安倍首相は季節外れの“飛んで火に入る夏の虫”となりかねない。
 
 ましてや、トランプの日米安保の現状認識はムチャクチャだ。選挙中には「我々が攻撃を受けても、日本は何もする必要がない。彼らは家でくつろぎ、ソニーのテレビを見ている」と嘆き、日本が駐留経費を全額負担しなければ在日米軍の撤退を示唆。日本の核兵器保有さえ促すような発言が飛び出した。
 
 事実はどうあれ、米国第一大統領が日米安保は自国にとって片務的で不公平だという認識に凝り固まっているのだ。来日したマティス国防長官の常識的な考え方にホッとしたのも束の間、きっと軍事面で何らかの要求を突き付けられるに違いない。
 
 トランプの一喝を恐れている証拠だろう。安倍政権は先手を打つように「わが国は防衛力を質も量も強化する」と、マティスに伝えた。この、恫喝に便乗した防衛力強化こそが、トランプとの緊密な関係の正体で、安倍首相は自ら思い描いてきた軍国主義路線を着々と進めようとしている
 
 何しろ、助成金や補助金を“人質”に取って、大学や民間の研究機関に軍事転用可能な技術開発の推進を国策に掲げるような政権なのだ。トランプに言われるのをテコとして、核ミサイルに転用可能な技術開発研究にだって手を出しかねない。
 集団的自衛権を認めた「解釈改憲」の安保法制の施行により、この国は米国から戦争協力を求められても平和憲法をタテに断る術を失ってしまった。むしろ、トランプから軍事面で無理難題を押し付けられたら、安倍政権は平和憲法を書き換えるチャンスくらいに思うのではないか。
 その意味でも、2日後の日米首脳会談は、この国の未来を占う大きなターニングポイントとなる。トランプ政権との「緊密な関係」に名を借りた軍事国家への歩みを許していいのか。この点を国民はパッチリと目を開け、注意深く見守るべきである。
 
 高橋乗宣エコノミスト
1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。