2017年2月21日火曜日

米はウクライナと南シナ海で露を挑発 トランプ氏の対露歩み寄りは挫折

 大統領に当選したトランプ氏が口にした「ロシアとの宥和」は、アメリカの体制派に衝撃を与えました。
 ロシアを非難するマッカーシズムが吹き荒れて、トランプ氏の対露宥和策を孤立させる動きが強まりました。オバマ氏は大統領を退任する直前に米軍を動かしてロシアを挑発する行動を起こさせましたが、ロシアはトランプ氏の宥和策に期待してその挑発に乗りませんでした。
 
 しかしロシアとの関係を修復するというトランプ大統領の方針への体制側の攻撃が強まった結果、対露宥和政策の中心人物だった国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン氏が辞任に追い込まれました。その辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事が発端で、特に根拠、証拠と呼べるものは示されていなかったということですが、なぜかトランプはフリンを慰留しませんでした。メディア=国を挙げての攻撃の前にトランプ氏が屈した感があります。
 
 ウクライナではアメリカのネオコン議員が暗躍して戦闘を激化させました。これはオバマ氏の発想と同じで対露宥和策を牽制するためのものです。
 また米海軍は空母を含む艦隊を南シナ海に派遣して、中国に対する示威行動を繰り広げるということです。・露の密接な関係を思えばそれはロシアに対する挑発でもあります
 
 クリントンが当選すればいずれ対露戦争が勃発すると言われていました。その大統領選にトランプ氏が勝利して実に画期的な対露宥和策を発表したわけですが、残念ながらそれは挫折しつつあるようです。
 櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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ウクライナ周辺での露国に対する軍事的な挑発を強める一方、
南シナ海に空母を派遣して中国を刺激    
櫻井ジャーナル 2017年2月20日
 アメリカ海軍は空母カールビンソンを中心とする艦隊を南シナ海に派遣、中国に対する示威行動を繰り広げるようだ。中国とロシアとの関係が緊密化していることを考えると、ロシアに対する挑発でもある。ドナルド・トランプ政権はロシアとの関係修復を諦めた、つまりヒラリー・クリントンを担いでいた勢力による政権乗っ取りが成功した可能性がある。
 
 バラク・オバマは大統領を退任する直前、ロシアとの関係をできるだけ悪化させようとロシアを挑発していた。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのはその一例。今年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両をドイツへ陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込んだ。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。ただ、こうした挑発にロシア政府が乗らなかった
 
 アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させているが、同司令官によると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。アメリカに従属しなければ侵略するぞということだろう。
 ウクライナではキエフ政権が1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対する攻撃を激化させているが、その1カ月前にはクリントンを支持していたジョン・マケインとリンゼイ・グラハム、ふたりのネオコン上院議員がジョージア(グルジア)、バルト諸国、そしてウクライナを訪問している。偶然ではないだろう。2月4日にはルガンスクの軍司令官の自動車が爆破され、司令官は殺された。
 
 クリントン陣営、CIA、NATO、そしてアメリカの有力メディアはロシアとの関係を修復するというトランプ大統領の方針を激しく攻撃してきた。その方針の中心的な存在だった人物が国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン元DIA局長。そのフリンは2月13日に辞任している。
 前にも書いたが、この辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事で幕を開けた。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたことが問題だと報じたのだ。例によって、根拠、証拠と呼べるものは示されていない
 
 フリンは、ロシア大使との電話での会話につして不完全な情報を次期政権の副大統領や他の人びとに話したことを謝罪しているだけ。次期政権の国家安全保障担当補佐官として各国の自分と同じ立場の人びと、大臣、大使に電話したが、それは政権の移行を円滑に進め、大統領、補佐官、外国の指導者との必要な関係を築く手始めだとしている。
 辞任しなければならない話ではないが、トランプはフリンを慰留しなかったようだ。何か別の理由があれば別だが、トランプは腹心を見捨てた。娘婿のラインを優先した可能性があるだろう。
 
 すでにアメリカでは巨大な私的権力が政府を上回る力を持ち、国を支配している。フランクリン・ルーズベルトが定義したファシズム体制だ。ボリス・エリツィン時代のロシアとも言える。そのロシアではウラジミル・プーチンがそうした私的権力(ロシアではオリガルヒと呼ばれている)を押さえ込み、再独立に成功した。アメリカでは失敗したように見える。
 
 このファシズム体制を世界に広げる協定がTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)。トランプは就任早々TPPを葬ったが、今後、何らかの形で復活させる動きが出てきそうだが、それ以上に懸念されるのはロシアとの核戦争勃発である。ネオコンは暴力で物事を進めようとする。キエフの混乱を話し合いで解決しようとしたEUに怒ったビクトリア・ヌランド国務次官補が発した「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉は象徴的だ。